心と心はこうかんこ
アリス高崎
ブログ担当Nです
「私には何かを育てるということができないんです…」
少しうなだれた顔のその奥から小さな声が聞こえてきました…
どうしてこんな言葉が出てきたかって言うと、
アリスのメンバーのみんなの中には、
やっぱりワンチャンや猫ちゃんを飼っている人たちがたくさんいます。
金魚やハムスターを飼っている人もいます。
そうした人たちがそれぞれに自分の育てているペットたちのことを
いろいろペチャクチャおしゃべりしていたわけです、
そうしましたら
その話を隣で聞いていた1人の女性が
ポツリと小さな声でつぶやきました。
「私は……何かを育てることができる人のことを羨ましく思って…
…尊敬しちゃうんです…」
小さな声でそんなふうに伝えてきてくれました
「まぁ、確かに何かを育てていくっていうことは大変なことだもんね」
小さな声に僕の同感の想いを寄せました。
「私には…犬も猫も育てることできないし…
植物を買ってきても何故かすぐに枯らしてしまうんです…」
また小さな声でそう伝えてきてくれました。
それでその後に冒頭の言葉が出てきたわけです
「私には何かを育てるということができないんです…」
床のほうに視線を向けながら小さな声でそう伝えてきてくれました…
「だから…何かを育てられる人を見ると羨ましくて尊敬しちゃうんです…」
と言って、
周りにいる、ワンチャンや猫ちゃんや金魚さんやハムスターさんを大切に育てている仲間たちに尊敬の想いを伝えてくれました。
その日の1日の終わりの終礼の時刻になりました。
みんなに
「お疲れ様でしたー」
の挨拶をした後、
みんなに向かって話す中で、僕は先程の女性に声をかけました。
「そういえばさっき、
『私は何かを育てられる人を尊敬する』
って伝えてきてくれたね、」
「あ、はい」
「それでそれは、
『私には何かを育てることができないから』
って言ってたね、」
「あ、はい」
昼間、みんなもその話を聞いていたので、
みんなの前でもう一度その話題を出しました。
「実はね…」
みんなの前で、僕はその女性に向かって、
なにか秘密のことでも教えるように、少し小さめな声で伝えました、
「実はね…
『私には何かを育てることができない』
って言ってたけど…
実はね…
〇〇さんは、今、大切なものを育てられてるんだよ。」
僕が秘密の内緒のことをこっそり伝えるように意味深に伝えると
「えっ? 何をですか?」
少し不思議そうな感じに尋ねてくれました
「実はね、
〇〇さんはね、
ここにいるアリスのみんなの心の中に
『やさしさ』
を育ててきてくれたんだよ」
と、僕は大切なことを伝えました。
「えっ、いえ…
…とんでもない……
私は何もしてないです…
そんなこと何もできてないです…」
女性は椅子に座りながらも少し後ずさりするような感じで、
手のひらをヒラヒラと左右に振り、
とんでもないといった感じでそれを否定しました。
「ところが実はそうなんだよ。
それは本当のことなんだよ。
でもとてもそんな風には自分では思えないでしょ、」
「はい、そんな風には思えないです」
「じゃぁ、〈証拠〉を伝えてあげるね、」
「えっ?…はぁ…」
なんだろう?…と不思議そうな表情をしました
そして僕は、その女性が
『みんなの心の中にやさしさを育ててくれていること』
の〈証拠〉を伝えました。
「この何年間の間で、ここにいるアリスのみんなから、
『私の心の中にやさしさを育ててもらったなぁ、』
って実感があるでしょ、」
「あ、それはあります!」
「でしょ、
だからそれが〈証拠〉なの。
どうしてそれが証拠だか、
わかる?」
「…いえ…わかりません…」
「じゃぁ大切なことを伝えるね、」
僕は秘密のことを伝えるようにして、
まるでささやくように少しひそめた声で大切なことを伝えました。
「 実はね…
心はいつも【こうかんこ】なんだよ、
だからね、自分の心の中に、
『みんなからやさしさを育ててもらったな』
って実感がある時は、
心と心は『交換こ』だから、
その時は、自分も誰かの心の中のやさしさ育ててあげているんだよ。」
僕が秘密の大切なことを女性に伝えると、
「そうだよ、やさしさいっぱい育ててもらってるよ!」
と、他の仲間たちから、
いくつもの声が伝えられてきました。
「あ、ありがとうございます、」
女性は思わず素直にその言葉を受け入れてお礼を伝えていました。
そして、別の仲間がこんなことも伝えてきてくれました、
「そうだよ、植物に水をあげるみたいにさ、
なんてことのない声かけ、
いろんな人にしてくれてるでしょ、
そういうのが大切なんだよ。
ちょっと誰かに声をかけてもらっただけで、
なんだか1日心があったかくなるってことあるからね、
時々ちょっとずつ、植物に水をあげるみたいに
声かけ合っているものね、」
そんなふうに言ってきてくれました。
そして僕は、しみじみと実感を持ってその言葉に応えました、
「あー、植物に水をあげるように時々声を掛け合っているって、
すごく素敵な表現だねぇ!
確かにそんなふうにして、それぞれがそれぞれの心の中に、
長い時間をかけて、やさしさを育て合っているよね、」
そして、僕はその女性1人にではなく、みんなに向かって伝えました、
「『みんなの心の中のやさしさを育ててる』
って、
ここにいるみんなに、
それは言えることだよ。」
僕はその秘密な大切なことを、その女性1人のことではなく、
みんなのそれぞれの、それぞれの心のこととして、
それぞれが、それぞれに育て合えている大切なこととして、
みんなの心に向かって伝えました。
みんなの心という言葉の中には
もちろん、僕の心も入っています。
そうしてその日の1日が終わりました。
帰り間際、下駄箱のところで、
先程の女性が、一度帰りかけた足を止めて、
振り返って僕に向かって伝えてきてくれました、
「……さっきNさんが
『心はいつも交かんこだよ』
と言っていたのを聞いたら、
私…
『 ほんとにそうだな 』
って思って…
…う〜んと…え〜っと…
…なんていうか…
…
『 あー、ほんとにそうなんだなぁ 』
って…思いました。」
背中にナップザックの荷物を背負いながら、
外履きの靴を履いた足で、
透き通るような眼差しを向けて、
そんなふうに伝えてきてくれました。
実はその日は彼女の誕生日でした。