ガラスの鍵/殺人者/潜行者 | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

格安DVDによる古い映画の鑑賞をおすすめしてきたので、そうやって観た作品を3本ご紹介します。ちなみにこれらはそれぞれ別のDVDセットに収録されていました。

ガラスの鍵 ☆☆ The Glass Key (1942)

レイモンド・チャンドラーロス・マクドナルドと並んでハードボイルド作家として名高いダシール・ハメット(キャリアではハメットが先輩)原作の同名小説の再映画化で、ジョージ・ラフト主演の1932年版は観ていたものの、アラン・ラッドファンとして是非観たかった1本です。

ラフト版もそうでしたが、主人公がボスであり親友でもある街の顔役(ブライアン・ドンレヴィ)に示す忠誠が、アメリカ的というより東アジア(中国、朝鮮、日本)っぽいところに、強い印象を受けました。
忠実な部下である一方、結果的にはボスの婚約者(ヴェロニカ・レイク)を奪っておきながら祝福まで受けてしまうという対等な感じもあり、巧みなキャラクター造形だと思います。原作はずっと以前に翻訳で読みましたが、もう一度読んでみたいです。

ラッドは「シェーン」の印象があまりにも強いですが、初期のころは、「拳銃貸します」や本作など、裏社会に片足(両足?)突っ込んだ、海千山千のタフガイ役も演じていました。
いやよく考えてみたら、シェーンを開拓西部ではなく、戦前・戦中のアメリカの都会に連れてきたらこんな感じだったかもしれませんね。

「サスペンス映画コレクション~名優が演じる犯罪の世界」に収録されています。

殺人者 ☆ The Killers (1946)

アーネスト・ヘミングウェイの短編に大幅な肉付けをして映画化した作品で、のちにドン・シーゲル監督、リー・マーヴィン主演で再映画化されています。バート・ランカスターが殺人者(たち)に殺される男の役で映画デビュー。ランカスターファンとしては是非観たい作品でした。

観てみるとなるほど、ランカスターはデビュー作とは思えない風格で画面をさらっていましたが、ストーリー的には保険会社の調査員(探偵)を演じたエドモンド・オブライエンが主役。そのオブライエンは押しの強さと敏捷さでなかなかかっこいい探偵ぶりを見せています。

クレジットにはありませんが、リチャード・ブルックス暴力教室)、ジョ・ヒューストンマルタの鷹)という2大名監督が脚本に参加しているということで、ストーリーも面白く、ロバート・シオドマク監督が無駄のないきびきびとした演出でひねった展開の話を効果的に盛り上げています。

のちにハリウッドを代表するスターのひとりとなったエヴァ・ガードナーもデビュー間もないころですが、エキゾチックな顔立ちで本性のつかめない悪女を好演。全体としてよくできた娯楽作品ですが、殺人者たちを主役に据えて裏社会で生きる者たちの夢と虚しさを描いたシーゲル作品(☆☆)の方が印象的でした。

「サスペンス映画コレクション~名優が演じる欲望の世界」に収録されています。

潜行者 ☆ Dark Passage (1947)

脱出」での共演後に結婚したハンフリー・ボガートローレン・バコールの共演第3作(2作目は「三つ数えろ」)。後年、「湖中の女」で全編を通して使用された"一人称形式"(カメラが登場人物の眼として扱われる)を部分的に採用しています。それがサスペンスを盛り上げているかどうかはともかくとして、面白い試みですし、ローレン・バコールをより美しく素敵に見せているのは間違いないように思います。

戦前・戦中から続くフィルム・ノワールには女性の犯罪者がよく登場しますが、悪女を魅力的に描かないと緊張感が盛り上がらないようで、本作はその例と言えそうです。が上述の通り、バコールが美しい(というより可愛らしい)うえにボギー以上に颯爽としてかっこいいので☆おまけです。

「ギャング映画コレクション~暗黒街の獣たち」に収録されていますが、これはボギーが主役だったために紛れ込んだためのようで、ギャング映画ではありません

以上、3つ☆はありませんでしたが、好きな俳優の未見の作品をようやく観られて大いに満足しています。それぞれの俳優についてのブログ記事を書いているので、よろしければご覧ください。