アラン・ラッドの優雅な身のこなし | 映画の楽しさ2300通り

映画の楽しさ2300通り

ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

ここ何回かスパイ映画のことを書いた関係で、戦中のスパイ活動を描いた秀作、「潜行決死隊」のことを調べたところ、主演のアラン・ラッドが「シェーン」以外ではほとんど評価されていない現状に唖然としました(もちろん日本では、という話です)。「シェーン」がMy Most Favorite Movieであり、ラッドのファンでもある身としては、彼の名誉のため一言申し上げたいと思ったわけです。

まずアラン・ラッドはアメリカでは「スター」です。「シェーン」を知らないのに彼は知っているというアメリカの友人もいます(そのこと自体も驚きでしたが)。ラッドが頭角を現したのはグレアム・グリーン原作の「拳銃貸します」。キャスティング時点では脇役だったようですがその存在感から一躍スターに。もちろん作品もいい出来でした。
前出の「決死隊」が評判よかったらしく、続編といえる「別動隊」にも出演。主題歌「モナ・リザ」がオスカーをとりましたが、いくらよくてもつまらない作品の主題歌が受賞できるはずもなく、実際サスペンスフルな秀作で、ラッドのシャープな動きも見所でした。

「シェーン」での好演が結果としてその後の役者人生に暗い影を投げてしまったことは残念でしたが、それこそまさに「スター」ゆえ。俳優として評価されなかったわけではなく、遺作となった「大いなる野望」で演じたネバダ・スミス役の好演により、ネバダ・スミスを主役とした作品が企画されました。ラッドの急逝によりマックイーン主演で映画化されましたが、ラッドであれば哀しみを背負った深みのあるスミスになったことでしょう。

けして長くはない人生において出演作の多さも人気を裏付けています。ソフィア・ローレンと共演した「島の女」でも野性味あふれるローレンに対し、知的な優しさと強さが素敵でした。
その持ち味は甘いマスクと優雅で機敏な身のこなしです。大きな人ではなかったので、こちらの大スター、雷蔵を思わせる雰囲気もありました。「スター」であることの重責から逃れたあとにまた活躍してほしかったと心から思います。