〇タイトル

track13 鳥籠のエヴァーグリーン

第二巻 p103~123

 

〇分析

p103

ジャンプで連載される漫画には、回想は黒枠で囲うという慣習がある。あと、1コマ目の指輪をみて感じたんだけど、エミリオの体内にある指輪ってガンマがアッシュ・ドウタ―の金庫からゲットした指輪と形が異なっているように見える。エミリオのはハート型。アッシュ・ドウターのは炎型か。

 

★p104

前回の引きと同じシーンを別の視点から描いている。

 

★p105

扉絵。track10と同じデザイン。

 

★p106~111

ガンマの説明を聞き、自力でエミリオの体内から指輪を手術で取り出そうと言うロスコ―にガンマは「死ぬぞ」と警告する。指輪は自分が寄生している生命体を奪うものに容赦しない。だから、もしロスコ―がエミリオから指輪を摘出しようとすれば、指輪はロスコ―を喰い殺すのだという。p109の産褥とはお産のための寝床と言う意味。ガンマは「バルムンクが来る前にエミリオを別のところに移しておくべき」と提案するが、ロスコ―は「自分の患者は自分が守る」と医師としての矜持を語り、別の病院に移すことを拒んだ。

 

★p112

ロスコ―はウルフィーナがジャーナリストを目指すようになった訳をガンマに話す。彼女の故郷の村には立ち枯れた巨木があったのだという。

 

★p113

3コマ目から回想シーン開始。p103の続き。

 

p114

ハルフィン氏の顔、合衆国43代大統領ブッシュに似ているような気が。作中では上院議員の選挙が行われている。なお、連載当時、アメリカでは大統領選挙が行われていた。

 

★p115~118

ハルフィン氏の護衛のため、病院を遠回りせざる得なくなったウルフィーナ。そのせいで、エミリオの治療が遅れてしまった。エミリオは怪我をした手で指輪をずっと握っていたらしいが、気付いたときには指輪が消えていた。(実際は、指輪が傷口からエミリオの体内に侵入していた。)このとき、ウルフィーナは衰弱していたエミリオに「絶対たすけてあげる」と叫んだ。このことが、ウルフィーナがいかなる権力にも属さず、弱い人たちを守ろうと決意したきっかけだった。

 

p119

ウルフィーナが一年前にこの街(アルカンタラ)に来た理由は明示されていない。

 

★p120

2コマ目のウルフィーナの手にもトーンが貼られている。track10(第二巻p48)同様。

 

★p121

ロスコ―は「私がエミリオくんを助けることができたなら…彼女を解き放ってやることができるんじゃないか…弟くんのために生き続けるという檻の中から」と述べ、ウルフィーナに「自由に生きてほしい」と願っている。2コマ目の大胆な白色の背景がおしゃれすぎる。3コマ目の背景が打って変わって、黒一色なのも効果的。

 

★p122~123

ガンマから指輪の説明を受けた日の夜、ウルフィーナは病院を去ろうとする。ウルフィーナはロスコ―先生に、これ以上、お世話になることを申し訳なく感じたのだった。バイクにエミリオを載せようとするウルフィーナに、一人の人物が姿を現す。

 

★総評

英語版のタイトルはThe Evergreen Birdcageで、常緑の鳥籠という意味。p112の「彼女の故郷の村にあった立ち枯れた巨木」との対比で言えば、原題の「エヴァ―グリーン」は、常緑樹という意味なのではないだろうか。

あと、今回の引きについて。BLEACH破面篇以降の久保ならp123ではなくp121で引きにしていたのではないかと感じてしまった。(それだけ破面篇のテンポの遅さは異常ということ。)

また、p123はジャンプ掲載時には<深夜に病院に来るものの正体はいったい誰!?まさか…バルムンク強襲!?>
<旅立つウルフィーナ!!それに対しガンマたちの意外な行動が!!次号『目的』>
という煽り文が付いていたらしいが、察しの良い読者なら「どうせガンマでしょ」と予想がつく気がする。

 

 

 

 

 

 

