2022.4 臨時号 NO.170 キエフ VS キエル
私は、ウクライナに行ったこともなくほとんど何も知らないで、本ブログ2013年9月号NO.27(「ウクライナ と ユウクライナ」)にて、名横綱の大鵬親方の父親がウクライナ人だとか「世界10大美女都市」でキエフが1位だとか他愛もないことを書いた。その時は、今回のウクライナの美しい街並みと灯りが消えるとか露にも想像していなかった。
今般のロシアによるウクライナ侵攻は、下衆な私は卑陋な喩えしかできないが、「守ってくれると信じていたウクライナ人女性が米警察官に相談した。米警察官から『もめているとはいえ、民族は違えど同じ屋根の下で暮らした間柄ではないか。民事に介入はできない』と言われる。ドイツ人からは護身用の銃が贈られると思ったら大量のコンドームであった。女性は町を離れる選択肢もあったが独り残った。襲うロシア人は『リベラルな米警察官なら、2014年の時もそうだったが、スタッフも変わらないなら今回も手出ししない』と高を括っていた。そして思惑通りロシア人は襲ってきた。周りは米警察官に「刑事事件になった。助けるべきだ」と言うが、米警察官は爆弾を持っているので近づけないと答える。ロシア人の方は襲ったものの誤算続きで罠に嵌められて袋のネズミかと焦っている」というところか。それで熊のような猫のハズのプーチン大統領が窮鼠と揶揄されるのか(成り上がり独裁者の先輩ナポレオン、ヒトラーはロシア遠征で落日を見た。プーチン大統領はウクライナ侵攻で、同じ道を辿ることになるのか)。
(中国問題で私が一番耳を傾ける)遠藤誉女史は、米国のバイデン大統領の狙いは「米軍のアフガン撤退の際に失った信用を取り戻すと同時に、アメリカ軍事産業を潤すだけでなく、欧州向けの液化天然ガス輸出量を増加させアメリカ経済を潤して、秋の中間選挙に有利となる。」ことと言った(さらに米国にとって望外の収穫は、日清戦争の折中国が眠れる獅子ではなく、張り子の虎だったことが分かったように、ロシアが予想された以上にハイテク機器を用いた戦術面、兵站面、兵士の質面で通常兵器戦では米国の敵ではないと判明できたことであろう)。
バイデン大統領はウクライナを囮にして上手くロシアに戦争へ誘いこんだ(ゼレンスキー大統領にはロシアからの侵攻情報を与えた上で、戦争回避ではなく、武器は提供するから戦えと嗾けたのか)と私も疑いの目を向ける。
米国は自ら戦うわけでも、停戦させるわけでもなく、ウクライナに2億ドルの武器を供与するという。戦争両国の戦闘を長引かせ両国民がそれだけ犠牲となる。世界の警察官としての米国の威信を大きく失墜させた。私は失望し、単なる無能ではなく狡猾さもあるバイデン大統領に嫌悪感さえ抱く。米国民もプライドが傷つき中間選挙は民主党の惨敗に終わると思いたい。
これまでトランプ前大統領を貶してきたが、トランプ氏が再選していれば、米国民を分断する内政はともかく、プーチン大統領もウクライナ侵攻はしなかったかもしれない。プーチン大統領は半狂気を装い核を使うと脅せば米大統領だけでなく世界が恐れをなすと考えただろう。しかし、冷徹なプーチン氏ならばこそ氏の理解を超えるトランプ氏(狂気を演じるのは一枚上手。トランプだけにポーカーの心理戦はお手の物か)が相手では脅せば脅し返され本当に何をされるか分からないと自重するのでは。たしかにトランプ大統領の在任中は、プーチン大統領だけではなく、北朝鮮の金正恩総書記も中国習近平国家主席も大人しくしていた。
もっとも、バイデン大統領も戦略核による米ロ戦争を恐れた訳ではないだろう。ウクライナ侵攻後も軍事介入しない口実に利用しただけ。TV情報番組に引っ張り凧の東大小泉悠専任講師はキエフ陥落に際し西側の支援をけん制すべくロシアが小規模な核攻撃を人けのない所にかけるかもと懸念しているが、ブラフに終わるだけかどうかは分からない。が、米国本土に先制戦略核攻撃するようなことはないだろう。
