不機嫌姫と拗らせ王子 7《大宮》
つづきです「ほら、見て!智!」「あぁ…ふたりとも似合ってるよ」やがて、小学校を卒業し中学の制服に身を包み、クルクルと踊るようにそれを見せびらかしてくるかずは、まだ幼さが残るものの、とても可愛いかった。先月までは自分も同じ制服を着ていたのに。もうすでに自分のものではなくなった制服を、少しだけ恨めしく眺める。…少しだけ近づいたと思っても、同じ分だけ離れていく。時間は止まってはくれなくて。なぜ…おれたちは同じ年じゃないんだろう?なんて。考えてもどうしようもないと分かっていながらも、ぶつけどころのない想いを日々押し殺していたおれは、新しい環境で、かずへの想いを断ち切るように告白してきた相手を受け入れた。身長はおれより少し低い色白で…髪の短い女の子。……自分でも笑ってしまった。結局、おれが求めるのはかずなんだな。その子とは、何度か…躰を重ねたけれど、それだけだった。可愛いとは思ったが、それもどこか かずに似た容姿をしていたからだろう。最低な男だと自分でも思う。彼女は、やがて幻滅したように離れていった。その頃からおれの頭の中は…かずとの唯一の繋がりである自分のポジションを、いかにして守るかということばかり考えるようになっていた。もっと上手くなって…かずにずっと「髪は智に任せる」と言って欲しかったから。「大野くん、好きなの。彼女にしてほしい」「……髪切らせてくれるならいいよ」「え?」年上年下問わず、告白されることは多かった。相変わらず恋愛に興味は持てなかったが、かずに似た線の細い色白の子からの告白であれば断らなかった。付き合うかわりに、カットモデルをしてくれることを条件にして。…もちろん、無理強いはしない。本人の承諾を得てのことだ。やがて、それ以上のことを期待されるようになるのだが…おれにその気がないことを知ると、みんな呆れたように離れていった。やがて、進路を決める頃には、おれの心はすっかり決まっていた。ちゃんとした技術を身につけたい。たとえ、かずの専属の美容師という立ち位置でも構わない。そうすれば、ずっと…あいつの側にいられる とそう信じていたんだ。つづくmiu