#82 荒野の用心棒 For a Fistfull Dollars (1963) | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

ジャンル:西部劇
製作国:イタリア/スペイン
監督:セルジオ・レオーネ
愛するポイント:脚本はほぼそのままに演出、役者、音楽でオリジナルを越えた偉大なパクリ作品

 



荒野の用心棒」は「荒野の七人」と同じく黒澤明作品の翻案(リメイク)(※1)ですが、「七人」とは異なり許諾を得ずに製作された、つまりはパクリ作品です。

ではありますが、「荒野の七人」よりさらにオリジナルを忠実に翻案した脚本を、最高の演出、キャスト、音楽で映画化した結果、真にエポックメイキングな傑作となりました。
「荒野の七人」は「七人の侍」に及ばないと思っている僕ですが、「荒野の用心棒」についてはオリジナルを越えたのではないかと感じています(個人の感想ですのでほんとにそうなのかはぜひご自身で確認してください)。

実際パクリとはいえ、「荒野の用心棒」で披露されたガンアクションは本国の西部劇にも影響を与えましたし、クライマックスのライフルと拳銃の対決に用いられた仕掛けは「最も危険な遊戯」で日本に逆輸入されました。

特筆すべきは、監督のセルジオ・レオーネ、主演のクリント・イーストウッド、音楽のエンニオ・モリコーネを一躍世界の寵児にしたこと。
イーストウッドは最もポピュラーなスターのひとりになっただけでなく、レオーネに影響を受けて名監督としての地位を築きましたし、モリコーネについては、マカロニファンでなくても「ニュー・シネマ・パラダイス」などでよくご存じでしょう。

レオーネの作品はかなり独特なので、ファンは大好きでも興味のない人はまったく興味ない(嫌いな人もいそう)でしょうが、本作に始まるドル箱三部作(※2)でイーストウッドをスターダムに押し上げ、音楽に合わせてシーンを作るという演出方法がモリコーネが有数の映画音楽家になる土台を作ったことは間違いありません。
なによりマカロニ・ウェスタンブームを生み出したことによって、本場の西部劇のみならず、アクション映画全体に影響を与えたと言っていいでしょう。

とまあ、以上は誰もが知るところ。個人としての感想はどうかと言えば、中盤からクライマックスにかけてのテンポのよさとアクションの緊張感&迫力は本場も含めたウエスタンムービーの最高峰のひとつだと思うし、この映画でイーストウッドファンになり主演作のほとんど(「クライ・マッチョ」を除く)を観たという、いわく付きの作品なのです。

それだけに、映画史における黒澤明のレガシーの大きさに改めて気づかされる作品でもあります。

※1:オリジナルが同じ黒澤明だからか邦題の付け方が「荒野の七人」と同じですね。配給会社も同じなのでしょうか。
※2:「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」「続・夕陽のガンマン」の三本。

 

ブロトピ:2023/09/11

 

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