人生の特等席 Trouble With the Curve (2012) ☆☆ | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

フランク・キャプラかよ!と思わず叫び、はしませんでしたが、クライマックスからラストにかけた展開はまさにそれ。厳しい現実を見据えた内容でありながらも、悪人がほとんど登場せず(たわけやまぬけは出てきますが)、善人の誠実さと努力が報われる、心温まる作品です。

何やら怪しげな邦題ながら、大好きなクリント・イーストウッド主演、ということで観たのですが、これが正解。80を越えたイーストウッドは、久々となる他人(プロデューサーとしてイーストウッドとの付き合いが長いロバート・ロレンツ)のメガフォンのもとでも演技者としての健在ぶりを示しましたが、さらに良かったのが有能な弁護士である娘を演じたエイミー・アダムス
すべてのアクションのきっかけであり、ストーリーの中心人物であるのは彼女で、実質的な主役。MLBのスカウトを演じたイーストウッドは、ストーリーの前提と環境を作り出しつつ受けに回ってこれもいい仕事をしていますが、彼ほどの大スターでなければ助演と言っても良いポジションだと思います。

エイミー・アダムスと絡む若いスカウトは、俳優としての覚えがない割にどこかで見たことがある、と思ったら、ミュージックビデオで観ていたジャスティン・ティンバーレイクでした。
新しい映画を観ることが少なくなってくると、知らないうちにアダムスや彼のような素敵な俳優が活躍している、ということが起こります。それはそれで新鮮な出会いが楽しめるわけで、ティンバーレイクも役者としてなかなか魅力的だと感じました。

イーストウッドは上述のとおり、はまり役と言えるほど父親役を見事に演じています。そう言えば"父親"は彼の得意役かも、と気が付きましたが、それについてはまた別途。

というように主演陣の良さもありますが、少々出来すぎ、な結末が痛快に感じられるようにまとめた脚本・演出もキャプラファンの自分好み。いや、それも敵役(悪役ではなく)を含む脇役たちの上手さもあってこそと言え、映画大国アメリカの映像クリエイターたちの層の厚さを感じたのでありました。