私はあるサークルに入っている。そのサークルはあるベンチャー企業のインターン生の方を中心に7名で構成されていて、今のところビジネスや普段の学生生活に関して議論をしたり、意見・情報交換を行ったりといった活動をしている。サークルは座談会を何度か開いているが、その座談会のときに或る女性メンバーの方が興味深いサイトをサークル内で紹介していた。

 

NPO法人プロトン医学研究所 

https://npo-ipms.or.jp/

 

その女性メンバーの方は水を重点的に研究することに肯定的な意見を持っており、そのサイトに目を通してこの医学研究所を認知した私も、水への研究に対して興味を持った。このサイトは酸素水や血液クレンジングなどを謳う胡散臭いものではなく、むしろ「水」という観点から科学を社会のために役立たせたいという高い意志が感じられるものだった。サイトのデザインも見やすく、好感の持てる外観であった。余談かもしれないが、ところどころにチャーミングな誤植が見受けられるのも印象的であった。

 

https://i.imgur.com/LLZImfs.jpg (魚拓

 

今年の秋、遠出して或る公園で友人と楽しい時を過ごしたのだが、よくよく考えるとブラックな広告があった。

 

https://i.imgur.com/tLVfUvZ.jpg (魚拓

 

「あったか、公園お弁当」とは「温か、公園お弁当(あたたかい公園のお弁当)」という意味なのだろうが、「あっ」という部分が(おそらくフリー素材の)ギザギザの吹き出しで囲まれているため、「あっ!高、公園お弁当」と読めてしまう。この広告をみて「あっ!なんて高いんだ、公園お弁当」と誤読してしまう来客がいたとしても無理はないだろう。そもそも、この弁当は1080円という安くはない値段なのだから。

引っ越しを検討→物件を探す→物件の中にIHクッキングヒーターとの文言が→IHについて調べる→Wikipediaのページにたどり着く→「船瀬俊介がIHのリスクを指摘」と記述されている→Wikipedia内で船瀬俊介の記事を見る→船瀬俊介が陰謀論者であることを知る→船瀬俊介のサイトを見る→BLEACHのロゴが借用されていることに気づく

 

という流れです。久保帯人氏に許可を取っていないのなら大問題ですね。

 

https://web.archive.org/web/20191027140600/http://funase.net/

 

NHKスペシャル 新・映像の世紀 第3集「時代は独裁者を求めた」を見たが、テーマ曲がやけに印象的だった。

YouTubeでこの曲を探してみると、「パリは燃えているか」という曲が見つかった。

 

動画 https://www.youtube.com/watch?v=6QdCsxw16Tg

 

YouTubeのコメントでも絶賛の声が多く寄せられた。

その中でもウィッチさんのコメントが素晴らしかった。

 
すっごく共感できる。
民主主義に絶望した果に国家社会主義を掲げた人が謳う浪漫にその身、運命、国、更には未来を乾坤一擲たる思いで託した民衆たち。
思想も何もなく、ただ守りたいものを守るために震えた細い手で銃を握った兵士たち。また、そのために限りのない強大な暴力を手に入れて、それを当然に行使した政治家。
そして、それらによって瓦解した世界を埃まみれのパンを手に憂いを帯びた目で見つめる子供たち。
戦時という区切られた期間の中を生きた人間たちの狂わしいほどの想いを群像的に表した作品だと思う。恐怖と狂気の中に芽生えた憎悪、そして浪漫という混沌とした世界を彷彿とさせる曲は、これまでも、そしてこれからも存在しないだろう。
 
ウィッチさんのこのコメントは文学的であり、YouTube視聴者の間でも話題になっていた。
個人的には冒頭の「すっごく」という部分の話し言葉の自然さと「民主主義に絶望」以降の的確にして硬質な文章の顕著なコントラストが特徴的だと感じている。
 
一部に
ウィッチ
民主主義に絶望した果てに国家社会主義を掲げる←そんな史実はありませんが
資本主義に絶望した果てに国家社会主義を掲げるの間違いでわ?
といった頭の悪そうな返信もあったが、このコメントをした方は20世紀の歴史に関して表層的な部分しか見えていないのだろう。
 
