昨年末に安倍政権が発足してから1か月が過ぎた。早くも円高是正の効果が出始めたし株価も上がってきた。また、外交においても初の外遊先に東南アジアを選び、東南アジア諸国との強固な関係を強めるなど精力的に活動している点は高く評価できよう。


安倍政権の強みは民主党政権では成しえなかったデフレ脱却や安全保障体制、外交の立て直しなどに強いリーダーシップを発揮できることだ。その他の政策を見てもバランスがとれており、期待するところ大である。


しかし安倍政権に対する不満がないわけではない。その不満とはTPPに対する安倍政権の姿勢だ。


安倍政権ではTPPについて昨年の衆議院選挙の公約を踏襲し「聖域なき関税撤廃が前提の限りは交渉参加に反対」としているが、一方で安倍総理は「聖域なき関税撤廃かどうか私自身が首脳会談で感触をつかみ、判断することになる」とも言っておりTPP交渉参加に前向きとも受け止められる発言をしている。


つまり総理の本心としては米や砂糖などの一部の農産品で関税撤廃の例外が確保できれば参加するという事なのである。


一番考えられるパターンとしてはオバマとの首脳会談で関税撤廃の例外を取り付けて、その後に交渉参加を決断という感じではないだろうか。


安倍総理がどれほどTPPについての見識を持っているのかは定かではないが、少なくとも安倍総理がTPP交渉参加に傾きつつあるのは確かだ。


しかしながら、TPPは農産品の関税撤廃の例外が認められれば参加してもいいという単純な経済協定ではない。農産品などTPPで交渉される24項目の一部にすぎない上、非関税障壁と言われる規制や基準の緩和や撤廃までもが含まれるのが本質だ。


だからTPPに加盟すれば農業だけではなく食の安全基準や金融、医療、保健、教育、司法、公共投資、政府調達などありとあらゆる分野を外国(日本の金融資産を狙うアメリカ)に開放してしまうことになるのだ。


つまりTPPに加盟すればそれは日本にとって主権の放棄、不平等条約の締結を意味するのである。その点を安倍総理はしっかりと認識せねばならないし、関税撤廃の例外を確保すれば参加するかのような姿勢はTPPの本質を萎縮化し、あたかも農業だけの問題のように思わせる、論点のすり替えだ。


安倍政権内ではTPP交渉参加の是非について「内閣の専権事項」といった声も出ており、そうなれば自民党内やその他の政党に多数いるTPP反対派の声が無視される可能性もある。条約批准の承認は国会の議決が必要だが、自民、民主、維新、みんな、公明などのTPP賛成派が多数を占める国会でTPPを阻止できる見込みは少ない。


だからこそ安倍政権がTPP交渉参加はしないという断固とした姿勢を持つことが重要なのだ。安倍総理は日米同盟を重視するあまり、TPPに前向きになりアメリカの機嫌を伺おうとしている感がある。


しかしTPPはあくまで国益を是として判断すべきものであり、日米同盟のために参加するなどという事は絶対にあってはならない。


TPPは前述したように主権の放棄、不平等条約の締結に等しいものであり、我が国へのメリットは少なく、デメリットのほうがはるかに大きい。


TPPでごく一部の大企業は多少儲かるかもしれないが日本の経済、雇用を支えている中小企業は大きな打撃を受けることは必至だ。また、我が国のあらゆる分野が開放されアメリカ型の市場原理主義的なシステムが入ってくれば、国民の格差が増大し弱者切り捨ての社会になってしまう。


安倍政権は日本の国益確保、国民の生活や安全の確保という点を最も重視すべきだ。したがってTPP交渉の参加には反対し見送るという英断を下すべきである。


何度も言うがTPPは関税撤廃の例外が認められれば入っても良いなどという単純な経済協定ではない。国民を奈落の底に突き落とす売国協定なのである。


安倍政権が今後も愛国政権として評価されるか、あるいは国賊政権として評価されるかはTPP交渉参加の是非に掛っている。総理、TPPは絶対に止めてくれ。