娘あっこから父ひろしへの手紙 1通目
お父さんへ
昨日は、とても辛かったね。
「次の抗がん剤の効果は期待できません。副作用も強いです。緩和医療も選択肢にしてください」
と告げられたから。
途中で、気分が悪くなって空っぽの胃から水を吐いてたね。
その苦痛を取り除いてあげられなくて、ゴメン。
お父さんが胃の壁を削りながら稼いだお金で飲み食いして、
こんな大きな体に育ててもらったのに、全然役に立たないよ。
でもね、今日決心したの。
お父さんが苦しんでいる姿を真正面から受け止めて、一緒に過ごすって。
マリアがイエスの最期をしっかりと見ていたように、私も逃げない。
きっと、何回も泣くと思うけど、それでも一緒にいる。
お父さん、今、孤独でしょ。怖いでしょ。
本当はずっと手を握っててあげたいんだけど、照れくさくてできないの。
でも、今日は一緒にご飯を食べられてよかった。
話も出来てよかった。
今までつながなかった手、つなごうね。
今日生きていてくれて、ありがとう。