〇タイトル

track12 The Ring Of The Dead(わたしの愛があなたを喰らう。)

第二巻 p85~102

 

〇分析

★p85~87

ガンマを見て、「明日の夜ここにまたやってきて、死者の指輪を頂戴する」と言い残し、姿を消したバルムンク。「さらばです」のフランス語のルビなど、フランス語が多く出てくる。

 

★p88

扉絵。黒枠に大き目なコマというスタイル。ガンマが窓ガラスに文字を書くようにして、「Z」と指で書いているが、これはおそらくゾンビパウダーの頭文字だろう。

 

★p89~91

患者の少女(ニナ)を笑顔にするロスコ―医師。ロスコ―はウルフィーナにも懇意で、患者思いの医師である。ガンマは明日の夜までに「ここ(ロスコ―病院)にある死者の指輪を隠すなどの処置をすべき」と助言する。ウルフィーナは「そんなものここにはない」と語るが、ガンマは患者の体内に指輪が入っている可能性を示唆。

 

★p9293

ガンマが実演してみせる。

 

★p94~99

「死者の指輪は常に生に飢えており、それに触れたものは、ヒトであれ獣であれ花であれ侵食され、生命力を奪われ続ける。その喰らった命を使って指輪はゾンビパウダーを”産む”。指輪に喰われた人は外見的には寝ているような状態になる。脈はあるし呼吸もする。点滴などで栄養を与え続ければ、すぐに死ぬこともない。ただし、永遠に目覚めない。内側から指輪に蝕まれる苦痛を感じながら、歳をとって死ぬまで眠り続ける」とガンマは説明する。ガンマに「肉体的には何も問題がないのに何年も眠り続けている患者はいるか?」と訊かれ、一人だけいると応えるロスコ―。

 

★p100

ロスコ―はガンマを信頼し、その患者をガンマに見せることにする。

 

★p101~102

その患者はウルフィーナの弟(エミリオ)だった。track10で登場した写真の男性と同一人物。(ただし、成長はしており、少年ではなく青年になっている)。

 

 

★総評

英語版のタイトルはRing of the Dead (My Love Will Eat You Up)となっている。原題の「The Ring Of The Dead(わたしの愛があなたを喰らう。)」の「わたし」とは死者の指輪を指し、「あなた」とは死者の指輪に蝕まれた生命体(人や獣や花など)を指すのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

〇タイトル

track11 ROCKER&MYSTIC

第二巻 p67~84

 

〇分析

★p67~70

ウルフィーナに尾行してきたガンマ。ガンマに再度、死者の指輪について問われ、ウルフィーナは「一年前くらい前にこの街に来てから何度も、この街に死者の指輪があると聞いた」と答えた。だが、その話をガセ情報と考えているらしい。(p68)その情報の出どころは病院。ウルフィーナはガンマにその病院へ案内することにする。

 

★p71~73

病院の前に着くと、人影が見えた。どうやらハットを被った男が病院の中に入ろうとしているようだ。ガンマはその男(バルムンク)に見覚えがあった。バルムンクに去るように伝える院長(ロスコ―医師)。ロスコ―の後ろには看護師(ユリノア)と患者の少女(ニナ)が見える。ロスコ―は患者を守ることを宣言するが、バルムンクが去る様子はない。

 

★p74~80

バルムンクは耳から拳銃を取り出し、ロスコ―らに銃口を向ける。ウルフィーナはバルムンクに攻撃をしかけるが、あっさりと攻撃を交わす。バルムンクは子供と女性に手加減をする性格らしく(ガンマに似てる)、ウルフィーナが自分を追い払ってきても、ウルフィーナに怪我を負わせることはなかった。しかし、バルムンクはウルフィーナに容赦しないことを告げ、ハットから虎を取り出し、ウルフィーナを襲わせる。すると、ガンマがやってきて虎を片手で殺した。

 

★p81

「よォ久しぶりだな 『魔術士』」と話すガンマ。魔術士にはスミテックとルビが振ってある。バルムンクもガンマと面識がある素振りを見せる。

 

