PEUGEOT 206 WRC 2000年WRC参戦記録①
【モンテカルロ】1月20日~1月22日
9:デルクール 206 NAJ 75 SS6前 リタイア
10:パニッツィ 206 MWL 75 SS6前 リタイア
17:グロンホルム 206 MWK 75 SS6前 リタイア
9:デルクール 206 NAJ 75 SS6前 リタイア
10:パニッツィ 206 MWL 75 SS6前 リタイア
17:グロンホルム 206 MWK 75 SS6前 リタイア
ワークスエントリーはデルクールとパニッツィの2台。フロントが全車アクティブ化されたため、センターアクティブとリヤの機械式デフもセッティングが変更された。ブレーキディスクはフロントの355mmに対してリヤが345mmと常識外れに大きいものが装着されている。
パニッツィがスバルと三菱のエースと一歩も引かぬつばぜり合いを演じ、デルクールは体調不良ながらも首位戦線にとどまったLeg1。一方、ワークス外エントリーとなっているグロンホルムは、SS2で発生したセンターデフのトラブルからギヤボックスを壊して10位と沈む。続くLeg2、早朝零下10度のパルクフェルメでプジョー全車リタイアのアクシデントが起こってしまう。デルクールとパニッツィの車には、アースの接続不良に起因するスタータートラブルが発生してバッテリー過剰消費からくる電圧低下、そしてコンピュータの動作停止・エンジンの被りへとつながっていった。同じスターターを搭載するグロンホルムの車は、奇跡的にエンジンが始動するも駆動系の中のパーツが壊れ、クラッチをつなごうとした時に、その影響でエンジンが完全に停止してしまった。






【スウェーデン】2月11日~2月13日
9:デルクール 206 MVA 75 7位・+3分31秒9
10:グロンホルム 206 MVB 75 1位・3時間20分33秒3
9:デルクール 206 MVA 75 7位・+3分31秒9
10:グロンホルム 206 MVB 75 1位・3時間20分33秒3
1月の始めにカール地域にて4日間(グロンホルムとデルクールが参加)の事前テストを実施。さらに1週間、同じ場所でグロンホルムによる追加プログラム(加速性能とブレーキ時のグリップ、高速域のハンドリングなどの向上が目的)を行いラリーに備えるも、新機軸は投入されず。
SS1でセンターデフがロックしにくくなるトラブルが発生したグロンホルムであったが、4回のベストタイム(SS6では岩にヒットしてパンクするもATSに救われた)を記録してLeg1の首位を奪取。Leg2~Leg3でもグロンホルムは、マシンを木や岩にヒット(SS12・SS13・SS16)しながらもマキネンたちとの僅差リードを守り続けてWRC初優勝し、14年ぶりの朗報をプジョーにもたらした。デレクールはマシンバランスに手応えを感じるも、初めてのスウェーデンに加え、デフが不調(SS14で発生・SS17で再発)となって、タイムが伸びず。



【サファリ】2月24日~2月26日
9:パニッツィ 206 NAL 75 CS4 リタイア(初日に走行を妨害されたとしてロベルト・サンチェスに暴行を加えた件で、5万ドルの罰金が科せられた。)
10:グロンホルム 206 NAK 75 CS8 リタイア
9:パニッツィ 206 NAL 75 CS4 リタイア(初日に走行を妨害されたとしてロベルト・サンチェスに暴行を加えた件で、5万ドルの罰金が科せられた。)
10:グロンホルム 206 NAK 75 CS8 リタイア
206WRCにとって初めてのサファリとなるも、エンジンはノーマル仕様で臨む。デフはフロントとリヤが機械式でセンターのみがアクティブ、ファイナルギヤは高めにセットされた。ブレーキについては、フロント・リヤとも小さめの径のディスクが使われている。サファリでは必須となるアニマルガードは、バンパー内のインタークーラー/ラジエター前に装着。暑さ対策として、ルーフ上(ドライバーの頭上部分)にエアスクープをドライバーズシートの背後にリヤのデフ部分から動力を取った(パワーロスは6~8馬力)エアコンを追加。尚、事前テストはケニヤではなくセネガルで行われた。
パニッツィはスタートから20分ほど走ったCS1の15km地点で、左リヤのサスペンションロッドを破損。その交換をするも作業が不充分であったため、ぐらついたタイヤが相次いでパンク。二度目のパンク時にタイムロスを嫌ってそのまま走りゴールさせたことが、マシンダメージ増大へと至りLeg1終了をもってラリーからの撤退を強いられた。(CS4ではリムとリヤサスアームを破損) CS1で、左右タイヤが相次いでパンクしたため、15位と大きく後退したグロンホルムはCS2で2回、CS3で1回(ATS作用でタイムロスは最小減)のパンク、CS5でステアリングラック損傷、CS6でブレーキがスポンジーとなり、最終的にはCS8のクラッチトラブルでリタイアした。