ドイツやイタリアでファシズム(国家社会主義)が根付いた背景には世界恐慌による民衆の困窮があった。
しかし、当時民主主義を採用していたドイツ(ワイマール共和制)やイタリア(国王の権限が強い立憲君主制)は「持たざる国」であり、米英仏のように植民地が豊富とはいえず、民衆の困窮を救えないままだった。
やがて、一部の政治家は「民主主義では国民を救えない。国内の民衆を団結させて国民を救おう」と考えるようになり、ファシズムが国民の支持を受けながら国内に浸透していった。
この方はナチスが民主政治下で合法的に権力を握っていったという歴史的事実を見落としているのかもしれない。
 
勿論、世界恐慌が資本主義下で発生したのは事実であり、ウィッチさんのコメントをより精緻なものにブラッシングするならば、「民主主義と資本主義に絶望した果てに国家社会主義を掲げる」といった表現になるだろう。
 
ここで述べたファシズム発祥の経緯は「NHKスペシャル 新・映像の世紀」でも取り上げられており、本シリーズ未聴の方は「NHKスペシャル 新・映像の世紀」シリーズを是非ご覧になってみてはいかがだろうか。シリーズ第3集の概要を見るのも良いかもしれない。
 
 
第3集の概要
 
 
 

 

 

豪州の中心部にあるウルルが恒久的に登山禁止となった。

ウルルの存在を知ったきっかけは中学の英語の授業で教科書にウルルに関する英文を読んだことだった。

今回のニュースで私は初めて先住民(アボリジニ)のanangu人がウルルを所有していることを知った。

 

 

https://www.afpbb.com/articles/-/3251440

 

〇タイトル

track3  スミス

第一巻 p87~107

 

〇分析

★p87

ガンマとエルウッドを載せたバスを狙う悪党(アッシュ・ドウター強盗団の関係者)たち。スミスが後ろ姿で登場。作中では単に「指輪」だけで「死者の指輪」を指すシーンがかなり多い。

 

★p88

扉絵。大胆な背景の白さが特徴的。

 

p89

バスがグリッジェラーに到着。エルウッドが「この街に『死者の指輪』が!」と叫ぶ。ガンマの言う「情報」とはtrack2での伝言を指す。「ま…まてよ!その相棒っての一体どんな奴・・・」とエルウッドが訊いているが、このシーンはスミスの正体に関する巧みな前フリになっている。

 

★p90

・バスでアナウンスの男(運転手も兼ねている)が「それでは皆さん」と言っているが、「それでは」という語句から考えてバスを運行しているオーティス・リムジン・バス若しくはこの運転手はアッシュ・ドウタ―強盗団の支配を受けていると思われる。

 

・アッシュ・ドウター(ash daughter)は「灰の小娘」という意味。この意味はtrack8を読むまで読者には分からない。

 

★p91

1コマ目でガンマはさりげなくエルウッドを守っている。8コマ目で複数の銃口を突き付けられて、エルウッドが冷や汗をかいている一方、ガンマは冷静である。3コマ目の足は強盗団の戦闘員。9コマ目の足はバックリィ。このページだけで分かるように久保の漫画には足だけが描かれたコマが多い。

 

★p92

アッシュ・ドウター東地区幹部のバックリィ登場。乗客から「死者の指輪」を強奪すべく、バスを襲撃した。1コマ目をよく見ると、p90でアナウンスをしていた男が強盗団の戦闘員をバックに腕を組んでいる。また、気づきにくいかもしれないが、4コマ目には黒髪の女性の奥に銃口を突き付けられた男性一名が描かれている。

 

★p93

安定のドン。久保はドンという効果音を多用する。

 

★p94

ドドドドドドドドド。久保はp90、p93などのようにこの効果音も多用する。

 

★p95~96

ガンマは強盗団に「お前らが今までに集めた死者の指輪をよこせ。さもなくばお前ら殺す」と言い、バックリィを蹴り倒す。エルウッドは心中文で「どっちが強盗だかわかんねーよ」とツッコミを入れる。ガンマが強盗団を圧倒する中、「はーい、そこまで!あとは僕が引き受けるよ」と不穏な吹き出しが。

 

★p97

スミスがガンマの背中を撃つ。何故もともと相棒同士である二人が格闘しているのかはtrack4で分かる。

 

★p98

4コマ目と5コマ目をよく見るとガンマとスミスの顔に汗の記号が描かれていると分かる。実はこの台詞は周囲を欺くための芝居。

 

