なぜか今頃(11)『スリー・ビルボード』(2017) | アディクトリポート

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今回は、ここ(好きな人にはたまらない!『パンク侍、斬られて候』)で少しだけ触れた、この映画。

 

スリー・ビルボード Three Billboards Outside Ebbing, Missouri

2018/6/15 吹替版 ネットテレビ視聴

 

タレントの筧美和子(かけい・みわこ)の、

映画を見抜く目には、かなりのものがある。

滝沢カレン(左)と筧美和子

 

これは『湯を沸かすほどの熱い愛』の時にも書いたが、

 

水曜日の『アッパレやってまーす!』で、

この4月に編成替えで、

彼女が火曜日に移動する前に、

また、新たな映画のタイトルを口にした。

 

それが『スリー・ビルボード』

翌週かにケンドーコバヤシも観て、

強く同意していた。

 

現在、我が家はテレビでau経由のビデオレンタル視聴はできるのだが、

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)で未視聴の

『アントマン』(2015)でも観ようとしたところ、

作品の取り扱いがなかった。

 

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新作『アントマン&ワスプ』(8/31日本公開)の頃に、

また出て来るのだろう。

 

いつまでもあると思って油断してはいけない。

 

では取り扱い作品のどれを観ようか…

 

『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)は、

アカデミー賞を獲りはしたが、

用心しているので、まだ観ていない。

 

私は(念のため2回観てもやはり)感心しなかった『パンズ・ラビリンス』(2006)以来、

 

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ギレルモ・デル・トロ監督信用しておらず、

それもあって『パシフィック・リム』(2013)も未見。

 

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テレビ放映(2016/3/6・2018/5/11)すら敬遠した。

 

同じメキシコ出身の監督では、

『21グラム』(2003)こそ、まあまあと感じたものの、

 

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『バベル』(2006)の徹頭徹尾のデタラメぶりに怒り心頭、

公開当時、ミクシィで、

「劇中人物の家族への想いが胸に迫る」とか感想を述べた人に食ってかかったくらいである。

劇中で聴覚障害者もバカにされてたしな。

 

『バベル』のデタラメ監督の名前は、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

彼は『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014・未見)で

アカデミー賞を獲ったが、

とにかく『バベル』を観るかぎり信用できず

『バードマン』も、本当に内容が理解されての受賞なのか、

アカデミー会員は雰囲気にだまされたんじゃないかと疑っている。

 

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(字幕版)

 

やはりメキシコ出身でも、

『トゥモロー・ワールド』(2006)

さんせい

 

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ゼロ・グラビティ』(2013)の
よけ

 

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大いに認めている。

 

同じように、

私の20世紀を絶望と失意のドン底で終わらせ、

年明けの2001年に当時勤務していた高校の廊下で、

1人の女子生徒(北習志野の神戸らんぷ亭でバイトしていたセキネさん)に呼び止められ、

「なんなんですか、あの映画?」と、

なぜか作り手でもないのに責められた、

ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)

の、ラース・フォン・トリアーも、まったく信用していない。

 

万引き家族』は大ヒットで、

カンヌ映画祭でパルムドール賞を獲った効果も大きいみたいだが、

『ダンサー〜』だって同賞受賞だから、

パルムドール受賞くらいじゃ、

絶対基準にはなりませんよ。

 

ニコール・キッドマンが出演で、

『ドッグヴィル』(2003)に少し食指が動きかけたが、

監督がトリアーと知って、たちまち撤退。

 

トリアーは何度も散発的なうつ病に悩まされており、

仕事や社会関係に支障をきたしていると語っている。

2007年の後半から2009年の始めにかけてのうつ病による休業は大きく報道された。

 

うつ病は本人に責任はないけど、

なにしろ希望的な展望を抱けないため、

作品づくりの職業には不適任だと思う。

 

というより、世の中には様々な職業があるのに、

よりによって一番不向きな仕事に就かなくたって、

とさえ思う。

 

なにしろ受け手に、

確実に迷惑がかかるからね。

 

はてさて、

私には、実にツルモトルーム版『スターログ』誌(1978〜1987)の

連載「帝国通信」の投稿で名前だけは知っていた人が、

ここ5年?ほどでフェイスブックでつながって、

その人は今では映画ブログを続けているが、

さすがに年季の入った映画通なので、

彼の映画評はハズレがない。

 

そしたらその人が、

『シェイプ・オブ・ウォーター』鑑賞記を書き、

そこで

『スリー・ビルボード』の方が断然よかった

と書きそえていたので、

「やっぱり」と思って『スリー』の方を見ることにしたわけ。

 

しかして見ればなるほど、

これはタイヘンな傑作でした。

 

最近はどうやら、

『シン・ゴジラ』(2016)や
じえいたい

『パンク侍、斬られて候』(2018)などで、

私の映画評は世評からズレてる感じだが、

『スリー・ビルボード』をみて、

「これこれ、こうでなくっちゃ!」

という、私の名作映画評価基準に見事にハマッたので、

今回はそこら辺をまとめてみよう。

 

