野球の国際大会であるWBC(ワールドベースボールクラシック)は2006年に第1回大会が行われ、2026年の今年も第6回大会が実施された。
第7回大会が何年に実施されるのかは不明だが、回を重ねるごとにWBCの観客動員数は右肩上がりとなっている。
また、WBCの開催を実質的に司っているMLB(メジャーリーグ)も今後のWBCの開催に凄く前向きなので、2029~2030年ごろに第7回大会が実施されるのはほぼ確実視されている。第7回大会に限らず2032~2034年ごろには第8回大会も実施されるだろうし、更にその後の時期に第9回大会も実施されるだろう。
WBCは野球の国際大会な訳だが、サッカーでいえばFIFAワールドカップという国際大会がある。
前述したように、WBCは著しく成長し続けている国際大会であるが、ワールドカップの歴史や経済規模は尋常ではないレベルで傑出している。
そもそも、東アジア・北米・中米・オーストラリア・オランダ・イタリア・チェコ・ドイツなど一部の国でしかあまりプレーされていない野球と比べて、サッカーは世界中の多くの国々でプレーされている。
事実、WBCは2026年の本戦の出場国が20か国に留まるのに対し、2026年のワールドカップは48か国も出場する。
他にも、大会をFIFAという国際組織が主催しているのか、それともMLBという特定の国のプロリーグが主催しているのかという違いや、NPBやMLBのプロ野球選手が日本シリーズやワールドシリーズの制覇を夢見ている一方で、プロサッカー選手のほとんどは所属しているリーグでの優勝も重視しつつワールドカップ優勝を最大の目標としている違いがある。
そのため、一概にWBCはワールドカップを見習うべきとは言い難いのだが、それでもWBCがワールドカップに匹敵するほどの規模の大会になることを目指すのであれば、野球の競技人口や野球ファンの人口を世界規模で増やすということに加えて、WBCの開催形式をブラッシュアップすることを検討すべきである。
以下で、筆者が個人的に考えるWBCの開催形式の改善案を挙げてゆく。
改善案①:開催年度の間隔を固定する。
2023年大会と2026年大会に関してはコロナ禍の影響があるのでやむを得なかったと言えるが、WBCは開催年度が2006年、2009年、2013年、2017年、2023年、2026年と大会の間隔がばらばらとなっている。
世界中にいる野球ファンや野球関係者たちの間で、WBCの存在感を高めるのであれば、決まった間隔(4年ごと)で大会を開催することを検討しても良いのかなと感じる。
五輪やワールドカップがスポーツ界で大きな存在感を放っているのは、大会の歴史や経済規模などのほかに、「何年後に、次回大会が行われるのかが自明である」という点が大きい。
例えば、五輪やワールドカップで不本意な結果となった選手が「この悔しさを4年後に晴らしたい」などと述べることは珍しくない。
しかし、或る五輪が終わったときに次の五輪の大会が実施されるのかが不明だったり、次回大会の実施がほぼ確実であってもそれが何年後になるのかが今の大会が終わった直後の時期であるにもかかわらず未定だったりする場合でも、このような言葉がきかれるのかと言われれば、それは違うだろう。
夏や冬の五輪やワールドカップは、世界大戦やコロナ禍などの緊急事態がなければ、決まった間隔(4年ごと)で開催される。そのため、或る大会が終わった直後の時期に「次回大会が何年に実施されるのか不明」という状況になっていることは原則ない。
夏季五輪の開催年度が2024年、2028年、2032年、2036年……であり、野球が夏季オリンピック競技として採用されるケースがあることを踏まえると、WBCは夏季五輪と別の年度に開催するのが望ましい。
具体的には「2026年以降のWBCは基本的に4年ごとに開催する」というようなルールが考えられ、その場合、WBCの開催年度は2026年、2030年、2034年……となる。
改善案②:大会ごとに開催国を大幅に変更する
ワールドカップでは年度ごとに開催国が変わる。たとえば、2018年はロシアで、2022年はカタールで開催されたし、2026年もカナダ・メキシコ・アメリカの3か国で共同開催される。
五輪もロンドン、ブラジル、日本、フランスなどと開催国が大会ごとに変わってゆく。
野球の競技人口が一定の水準を上回っている国はワールドカップや五輪の参加国ほどではないという問題はあるが、WBCも開催国(本戦の試合が行われる国)を年度ごとに変えてみてはどうだろうか。
WBCは、第1回から第6回に至るまで、決勝や準決勝などの大会終盤は米国のスタジアムで実施され、大会序中盤のリーグ戦は米国・日本(・台湾)などといった「いつメン」の国のスタジアムで実施されている。
今後は「大会序中盤のリーグ戦から準決勝や決勝に至るまで本戦の全ての試合を1か国で開催する」ということを提案したい。
例えば、第7回大会は開催国をアメリカのみとする。
その場合、アメリカや日本やブラジルや韓国やチェコなどの選手たちは、大会序中盤の段階でアメリカにいることとなる。
