2021.12 臨時号 NO.164  ごのせかい VS ごのせかい (1)
  私はテレビっ子でTVをよく観ていたと本ブログ2019年7月臨時号NO.117(「テレビVSトレビ」)に書いた。それから2年以上経過した。今はその時より地上波のTVを観なくなった。
 新型コロナウイルス禍において日本は世界に比べて大したことがない(五輪中止へと日本で大騒ぎの最中にも拘らず、世界の200を超える国々からアスリート・関係者たちが来日した)。新型インフルエンザと大差ないと分かってもTV局の報道姿勢がいつまでも変わらないのに嫌気が差し、朝・昼の情報番組はどの局もほとんど観なくなった。
 外出しない時は、昼は本を読み、夜はテレビを観て過ごしたいのだが、いい番組が少ない。いきおいBSの報道番組を観ることになる。地上波で毎週のごとく視聴するのは、テレ朝の水曜19時からの『あいつ今何してる?』(残念ながらレギュラー放送は終了。今後は単発番組に)、テレ東の月曜20時からの『世界!ニッポン行きたい人応援団』、MBS木曜19時からの『プレバト!!』ぐらいか。
 『あいつ今何してる?』で一番印象深く覚えているのは、昨年3月25日の3時間スペシャル。恋多き故志村けんだが、結婚してもよい人は母親に紹介していたという。その最初の女性と破局した理由を聞きたいと35年ぶりに再会した。志村に他に好きな人が出来ただけだったのだが、志村は忘れていたのではなく彼女に言わせることにより罪滅ぼしとしたかったのでは。虫の知らせで逝くのを知っていたかのように。5日後訃報に接したときは本当に驚いた(志村自身は放送を観ていない。人工心肺ですでに意識はなかった)。
 同日のホラン千秋さんの高校の同級生の話も印象的だった。母子家庭で母親が癌に侵され、進学校でひとり大学に行けずアルバイトをしながら母親の看病をしていた。その甲斐もなく母の死後は一念発起して猛勉強し奨学金の出る米ベレア大学に合格する。そこを首席で卒業しイリノイ大学の大学院で脳科学の研究員となる。そして今はハーバード大学からの誘いを受け関連病院で認知症を研究しているという。まさにアメリカンドリームの実現だ。同じ境遇にある若者に勇気を与えるし、境遇のせいにして努力を怠る者に喝を入れてくれる。
 政権が交代した今、小泉政権から続く「裕福な者はより裕福に、貧しい者はより貧しく」のような政治から脱却するとともにアメリカに行かなくてもDream come trueが可能な社会を実現してほしいと切に願う。
 『世界!ニッポン行きたい人応援団』は日本文化や伝統技術を深く愛しているが日本に来る経済的余裕がない人を招待する番組。来日を機に人生が大きく開けた外国人もいる。
 受け入れる日本の職人たちだけではなく、番組スタッフも来日した外国人に対する眼差しが温かいのが素敵だ。皇室外交ほどではないにしろ世界に日本ファンを増やすのに貢献していると思う。今は新型コロナ禍で収録が難しいようだが、長寿番組になることを期待したい。

 地上波では予算緊縮、思考停止でクイズ番組が花盛り(クイズ番組が好きな人も多いのも確かなのだろうが)。東大生や高学歴の芸能人が、最も得意とする土俵、答えのある世界で、記憶力等を争う。しかも生ぬるいクイズバラエティー番組には興味も湧かない。杉田水脈議員がクイズ番組を「生産性がない!」と言えば、私は賛同してあげたのに。答えのある世界なら現段階のAIが最も得意とする。囲碁や将棋のようにAIとクイズで勝負するなら別だが。
 高学歴にやっかみを覚えている訳ではない。「記憶力」ではなく「創作力」「創造力」に対しては素直にリスペクトしている。
 一昨年の我が母校神戸高校同窓会東京支部の会合でのこと。現在の東京支部長は、私より一つ年上の20回生で京大法学部を1973年卒業し旧自治省(戦前大蔵省を凌ぐ巨大官庁内務省が敗戦後GHQに解体されるがその本流を受け継ぐ。当時大蔵省、警察庁と並ぶ一流官庁。現在旧郵政省等と合体し総務省。菅前首相の長男等の接待問題は旧郵政省がらみ)に入省したキャリア官僚OBの平谷英明氏。政治家タイプが多い大蔵官僚と違い、自治官僚はまじめで地味だが、平谷氏もそのタイプと見受けた。その平谷氏が会合の席でコピー用紙よるA5版レジュメを参加者に配布した。題名は『人生を二度生きる~鈴木紀代さんの話』。神戸高校の大先輩(10回生。高校1年生の時には60年安保闘争で亡くなった樺美智子が3年生でいたハズ)で作詞家の鈴木紀代さんの半生を綴っている。鈴木紀代(本名清)さんは就職試験の面接時にご主人に見初められ結婚した。ご主人とロンドンに赴任した時、ビートルズを聴いているうちに演歌を思い出したことから祖国愛に目覚め、作詞家の道を歩むことになる。歌手長山洋子さんのヒット曲『捨てられて』『じょんから女節』を始め、北島三郎さんなど多数の歌手に歌詞を提供している。
 その平谷氏の文章を読んでいるうち、「なかなか書き馴れているな」「アレ! 格調も高いぞ!?」と少し驚いた。文を読み終え最後の平谷氏の名前の下に「日本作家クラブ会員」と書かれていた。なるほど!(能ある鷹が少し爪を見せたか)と私は唸った。
 それより前に、私は、2015年の秋本ブログの50号までを非売本にまとめた際本同窓会で配布することを考えていた。内容よりも費用の面で断念した。家族・親戚以外同期生、知人らに贈っただけ(高校時代のマドンナにも贈ったが50年経っても私を覚えていてくれたことが分かり、何より嬉しく思った)。同窓会で配布しなくてよかった。配布していたら恥をかいたことだろう。