知らずにいた秀作3本(赤い家/悪魔の往く町/アリゾナの決闘) | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

格安DVDセットを立て続けに購入したので、「古い映画」を観る機会が多くなりました。中には単に観る機会がなかっただけの有名作もありますが、存在さえ知らなかった作品も多く、その中から「これは!」と思うものに出会うことも少なくありません。
そんな作品を3本、ご紹介します。

赤い家 The Red House (1947) ☆☆

エドワード・G・ロビンソンは戦前から活躍したスターですが、いわゆる美男子ではなく(個人の感想です)華やかさに欠けるためか、日本ではそれほど人気が高まらなかったように思います。

が、マックイーンの「シンシナティ・キッド」やチャールトン・ヘストンの「ソイレント・グリーン」での名演が印象に残っている人は多いでしょう。

善人も悪人も自然にかつ印象的に演じる芸達者ですが、本作ではその持ち味が十二分に発揮されたといえるでしょう。その他の登場人物たちも脇役に至るまでよく描かれ、かつ適役ですし、おどろおどろしさとサスペンスをそなえた脚本・演出(どちらも「潜行者」のデルマー・デイヴィス)にも目が離せません。

派手な立ち回りや銃撃戦があるわけではなく、人間関係の機微が緊張感を高めつつ登場人物への感情移入を促す、そのまま舞台を日本に置き換えても成立するような情感あふれるサスペンスでした。

悪魔の往く町 Nightmare Alley (1947) ☆☆

タイロン・パワーは割と早くに亡くなったので(1958年。享年44歳)戦後生まれの映画ファンにはあまりなじみがないかもしれませんが、「愛情物語」はファンも多いようです。

昔で言う「バタ臭い」日本人のような顔立ちのため、「似ている」と言われた日本の一般人がよくいたようで、自分もふたりばかり知っています。そうしてみると戦前からの日本の映画ファンには結構人気があったのでしょう。

それでも本作は国内ではあまり知られていなかったと思います。もし広く観られていればタイロン・パワーの演技者としての評価と人気を高めたことでしょう。こういうなかば「埋もれた」映画を格安価格で観られるのが"格安DVDセット"の醍醐味ですね。

タイロン・パワーの好演に、ウィリアム・リンゼイ・グレシャム原作のストーリーの面白さ、「グランドホテル」の監督エドマンド・グールディングの陰影を巧みに使った切れ味よい演出、個人的にはあまりなじみがないものの芸達者を揃えた共演陣も加えて、一級のピカレスクロマンとなっています。

と書きながらネットでいろいろ見ていたら、この12月に「アリー/スター誕生」のブラッドリー・クーパー主演で再映画化されるとか。そちらが当たれば本作も再脚光をあびるでしょうか。

アリゾナの決闘 Fury at Furnace Creek (1948) ☆☆

西部劇好きが高じて「西部劇パーフェクトコレクション」70作セットを購入し、昔観た「平原児」や「ウィンチェスター銃73」や未見の作品を観進めていますが、やはりクラシックとして評価されている作品のほかにはなかなかこれといったものがないな、と感じていたところ、ストーリー、アクション、演出揃って質の高い作品に出合いました。

主演のヴィクター・マチュアは「荒野の決闘」のドク・ホリデイ、「死の接吻」のギャングスター、「サムソンとデリラ」のサムソンくらいの印象しかありませんでしたが、本作では素性を隠して亡父の汚名を晴らそうとする男を巧みに演じています。
ヒロインを演じたコリーン・グレイは前出「悪魔の往く町」ではタイロン・パワーのパートナーを好演。「死の接吻」ではやはりヴィクター・マチュアの相手役を演じたそうですが、昔観たことゆえ覚えていませんでした。

本作に限ったことではありませんが、西部劇を観て思うのは「馬はすごい!」ということ。現代の4WDでも到底無理そうな急斜面、狭隘路、悪路、河川などをものともせず、ときには人ふたりを乗せ、ときには馬車をひいて片側絶壁の山道を走り、しかも呼べば来るなど、縦横無尽の活躍でアクションの質を高めます。
馬を操る騎手の技術も相当なものと思われ、オリンピックの馬術競技に俄然興味がわきましたが、さすがにもうオリンピックは観る気がしないので、映画で堪能することにします。