『ラストマイル』
2024/9/9 ユナイテッド・シネマ テラスモール松戸 3スクリーン E-14
『もしも徳川家康が総理大臣になったら』を観た時に、
本作『ラストマイル』の予告編でおおかたの筋書きは読み取れて、
2024/06/13
「なるほど面白そうだ」とは見込んじゃいたが、
それにしてもまさかの、
2024/08/30
<ラストマイル>公開17日で興収30億円突破 213万人動員の大ヒット
9/9(月) 19:03
ノンストップサスペンス映画「ラストマイル」が8月23日に公開され、17日間で興行収入が30億円を突破したことが分かった。観客動員数は213万人を突破するなど大ヒットしている。
ってことは『ラストマイル』は、誰にも映画館で初お目見えの完全新作ではなく、見込み客には刷り込みとしての前提作品があったってことね。
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塚原あゆ子監督がメガホンをとり、野木亜紀子さんが脚本を担当、ドラマ「アンナチュラル」(2018年)と「MIU404」(2020年)の世界線と交差する“シェアードユニバース”の〜
我が家にはテレビ受像機がないため、ドラマ「アンナチュラル」も「MIU404」(ミュウ ヨンマルヨン)もさっぱり知りませんでした。
ですが、その両番組をまったく未見でも「えっ、この人も出るの?」と超豪華出演陣に驚きこそすれ、本筋を見失うことなく最後まで超満足で見通すことができました。
2024/08/23
「日本映画もなかなかどうして捨てたもんじゃないな」と驚き感心。
下敷きとなったテレビ番組「アンナチュナル」も「MIU404」も、同じ製作陣によるからには相当にまともだったんだろうと推察できる。
一時期名を馳せたクリエイターの末路でありがちな、
自由に映画が撮れて公開できる立場になるやたちまち?、
体制に迎合したりおもねる、いかがわしい業界人に堕ちるヤツばっかりだろうと見下していたが、
「アンナチュナル」「MIU404」『ラストマイル』の製作陣、すなわち
- プロデューサーの新井順子
- 演出・監督の塚原あゆ子(『コーヒーが冷めないうちに』・2018『わたしの幸せな結婚』・2023)
- 脚本の野木亜紀子
が、全員女性という気概もあるから(逆偏見?)か、さすがの充実作だらけのつるべ打ちなので、
「この人の作品はこりごり。今後はもう二度とみない!」
のまたしてもの逆説で、
「この人の作品ならば、人間信用度から見て絶対に損はない」と断言できる。
名前が売れてくると、厄介な社会問題には往々にして「避けておいた方が無難」と尻込みしがちなのを、
「いや、それをやるからこそ私の存在価値と意義がある」と頑張ってくれるから頼もしい。
『ラストマイル』で実例を挙げれば、本筋はネット通販会社が流通機構の肥大化で労働者を圧迫する仕組みがもたらす弊害を、一連の犯罪事件で抉(えぐ)り出すようになっていて、現代に世に問う社会的意義と価値がありまくりで秀逸なので感心至極なのと同時に、「このテーマって、本来は『ノマドランド』に期待してたのにはぐらかされたやつだよな」と思い出した。
『ノマドランド』(2020・第93回アカデミー作品賞)
がAmazon勤務の女性を描き、それがアカデミー作品賞を受賞したことから、
この記事(なぜか今頃2024-7『バードマン』・2024年07月11日) にいただいたコメント。
hitac
↓
ジャンルに偏りがある映画鑑賞が続くと、
たしかに判断基準やバランス感覚に狂いが生じ、
ヘンテコで妙ちくりんな嗜好に陥りかねないので、
平衡感覚を保つために、何かの基準を設けることは必要かも。
別に反論のつもりはありませんがしかし、
近年のアカデミー賞受賞はあまり指標にならない気が…
↓
猫
かつての『ノマドランド』に期待したのにそこには微塵もなかったものが、
『ラストマイル』にはもれなく盛り込まれていた件について。
これは原作の条件が異なることと、
『ノマドランド』はジェシカ・ブルーダーが2017年に発表したノンフィクション『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』を原作としている。
撮影地に『ノマドランド』は実際のAmazon倉庫(物流基地)を使用してるが、
『ラストマイル』では架空の会社を設置して、
映画のセットや小道具をわざわざ作り起こして(もしくは別施設を借受)いるから。
