2022.7 NO.174 はいぜつ VS せいぜつ(1/2)
今春WOWOWで洋画『最後の決闘裁判』を観た。1385年フランスで最後の決闘裁判が行われた史実に基づく映画。妻(扮したジョディ・カマーさんは同時期公開された『フリー・ガイ』にも出演していたが、ゲームキャラのヒロインでの容姿が違い過ぎてカマーさんと気づかず)がレイプされたとマット・デイモンさん扮する夫がアダム・ドライバーさん演じる相手の男を裁判に訴えた。密室での出来事であり、相手の男も断固として否認する為、決闘により決着をつけることになる。
「神は正しい者に味方する」「決闘の結果は神の審判」というキリスト教の信仰が背景にあるとウイキペディア(「決闘」)に書かれている。負けると裸で吊るされさらし者にされる。夫が負けた場合妻も生きながら火あぶりにされてしまう。結果は、馬乗りになった夫がとどめを刺す前に自白を求めるがあくまで罪を認めない相手を殺し勝利して終わる。
映画を観終わったとき中世ではこんな不条理なことが行われていたのかと、その時はそう思った。が、ロシアの侵攻によるウクライナの凄絶(せいぜつ)な惨状を見ているうち、今回の戦争もプーチン大統領とゼレンスキー大統領が決闘すればよかったのにと思うようになった。
ロシアとNATOが国境で対峙するのを嫌い、緩衝地帯となるよう中立国に留まって欲しいとするプーチン大統領に対して、ゼレンスキー大統領は、就任直前の2019年2月に憲法が改正され、「将来的にはEU、NATO加盟を目指す方針」が憲法に明記(なぜか。遠藤誉女史によれば、バイデン大統領が副大統領時代に操った傀儡の親米派ポロシェンコ前大統領〔2014年6月~2019年5月〕にそうさせたとする)されてしまっており、支持率が20%台に落ち込む中では、中立化を国民に問うことは自滅行為となる。それでも何とかプーチン大統領に対して融和的な関係を保てばよかったが、保身が優先したか対ロシア強硬路線に舵を切ってしまった。プーチン大統領はゼレンスキー大統領を説得することを諦め武力行使に至る。
こんなことの為に、なぜウクライナが焦土化し、欧州最貧国の経済が壊滅し、とりわけ無辜な住民が多数犠牲とならないといけないのか。決闘裁判より不条理ではないか。
私は、いまだにプーチン大統領が「悪」で、ゼレンスキー大統領が「善」という見方が多いが、それに与しない(逆に陰謀論者に与していると揶揄されるかもしれないが)。国のトップとしての政治家の第一の使命は国民の生命と財産を守ること。「それを捨ててでも勝利するまで戦う」と言うなら、ゼレンスキー大統領は、軍人そのもの(長年の北方領土交渉を無にしてまでウクライナを支援した日本政府に兵器支援でないと感謝の意を国として表しようとしないのを見ても)。“ウクライナの東條英機”と呼ぶに値する。
5/21ゼレンスキー大統領が「ロシア軍を2月24日の侵攻開始前の状態まで撤退させられれば“勝利”だ」との認識を示したと報じられた。弱気になったか。それでもそれが成就されればゼレンスキー“将軍”としての勝利。だが、ゼレンスキー大統領がプーチン大統領に対して外交的努力を続けていた方がはるかに国民にとってはよかったハズだ。殺された兵士・無辜な住民たちは元には戻らない。続いて 「最も重要なのは、より多くの人命を守ることにある」と語ったとされるが、いまさら何を言わんやと思う。
ただ、両大統領以上に(反米ではないが)バイデン大統領に私は嫌悪感を覚える。私が思うバイデン大統領の罪は2つある。
1つは、米国が“世界の警察官”を降りるのは自由で仕方がないが、普通住民を守る警察官が引退するとき、喧嘩するなと言い残すものだ。とくに相手が飛び道具(核兵器)を持っているなら。後ろで情報や武器を供与する、戦争指南もするからとゼレンスキー大統領に喧嘩するよう嗾けた。そしてプーチン大統領には攻め込むよう仕向けたと思う。ロシアの弱体化、米国の利害に加え、あわよくばバイデン大統領の息子とウクライナの関係も闇に葬る為にも。