★p8283

バルムンクの強さを察したウルフィーナ。

 

★p84

「A0 級がS0 級に向かって吐いていいセリフか」と威圧するガンマ。A0 級には「オマエ」、S0 級には「オレ」とルビが振ってある。互いに迎え合うガンマとバルムンク。

 

★総評

タイトルを和訳すると「揺さぶる人と魔術士」。物入れという意味のロッカー(locker)とはスペルが異なるので注意。

 

 

〇タイトル

track10 ウルフィーナ(Has No Lips for Tell You)

第二巻 p47~65

 

〇分析

★p47

ホテルでガンマを待っているスミスとエルウッド。3コマ目の雲を表すトーンの貼り方が特徴的。BLEACH以後の久保が描く空のトーンとは貼り方が少し違う。

 

★p48

扉絵。track4と同じデザイン。文字だけ横向きに(90度右回転)描かれている。久保はこのページのように、普段はトーンを貼らない肌のキャラであっても、そのキャラを強調させるときは、トーンを貼ることが多い。

 

★p49

ガンマの右腕をみて「あんた芥火ガンマでしょ」と驚くウルフィーナ。4コマ目の背景のトーンは女キャラの激まずスープにも貼られる傾向が強い。

 

★p50~52

スカマンデロ一味とのゴタゴタを聞きつけた警察がやってくる。警察はガンマに目を付けるが、何故かウルフィーナを女神扱いする。ウルフィーナは、悪党どものスクープを連発しており、多くの犯罪組織を潰してきた有能ジャーナリストとのこと。「ウルフィーナがジャーナリストになって二年弱でとったスクープは68件にも及ぶ」という。それを聞いたガンマは「死者の指輪の情報にも詳しそう」と判断し、警官に近づく。警官が接近してくるガンマに発砲するが、ガンマは銃弾を手でキャッチし、ノーダメージ。警官はそんなガンマに恐怖し、ガンマにウルフィーナの住所を教える。

 

★p53~59

ウルフィーナの家に着いたガンマ。ドアに施錠はされていなかった。家の中にウルフィーナを狙う刺客がいた。その刺客を倒すガンマ。戦闘の最中、ある写真が床に落ちてしまう。

 

★p60

写真には、幼少期のウルフィーナと弟らしき少年の姿が映っている。

 

★p61

ウルフィーナ登場。「片す」とは東京方言で「片付ける」という意味。

 

★p62

5コマ目のように、初期の久保は片目しか描かないことが多い。6コマ目のように、吹き出しにトーンを貼るのも珍しい。

 

p63

「まあ多少はね」って淫夢ネタなんじゃ…。しかし、「真夏の夜の淫夢」の発売は2001年。時代を先取りか。そもそも、淫夢発売と書かれた赤字の真下に久保帯人の「BLEACH」連載開始って風評被害すぎる。

 

★p64

ガンマはウルフィーナに死者の指輪について尋ねるが、ウルフィーナは「そんなものは夢物語」と否定する。ガンマはウルフィーナに実物を見せるが、ウルフィーナは素手で指輪を払う。

 

★p65

ウルフィーナは「そんなものが本当にあるのなら私がとっくに集めてるわ」と言い放ち、病院へ向かう。ガンマは「あいつ…『死者の指輪』を素手で払うなんて危うく『喰われ』るところだったぞ」と独り呟く。『喰われる』とは何のことなのかはtrack12で分かる。

 

★総評

英語版のタイトルはWolfina (Has No Lips To Tell You)であり、直訳すると「ウルフィーナはあなたに話すことなんてない」となる。track3のタイトル「スミス」のように、固有名詞は作中の文章での表記に合わせ、片仮名で書かれる傾向が強い。

 

 

 

 

 

 

 

〇タイトル

track9 トライポッド・オヴ・ジャスティス

第二巻 p28~45

 