★p99~101

エルウッドを人質にされ、敵に大人しく捕らえられるかのような状況になるガンマ。バックリィが「償わせて」を三度繰り返しているのを見て笑ってしまった。

 

★p102

用済みとみなしてエルウッドを射殺しようとするバックリィ。しかし、エルウッドに向かって放たれた銃弾をガンマは片手でキャッチする。

 

p103

ガンマの圧倒的な強さが読み取れる。

 

★p104

3コマ目で本来透けるはずのない牢屋の鉄格子が分かりやすさのために透けて描かれている。エルウッドに傷を心配されて「あ?別にこのぐらい何でもねぇよ」と照れるガンマに好感を持つ読者もいるのでは。

 

★p105~106

スミスが牢屋の前に登場。牢屋付近に敵キャラが一人やってくる。スミスは彼に話しかけ、死者の指輪の在処を探る。

 

★p107

スミスが彼を射殺する。2コマ目でエルウッドがなんでと驚いている一方、ガンマは落ち着いた表情。スミスはガンマとエルウッドに銃口を向けるが、ガンマは依然として冷静な表情を崩さない。

 

 

★総評

track2の内容と合わせて今回の話をよく読めばスミスの正体は察しがつくのではないだろうか。ただ、「p98の4コマ目と5コマ目におけるガンマとスミスの顔に汗の記号が描かれていること」に気づかないとスミスの正体を見破るのは難しいだろう。

 

 

 

ゾンビパウダー解説 track4

 

 

 

 

〇タイトル

track2 Baptism of Fire

第一巻 p61~85

 

〇資料

扉絵(p62)

 

 

〇分析

★p61~62
・バスに乗るガンマとエルウッド。二人はエルウッドの故郷のウイスター州南部から同州ウォルトンヴィルへ向かっている。track1(第一巻p11~12)にあったように「死者の指輪を全部で12個集めればゾンビパウダーが手に入る」ということが確認されている。ゾンビパウダーは第一巻p5で「死者を蘇らせ、生者を不死にする悪魔の秘薬」と説明されている。
 
・エルウッドは「そういえばあんたはどうしてゾンビパウダーを?やっぱりおれみたいに誰か生き返らせたい人が?」と訊くが、ガンマは「バカ言うな。俺はゾンビパウダーを使って不死の体を手に入れるんだ」と応える。
 
・単行本のタイトルはBaptism of Fireだが、ジャンプ掲載時は「洗礼」となっていたという情報がある。ソースをご存じの方がいらっしゃれば、私の方までお願い致します。
 
Baptism of Fireは「炎の洗礼」という意味。炎はガンマを象徴的に指している。このタイトルの元ネタは聖書由来の英語の慣用句に由来する。聖書用語の場合、Baptism by fireともいう。
 
 
★p63
・二人は一晩かけて目的地ウォルトンヴィルに到着し、ホテルに入る。時刻は午後0時15分。
 
・ガンマがエルウッドにゾンビパウダーの解説をしている。ガンマの解説は抽象度が高く難解だが、簡潔に言えば以下になるだろう。
「ゾンビパウダーは命の薬」→投与された者に生命を授けるという意味か。
「生を齎す」→死者に振りかけると蘇生するのはゾンビパウダーそのものが一種の生命体だからか。
 
★p64
解説が難解なことをガンマは察した。3コマ目のエルウッドの顔や4コマ目のガンマの顔から分かるように初期の久保はコミカルな絵柄の時は口を描かない場合が多い。前ページの4コマ目・5コマ目のエルウッドの顔も同様である。
 
★p65
・ガンマはエルウッドにホテルの室内で待機するよう指示するが、エルウッドは子ども扱いされたと感じてムキになり、無理やりガンマに同行することになる。2コマ目でガンマの吹き出し内に「しまった」とあるのは、ガンマがエルウッドに「コドモ」と言ってしまったがために、エルウッドをムキにさせてしまったことを後悔したため。
 
・CD屋の名前「CLASS-6」はclassicsの諧謔。英単語classicは形容詞や名詞として使われる。
 
★p66
3コマ目に敵キャラ2人(p168によれば、ダニエルとディラン)が描かれている。5コマ目にはエドヴァルド・グリーグといったクラシック作曲家の名前も見受けられる。グリーグは北欧のショパンと言われているが、ショパンは「病弱」で有名だった。もしかしたら作中の病弱なキャラを暗示しているのかもしれない。
 