4/20付け 『プーチン氏はいかにして開戦に至ったのか? ジョン・ボルトン元米大統領補佐官が解説』〈AERA dot.〉にて共和党の超タカ派ボルドン氏が次のように述べている。「プーチンは、ウクライナ侵略の機会を長年待ち構えていました。彼は20年11月の米大統領選挙で、トランプ前米大統領が再選を果たすかどうか見極めようとしていたと思います。トランプは一貫して北大西洋条約機構(NATO)を批判し、脱退寸前までいきました。トランプが再選すれば、プーチンは(NATOの弱体化という)利を得続けることができました。しかし、トランプは負けた。そこでプーチンは21年夏、バイデンと3時間半の首脳会談をした後、彼の品定めをし、準備期間を経て、22年2月24日の開戦に至ったのだと思います。」「今回、米国とNATOの最大の瑕疵(かし)は、ロシアのウクライナ侵略を防ぐために事前に十分な『抑止』行動を取らなかったことです。」と。
ボルドン氏が言うように、トランプ共和党政権が続いていたら、ウクライナの侵攻はなかった。喩えで言えば、共和党なら「あなたの夫には問題がある」と忠告する程度。民主党は「あなたの夫は問題があるから離婚しなさい」と強硬に介入するから「嫌われ者かもしれないが、家族にとっては掛け替えのない主人」と言い返し喧嘩になる。
民主党も共和党も根っこは同じだが、リベラルな民主党は、「自由」を標榜しながら、上から目線で、非民主主義国家や非キリスト教社会に対して、自らの価値観を押し付け、断る「自由」を認めないから、争いを起しがちになる(しかも自身で戦うならまだしもウクライナの大統領にやらせ、ウクライナ国民に多大な犠牲を払わせる。そんなバイデン大統領が正義漢面するのに我慢がならない。爺になった今も私は青臭いのだ)。
ボルドン氏は、抑止行動をとらないことを「瑕疵」としたが、たしかにNATOは及び腰だが、バイデン大統領は「意図」したと言うべきではないか。さらに、プーチン大統領を侵攻するよう仕向けたことも触れるべきではないか。
薄暗い部屋の中で連結された動物の檻が二つあり、一方に大きな熊が入っており、もう一方に小さな乳牛が入っていた。飼育員は連結部分の扉に施錠しなかった。それでも熊が入ろうとしないので開錠してある(米国は軍事介入しない)と教えた。裸の王様の大熊はそれならと入ると火花のように電気がつき、そこには乳牛ではなく(ウクライナの歴史的なシンボル)ライオンが入っていた。
中国問題研究で一番信頼を置き、今回のウクライナ戦争の見方においても私が支持する遠藤誉女史は、ロシアを擁護するのではないと断りながら、今回のウクライナ紛争の起点と言うべきマイダン革命はバイデン大統領(当時副大統領)が首謀者と断言している。2014年2月野党がクーデーターで親ロ派ヤヌコーヴィチ大統領をロシアに亡命させる(上述の親米派ポロシェンコ大統領が就任)。それに対抗するかのように2014年3月ロシアによるクリミア併合→ウクライナのアゾフ大隊による東部親ロ派住民への殺戮→今般のロシアによるウクライナ侵攻。今回もバイデン大統領が脚本を書き代理戦争させられるゼレンスキー大統領は悲しきコメディアンの役を演じさせられているのでは。
もう1つの罪は、欧州の一小国の為に厭戦気分の米国兵士を投入する気がないとの本音を隠すためにも、米国軍事不介入の理由として「ロシアと戦う(核戦争を意味する)つもりがない」と言ってしまったことだ。ウクライナに戦争させるなら、「核攻撃は米国が抑止させるから、安心して戦え!」と言うべきところなのに。