〇分析

★p28

金髪の男(スカマンデロ)が、自分の部下たちと共に女性を強姦しようとしているシーンから始まる。少年ジャンプにも拘らず、久保はこのような強姦や売春といった描写をストーリー上に入れることを躊躇わない。(例、第三巻収録の短編「刻魔師 麗」や、BLEACH第一巻の井上織姫の母など)そんななか、謎の女性カメラマン(ウルフィーナ)が窓からスカマンデロたちを盗撮する。スカマンデロの詳細は第三巻の人物紹介9 に詳しく書いてある。

 

p29

女性カメラマン(ウルフィーナ)が自己紹介する。

 

★p30

扉絵。track4と同じデザイン。

 

p31

アルカンタラに移動したガンマとスミスとエルウッド。ガンマは一人散歩している間、スミスとエルウッドはトランプで賭け事をしている。エルウッドは賭け事をしながら、『バチェラー・メイト』(和訳すると「独身男性の仲間」)というゴシップ誌を読んでいる。

 

p32

「毎週どこかで宇宙人が発見されてるし」というスミスの返しを読んで笑ってしまった。スミスがインチキをしているのではないかと疑うエルウッド。2コマ目で、『バチェラー・メイト』を読んでいるスミスが或ることに気づく。

 

★p33

ヴァレリーという女の情報屋と公衆電話で通話するガンマ。ガンマたちがアルカンタラに移動したのは指輪を探すためだった。

 

★p33~37

ウルフィーナと出会うガンマ。二人とも初対面であった。そんななか、ウルフィーナを追っていたスカマンデロ一味と遭遇する。

 

p3839

シリアスとコミカルなシーンが1コマほどで交互しており、混乱する読者もいそう。

 

★p40~44

p41にはベサイオ州という固有名詞が登場する。ウルフィーナの出身地もベサイオ州。

p43でスカマンデロ一味の部下が「いいなああれ」といっているのは、ウルフィーナの巨乳で倒されたかったからであろう。スカマンデロはウルフィーナに射撃するが、ガンマは右腕で銃弾を止める。

 

★p45

ウルフィーナはトライポッド・オヴ・ジャスティスを銃かのように使ってスカマンデロを倒した。トライポッド・オヴ・ジャスティスは戦闘力の高い武器なのだと分かる。

 

 

★総評

タイトルはトライポッド・オヴ・ジャスティスと片仮名だが、track4~7は英語だったのだから、Tripod of Justiceと英語表記でも良かったのではないかと感じた。まあ、トライポッド・オヴ・ジャスティスは、作中でよく登場する固有名詞なので、あえて片仮名表記のタイトルを久保は採用したのだろう。(作中でトライポッド・オヴ・ジャスティスという単語が出てくるときは、英語ではなく片仮名で記されている。)事実、track3のタイトル「スミス」も英語表記ではなく片仮名である。

 

 

〇タイトル

track8 Search & Bangaway

第二巻 p7~27

 

〇分析

p7

1コマ目の「ゴトン」は筆ペンとトーンで描かれている。ガンマの攻撃を受け、死にかけていくキャルダー。手には皺が見える。

 

p8

扉絵。track4と同じデザイン。p7は上の部分(一段目と二段目。すなわち1~3コマ目)でキャルダーを、下の部分(三段目。すなわち4コマ目)でガンマたちを描いている。p8もp7と同じく、上のコマでキャルダーを、下のコマでガンマを描いている。このような工夫は読みやすさをよくするのに繋がるだろう。

 

★p9

1コマ目の「塞き止められていた命の流れがあふれつくした…それだけなんだが…」と2コマ目の「惨めなもんだな」の発言主は明示されていないが、文脈から判断しておそらくエルウッド。5コマ目のスミスの顔は、片目しか目が描かれていない。久保は次第に眼鏡キャラの目を描くときは、両目とも描かないか、両目とも描くようになっていった。

 

p10

スミスはアジトに爆弾をしかけていた。track5でスミスが「やれやれ、間に合うかな」と不安そうにつぶやいていたのはそのため。5コマ目の背景のトーンは、第三巻収録の「刻魔師 麗」でも使われている。

 