パニッツィはスタートから20分ほど走ったCS1の15km地点で、左リヤのサスペンションロッドを破損。その交換をするも作業が不充分であったため、ぐらついたタイヤが相次いでパンク。二度目のパンク時にタイムロスを嫌ってそのまま走りゴールさせたことが、マシンダメージ増大へと至りLeg1終了をもってラリーからの撤退を強いられた。(CS4ではリムとリヤサスアームを破損) CS1で、左右タイヤが相次いでパンクしたため、15位と大きく後退したグロンホルムはCS2で2回、CS3で1回(ATS作用でタイムロスは最小減)のパンク、CS5でステアリングラック損傷、CS6でブレーキがスポンジーとなり、最終的にはCS8のクラッチトラブルでリタイアした。




サファリラリーの期間中、第2世代となる206WRCエボリューション2の熟成が行われた。クラッチとクランクシャフトが同軸上に配置されこのマシンで電子制御のセミATギヤボックスや新型エンジンを試したデルクールは、満足感を覚えて5日間にわたるスペインでのテストを終えている。
【ポルトガル】3月16日~3月19日
9:デルクール 206 MWJ 75 5位・+4分6秒3
10:グロンホルム 206 MWN 75 2位・+6秒5
9:デルクール 206 MWJ 75 5位・+4分6秒3
10:グロンホルム 206 MWN 75 2位・+6秒5
3月始めに行われた事前テストの結果から、取り付け部の補強を見直すなどダンパー性能の向上が図られた。デフはテストフロントとセンターにアクティブ、リヤに機械式の組み合わせで初のグラベルラリーに臨む。
車検日の夕方に行われたバルターでのスーパースペシャルを制し、ラリーをスタートさせたグロンホルムはSS6におけるハンドブレーキの不調から、エンジンストールして20秒近くをロスするも2位サインツに28秒6の差をつけてLeg1を終えた。しかしLeg2では、2000年モデルのインプレッサを駆り、異次元の速さを見せるバーンズに防戦一方。室内へのダスト侵入(SS12~14)、路面の穴にタイヤを強打しフルボトムしたサスペンションが抜け気味となりペースダウン(SS16)、定まらないハンドリングでの走行(SS17)などから2位に後退するも、SS19~SS20における舞い上がって消えないダストや日没斜光での視界不良が先頭走者のグロンホルムに有利に働き、最終的には首位を守ることができた。しかし勢いの止まらないバーンズが逆襲、Leg3・SS22で首位に立つ。そして迎えた最終SS23。1.7秒差を詰めたいグロンホルムであったが、ゴール間近の中速コーナー出口で痛恨のハーフスピンを喫して再逆転とはならなかった。一方、デルクールはLeg1でトラブル(SS7で左前ショック破損・SS8で電子制御クラッチ不調)を抱え、Leg2で燃圧低下(SS14)が発生したこともあり、完走狙いのラリーとなった。




【カタロニア】3月31日~4月2日
9:デルクール 206 MWL 75 7位・+3分36秒4
10:パニッツィ 206 NAJ 75 6位・+2分10秒9
16:グロンホルム 206 MVB 75 5位・+1分51秒7
9:デルクール 206 MWL 75 7位・+3分36秒4
10:パニッツィ 206 NAJ 75 6位・+2分10秒9
16:グロンホルム 206 MVB 75 5位・+1分51秒7
新型エンジンは、吸気系マニホールドの材質とデザインを変更。また排気側マニホールドやウエストゲートが新しくなり、冷却系にも改良が施されている。ターボは同じ形式ギャレットTR30ながら内部を一新、低速域でのトルク強化とパワーバンド拡大が図られた。尚、導入見込みの油圧制御スロットルバルブのスペースがすでに確保されている。そして開幕戦のモンテカルロで一度だけ使われた電子制御クラッチの再度導入に加え、油圧システムの軽量化と電気系の配線類にも手が入れられている。トリプル・アクティブ・デフ搭載(ラリーは機械式を使用)、サスペンションのジオメトリーをマイナーチェンジ、ブレーキローターは前後とも同サイズとターマック仕様になるも、ブレーキ冷却用ダクトは装着されていない。
SS1で2000年ホモロゲーションを受けた新型206WRCが3台そろってトップ5入りして幸先の良いスタートとなったプジョーチームであったが、ラリーが進むにつれ失速する結果となった。その原因は、まずLeg1における路面がどんどん乾いていく状況でのタイヤ選択ミスであった。さらにLeg2の荒れた舗装・バンピーな路面で唐突な挙動(リヤアクスルが暴れる)を示す車であった。デルクールには、ウインドウスクリーンが曇る(SS1~2)、ギヤボックスが不調(SS7・SS14)等に加え、シートベルトに関わるトラブル(緩んだシートベルトで走ったSS12・課された1分のペナルティが取消しとなったものの、シートベルトを締めずに走り出したSS15)が発生して集中力を欠くことも多かった。サスペンションのセッティングが決まらないパニッツィには、ブースト低下(SS2)が発生した他、ワークス外での出走となったグロンホルムにも細かいトラブルが積み重なるなど、3者とも首位グループとのバトルには加われなかった。