核が抑止力として機能するにはお互いが打たれたら必ず打ち返すとの強気の心理が前提。核戦争はしたくないと弱みを見せれば、敵はそこを突いてくる。核で脅しにかかってくる。
脅しだけではなく、戦争が長引き通常兵器が品切れになれば、化学兵器のあと限定的な戦術核攻撃をロシアが使うかもしれない(TVでお馴染みの東大小泉悠専任講師ら専門家は現実に起こりうる問題として懸念を示す)。自衛隊の元幹部はロシアが制圧したへルソン州等で人民共和国を建て、ウクライナが奪還すべく攻撃した場合ロシア領土を攻撃した、戦争になったとして戦術核の使用の口実にされる恐れがあると言う。
戦術核が使用された場合、目には目と、米国と核を共有するNATO(ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコの5か国が核共有)が核兵器による反撃をと思ったとしても、核を管理もし使用の最終的な決定権も持つ米国(当たり前。自由に使えさせたらいつ自国に向けられるか分からない。広島、長崎を原爆で焦土化させた日本となら、なおさらに)はゴーサインを出せるか。バイデン大統領は、プーチン大統領から「米日戦争を早く終わらせるため原爆を落とした米国に倣っただけ」「核兵器でロシア・ベラルーシ等に反撃すれば、多核弾頭ICBMで米本土に報復する」と脅されれば、チキンゲームに負けるのか。それとも反撃するのか。あるいは戦術核使用の兆候を把握した時点で米国が何らかの手を打つのか。
はっきりしていることは、ロシアに戦術核兵器の使用を許してしまい、その上反撃もしなければ、“西側の守護神”としての称号も失い、米国の威信が地に落ちること。
様々な重病説が流されプーチン大統領が早く逝くことを多くの西側の人々から願われていようが、プーチン大統領の戦術核の使用を止められるのはプーチン大統領自身しかいない(破滅的な米国との戦略核戦争は軍幹部でも拒否するだろうが)。
それに対して、米国自身はどう見ているのか。核保有軍事大国と核の傘も無い非核保有国とのありえない戦争(映画の世界でも、拳銃を持っているのにナイフの相手にナイフで戦っても最後は銃を使う)の落とし所を考えるべき時期に来ているが。
今は米国は、緻密な戦力比較と戦況分析をした上、米ロ軍同士の情報交換での感触から、最終的にロシアが戦術核を使わずとも優位な立場でウクライナと停戦すると読んでいる。それでも「ロシアの弱体化」を始めとした米国の所期の目的は達成されると踏んでいるのかもしれない。
このほど共和党の重鎮キッシンジャー氏から「領土割譲による停戦案」の発言がなされた。これが潮目となり、ウクライナ穀倉地帯及び輸出港がロシアに制圧され、ウクライナ経済の破綻のみならず、世界的な食糧不足への影響が出てきており、さらにこれ以上無辜な住民が犠牲になることが忍びず、国際世論も、ウクライナ軍への声援から、(タオルを投げ)「よく頑張った。ウクライナ国民の勇猛果敢さ、愛国心の強さは世界を感嘆たらしめた」との声に変わっていくのではないか。
妥協を政治家としての死と捉えるゼレンスキー大統領は断固拒否するかもしれないが、最後はバイデン大統領が引導を渡さざるを得ないのではないか。マッチポンプになるが。
一方、日米にとっての最大の懸案国である中国は、米国と日本がロシアへの対応に追われている事態は歓迎していよう。戦争が長引くのには拱手傍観し、戦争が終わりそうになれば和平の使者としておいしい仲裁役をロシア、ウクライナ両国と友好関係にある中国習近平国家主席が買って出るのかもしれない。
2022.7 NO.174 はいぜつ VS せいぜつ(2/2)
ロシアに隣接する北欧2か国が核の傘がないことに恐れを感じ、長年の軍事的中立を捨てスェーデン、フィンランド両国がNATO加盟に向かう。