★p11~13

キャルダーの姉かのように扱われていた女性が目を覚ますが、その女性が「拷問室の奥の鉄扉の中に、捕まっている人がいる。私の父もその中にいる」と話す。それを聞いたガンマは「こうなりゃ1人助けるのも100人助けるのも同じだ!こっちが爆発するまで全員助けてやる」と良い意味で投げやりになる。

 

★p14

拷問室の奥の鉄扉を手動で開くガンマ。ガンマが正義の味方と名乗り、捕らわれていた人たちを救うと宣言する。このシーンはコミカルに描かれている。

 

★p15

キャルダーの姉かのように扱われていた女性の名前がサンドラと判明する。サンドラが父と再会。前のページと違ってこのページはシリアスに描かれている。スミスの仕掛けた爆弾がいまにも大爆発しかけている。

 

★p16

ガンマは「全員 黒焔鎖につかまれ 一気に行くぜ」と言い、スミスに金庫室の位置を訊く。黒焔鎖には「そいつ」とルビが付いている。5コマ目のエルウッドの吹き出しに「大体 何をするか分かった」と手書きされていることから、エルウッドはガンマが何をしようとしているのか察したのだろう。

 

★p17

ガンマが技「火輪斬術空戦段!!」「五梢空雷炮(ごしょうくうらいほう)!!」を発動し、スミスらと共に地下室から金庫室へ移動する。金庫は金庫番ブラザーズという二人組が管理しているのが分かる。

 

★p18~21

p19をよくみると、指を切られたサンドラの片手には包帯のようなものが巻かれている。片手で金庫番ブラザーズの握った拳銃を握りつぶしたガンマは金庫番ブラザーズに「邪魔さえしなければ命は取らないからお前らもさっさと脱出しろ」と告げる。そして、刀で金庫を開ける。

 

p22

ガンマらは死者の指輪をゲットする。track1(第一巻p11~12)にあるように、死者の指輪を全部で12個集めればゾンビパウダーが手に入る。ゾンビパウダーは第一巻p5で「死者を蘇らせ、生者を不死にする悪魔の秘薬」と説明されている。

 

★p23

金庫室に緊急警報が流れ、「たった今 何者かによって2階金庫が破壊されました。指輪の盗難を防ぐためこれより2階金庫室を強制爆破します」とアナウンスが入る。

 

★p23~25

ガンマは黒い火炎(黒焔鎖か)を生じさせ、鳥籠のように人々を包むことで全員の命を救った。

 

★p26

助かったことに安堵する人々。しかし、ガンマは直ちに安堵する人々から離れ、立ち去ろうとする。ガンマはサンドラにお礼を言われるが、そっぽを向いて逃げてしまう。

 

★p27

ガンマは「礼を言われるのは慣れていない」と語り、照れている。スミスは手に入った指輪にキスをしている。

 

★総評

Search & Bangawayはsearch and bang awayという意味。ルビは「サーチ・アンド・バンガウェイ」ではなく、「サーチ・アンド・バンナウェイ」と振ってある。和訳すると「探すことと大いに励むこと」という意味になる。

track3で、<アッシュ・ドウター(ash daughter)は「灰の小娘」という意味。この意味はtrack8を読むまで読者には分からない。>と述べたが、アッシュ・ドウターがシンデレラの異称だいうことを知らなけば、track8を読んでもピンと来ないだろう。シンデレラは深夜0時になると、魔法が解けて、本来の姿に戻ってしまう。キャルダーも、成長因子操作薬を使うことで本来の姿(老人)になるのを誤魔化していたが、ガンマに敗れ、本来の姿を晒すことになった。

このシーン(p8~9)は、シンデレラが深夜0時になって本来の姿に戻ってしまったことを踏まえているのだ。

このことが、キャルダーがリーダーを務める強盗団の名前の由来である。

 

 

 

 

〇タイトル

track7 BLACKFIRED

第一巻 p169~189

 

〇分析

★p169 

2コマ目の「ガシャン」はおそらく筆ペンで書かれている。

 

★p170

扉絵。track4と同じデザイン。

 

