完全自己満足の世界でごめんなさい!

もうちょっとだけ…
前回のつづきです( ・∇・)←

読んでもいいよって方だけお進みくださいね。



世良くんと花房さんの子どもに転生した
天城先生の設定です








一体なぜ、こんなことになったのだろう?

俺は…いつものようにこの仮眠室で寝ていたはずなのだが。

スリジエハートセンターの一角。
仮眠室という名の、俺の寝床だ。
本来は、夜勤の医師や看護師が体を休めるための場所なのだが、俺は当たり前のようにそこに住み着いていた。

今では…食べきれないほどの米を送ってくれる家族はもういない。

それでも習慣というのはおそろしいもので、あの頃と同じように炊飯器を持ち込み、米と卵だけは今でも欠かさないようにしている。

昨日も当直をし、引き継ぎを済ませて一眠りした…はずだったのだが。

感じた事のない気配に気づき、目を覚ますと
小さな子どもが俺の顔を覗き込んでいた。

…一瞬、座敷童かと思ったが、そんな非現実的なものでないことはすぐにわかった。

重い。
紛れもなく実体が腹の上に乗っている。


「…邪魔」


子ども相手だろうが容赦ない。邪魔なものは邪魔なのだ。
患者の家族だろうか?
ビビってすぐに腹の上から退くだろうと思ったのだが、そのガ…
子どもは臆することなく、俺にニッコリと笑いかけた。


「ねぇ、遊ぼう?」

「は?忙しいんだよ。帰れ」

「寝てたじゃん」

「お前…何号室の誰の家族?」


つまみ出そうとすると、仮眠室のドアが開いた。


「ここに3歳くらいの子どもが来ませんでした?
あぁ、雪哉!!良かったぁ…
…って…渡海先生、すいません!」

「…これ、お前んとこの子か?」


世良に引き渡そうとするが、なぜか俺にしがみついてくる。
…自慢じゃないが、俺はガキに好かれない。
そして、扱い方も知らない。
泣かれる前に保護者に引き取ってもらわなければならないのだ。


「ほら早く連れていけ」

「やだ!遊ぶ!!」

「雪哉、ダメだよ。ほら、行こう?」

「遊ぶの!!」


べりっと引き剥がした瞬間、世良のポケットが鳴った。
この聞き慣れた音は、業務用携帯だ。

すいません と、携帯を耳に当てる世良。

嫌な予感…


「渡海先生、ちょっとだけ雪哉を預かってもらえますか?!」

「いや、無理だろ…」

「すぐ戻ります!!」


…いや、俺だって分かる。
この仕事をしている以上、いつ何時呼び出しがくるかなんて、予測不可能だ。

だからって、子どもをこんな…
不適合者に預けるなんて、どう考えても無理がある。
俺は はぁ、と大きなため息を吐き出し、のろのろとベッドから這い出した。

(世良がダメなら、とりあえず母親に…)

花房を探すか、と立ち上がると
雪哉は俺の足元に擦り寄り、行手を阻んだ。


「ね、ね、車もってない?」

「ねぇよ、そんなもん」

「見るだけ。ねぇ」

「……お前…」


世良と花房の子。
二人によく似た可愛らしい顔立ちなのだが、どうしてか…
この琥珀色の瞳に、既視感を覚える。

雪哉と名付けられた子の顔が、遠い記憶の…
幼いもう一人の自分の影に重なった。


炊飯器の横に置いてあった、小さな箱。
それを手に取ると、中に入れてあった青いミニカーを取り出した。


「ほら、これでいいか?」


雪哉の小さな手のひらに乗せる。
ありがとう と、嬉しそうにしばらく遊んでいたが…
急にその手を止め、こちらを振り返ると
そっとミニカーを差し出した。


「やっぱり、返す。これはせいしろうのだから」


その言葉に、胸の奥がざわつく。

雪哉の手からミニカーを受け取り
代わりに…
同じ箱に入っていた黄色のミニカーを手に乗せると

桜の花が綻んだような、静かな…笑顔が咲き

小さな声で
" メルシー " と聞こえた気がした。




それから、少しして世良が雪哉を迎えにきた。


「渡海先生、本当にすいませんでした!」

「遅えよ、世良」

「え、え?!このミニカー…
大切なものじゃないですか。雪哉、返さないと!」

「…これは、こいつに預けておくよ」

「いや、でも…」


俺はゆっくりと屈み込むと、雪哉の顔を覗き込んだ。


「大事に…してくれるよな?」

「うん!」 

「………」


雪哉のアゴに見つけた
小さなホクロに触れる。


「…ヒマな時は相手してやるから、また来いよ」


なんて…

彼の小さな手のひらを見つめながら

俺らしくないセリフを吐いた自分に
自分が一番驚いていた。




おわり♪