お父さん、私はしっかりやってます。 -36ページ目
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娘あっこから父ひろしへの手紙 9通目

お父さんへ


「今田竜二のPGAツアー優勝」

このニュースで、いい気分になって、

朝から親子丼を食べていたね。


よかった、よかった。

お母さんに聞いたら、お昼もしっかり食べられたらしいね。


夜は、さすがに苦しかったってことだけど。


その調子。体力回復だよ。


最近ね、ひょっとしたらミラクルで

ガンの進行が止まるかもしれないって

思うことがあるの。


私は諦めちゃってたけど、

諦めちゃいけないんじゃないかって。


それは、抗癌剤をするってことじゃなくて、

イメージすること。

ガン細胞が、活動を止めて死ぬの。


今胃の半分はガン細胞に覆われているけど、

止まれば、正常な細胞が頑張って

胃はちゃんと動いてくれるんだもん。


イメージだよ。スポーツ選手がフォームをイメージするように。


今日一日頑張ってくれて、ありがとう。




娘あっこから父ひろしへの手紙 8通目

お父さんへ


今日は、一日外に出ませんでしたね。

私が仕事に行っている平日も、そんなふうなんでしょう。


出かけた方がいいと思うよ。

私、今日は家仕事と約束でダメだったけど、

今度から週末は、お茶に誘うから。


そして、今日はお母さんがヒステリーを起こして

イヤな気分にさせちゃったね。


お母さん、体調も良くないし、いつも緊張していて

ストレスフルなんだろうね。


でも、そこを我慢しなきゃ。

だって、お父さんが一番辛いんだからさ。


苦労してこなかったから、仕方ないよ。

まあ、頑張ってくれてると思う。


私も、気遣うようにするから安心して。


今日も、生きててくれてありがと。




娘あっこから父ひろしへの手紙 7通目

お父さんへ


爽やかなお天気でしたね。


お昼は喫茶店でランチ。

たくさん食べられたので、内心ビックリしていました。

その後、少しダルそうだったけど、しばらくしたら落ち着いていたね。


それから知り合いをたずねて、夕方まで、

美山の田舎へ連れていってもらったり、

気分転換になったみたいで、よかったです。


三光寺
      三光寺にて遠くを眺める父


やっぱり、外へ出よう。

それがいいよ。

どうしてもキツかったら帰ればいいんだし。


人と会って、話して、エネルギーを貰わないと。


私も緑と太陽の光の中に、大勢でいて

とても気持ちが落ち着きました。


これから、どんどん出かけようね。






娘あっこから父ひろしへの手紙 6通目

お父さんへ


仕事から帰ったら、今日はベッドで横になっていないで

テレビの部屋で野球を見ていたので、

ちょっと体がラクになっているのかなと思いました。

抗ガン剤が抜けてきているからね。


明日は、久しぶりに仕事が休みなので、

昼間は出かけよう。


今日も湯たんぽ入れたから、暖まって寝てね。


帰り道に背の高いバラを見つけました。

つぼみもあって、一番キレイなときでした。



今日も、生きててくれてありがとう。

娘あっこから父ひろしへの手紙 5通目

お父さんへ


今日は病院の日でしたね。

私は、仕事で付き添えなかったけど、先生にお手紙を書いておきました。

先生には、もう抗がん剤はしたくないこと、できるだけ家で過ごしたいことが

伝わったはずです。


本当は、加納の小笠原医院がホスピスに力を入れているらしいから

希望だったんだけど、小笠原先生が名古屋大学だから

却下されたのかも。


岐阜市民病院は岐阜大学だからね。

関係している施設になっちゃうんだろうね。

派閥って、ホント厄介。


でも、いざとなったら紹介なしでかかればいい。

選ぶのは患者なんだから。

イヤなのに、我慢することはないし、

大事なのは、医者の慣習やプライドじゃなくて、

お父さんの体と気持ちだから。


今日、7時に会社を出たら、空がまだ明るくて

日が長くなったなったことに、ちょっぴりウキウキしました。



今日生きててくれて、ありがとう。