 

敵役がふてぶてしい

 

面白い映画とつまらない映画の違いは、

ストーリーに起伏があるかどうかで、

起伏があって話がスンナリ進まないのは、

妨害する敵役がいるからこそである。

 

『スリー・ビルボード』で、

主人公のミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マクドーマンド)は、

自分の境遇からすれば、

当然すぎる要求を阻まれ続け、

やむなくもっと要求を続けることが、

さらに立ちはだかる障害を増やす結果に。

 

「ハリウッド脚本術―プロになるためのワークショップ101」

という本によれば、

 

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全ての映画は「問題解決の物語」だが、

実社会の経験がない“あまちゃん”は、

スイスイと事が運び、

妨害者やジャマモノが出て来ない、

「いい人だらけ」「同意者、賛同者だらけ」のストーリーを描き(書き)がちである。

 

一方ですぐれた映画は、

敵役や悪役が異彩を放っており、

その存在は、つくづく憎らしげで、

ふてぶてしい。

 

『スリー・ビルボード』の妨害者の面々、

ウィロビー署長(ウディ・ハレルソン)、

ディクソン巡査(サム・ロックウェル)

たちが、まさにそれ。
 
そもそも、主演のフランシス・マクドーマンドにしてからが、
映画スターやセレブの顔つきはどこにもなく、
いかにも生活にくたびれた風貌で、
役者としての印象は強烈。
 
たしかこの人、シャーリーズ・セロンの、

スタンドアップ』(North Country 2005)に出てたよな、

と思ったら、やっぱりだった。

ウディ・ハレルソンもちゃっかり?出てるやんか!

 

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でもって、敵役、悪役はただ憎たらしい、

倒すべき障壁=物体ではなく、

あくまでも血の通った人間なので、

(敵役としては冷血漢に映っても)

「その後」が描かれるところが大事。

 

『スリー・ビルボード』にはしっかりとそれがあるし、

6月19日(火)2:09~3:59(月曜深夜)に日テレでたまたま観た、

 

映画天国LGBT映画祭『チョコレートドーナツ』(2012)

でも、

いかにも主人公に立ちはだかる憎々しげなカタキ役が次々に現れ、

「よくもこれだけ腹立たしい面々を揃えたよな」

と感心はしつつも、ままならぬ展開にイライラ。

 

一応最後には「その後」もひっそりと添えられていた。

 

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感動はオドロキだ

 

もう一つ、映画の成功作には、感動や感情のゆさぶりが必ずある。

そしてその感動の源は、つきつめてみれば驚きだ。

 

驚きを誘うのは意外性。

「どうせこうなるんだろ」と先読みできるパターン化や予定調和がまるでなく、

まったく予測不能なドラマ展開が続けば、たちまち高く評価する。

 

そういう映画は、

「この先どうなるんだろう」と興味関心が持続するから、

アクビも出ないし眠くならない。

 

キャラの造詣(ぞうけい)が深く、掘り下げが多面的なのもポイントで、

『スリー・ビルボード』では、

必ずしも「ふてぶてしい」のは敵の側に限らない、

というのもあった。

 

主役のミルドレッドは、

敵よりもしたたかでふてぶてしく、

おとなしく清廉潔白なわけでもなくて、

彼女なりの非もあれば罪もあり、

時に敵よりも凶悪な攻撃性を示し、

反対に敵側の方が意外にもろかったり、人間的な弱さをかいまみせる。

 

意外性と言えば、

私の映画の評価判断基準には、

鑑賞中に思わずこちらがポカンと口を開けたら、

まんまとやられました

ということで、

相手の功績とこちらの負け?をいさぎよく認めることにしている。

 

思わず口が開いて、

「参りました」と降参した鑑賞最新作は、

月22日(金)21:00~22:54の、

金曜ロードSHOW!「ファインディング・ドリー」

だったけど、

あちらはそれが1回だけ

【ネタバレ・白抜き文字】

ドリーの親が貝殻を並べているところ

だったのに対し、

『スリー・ビルボード』鑑賞中は、

都合3回も口をポカンと開けてしまった。

【ネタバレ・白抜き文字】

1.ウィロビー署長の決断と選択

2.ディクソン巡査が広告会社に殴り込むワンカット撮影

 

特に映画の終わり方にはビックリしたね。

こんな鮮やか?(唐突?)な幕切れは、今まで一度も味わったことがない。

【ネタバレ・白抜き文字】

3.主人公の告白と、ディクソンがそれを受け入れて心が通じ合うところで、

その先はあえて描かずに幕切れ。

めそめそタッチでなく、

思い出し笑いができるぐらいに、

笑いの要素がちりばめられてるのもよかったよ!

 

というわけで、

筧美和子

ケンドーコバヤシ

スターログ誌の旧常連

——に続き、

私も『スリー・ビルボード』を、

皆様に強くオススメします!