ロケ地としては、機械工具卸売商社トラスコ中山が同社の物流センター「プラネット埼玉」(埼玉県幸手市)、「プラネット北関東」(群馬県伊勢崎市)の2か所を提供、物流機器やトラックなどが映画内で使用されている。また同社の設備などで使われているブランドカラーのオレンジとブラックは、映画のイメージカラーとしてそのまま起用された。物流センターの撮影は、8か所ほどの施設やセットを組み合わせて行われており、その一部であるGメッセ群馬、高崎アリーナでは、300名以上のエキストラが参加して撮影された。監督の塚原らによれば、物流センターロケ地は一部のシーンがネックとなり、撮影を許可してくれた企業はトラスコ中山のみであった。
東京都内設定の商業施設が登場するシーンは、BRANCH仙台WESTで2023年1月に撮影された。
ロケの許可を得られた企業団体を実名で劇中に登場させたら、その企業団体にマイナスイメージを与える作品は作れない。
映画ライターを長年勤めたプロ集団が紡ぐ某YouTube番組で、
さすがに専門知識の集合体らしい深い番組づくりには成功しながら、
時に意外なアラが目立ってしまい、「えっ、そんな簡単なことにも気がつかないの?」とガッカリしてしまうこともある。
たとえば『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』の特集回では、
「実際にアポロ宇宙船の発射施設でロケした」に決まってるのに、
「そうなの?」「そうでしょうね」とあやふやで驚いた。
実際の施設を借り受けて撮影できたからこそ、
本当の月着陸中継はなく、テレビスタジオのフェイク映像と差し替えられたという
今では証言者も多くいる「周知の事実」でさえが、
NASAのメンツを保つために潰され、歪曲されている。
だからAmazon等のネット販売・物流会社の闇を暴き、残酷物語をよりリアルに伝えるには、『ノマドランド』のやり方じゃダメだ、こうやらなくちゃのお手本が『ラストマイル』なわけである。
私が観た映画の中では、どうにも中途半端で空回りだった『TANG タング』(2022)
以来ひさしぶりの、満島ひかりを主役に据える製作陣3人組?の狙いに見事に応え、
またどことなく見覚えのある顔ではあっても、
個人的には『映画 ひみつのアッコちゃん』(2012)
以来12年ぶりのため、
しばらく誰だかわからなかったイケメン岡田将生も適役、超好演。
ところでテレビ局主導の映画と言えば、
冒頭に局名が明示されるので、
「ああ、そうなのね」とヘンなあきらめムードが漂ってきたが、
今回の『ラストマイル』が「今回はちょっと違うかも」と予感させたのは、
TBSスパークルなる新社名が登場したこと。
今回の大ヒットで、テレビドラマからの派生作品や楽屋落ち的な共作姿勢がどの局からも強まるのではとの見方もあるが、それはどうか。
TBSの映画次回作『グランメゾン・パリ』だって
2024/08/22
テレビドラマ『グランメゾン★東京』の後日談らしいから、
とても『ラストマイル』のような革新的作品ではなさそうだし、
(一応、TBSスパークル扱いらしいが)
キムタクとか鈴木京香とかの主演の顔ぶれだけでウンザリ=圧倒的な「誰が観るか!な映画」候補でしかない。
一方のフジテレビ。
『踊る』の久々(19年ぶりの)続編、『室井慎次2部作』とか、
2024/06/25
もはや「出がらし感」「窮余の策感」しかないし、
おまけにフジはこの期に及んで
三谷幸喜なんかとつるんで自滅する「同じ過ちを無限回繰り返す」負のスパイラルに陥っている末期的症状テレビ局だから、
テレビドラマからのスピンオフ映画に『ストロベリーナイト』なんかもあったことだし、
とても『ラストマイル』級の成功作に登り詰めるとは思えない。
だけどさあ、TBS(東京放送)の映画だって、安直な駄作・愚作の連発でシネコン埋めに濫用されてた時期が続いたし、
『そのときは彼によろしく』(2007)
テレビでコツコツと積み上げた資産を、劇場版最終作でぶち壊す一時期はやったやり方等々、
『ROOKIES -卒業-』(2009)
とにかく成功企画がまれで、テレビドラマの後付け劇場版なんてどうせ…という先入観を覆したのは、
テレ朝の『相棒』劇場版の2本目『相棒-劇場版II-警視庁占拠! 特命係の一番長い夜』(2010)ぐらいだった。
そんなこんなで、話があちこちそれまくったので、いい加減にここまでにしておきます。
『ラストマイル』はぜひ映画館でご覧ください!
アカデミー賞ノミネートは、「監督」とか「役者」と同レベルくらいには参考にしますね
ノミネートされてなければ、恐らく見に行かなかった映画で良かったのはここ数年だと、
『スリー・ビルボード』(2017・第90回アカデミー賞では作品賞、脚本賞、作曲賞、編集賞など6部門で計7つ/助演男優賞がWのノミネートを受け、フランシス・マクドーマンドが主演女優賞を、サム・ロックウェルが助演男優賞を受賞した)と