娘あっこから父ひろしへの手紙 4通目



お父さんへ


雨が上がった昼間、

もう夏の日差しが注いでいました。

初夏の花、紫陽花もこんな感じです。


紫陽花


今日は、おにぎりを2個食べられたってお母さんから聞きました。

うん、いい感じ。

これで、体力を戻して、イイ細胞で腫瘍の増殖を止めちゃおうよ。


湯たんぽを入れたから、暖まって寝てね。

今日生きててくれて、ありがとう。


娘あっこから父ひろしへの手紙 3通目

お父さんへ


今日は、私がとても辛い話を切り出したね。

お父さんが最期をどう迎えたいか確かめなきゃいけなかったから。


それによって、ホスピスや往診の出来る先生を

紹介してもらわなくちゃいけないから、

避けて通れない話だったの。


「お父さんは、これからどうしたい?もし調子が悪くなったら、

病院の方が安心?それともなるべく家にいたい?」って聞いたら、

「なるべく迷惑かからない方法でいいよ。往診ってお金かかるんじゃないか?」って。


お金の心配はしなくていいから。

お父さんは、今のところは家がいいと思っているんだね。

じゃあ、ホスピスと往診の先生を探すよ。


お父さん、私は全然迷惑なんて思ってないからさ。

あれが食べたい、どこに行きたい、ここが痛いって、

今まで一切ワガママなんか言わなかったんだから

こんな時くらい言えばいいのに。


お父さんはいつも自分を後回しにするね。

それが余計悲しいよ。


栄養が取れないのと貧血で体温が落ちているのかなあ、

寒いって言ってたね。足に触ったら冷たかった。

毎日湯たんぽ入れるから、暖かくして寝てね。


今日も、生きていてくれてありがとう。










娘あっこから父ひろしへの手紙 2通目

お父さんへ


今日の調子はどうでしたか?

私が朝起きて台所に行ったら、

もうパジャマを着替えて、ご飯を食べようとしていたので、

「気分が変わったんだな」って分かりました。

今までは、少なくとも私が出かけるまでは、パジャマ姿だったもんね。


朝ごはんも、大根おろしとかつおぶしで、1/2膳は食べていたので

ホッとしました。

食べた後のゲップや支えている感じが苦しそうだと見ていました。


腫瘍でカチカチになっている胃だけど、入ってきた食べ物を

残りの力をふりしぼって、消化しようとしているんだろうね。

辛いけど、胃が動いてくれるうちは、体力を保つために食べようね。


お昼には、カレーライスを食べたことと黒いウンチが出たこと

お母さんから聞きました。

胃カメラを入れた時に傷つけて出血したからだと思います。

続いたり、吐血にならなきゃいいなって心配です。



私は朝の駅で、昨日が長良川の鵜飼開きだったことを思い出しました。

私もお父さんも、昨日の夜、花火の音聞いたんだったね。

私、鵜飼開きと一緒に手紙を書き始めたよ。

だから鵜飼が終わるまでは、生きて欲しい。

駅にあった
今日生きててくれて、ありがとうね。






娘あっこから父ひろしへの手紙 1通目

お父さんへ


昨日は、とても辛かったね。

「次の抗がん剤の効果は期待できません。副作用も強いです。緩和医療も選択肢にしてください」

と告げられたから。

途中で、気分が悪くなって空っぽの胃から水を吐いてたね。

その苦痛を取り除いてあげられなくて、ゴメン。


お父さんが胃の壁を削りながら稼いだお金で飲み食いして、

こんな大きな体に育ててもらったのに、全然役に立たないよ。


でもね、今日決心したの。

お父さんが苦しんでいる姿を真正面から受け止めて、一緒に過ごすって。

マリアがイエスの最期をしっかりと見ていたように、私も逃げない。

きっと、何回も泣くと思うけど、それでも一緒にいる。


お父さん、今、孤独でしょ。怖いでしょ。

本当はずっと手を握っててあげたいんだけど、照れくさくてできないの。


でも、今日は一緒にご飯を食べられてよかった。

話も出来てよかった。

今までつながなかった手、つなごうね。

今日生きていてくれて、ありがとう。







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