★p67
・「視聴」とはおそらく「伝言のやり取り」という意味。5コマ目をよく見ると「GAMMA.A 名管弦楽曲集:C.T.スミス指揮 リーンズベリー女…」とある。
 
★p68
ガンマはエルウッドに「ここで待ってろ」と凄みを効かせて指示する。
 
★p69
エルウッドはムキになり、「誰が待つかっての。かえろかえろ」と言う。それを見た敵二人がエルウッドに罠をかける。
 
★p70
敵二人はエルウッドの善意に付け込んでCD屋の裏にエルウッドをおびき寄せる。スミス(ガンマの相棒。姿を現すのはtrack3)はガンマに「―で『指輪』を一つ見つけたよ。8月3日から5日までぼくはグリッジェラーにいるからきみが間に合えばそこで落ち合おう」とメッセージを送る。
 
落ち合う:【動詞】約束をして、一つ所で出合う
 
★p71
・3コマ目の「お仲間さん」は一瞬エルウッドのことだと勘違いしてしまいがちだが、エルウッドはムキになってすぐに待てと言われた場所から離れてしまっているため、スミスを指す。
 
・ガンマは呆れた顔で「バカやろ・・・ここで待ってろと言っただろうが」と呟く。その台詞の「ここで待ってろ」には圏点が付いている。
 
★p72~75
・敵二人はエルウッドを射殺しようとしている。敵二人は自分の仲間がガンマに殺されたことでガンマに恨みを持っているが、ガンマは自分らとまともに戦って勝てる相手ではないので、ガンマの仲間であるエルウッドを殺すことに決めた。エルウッドは「なんだよそれ!?あいつの仲間だから俺を殺す!?それってただの逆恨みじゃないか!ムチャクチャだ!」と抗議するが、敵は「シロートみてえなクチきいてんじゃねぇぞ。仲間が恨まれれば自分も狙われる。自分の買った恨みが仲間の死を招くこともある。それがこの世界の常識だろ」と叫ぶ。
→「この世界」には圏点が付けられている。本作の世界観のモデルとなった2000年代のアメリカ同様、ガンマらの暮らす社会は表社会と裏社会の距離感が近いのだろう。少なくとも現在の日本ほど治安は良好ではない。
 
★p76
ガンマ登場。4コマ目の右側のシルエットはガンマ。
 
★p77~80
ガンマが敵二人を撃破する。p80をよく見るとガンマの刀はジェットの推進力のようなものが使えるとわかる。
 
★p81
4コマ目において、中央のガンマはシリアス、右の敵(ダニエル)は悲鳴を上げながら必死で逃走という状況のなか、左のエルウッドは一人唖然としている。エルウッドだけ微妙に絵柄のムードが合っていない印象を受ける。
 
★p82
ガンマが来るのが僅かでも遅かったらエルウッドは死んでいたという今回の一件。それを軽く流そうとするエルウッドをガンマは責める。1コマ目が急過ぎずノロ過ぎない絶妙な間となっている。
 
p83
エルウッドをたしなめるガンマ。3コマ目の中央部にガンマとエルウッドが描かれているが、よく見ないと見落としてしまいがち。4コマ目に血が見える。
 
p84
ガンマが「俺との旅を続ける限りお前(エルウッド)も命を狙われる。それでも旅を続けるか否か選択するチャンスを与える」とエルウッドに言うのはエルウッドの将来を懸念しているからこそ。
 
p85
急にシリアス展開になりかけたと思ったら突然のギャグ。最後のコマの「俺のサイフを返せ!」「油断も隙も無い」(原文は手書きの片仮名)には笑ってしまった。
 
 
★総評
CD屋や伝言代というのが時代を感じさせる。インターネットがそこまで浸透していなかった当時、自分の好きな音楽を聴きたい場合はCD屋でCDを買うしかなく、相手に極秘のメッセージを送るときも今回のような伝言業者に頼るしかない場合もあったのだろう。ネットの時代に生まれた自分の快適さを感じた。
また、この回を読み、久保のリアリズム精神も感じた。ジャンプ漫画の敵(特に雑魚な敵)キャラは外見や言動で残忍さ・気持ち悪さを前面に出すことによって、「作者が読者側を(そのような悪役を倒す)主人公サイドに感情移入させるための道具」として用いられがちである。しかし、今回の敵(ダニエルとディラン)は犯罪者ではあっても一般市民に性格が近いキャラだといえる。
このような自然さがゾンビパウダー全27話から読み取れると私は考えている。
 