★p170~180

キャルダーはガンマに襲い掛かるが、手加減しなくなったガンマに押され気味になる。p177に「あの野郎、剣を右に持ち替えて動きは良くなったが、モーションのデカさは変わってねえ」とあるので、ガンマは右利きだと分かる。「動きは良くなった」は動作が俊敏になったという意味で、「モーションのデカさ」とは剣が大振りという意味か。

 

p181183

ガンマの腕に火輪斬術の刺青があるのに気づき、キャルダーは驚く。スミスによると、ガンマは4年で火輪斬術をマスターしたのだという。キャルダーのいう「あの男」が誰だったのかは明かされないまま連載が終了となってしまった。

 

★p184~185

ガンマの全身から黒い火炎が湧き出てきた。火輪斬術は全身に黒い殺気の火炎をまとって戦う斬術。

火輪とは太陽の意味。本文では火炎は焔(ほのお)と表記されている。ガンマの台詞文では「まとって」と平仮名で書かれているが、次第に久保は「纏って」と漢字表記することが多くなった。

 

★p186

キャルダーはガンマの実力に圧倒され、逃走を図ろうとするが、ガンマに「いまさら逃げようなんて そんなわがままは通らないぜ」と言われ、一撃で斬殺される。

 

★p187~188

ガンマの左手から黒い火炎の鎖が現れ、技「火輪斬術射戦段!!」「伏龍炮(ふくりゅうほう)」を発動。

 

★p189

ガンマは「じゃあなスピンボーイ」と言い残し、キャルダーの命を絶った。

 

★総評

ガンマとスミスはtrack7までの間に多くの敵を殺しているが、p186の「いまさら逃げようなんて そんなわがままは通らないぜ」発言から「敵であっても、むやみやたらに殺すわけではない」というガンマのポリシーが窺える。実際、track2ではエルウッドを襲った敵二人のうち、一人の命は奪っていない。

タイトルは、身に黒い殺気の火炎をまとって戦う火輪斬術を指している。

 

 

〇タイトル

track6 Deceiving Jet Joe

第一巻 p149~167

 

〇分析

★p149 

2コマ目の吹き出しにあるように、初期の久保は「・」を台詞文中で多用していた。おそらく「…」ほど長くはない間を表しているのだろう。

このような台詞文中の「・」は次第に見られなくなっていく。

 

★p150

track4の扉絵と同じデザイン。

 

★p151~153

ガンマと交戦するキャルダー。太刀筋など、ガンマとキャルダーは剣術用語に詳しいようだ。

 

★p154

キャルダーがガンマを「ガキ」と呼んでいる。キャルダーはエルウッドよりも年下に見えるような容貌なのに…。

 

★p155~161

キャルダーの刀「ジェットリッパ―」はジェットの推進力を用いる機能が搭載されている。キャルダーはスピンしながらガンマを攻撃する。網膜に「め」とルビを振るなど久保の独特な言語センスが垣間見られる。「永遠に美しく 永遠に強い この!」「”スピンボーイ”キャルダーの姿をな!」とあるので、スピンボーイというあだ名がついていたのだろう。

 

p162

4コマ目では活字の文章のそばに「バカだから」という手書きの文が書かれている。

 

p163

スミスがある指摘をエルウッドにする。4コマ目のエルウッドの顔はコミカル寄りに描かれているが、鼻と口は描かれていない。

 

★p164

キャルダーに「キャルダーおじさん」と呼ぶスミス。

 

★p165

スミスは「成長因子操作薬(フェニキサミン)でキャルダーが加齢のスピードを落としていること」を見破る。4コマ目の「その方面」とはアンチエイジング関連の分野を指すと思われる。だが、成長因子操作薬は完全ではなく、永遠に加齢を抑えられるというわけではない。だから、キャルダーは指輪を求めている。

 

★p166~167

キャルダーが実は子供でないと知らされたガンマは「手加減をしない」と宣言。女と子供に甘いガンマは、今まで左手一本で格闘していた。p164までの格闘シーンを見ると、確かに左手しかガンマは使っていない。

 

