#43 風と共に去りぬ Gone With The Wind (1939) | 映画の楽しさ2300通り

映画の楽しさ2300通り

ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

ジャンル:海外歴史劇/女性が主役
製作国:アメリカ
監督:キング・ヴィダー
愛するポイント:女性アンチヒーローが活きるために闘うバディムービー

いまさら紹介する必要を感じないほど有名な古典的作品ですが、それだけに40代以前(イメージ的には「スターウォーズ」以後に生まれた世代)の層にはあまり観られていないかも、という気もします。

CGのない時代にこれだけの人とモノを投じて作られたという点で、ハリウッド大作クラシックの典型的な作品と言えると同時に、いろんな点で現代的な新しさを持った映画でした。
どんなところが新しいかと言うと、

1. 女性が主役

中心的な主役が女性(ヴィヴィアン・リー演じるスカーレット・オハラ)であるということ自体に特に新しさはありませんが、相手役となる男性の登場人物(クラーク・ゲーブル演じるレット・バトラーを含め)がどいつもこいつもなかなかに役に立たない、と言う点で、女性映画の傑作「テルマ&ルイーズ」に匹敵する"女性が主役"の映画です。

2. アンチ・ヒーロー

女性だからヒーローではない、と言う意味ではなく、"ヒーロー"を性別のない言葉としたうえでも、スカーレットの言動はモラル的にも結果的にもヒーローのそれとは言えません。ほとんどの女性登場人物からは嫌われ、その美貌ゆえ一旦は男性の注目を集めてもすぐに愛想をつかされます(それが彼女を打ちのめしばしないのですが)。
「風と共に去りぬ」の面白さは、主人公が何を成しえたのか、というところにはないのです。

3. バディムービー

女性が主役であるうえ、以前記事にしたような「女と男のバディムービー」ですらなく、スカーレットとアシュレー・ウィルクスをめぐる恋敵であるメラニー・ウィルクスオリヴィア・デ・ハビラント)が困難な時代を生き抜こうとする女同士のバディムービーになっています。この点でも「テルマ&ルイーズ」(1991年の作品)の先駆けと言えるでしょう。

世界的にヒットした公開当時はポスターのイラストにも見られるようなスカーレットとレットの大ロマンスのように宣伝されたようですが、実際に観た人にはそういう印象は薄いのではないでしょうか。キャラクターの強さと言う点でも、まずはヴィヴィアン・リー最大の当たり役であるスカーレットであることは間違いないと思いますが、次点はレットやアシュレー(レスリー・ハワード)ではなくメラニーだと言い切れます。
比較的若い世代の映画ファンには、タイトルから想起されるような"南北戦争で失われた南部文化の栄光と崩壊を描く一大叙事詩"的な見方を捨てて、破天荒で前向きなスカーレットと聡明で堅実なメラニーのコンビの危機におけるサバイバルを楽しんでほしい作品です。

※ヴィヴィアン・リーについてはよろしければこちらの記事もご覧ください