ロシア軍の幹部が大統領の命令に従うのは軍の「(家族も含めた)安全」と「権益」が保障されていることが前提であり、それに反する、米ロ双方破滅的な結果に終わる先制戦略核攻撃を命令されれば軍事クーデター等でプーチン大統領が錯乱、狂乱したとして排除されよう(実際の核ボタンを押す軍幹部は米ロ間のホットラインがあるのでは)。米国とて同じ。
台湾有事の際米国が軍事介入しないのではないかとの心配も杞憂だと思う。ウクライナは、碁で言えば、花見コウ。ウクライナは、元々ソ連領でありプーチン大統領にとって死活問題だが、米国・NATO諸国にとってはそもそも民族問題を抱えるウクライナは簡単にはNATO入りできない為。台湾有事の場合は、覇権を賭けた米中における本コウであり、核保有数で中国より優位に立つ米国内に「台湾関係法」もあり、米大統領・米軍にとって米国民の厭戦気分などどこ吹く風。
ウクライナは5大戦勝国に裏切られた。1991年ソ連邦の崩壊に際しソ連邦の一部であったウクライナは独立した上、ウクライナ領内に残る約1900発の核弾頭の保持を主張した。ロシアを初め国連常任理事国(5大戦勝国)はウクライナに対し、核不拡散条約(NPT)への加盟と、核兵器のロシアへの返還を求め、その見返りに「領土保全、政治的独立」に対する安全保障を提供する「ブタペスト覚書」(1994.12.5)が交わされていたという。
2014年のミンスク合意を破りロシアが攻め込み、今回米国がいわば見捨てたのを目の当たりにした北朝鮮の金正恩総書記はリビアのガタフィ大佐の件と併せ「死んでも核は手放さない」と銘肝したことだろう。
戦後発足し77年も経つ国際連合(国連)の英語表記は「United Nations」で第二次世界大戦中の連合国と同じ。実体は「戦勝国連合」なのだ。核兵器の保有など戦勝国の既得権を守る為にある。敗戦国の日本が常任理事国入りを目指したのは何を勘違いしているのかと思われ、核兵器の唯一の犠牲国である日本が核保有国と非保有国の仲立ちするのを外務省OBが自慢気に話しているのを戦勝国以外の国が見れば、戦勝国、とくに米国のポチ犬かと首を傾げるであろう。
拒否権を持つ五大戦勝国が問題を起こせば国連は無力。とくに米国が世界の警察力としての役割を放棄したならば。
二枚舌で狡猾かつ身勝手なアングロ・サクソン系のブロックと中華思想による唯我独尊の中国ブロックとの今後の2極化(近い将来世界一の人口に経済力・軍事力が備わるとインドブロックを含めた3極化?)の中で国際秩序と平和の為の新たな国際機構が必要である。核の「軍縮」ではなく「廃絶」を目指し、常任理事国の拒否権を廃した新しい枠組みの中で、愚直に約束を守ろうとする日本が真に活きてこよう。
今回のウクライナ侵攻で日本が学ぶべき点は以下の通りか。
第1に、戦争はしてはいけない。勝ち目の薄い負け戦などもってのほか。ウクライナ国民には申し訳ないが、自民党元幹事長故野中広務、作家故半藤一利等戦争の悲惨さ、愚かさを訴えて亡くなっていった戦争体験者の気持ちを、我ら戦争を知らない世代が理解することができた。
ヒトラーに擬えられるプーチン大統領ではあるが民族浄化は考えていない。ゼレンスキー大統領自身がターゲットなのに、常軌を逸した戦争に国民を道連れにした(私の孫と同じ年頃の幼児が死傷したり、泣いているのを見ると心が張り裂けるとともに怒りがこみ上げてくる)ゼレンスキー大統領が英雄視される。
平井美帆女史の『ソ連兵に差し出された娘たち』(集英社)によれば、敗戦直後満州に取り残された開拓団がソ連兵に守ってもらう為に「数えで18歳以上、未婚」の若き娘たちを「接待」との名のもとに差し出した。日本に無事に戻ってきた開拓団の者たちは何もなかったように振る舞い、中には犠牲になった娘たちを汚い物を見るような目を向けた。この世は何とも不条理だ。
戦争の犠牲者は、戦う兵士だけではなく、女や子供の弱い立場の庶民だ。
日本の女性諸君! 強い立場の勇ましい高市早苗自民党政調会長や桜井よしこ女史に拍手喝采している場合ではないぞ!