 

 

 

 

 

 

〇タイトル

track1 少年と黒い右腕

第一巻 p5~59

 

〇資料

最初のページ (p5)

カラー見開き (p6~7)

 

〇分析

★最初のページ
いき‐づ・く【息衝く】 [動カ五(四)]
1 息をする。生きている。「大都会の片隅でひっそりと―・く」「現代に―・く古典」
2 ため息をつく。嘆く。 「昼はも嘆かひ暮らし夜はも―・き明かし」〈万葉集・八九七〉
3 苦しそうに息をする。あえぐ。 「いと御腹高くて、―・き臥し給へり」〈宇津保・国譲下〉
 
・久保は「代名詞 + らは + みな」という表現を多用する。第1巻の巻頭ポエムも「それらは みな」とある。
 
ワンピースの最初のページに雰囲気が似ている。→(1999年前後の)週刊少年ジャンプ編集部の影響か。

・因みに久保帯人と尾田栄一郎は仲が良くない。2017年11月のラジオ番組で久保は「自分のデビュー作の読者アンケートの順位が、尾田さんの作品よりも1つ下だったんですよ。そのときから、尾田さんのことは嫌いなんです」と語っている。
 
 
★見開きの扉絵 
・構成は上下に幕が配置され、上下の幕のはざまにキャラが描かれている。上下に幕が描くことによって「物語の開幕」を表現しているように感じられる。

・本作のメインキャラ4人が右から左への順(主人公→ガンマ→スミス→ウルフィーナ)に書かれている。この順はキャラが初登場する順番と一致している。これは日本の漫画が上から下へ、右から左への方向に則って読み進められていることを計算していると思われる。

・ウルフィーナより左にtrack25で登場するジェミニ博士が配置されているが、このキャラはウルフィーナの初登場の後に登場する。彼女も含めれば「主人公→ガンマ→スミス→ウルフィーナ→博士」という順序となる。
 
・メインキャラ4人と博士の他に5名のキャラが描かれているが、そのキャラが本作で登場しているのか否かは意見が分かれる。
背を向けた黒人はパウンダー(バルムンク・サーカス団のナンバー3)か。しわのある老人はキャルダーに似ている外見だが、髪がピンク色である。他の三名は不明。
 
 
★p8
・本作の通貨はニート。NEETという単語は1999年頃に英国で生まれ、2004年頃に日本で普及した。労働の賃金の基盤となる通貨に、労働とは対極の存在であるニートが用いられているというのは非常にユニークであると言える。通貨ニートとNEETが同じ発音なのはおそらく偶然だろうが、以下で述べる理由から作者があえてNEETを通貨名として採用した可能性もゼロではないだろう。
1999年7月に英国の政府機関Social Exclusion Task Forceは調査報告書『Bridging the Gap』を発表し、その調査報告書には「not in education, employment or training」という箇所があった。NEETはこの箇所のイニシャルに由来するが、ゾンビパウダーの第一話がジャンプに発表されたのは1999年7月であり、時期が一致している。
 
・10ニート札のデザインから判断してニートはアメリカドル札に由来している。このように本作の世界観は2000年代初頭の米国がモデル。
 
・久保は「!」だけの吹き出しを多用する。この傾向は「BLEACH」でも同様。
 
・「分かってるって姉さんにはバレねぇようにだろ」というセリフを通して姉(シェリル)の存在を暗示しているが、これは巧みな前振りだと言える。三流の漫画家だと、ガンマがエルウッドの自宅に入ったシーンでシェリル初登場という展開にしがち。それだと、シェリルがぽっと出すぎて、読者が作中のキャラに共感しにくい。
 
・この一ページだけで、以下の点が表現されている。
一、本作での通貨がニートであること
一、少年(エルウッド)と地元ギャングの首長(キンクロ)の名前
一、キンクロが髪が変な黒人を手下にしていること
一、少年が金を稼ぐ或る卓越したスキルを持っていること
一、少年が姉にそのスキルのことを隠していること
一、そのことに少年が一種の後ろめたさを感じていること
久保は自然体な台詞回しだけでこれほどの情報を読者に伝えている。第一話の掴みとして申し分ないだろう。
 