両国のNATO加盟はスムーズに進むと思われたが、NATO加盟のトルコが両国の加盟に反対を表明。NATOには親ロ派政権のハンガリーもいる(まるでトルコの陰に身を潜めているかのようではあるが)。
トルコの条件闘争との見方が有力だが、加盟問題が長引けば、フィンランドとの国境付近できな臭くなることはないとは言えなくなる(エジプトのファラオ率いる戦車が迫る中モーゼは紅海の海を割ったが、フィンランド女性首相は神にご加護をと祈るのか)。
日本も長年の方針に見切りをつけロシアと戦争の一歩手前の関係となったが、ロシアのウクライナ侵攻前では、自衛隊OBならまだしも外務省OBまでが「防御より攻撃の方が安上がり」とBSの番組で言っていた。
敵国の一基地からミサイルが連発されると防げない。だから敵基地を攻撃すると言うのなら不真面目極まりない。世界第1位のロシアの国土面積は日本の45倍(ロシア国土面積約1,707万㎢に対して日本同約37.8万㎢。中国は日本の25倍)。広大なその中で野外展開できる輸送起立発射機(発射台付車両)には対処できるのか。さらに原潜もある。
参院選を乗り越えれば長期政権もありそうな岸田政権は、評判の悪い「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と言い換えて批判をかわすのか。反撃能力の範囲が、攻撃対象を逐一攻撃しきれないから「指揮統制機能等も含む」(ウクライナ戦争の発端時にプーチン大統領でさえ首都キエフの大統領府を攻撃していない)のなら、専守防衛と言えるのか。先制攻撃だと世界から批判を浴びれば、国連での非難決議は米国が拒否権を発動してくれても憲法第9条違反で首相が責任を取ることになる。不可逆的な敵国の攻撃意思をどう把握できるのか。米国等他国の情報に頼るならなおさら首相はそんな決断できるのか。平和主義を唱える宏池会の政権とも思えない。
攻撃すること、軍事費を増やすことばかり議論の中心となっていないか。ウクライナ等陸続きの欧州諸国と違い島国日本は元寇以来本土に上陸され攻められたことがない。沖縄で米国と死闘を繰り広げたが、米国はこれ以上の死闘を危惧し原爆を投下したため本土では悲惨な攻防を経験していない。日本の政治家は「専守防衛」と言いながら日本の領土で戦争することについて問題認識が甘いのではないか。戦争を知らない世代ということだけではなく、DNAに凄惨な記憶が刻み込まれていないから。
戦後は世界最強国の米国の軍隊が駐留している日本に攻めてくる国はないという前提に立っていたこともあろう。
将棋でも攻める前に守りを固めるであろう。抜けがちな本元の「国民の生命と財産をどう守るのか」の視点から地に足をつけて「専守防衛」を考え、その上で憲法第9条と整合性を持たせてほしい。
日本の富裕層から核シェルター販売会社への問い合わせが増えているという。私のような貧乏人はそこまで期待しえない。家に地下室がない。地下鉄の駅まで10分以上かかる。国民を守る為の初歩の初歩、最寄りの避難場所を指定してもらいたい(ウクライナ住民は歩いてポーランドに避難できる。日本の住民は、台湾有事で中国が攻めてくる場合、ボートピープルになっても親日の台湾が中国に包囲されて無理であれば、周りは近くても反日国ばかりで受け入れてくれそうにない)。
安倍元首相に至っては、敵基地攻撃、反撃能力よりさらに飛躍した話をする。核シェアリング(核の共有)の議論をとぶち上げるのだ。だが、明解に、明海大学の小谷哲男教授に言下に否定される。「既にNPT(核不拡散条約)体制が確立している現在、新たに日本が核シェアリングを始める事が認められる可能性は決して高くありません」「仮に認められてもこの核シェアリングは、アメリカが核兵器の使用を決定します。今現在アメリカのICBMの最大射程は1万㎞以上ありますが、ニューヨークからモスクワまでは6700㎞しかありませんし、ロサンゼルスと平壌の距離は9500km、ロサンゼルスと北京の距離は1万㎞です。ロシア、北朝鮮、中国の核による日本への脅威に対して核抑止力を働かせるにはアメリカ本土のICBMで十分であり、日本に核兵器を配備する意義は殆どありません。」と。