第2に、国のトップを決める方法として直接選挙は危険ということだ。大企業において経営の素人がいきなりトップに起用されることはありえない。コメディアンが、俳優が、大統領になるのに問題がある訳ではない。レーガン大統領は8年間カルフォルニア州知事として政治経験を積んでいる(国民も大統領としての資質を見極めることができた)。
ゼレンスキー大統領は政治家より軍人が向いている。そして、不勉強にしか見えない。日米開戦やソ連の参戦の顛末だけでも研究していればロシアとの戦争は回避するハズだ。(「一将功成りて万骨枯る」は政治家のすることではない。国民は愛国心から戦おうとするが、孤立無援で核を含め戦力に彼我の差がある場合武器を持たない戦争を選択するのが政治家というものだろう)。
人気だけで大統領を決めたウクライナ国民も、今はナショナリズムから精神が高揚して大統領を英雄視しているが、戦争が終結あるいは一段落した時点で冷静さを取り戻せば余りにも多い犠牲者に目が向き後悔するのではないか。勝ったとしても。ましてや敗戦したならば。
現下最もよいとされる民主主義が内包する構造的な欠陥は、「賢者な国民 << それ以外の国民」ということだ。この欠点をカバーする為に代表制民主主義(間接選挙)があると思うが、日本の国会議員はしょせん国民の縮図でしかない。官民問わず人数の多寡に関係なく仕事は“できる者”に集中する。議員歳費目当ての議員、志のない世襲議員を減らす意味でも衆議院の定数を減らす。国の権力者たちの内裁判官、検事は司法試験の合格者。キャリア官僚も国家公務員総合職試験等の合格者である。同じ国家公務員である国会議員は選挙の審判(不祥事には機能。能力には?) があるからとは言え同様な国家資格が必要ではないか。国家観もなく政争と利権に明け暮れる党人派の政権が続けば、大地震がなくても日本は沈没する。
第3に、「緊急事態条項」はやはり認めてはならない。朝鮮戦争のときのような国連軍が使えない、同盟国でないからとNATOの参戦がない、孤立した中で無謀な、ロシア兵士も士気が上がらない兄弟民族同士の不毛な、戦争の片方の責任者ゼレンスキー大統領は国民総動員令に署名し、「18歳~60歳」の男子を出国禁止とした。日本の戦前の国家総動員法を思い起こす。火炎瓶で敵の戦車を止めるのは竹やりでB29を落とすよりは断然実効性はあると思うが、ロシア兵に殺戮されるウクライナ男性が増えてしまう結果になる。
ウクライナの国の標語は、どこかで見たような「自由、調和、善良」(「平等」「博愛」は見果てぬ夢に違いない)。国の「自由」を守る為に個人の「自由」を制限するのだとゼレンスキー大統領は自らを正当化するのか。
日本は悪名高い「国家総動員法」が復活することはないが、それに代わるものは、拡大解釈された「緊急事態条項」か。国会を通過し国民投票に委ねられたら、「緊急事態条項」を絶対に認めてはならない。
最後の第4に、日本は大国の狭間に位置する核のないウクライナと同じ。日本においては、「ロシア」にあたるのが「米国」で、「NATO」にあたるのは「中国」。戦争になれば、朝鮮半島が南北に分割された。ウクライナは東西の分断で済まず全領土親ロ共和国(対NATOの緩衝地)にされてしまいかねない。
今は日米同盟に揺るぎはない。将来、経済力・軍事力が中国 >> 米国となった時、日本の立ち位置は不安定になる。中国からの秋波を受けて米国から乗り換えようとの動きをみせたと捉えられ米国が日本に武力行使してきたとき、中国側は「日本は同盟国でも何でもない」と言うかもしれない。その時は今の米国のホンワカとした間接支配から直接支配に替わることを意味するのか。日本は、日米同盟を堅持しながら、米中対立が激化しないよう仲介的な立場を維持し、中立国の方向を目指していくべきではないか。
ある意味プーチン大統領を目指していたと言える中国の習近平国家主席も独裁者がどんな末路を辿るか身に染みて分かったか。それとも成り上がり達とは違うと思うのか。
わが国では、敵基地攻撃能力の保有の議論ばかりしていた。ロシアからの攻撃の懸念が出てきたが、イージスアショアの配備停止から2年間国防に穴があいたままではないのか。
ウクライナの首都キエフの人々が防空壕に入るのを見て、(北朝鮮のミサイルが脅威とずっと不安を煽られてきた割には)東京には一体どこにあるのかと疑問に思った。台湾有事に備えて米軍基地が集まる沖縄は防空壕が整備されているのか。地に足がついた国防計画を政府にお願いしたいものだ。