 
★p9
・「A.E.719年 8月2日 3:16pm ウイスター州南部 ブルーノート」→時刻と位置情報の提示。
 
・効果音の書き方はBLEACHと似ている。ただし、おそらくBLEACHのように筆ペンではなくサインペンのようなもので描かれている。
 
・ガシャンという効果音をバックに、主人公を背中からの構図で描写している。
 
 
★p10
・バスを降りたばかりの主人公の姿を正面から描写→前ページとの連続性より、主人公の正面と裏の両方を描けている。
 
・久保はデッサン性の高いリアルな絵柄のコマと、ギャグ色の強いコミカルな絵柄のコマの両方を描く。ゾンビパウダーの頃の久保はギャグ色の強いコミカルな絵柄のコマでは、口を描かずに眼だけを描くことが多かった。最近の久保はコミカルな絵柄のコマでも口を描くことが多い。
 
・本作品の主人公であるガンマの性格を一言で表現するのは容易なことではない。しかし、ガンマが服をバスに引っ掛けられるというギャグシーンは、ガンマが「凄まじい身体能力を持っていて周囲の一般人を驚かせるような性格」と「ときたまコミカルな言動をするような微笑ましさ」の両方を持っていることを示しているように感じられる。
 
 
★p11
・店のスタッフは黒人男性である。「本作の世界観は西部劇に近い」と主張する者は多いが、西部劇で主に舞台となっていたような時代(19世紀後半や20世紀初頭など)は黒人の社会進出が余り進んでいなかったことや、本作には多様な人種のキャラが登場することなどを踏まえると、本作の世界観は2000年代初頭の米国がモデルになっていると判断するのが妥当であろう。
 
・「死者の指輪」とガンマが言うシーンにおけるガンマの顔は清々しさを感じさせる。
 
 
★p12
・よく見ると2コマ目以外にも1コマ目にエルウッドが居るのがわかる。エルウッドが酒場に潜伏している理由は次のページで分かる。
 
・自然な会話文から「死者の指輪」の説明がされている。
 
 
★p13
・エルウッドは掏摸(すり)で金を稼いでいた。「エルウッドの金を稼ぐ或る卓越したスキル」とは掏摸のことだった。
 
・1~7コマ目まではコミカルに描かれており、8~9コマ目は比較的シリアスに描かれている。
 
 
★p14
・「残念賞」というほのぼのさ→ガンマは掏摸対策をしていた模様。
 
 
★p15
・5コマ目で描かれているエルウッドの手だけを見てガンマは何かを察する。
 
 
★p16
・1~4コマ目から感じられるのはガンマの子供っぽさ・陽気さである。
 
・音符のかかれたコマからもガンマの子供っぽさ・陽気さが窺える。
 
 
★p17
・姉登場。「ありがとう。でも今日は体調がいいの」といったセリフから姉が心臓を患っているということが暗示されている。
 
・エルウッドの「ハイこれ今日の分の薬!」という発言から考えて、キンクロ一味に入ってスリを教わった理由としては薬代を捻出するためというのも考えられる。
 
・姉の口調は女言葉。自然な感じの上品さ。
 
 
★p18
・「芥火ガンマ」と自己紹介しているシーンではガンマの人柄の良さがわかる。
 
・「何か聞き覚えのある名前だな」とエルウッドが首をかしげる理由は本話の後半で明かされる。
 
 
★p19
・1コマ目の風景描写で時間帯が夜になっていることを表現。
 
・2コマ目に寝室があるが、姉のいる寝台の隣にエルウッド用と思しき寝台がある。ということは、エルウッドは未だに姉と一緒に寝ていることに・・・。
 
・エルウッド「よっぽど口にあったんだな」→ガンマ「(料理のうち)お姉さんが作ったのは?」→エルウッド「スープだよ」→ガンマ「やっぱりな あのスープは最高だった あとはスープのおまけだな」→エルウッド「チクショー」とあるが、エルウッドが悔しがっているのはガンマが「意地でもエルウッドをほめまい」と意地悪したからである。
 
