#89 恐怖のメロディ (1971) Play Misty for me | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

ジャンル:一般犯罪
製作国:アメリカ
監督:クリント・イーストウッド
愛するポイント:ダメダメ男が真実の愛に目覚めるリアルなサスペンス


※愛する映画たちは基本的に邦題のあいうえお順に紹介していますが、本作は"愛の入れ替え戦 2023"で新規エントリーしたので、このタイミングになりました。

恐怖のメロディ」は、「許されざる者」と「ミリオンダラー・ベイビー」での2度の米国アカデミー監督賞を経て、今や巨匠の仲間入りをしたクリント・イーストウッドの監督デビュー作。
"ドル箱3部作"で人気俳優となったイーストウッドがスターの地位を不動のものとした「ダーティハリー」(1971)とほぼ同時期の作品で、「荒野の用心棒」以来のファンとして公開後すぐに観ましたが、当時はサスペンスと言えばどちらかというと謎解き系が好きだったためか、面白いと思いつつもストーリー展開がちょっとシンプル過ぎ、冗長なシーンが多いと(生意気にも)感じました。

それから50年。
再見した「恐怖のメロディ」は、イーストウッドのキャラの一面でもあるお軽いイケてる中年男が真実の愛に目覚める話、と映りました。冗長と感じた部分はそれを描き切るために必要だったのと実感した次第です。
同時に、まあまあの数のヒッチコック作品や、「ナイブズ・アウト」のようなひねりにひねった最近の謎解き系サスペンスを観てきた経験から、ストーリーに今風な複雑さがなく、言うなればヒッチコックのよく出来た作品風のシンプルな展開がリアルに怖い秀作と感じました。

思えば初見のときは中学生。ドナ・ミルズがヌードにもなったイーストウッドとのラブシーンは、青少年には刺激的ながらも冗長で客寄せ的な演出と映ったのですが、二人の関係、特にイーストウッドのキャラの成長を描くうえで重要な場面だと今では思います。
これは鑑賞者としての成熟なのでしょう(と考えたいです)。

イーストウッドの監督作品(特に本人が出演しているもの)はどれもかなり好きですが、監督デビュー当時から1本筋の通ったポリシーを持っていたことが感じ取れます。
セルジオ・レオーネと並んで彼の演出の師匠とされる「ダーティハリー」の監督ドン・シーゲルが印象的な役柄で出演。イーストウッドが後年市長になったカーメル市が舞台になっているのも見どころです。

※写真はドナ・ミルズとイーストウッド。

 

ブロトピ:2024/01/08