NHKスペシャル 新・映像の世紀 第3集「時代は独裁者を求めた」を見たが、テーマ曲がやけに印象的だった。

YouTubeでこの曲を探してみると、「パリは燃えているか」という曲が見つかった。

 

動画 https://www.youtube.com/watch?v=6QdCsxw16Tg

 

YouTubeのコメントでも絶賛の声が多く寄せられた。

その中でウィッチさんのコメントが素晴らしかった。

 
すっごく共感できる。
民主主義に絶望した果に国家社会主義を掲げた人が謳う浪漫にその身、運命、国、更には未来を乾坤一擲たる思いで託した民衆たち。
思想も何もなく、ただ守りたいものを守るために震えた細い手で銃を握った兵士たち。また、そのために限りのない強大な暴力を手に入れて、それを当然に行使した政治家。
そして、それらによって瓦解した世界を埃まみれのパンを手に憂いを帯びた目で見つめる子供たち。
戦時という区切られた期間の中を生きた人間たちの狂わしいほどの想いを群像的に表した作品だと思う。恐怖と狂気の中に芽生えた憎悪、そして浪漫という混沌とした世界を彷彿とさせる曲は、これまでも、そしてこれからも存在しないだろう。 >
 
ウィッチさんのこのコメントは文学的であり、YouTube視聴者の間でも話題になっていた。
個人的には冒頭の「すっごく」という部分の話し言葉の自然さと「民主主義に絶望」以降の的確にして硬質な文章の顕著なコントラストが特徴的だと感じている。
 
一部に
ウィッチ
民主主義に絶望した果てに国家社会主義を掲げる←そんな史実はありませんが
資本主義に絶望した果てに国家社会主義を掲げるの間違いでわ?
といった頭の悪そうな返信もあったが、このコメントをした方は20世紀の歴史に関して表層的な部分しか見えていないのだろう。
 
ドイツやイタリアでファシズム(国家社会主義)が根付いた背景には世界恐慌による民衆の困窮があった。
しかし、当時民主主義を採用していたドイツ(ワイマール共和制)やイタリア(国王の権限が強い立憲君主制)は「持たざる国」であり、米英仏のように植民地が豊富とはいえず、民衆の困窮を救えないままだった。
やがて、一部の政治家は「民主主義では国民を救えない。国内の民衆を団結させて国民を救おう」と考えるようになり、ファシズムが国民の支持を受けながら国内に浸透していった。
この方はナチスが民主政治下で合法的に権力を握っていったという歴史的事実を見落としているのかもしれない。
 
勿論、世界恐慌が資本主義下で発生したのは事実であり、ウィッチさんのコメントをより精緻なものにブラッシングするならば、「民主主義と資本主義に絶望した果てに国家社会主義を掲げる」といった表現になるだろう。
 
ここで述べたファシズム発祥の経緯は「NHKスペシャル 新・映像の世紀」でも取り上げられており、本シリーズ未聴の方は「NHKスペシャル 新・映像の世紀」シリーズを是非ご覧になってみてはいかがだろうか。シリーズ第3集の概要を見るのも良いかもしれない。
 
 
第3集の概要