・7コマ目から絵柄がシリアスに。
 
 
★p20
・エルウッドは掏摸の手口がプロに仕込まれたものだと気づく。
 
・地元を根城にしている武装窃盗団の名前はグレイ・アンツ(gray ants)。
 
・最後のコマでの左手のデッサン性は高い。
 
 
★p21
・キンクロ一味はエルウッドがガンマを家に招いたことを「エルウッドは賞金首を独り占めにしようと企んでいる」と思い込む。
 
 
p22
・4コマ目のガンマの顔下部の描写には文字が一切書かれていない。このコマのお陰で間がうまく取れている。
 
 
★p23
ガンマはp15でエルウッドの手に傷が刻まれているのに気づくが、ガンマは他にもエルウッドの体の各部分(足、肩)に傷が刻まれていることを指摘する。ガンマはエルウッドに「このままでは姉を救う前にあいつら(キンクロ一味)に殺されるぞ」と警告する。6コマ目のガンマのまなざしは「弱者や虐げられる者への憐憫を感じさせる痛ましき視線」といえる。
 
 
★p24
キンクロ一味はエルウッドの家を襲う準備をする。
 
 
★p25
・1コマ目も文字を一切書かずに時間帯が早朝になっていることを表現。
 
4つ目のコマで顕著だが、初期の久保は背景が黒一色の際は、普段黒で描かれる部分に灰色のトーンを貼る傾向にある。
 
 
★p26
バズーカでキンクロはエルウッドの家の壁を破壊する。
初期の久保はコマを長方形中心で引く傾向があるが、このページではコマの段が斜面となっている。
 
 
★p27
2コマ目は台詞の発言主の違いが吹き出しのフォントの違いだけで表現されていて分かりやすい。
 
 
★p28
・1~2コマ目のシェリルの吹き出しから分かる久保の特徴は、吹き出しがコマの枠を超えることがある点、「はあ」などのようにオノマトペ的な台詞はフォントではなく手書きされる点である。
 
・気づきにくいかもしれないが、5コマ目のエルウッドは冷や汗をかいているシルエットで描写されている。
 
 
★p29
6コマ目の指名手配書はp21の1コマ目のものと相違する。
 
 
★p30
・1コマ目に「S0級犯罪者(エスゼロ級クリミナルと読む)」「賞金額は9億6千万ニート」とある。
 
・6コマ目でキンクロはエルウッドを脅しているが、よく見るとキンクロの指が大きすぎるようにも感じられる。
 
 
★p31
シェリルが弟を救うためにキンクロに花瓶を当てつける。久保は血をトーンではなく黒(べた塗)で表現することが多い。
 
 
★p32
シェリルが弟を信頼していることがわかるシーン。
最後のコマは「ドン」という効果音に被弾による出血が重なっているため、見やすいとは言えないコマ。
 
 
★p33
2コマ目のシェリルのデッサンについてだが、左脚がやや長めな印象を受ける。
 
 
★p34
久保はバトルシーンで眼を⦿と書くことが多い。三つのコマ全てでキャラの眼が⦿のように描かれている。
筆文字で「あああああああああああ」と背景を手書きで埋めるのも久保の特徴。
 
 
★p35~37
バトルシーン。キンクロは手下(髪が変な黒人)の体を振り回してエルウッドのナイフ攻撃から自分の身をガードし、エルウッドを追い詰める。
 
★p38
どうでもいいことだが、1コマ目で奴隷がドレイと書かれているのが気になる。ドレイより奴隷のほうが分かりやすしダサくないと思うのだが・・・。もしかしたら「ドレイ」という「グレイ・アンツにまつわる特殊な設定」があったのかもしれない。
 
★p39
「あたりまえだ…ブタに人間の言葉がわかってたまるか」はエルウッドの憤りが伝わる秀逸な台詞。1コマ目でエルウッドの影はトーンで描かれているが、久保は影を細い線で表現することが多い。
 
★p40
効果音の書き方がユニーク。効果音「ゴドォン」と台詞が上下2コマをまたいで描かれている。「ゴドォン」の書き方が独特過ぎて2コマ目の右側にガンマが描かれているのを気づくのが遅れるかも。ただそれでも「ゴドォン」のゴがトーンで描かれており、久保が読者の見やすさに配慮していることが読み取れる。
 
★p41
ガンマの正面が見られるのは次のページになってから。つまり再登場から2ページ読まないとガンマの正面が見られないように計算している。このページではガンマはシルエットや脚のみが描写されている。
 