安倍元首相も知らないハズはなく、核の共有がダメなら核の自己保有と世論をミスリードしかねないようなことを元首相たる者が発言すべきではなく、5/7のTV「報道特集」にて天敵のような金平茂紀氏に「恥ずかしさを考えて」とまで言われてしまう。
知性とプライドの高い官僚派の首相なら、上記に加えて日銀に対する発言のごとく自らの存在をアピールするつもりが自らを貶める、そんなことは言わないだろう。
小選挙区制の副作用として自民党と(党人派の)首相の劣化を招いた今日日本を立て直す為に官僚派首相が必要と私は言い続けている。
ウクライナ侵攻に国連が無力さを晒す中、岸田首相は「国連の改革」へとアドバルーンをあげる。報道によれば、自民党が後押しをし、政府に提言する。それには、ロシアによる侵攻を「前代未聞の暴挙」と非難。国連改革に向けて「日本がリーダーシップを発揮し、国際社会に道筋を示さなければならない」とし、国連憲章から日本やドイツなどを対象にした「旧敵国条項」を削除するよう外交努力を求めるとする。
(国連が)実質経営破綻しているような段階に来てしまっているのに、「オレに改革させろ、オレを役員にしろ」と言う、相手にされない吸収合併された側の社員と同じと言えば、さすがに言い過ぎか。
第一次世界大戦後世界平和維持と国際協力を目的に1920年に創設された国際連盟の常任理事国であった日本はその責任を放棄し1933年3月脱退した(それが後の国連で「大国の脱退を防ぐために」と5大戦勝国が傲慢にも常任理事国として拒否権を持つ大義名分に利用されたと思う。そしてその常任理事国の拒否権が今日の国連機能不全の最大の要因になっている事実について日本政府はもっと真摯に向き合うべきだ)。
脱退した日本に常任理事国の独と伊が続いた。「民主主義」の錦の御旗の下で、「全体主義」の日独伊は賊軍とされ、悪の枢軸国として連合国軍に打倒された。勝利した連合国、特に5大戦勝国(常任理事国)体制を維持する為の新たな国際機構が国連(国際連合)であり、それが70年以上も続き、耐用年数を大幅に超え機能不全に陥っている。
創立当初は戦勝気分で一枚岩であったが、直に米ソ冷戦となり、5大戦勝国の今は、米・英・仏VS中・ロとなる。今や米国と堅固な同盟関係にある敗戦国日本が、今回のウクライナ戦争においてロシアとウクライナに対して中立的な立場をとるならまだしも、ロシアと中国を非難している。日本が何を提案しようと中・ロが反対するに決まっている。岸田首相が国連改革を訪日中のバイデン大統領に説明し、大統領が日本の常任理事国入りを支持したと言われるが、訪日土産ならぬリップサービスに過ぎない(支持率は低下を続け中間選挙後バイデン民主党政権はレームダック化するだろうし)。
日本が、常任理事国間の対立を仲裁できる立場ならまだしも米国の属国と見る東側諸国は中・ロに追随し、国連加盟国の2/3の賛同を得ることは至難の業と言うべきだろう。
万が一、常任理事国になれば、「強制措置」履行の義務を負う。それができる環境に日本はない。安全と平和の維持・回復のために平和を脅かす国家などへの軍事行動に対して、日本は自ら常任理事国入りを希望しながら「憲法第9条の範囲内で」とまた国際連盟時と同じように身勝手な言動をとるのか。世界から許されるとでも思うのか。
ウクライナへ侵攻したロシアへの拙速な対応(長年の北方領土交渉を無にし、台湾有事の際ロシアが日本の敵としても中国に加担するリスクを高める)に加えて、天下の開成高校出身の久しぶりに地頭のよい首相が誕生したと思うインテリ層を失望させる。そんな少数のインテリ層より圧倒的に多い一般大衆向けに参院選を控えアピールできればよいということなのか。