全ての出場国は、アメリカの複数のスタジアムでリーグ戦を行っていく訳だが、決勝トーナメントに進出した国の選手はアメリカに残り続け、リーグ戦で敗退した国の選手はアメリカから「普段、自分が住んでいる国」へ帰ることとなる。
第7回大会がアメリカのみで開催されたならば第8回大会は北中米や東アジアのどこかの国のみで開催されてもよいのではないか。
MLBの選手らは自分らが慣れ親しんだ国(アメリカやカナダ)のスタジアムで決勝トーナメントがプレーできず不満かもしれないが、WBCに参加するついでに異国の地で観光旅行や野球の広報活動をすることも出来る訳で、観光旅行や野球の広報活動といった魅力をメジャーリーガーにアピールするという方法もある。
もちろんWBCが今まで通り3月に開催されるならば、「翌月にはMLBの公式戦が始まるのに、なぜMLBシーズン開幕の直前に米国やカナダ以外の国へ行かねばならないのか」といった声も挙がりうる。
その場合は、WBCの開幕時期を2月下旬に少し早めることで、WBCの決勝戦の日付とMLB開幕戦の日付をもっと空けることや、「第7回大会だけではなく第8回大会もアメリカ単独開催にするから、その代わり第9回大会はアメリカ以外の国で単独開催するというのはどうですか」などと話し合うことなどを考えても良いだろう。
改善案③:リーグ戦の国の組み合わせをもっとランダムにする
前述したように、今までのWBCでは大会序中盤に行われるリーグ戦の国の組み合わせが「いつメン」状態になりやすかった。
例えば、東京ドームで行われたリーグ戦をみていくと、2006年の1次ラウンドA組は「日本・中華人民共和国・チャイニーズタイペイ・韓国」で、2009年の1次ラウンドA組は「日本・中華人民共和国・チャイニーズタイペイ・韓国」で、 2013年の2次ラウンド1組は「日本・キューバ・チャイニーズタイペイ・オランダ」で、2017年の1次ラウンドB組は「日本・キューバ・中華人民共和国・オーストラリア」で2017年の2次ラウンドE組は「日本・イスラエル・オランダ・キューバ」となっている。
2023年の大会は東京ドームで1次ラウンドB組と準々決勝が行われたが、1次ラウンドB組は「日本・韓国・オーストラリア・中華人民共和国・チェコ」で、準々決勝は「日本・イタリア・キューバ・オーストラリア」だった。
そして、2026年は1次ラウンドC組が「日本・オーストラリア・韓国・チェコ・チャイニーズタイペイ」となっている。
このように、今まで日本がWBCのリーグ戦で対戦してきた相手国は結構マンネリ化していることが分かる。
もちろん、リーグ戦における日本の対戦相手がかなり固定されているのには理由があり、それは端的に言えば興行的な事情による。
野球人気が高い地域は世界の中でばらつきがあり、野球人気が高い国は東アジアや北中米に集まっている。
時差の問題もあり、東アジアの国の試合は東アジアのスタジアムで実施し、北中米の国の試合は北中米のスタジアムで実施したほうが、野球中継の視聴率が高くなるし、現地観戦もしやすくなる(例えば、韓国在住の野球ファンが日本のスタジアムへ行くのと、韓国在住の野球ファンが北中米のスタジアムへ行くのとでは移動にかかる時間や費用が全然ちがう。また、東アジアと北中米には時差があるため、例えば東アジアのスタジアムで北中米の国同士の試合が実施され、その試合が13時スタートである場合、北中米に住んでいる人にとっては深夜スタートの試合となりうるため視聴するハードルが高くなる)。
これらの興行的な事情を踏まえると、東アジアの国のリーグ戦が日本のスタジアムで開催されがちとなり、北中米の国のリーグ戦が北中米のスタジアムで開催されがちとなるのは十分に理解できる。
だが、興行面のことばかりを重視してしまうと、2026年の1次ラウンドC組で「台湾だけが初日から4連戦という日程」となり、日本以外の国も「ナイターで試合をした翌日にデーゲームという過酷な試合日程」を余儀なくされるなどといった露骨すぎる「日程の有利・不利」が発生してしまう。
ワールドカップは、基本的に日本以外の国で開催されるので、日本戦が日本時間の深夜や早朝に始まることも多い。しかし、そうであるにも拘らずワールドカップの日本戦は地上波放送されるたびに高い視聴率を叩き出す。
本当の意味で魅力や注目度の高い大会であれば、「一次ラウンドの日本戦が全て日本時間の19時にスタート」というような日本在住者にとって素晴らしすぎる日程でなくても、高い視聴者数や人気を集めることは可能なのではないだろうか。
以上で3つの改善案を紹介したが、WBCの実質的な運営組織がMLBであることを踏まえると、MLBやメジャーリーガーの選手会、そしてNPB等の各国のプロフェッショナル野球リーグの同意なくして、上記の改善案の実現は不可能である。
改善案①は比較的、各国のプロフェッショナル野球リーグに属する選手たちの賛同を得やすいように思うが、改善案②と改善案③は興行性や収益性に大きく影響しうる案であるため実現のハードルが高いと感じる。
本記事の読者の皆様はWBCの開催形式について、どのようなアイデアをお持ちだろうか。
コメント欄などでご教示くだされば幸いである。