★p42
ガンマはキンクロの指名手配書を掲げながら「賞金8000ニート D1級犯罪者 ムジャータ・キンクロ」と告げる。→一方のガンマは「S0級犯罪者 賞金額は9億6千万ニート」
格の違い。
 
★p43
ガンマの背中には黒い蝶が描かれている。この黒い蝶は本作でガンマのシンボルとして使われている。
 
 
★p44
・2コマ目でキンクロの台詞は「狙って」を「ネラって」と書かれている。久保は漢字表記が普通な語句をカタカタで書くことによってキンクロのダサさ・雑魚さを表現しているのかもしれない。
 
・ガンマは、p9の最後のコマで描かれている「髑髏が描かれた細長い繭」を開いて自身の刀を取り出している。4コマ目は「髑髏が描かれた細長い繭」が開いているシーンが描写されている。3コマ目の効果音「バチン」はガンマが「髑髏が描かれた細長い繭」を開くために手の或るボタンを押しているのを意味しているのではないか。「髑髏が描かれた細長い繭」はp58の6コマ目にも描かれている。
 
・サシ:【名詞】(俗語で)二人で、一対一で
 
 
★p45
・バス―カを持っているのにガンマが出した武器は刀。キンクロは「ラリってんのか」と驚愕する。ガンマとキンクロはカウント3で決闘することを決める。
 
・ラリる:【動詞】薬物でハイな状態になる
 
 
★p46~48
陳腐な展開では主人公側がカウント3になるまで攻撃を抑えているのに、敵側がカウント2で攻撃しだすというパターンになるのだが、本作において、敵側に当たるキンクロはカウント3を守った。しかし「サシでの勝負」を宣言しておきながら、何と取り巻きにガンマを乱射させた。なおキンクロは取り巻きに「ぶち殺せ」と命令しただけで自分では何も攻撃を仕掛けていない。
 
 
★p49
なんとガンマはカウントを1、2、3、…29、30とずっと数えており、キンクロ一味が乱射している最中も全く攻撃していなかった。そのことに驚いたキンクロは後ずさりするが、キンクロの背中には蟻のマークが描かれている。黒い蝶と蟻の対比を通して両者の格の違いを暗示している可能性がある。
 
 
★p50~54
取り巻きはガンマのチートさに圧倒され敗走し、キンクロはバズーカをガンマに放つも、あっけなくガンマに斬殺される。エルウッドはガンマがキンクロを圧倒するシーンを目の当たりにして「この人はこの銃弾の大陸をたった一本の剣で生き抜いてきたのか」と傍観する。本作のモデルとなった2000年代の米国は日本では想像できないレベルの銃社会なわけだが、ガンマの握る「剣」には「凡庸な無法者が使うバズーカ砲」を遥かに上回る戦力があると表現されている。
 
 
★p55
・姉の死を目にして暗い表情を浮かべるエルウッド。それを後ろから眺めるガンマ。久保は通常トーンを貼らないキャラであっても、このコマのように或るキャラを強調したいときはトーンを貼ることがある。
 
・ガンマはグレイ・アンツのアジトにあった現金を見つけ、エルウッドに渡すが、エルウッドは「盗金は要らない」と拒む。スッとエルウッドがガンマに現金を差し出すコマのガンマの顔はコミカルだが、p10で述べたように口が描かれていない。
 
・そもそもキンクロから逃げるようエルウッドに助言したり大金を与えようとしたりするのはガンマがエルウッドなどの弱者へのいたわりを持っているから。ガンマのその姿勢はtrack20の「デカすぎる力はテメー(バルムンク)の為に使えば『狂気』をもたらす…けどな…弱っちい連中のために使えば…『力』のままでいられるんだよ」という台詞に表れている。
 
 
★p56~58
エルウッドは「死者の指輪を探す旅に俺を連れて行ってくれないか」とガンマに頼む。ガンマはエルウッドの本気度を試すような問いを繰り返すが、ガンマはエルウッドの「姉を生きらせたい」という願いの真剣さを認め、死者の指輪を探す旅にエルウッドを連れていくことにする。
 
 
★p59
エルウッドは出発に際して、頭の被り物を姉を弔うための十字架に備えた。そして「行ってくるよ お姉ちゃん まっててね 絶対に生き返らせてあげるから!」と明るい表情で告げ、旅立っていった。十字架には「安らかに眠れ」とラテン語で刻字されている。