そんなことより、今こそ唯一の被爆国のトップとして、被爆広島選出の国会議員として、「核の廃絶」を訴え(核兵器禁止条約に加盟へ)、岸田首相のレガシーとすべきではないか。それでこそ、「NPTは、不公平・不平等だ」と思う非核保有国からも真の信頼が得られよう。
唯一の被爆国として悲惨な目に遭った日本が核保有国と非核保有国の仲立ちしているのは、「減らしていくなら核兵器の保有は少しならいいですよ」と保証するようなもの。抑止力としての盾となるだけで矛には使用しないという前提では、ある意味それでもよかった。
しかし、ロシアのウクライナ侵攻で、「環境破壊の20世紀」の遺物であるべき核兵器がゾンビのごとく(目を覚まし、棺桶から出ようとする段階だが)21世紀の今戦力として生き返ってしまった今では日本がとるべき態度ではない。
同盟国の米国にとっても、「核の廃絶」は悪い話ではない。通常兵器戦をプロボクシングに擬えると、米国は世界ヘビー級チャンピオン。核大国のロシアはウクライナ侵攻での通常兵器戦で馬脚を現した。ミドル級で周りから栄養を補充され体重オーバーなウクライナと互角の戦いでは、米国への挑戦権はない。
中国は、NPT体制ではいずれ核兵器数で米国に追い付いてくる。通常兵器戦では、体重はヘビー級に違いないが、実力は不明。ヘッドギアをつけてのスパーリングはよくなされているかもしれない。それでもヘッドギアをつけない実戦のリングにはあまり上がっていない。ましてやタイトルマッチのリングには。
元々中国は「文」の国で、戦争下手。漢民族の国は、「漢」と「明」との2つだけ、ほとんど夷狄に支配されている。人民解放軍は、中国共産党の為の軍隊であり、愛国心があるか分からない。長期戦になると士気が低下するかも。チャンプの米国軍は、愛国心は強く、百戦錬磨で、12ラウンドになっても気力、体力は落ちない。
岸田首相が「核廃絶」を事前に同意を求めても米国は了解しないだろう。だとしても、ロシアへの牽制にもなり、米軍産複合体にとっても好都合かもしれず、「日本が勝手に言っていること。米国は関知せず」と米国から世界に向かって言ってもらえるかもしれない。
無論、核廃絶を訴えたからといって、地球上からすぐに核兵器が無くなる訳ではない。とりわけ、北朝鮮、ロシアは絶対核を手放さない。ただ、北朝鮮は核を盾にしか考えていない(戦術核を開発しても脅すだけ。韓国に打てば対ロシアと違い米国に北朝鮮が国ごと破壊されるを理解している)。ロシアを文字通り、“大きな北朝鮮”として核の矛としての使用を封じ込めることに繋がっていければと思う。
日本は、当然「非核三原則」を堅持することになるが、現実問題として核兵器が矛として使用されるリスクが高まっている以上、同盟国米国に守護神になってもらうしかない(世界バンタム級チャンピオンの井上尚弥選手は日々体を鍛え、パンチに磨きをかけているが、ヘビー級で闘えるとは思っていない。日本も同じ立場だ)。
その為には、米つきバッタ(米国に唯唯諾諾と従い、米国製の兵器を買い集めるだけ)では待ち受けるのは捨て猫になる運命。対中国に日本が不可欠、逆に日本が中国に取り込まれてならぬと米国に思わせることだ。そして今回ウクライナが米国の代理戦争をさせられたようなことを避けるためには、憲法第9条は堅持しなければならない。
虎の威を借りて、猫が前門のパンダと後門の熊と敵対する必要はない。ネコ科の虎がクマ科の熊とパンダをネコ科に変えるのは無理筋であると分かった以上、クマ科はクマ科としてその存在を認め、ネコ科とクマ科とが喧嘩しないように中立的、仲介的に動くことが、“東アジアのウクライナ”にならない、(ズル賢い猿ならぬ猫と呼ばれてもいい)日本の生きる道ではないか。