★総評

タイトルのJet Joeについて。Jetはジェットの意味。Joeは俗語で「男」「やつ」「野郎」といった意味。つまり、Deceiving Jet Joeは「ジェット野郎(キャルダー)を欺いている」という意味。

 

〇タイトル

track5 face behind the mask

第一巻 p129~147

 

〇分析

p129

センターカラー。今回のセンターカラーでは横長の方向に描かれている。(横長とは通常のページから右に90度回転された向きのことを指す。)このようにセンターカラーを久保が横長の向きに描くのは珍しい。

 

★p130~132

スミスとガンマが敵を倒している最中、エルウッドは逃げ続けていただけだった。戦闘が片付いた後、エルウッドは地下の方から子供が「助けて」と言っているのに気づき、地下へと走る。ガンマが「クソガキ」といらだちながらエルウッドに続くも、スミスは何かを思い出しながら「やれやれ、間に合うかな」と不安そうにつぶやく。

 

p133~134

フードを被った男(キャルダー)が何故か拷問室で手を縛られている。実は、キャルダーはtrack4で怯えていた女性の弟になりすましているのだ。実際、キャルダーのなりすましを幇助している敵たち(キャルダーの部下たち)は汗をかいている。

 

★p135

エルウッドとガンマが地下にある拷問室に到着する。敵が「芥火ガンマ!」「よし!誘引作戦は成功」と口走っていることから、地下からの子供の声はガンマを誘引するための罠だったと分かる。姿を現したガンマを殺そうとする敵たちだったが、スミスの銃で瞬殺される。

 

★p136

スミスも拷問室に到着。スミスはガンマに「作戦か…ここまでだと思う?」と問う。スミスとガンマは「まだ裏がありそうだ」と察していた。

 

★p137

赤の他人の女性を自分の姉であるかのように装うキャルダー。キャルダーは指を切られたその女性のもとに駆け寄り、「よかった…死んでない…気を失っているだけだ」と呟く。それを見てエルウッドは安堵する。ガンマは「そいつはもう大丈夫だ。さっさと指輪を取りに行こうぜ」とエルウッドに言って帰ろうとする。

 

p138

すると、キャルダーが「まって!ぼく一人じゃお姉ちゃんを運び出せないよ!」「お願いだよ!お兄ちゃんお姉ちゃんを運んで!」とガンマに懇願するような顔で言う。ガンマはエルウッドを見て、エルウッドの姉を救えなかったことを思い出す。3コマ目と7コマ目で、ガンマの目が描かれているが、7コマ目は3コマ目と比べて目がやや閉じられている。このように久保は微細な描写を通して、キャラの心情を巧みに描いている。

8コマ目で「……わかった 運んでやる」と言っているのは、エルウッドではなくガンマ。エルウッドが口を開けているので一見、誤解しやすいが、よく見ると吹き出しの三角形の部分がへこんでいる。

 

★p139

よく見ると、キャルダーの肩にバッグが掛けられている。このバッグはp137の1コマ目でも描かれている。p133の2コマ目にもある。

 

★p140

ガンマに赤の他人の女性を背負わせたところを狙うキャルダー。キャルダーはバックに自分の刀を隠していた。

 

★p141

瞬時に攻撃を察知し、あっさりと交わすガンマ。

 

★p142~144

ひと一人背負わせておけば大抵の人間なら一発で殺せるのに…と語るキャルダー。ガンマに正体を問われ、キャルダーは「オレはレーンウォーター・キャルダー」「アッシュ・ドウタ―強盗団のリーダーだ」と名乗りを上げる。

 

★p145

赤の他人の女性を罵倒するキャルダー。「オレはキャルダー 永遠に美しく 永遠に強い」「アッシュ・ドウタ―のリーダーだぞ」「それをちょっと血ながしただけで失神するような脆い女と姉弟だと!?」「笑わせる!思うぜ!てめぇみたいな馬鹿な餓鬼を見るといつもな!このオレがどんだけてめぇカスより強いのかってことをカラダに刻んでやんなきゃって・・・」と不遜な発言を繰り広げる。

