学校で泣きじゃくり
立てなくなって 帰ってきたアサリ。
何が何だかわからない。
次の日も、次の日も
学校へ行けないという。
いや、
行こうという気持ちはあるけど
どうにも身体が言うことをきかないらしい。
頑張って準備して家をでても
足がすくんで進めない
涙がでてくるらしいのです。
とりあえず病院へ連れていくも
何も異常はない。
当時パソコンを使い始めた妹に
色々と調べてもらい
精神科へ行ってみることに。
診断は、ウツ。
そして、そこからは
西に有名な治療院があると聞いては
高速を走って通い
東に有名な心療内科があると聞けば
高速を走って通う日々。
“頑張れ”という言葉は
言ってはイケナイと聞き
わたし達は腫れものを触るように
彼女に接していた。
この時またも受験生。
日々見ていると、
学校へ行けない以外は、
いたって普通で
（本当にこの娘はウツなのだろうか？）
という疑念も湧いてきた。
ウツという病気について
本を読んでも、
彼女を見てても
その心情は、理解ができない。
だから私は、
アサリが話す時は、ただ聴き
アサリの行動に口を出さず
彼女を信じることにした。
この娘は必ず抜け出してくる、と。
そして、
どうしても伝えたかったことを
アサリに伝えたのです。
「あなたは今、心の病気かもしれない、
でも、あなたは病人じゃないんだよ。」
そう、この言葉は
オオマが入院中に私に言った言葉だった。
「母さんオレ、
病気だけど病人じゃないんだ。
オレは病人にはならないよ」
この時のオオマは、
自分の感覚を伝えただけだろうし
私も、感覚的には
なんとなくわかる気がしたけど
言葉で説明できることじゃなかった。
この時もまだ、
理解できてなかったけど
どうしてもアサリに伝えたかったのです。
あなたは病人じゃない、って。
そして、
その言葉の意味が理解できたのは、
もっとずっと先のことでした。
時が過ぎ、
周りは受験一色になる中
アサリも、
気持ちが落ち着かない様子を見せ始めた。
オオマ同様、
もはや自分がどこまでわかっているのか
出来ないところはどこかが分からない
という不安。
行ける学校があるのか
そもそも学校に行けるのか
いや、行きたいのか？
そんな葛藤が出てきていたみたい。
無理に受験しても
無理に進学しても
行けなければどうしようもない。
そこで私はアサリに言った。
高校に行かなければいけない決まりはないし、
高校を出なければいけない決まりはないんだよ、
と。
その言葉が、
アサリの心の葛藤を緩めたようで
少しづつだけど、
自分の思いを描き始め、
外へ出かけることが出来る日もあった。
そして卒業間近、
集めた資料をもって
私に伝えてきたんです。
自分がやりたいことを。
アサリの選んだことに対し
何も言わず応援しよう、と
決めていた私だけど
一瞬ひるんだ(笑)
その歳での前例がなかったから。
それでも、アサリは
もし、このまま
今の状態が続いたとしても
絶対に諦めないから、と
私に言った。
そこに、
彼女の覚悟が見えた気がしたから
今さらジタバタしないで
信じて任せようと思った。
頑張らなくていいから
いつでもやり直していいから
今の気持ちが変わってもいいから
だから、気楽にいこうね、って。
オオマが病気になってからの約４年間
人は皆、
支え合って生きていること
人は皆、
優しいということ
誰もが、
愛されているということ
世の中、
愛に溢れているということ
世の中まだまだ、
捨てたもんじゃないということ
相手を信じるということ
自分を信じるということ
そして、この時はまだ
薄ぼんやりとしか
感じられていないけど
在り方ということについて
学んでいたように思う。
次回、
１０年目の冬へ続く
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