 

★p146

キャルダーに鉄拳を振るうガンマ。2コマ目をよく見るとガンマの背中に黒色の蝶が描かれているのが分かる。

 

★p147

刀を握り、キャルダーを睨みつけるガンマ。この引きだけで、次週以降ガンマらとキャルダー間の格闘が始まると予想がつく。

 

★総評

裏の裏をかく展開が続いている。タイトルの和訳は「仮面の裏の顔」。これは拷問の最高責任者であるにも拘らず、拷問の被害者になりすまし、ガンマの命を狙っていたキャルダーのことを指している。

p145のキャルダーの台詞が実は意味深。詳細はtrack6にて述べる。

 

 

 

 

 

ゾンビパウダー解説 track3

 

 

〇タイトル

track4 shakin' edges&smokin' barrels

第一巻 p109~127

 

〇分析

★p109

「死んでもらおうか」と言いながら鉄格子越しに、エルウッドの額に銃口を向けるスミス。

1コマ目をよく見ると、スミスの握っている拳銃、サイズ大きすぎる気がする。

 

★p110

扉絵。黒枠に白文字のタイトルと小さなコマが描かれている。このような扉絵のデザインはBLEACHの最終章でのFriends(1~4)の回でも採用されている。

 

★p111

3コマ目のエルウッドの顔において鼻が線で描かれていない。BLEACH破面編以降の久保は、キャラの顔を書く際に鼻を線で描く場合が多い。

4コマ目で「ボロッ」と吹き出しがあるが、久保はオノマトペの吹き出しでは手書きの文字を使う傾向にある。

 

★p112

エルウッドの手錠を銃弾で破壊したスミス。3コマ目でエルウッドと吹き出しの間に長い間があるが、久保はキャラと吹き出しの間隔を広くとる手法をよく用いる。

 

★p113~115

今までのは演技だったと話すスミスとガンマ。エルウッドは「(スミスは)ガンマを殺す勢いで攻撃していたじゃないか」と問いただすが、スミスは「ガンマを殺すつもりで攻撃していた」と語る。二人が互いを深く信頼していることがわかる。

 

★p116

1コマ目で、エルウッドの影が黒ベタで描かれている。久保は基本的に影を細い線で描くことが多い。

 

★p117~120

スミスの裏切りに気づき、スミスらに接近してきた敵を倒していくスミスとガンマ。ガンマが敵の生首を飛ばしているのを見てエルウッドがびっくりしているシーンがあるため、エルウッドはスミスとガンマの二人と違って殺人に慣れていないのだろう。

 

★p121

4、5コマ目のような露骨な説明文は本作以降の久保作品からはあまり見られなくなっていく。

 

★p122~123

振りむくことなく自身の後ろにいた敵を射撃し、瞬殺するスミス。エルウッドはスミスの戦闘力の高さを実感する。

 

★p124~125

拷問室で民間人の指を切断するなど、暴行を加える男が一人。男はフードを被っており、片手に刀を持っている。拷問の途中、部下の一人が「キャルダー様」と呼び出しをする。

 

p126

キャルダーに「キャルダーの許可なくガンマを持ちかえって逃げられた」と報告するバックリィ。キャルダーはバックリィの不手際を責め、拳を握りしめながら「顔と腹どっちがいい」と問う。2コマ目ではキャルダーは刀を背中にしょっているのに、4コマ目のキャルダーの背中には刀が描かれていない。それはおそらくキャルダーが刀を背中から左手に持ち替えたためだろう。

 

p127

(キャルダー様に殴られる)と思ったバックリィは、「(歯が折れたら嫌なんで)腹」と答えたが、キャルダーは腹を殴らず、腹を切り裂いた。

キャルダーはガンマに興味を示す。

 

 

★総評

タイトルの意味は「刀を振るい、銃身から硝煙を放っている」という意味。1998年のイギリス映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』に影響されたタイトルの可能性がある。どうやらキャルダーは窃盗団「アッシュ・ドウター」のリーダーのようだ。