「まあ、い、いいや。
それじゃあ、とりあえずあのテルヤマってオトコに訊けば何かわかるかもしれないってことだよな?」
「うん、多分。
だってそうよねえ?
ヒカルさんが『失踪した最後の場所』と、彼女がホンジョウさんに残した『ヒントと思われる場所』の両方で偶然彼を見かけたってことは・・・、それってどう考えてもそれが単なる偶然じゃないって、そういうことでしょう?」
「ああ、確かに。
今日俺たちがここに来た収穫って言やあ、まちがいなくそういうことになるかもな。
まあ、俺に取っては・・・、例の写真の一件も大きな収穫だったことにはちがいないけどね」
「ねえ? ホンジョウさん?」
「えっ?」
「あのテルヤマってオトコのことなんだけど・・・」
「ああ」
「とりあえず、ちょっとわたしの方に任せてもらえないかなあ?」
「はあ?
任せるって?
どういうこと?」
「だから・・・、わたしにちょっと、個人的にアプローチさせてもらえないかなあ? ってことよ」
「ええ?
うん、まあ、それはいいけど」
「だ、だから・・・、だからその、さっき言ったことやっぱ撤回するとさあ。
つまりその・・・、た、タイプなのよ」
「タイプ?」
「そうよ。
彼、わたしのタイプなの! だから!」
と、わたしはホンジョウさんに意味もなく八つ当たりするかのようにそう言う。
「ああ、なんだ。
そう言うこと?
わかった。
じゃあまあ、任すよ。
とりあえずオマエに」
「うん。
そうして。
なんかわかったら、こっちからすぐ知らせるから」
と言ってわたしはきまり悪そうに彼から視線をはずす。
「そう言やあ、マキ?」
「えっ?」
「オマエ・・・、ハマグチとは別れたんだっけか?」
「ええ?
ああ、アイツ?
アイツは・・・」
と言って口ごもるわたしは、実はなんとそのハマグチとこの夏、また例によってずるずるとよりが戻っていたのだった。
それに関しては、どうも我ながら情けないとは思うのだが・・・。
今年の確か7月も後半あたりだったか・・・、突然あのハマグチからメールがあり、それもいきなり「ミユキとは別れた」みたいな内容がそこには書かれており、わたしもいい加減、ふざけるな! なんて思いつつ、しばらくはそのメールに対し無視を決め込んでいたのだったが・・・、それからも何度もどうでもいいような内容のメールが彼から送られて来るようになり、その後もしばらくはしかとし続けた8月も終わり近く、あれは、言い訳するならば、連日の猛暑から思考が停止していたせいもあったのだろう・・・、度重なる彼の誘いにこのわたしもつい魔が差してしまったというか・・・、なんとなくふたりで飲みに行こう、なんてことになり、そしてその夜、例によって酔った流れで・・・、そんなていたらくからのこの馴れ合いの現状に至るわけである。
正直、彼の浮気なんてのは、当時に始まったわけでもなかったわけで、 今更わたしとしてももう別に彼の取った行動をあえて責めるとか、それにこだわって悩むとか、もうそんなこことも特になかったというか。
もしかしたらこれって、わたしが食生活で肉やジャンクフードを止めたせいで、オトコへの執着もなくなった? って・・・、そういうこと?
なんて思ったりなんかして。
実際のところ、わたしとしてはもう他人の態度や行動なんかによって自分が変にマイナスの影響を受けたくないというか、もうそんなことはいい加減どうでもいい。
過去のことや今更どうにもならないことにくよくよと悩んでみてもしょうがない・・・、って言うか、ある意味いたく当たり前でいてなかなか出来ない、そんなことが現実に自分に出来きてしまっているこの現状に正直驚いていた。
恋愛に関して、ある意味、わたしは(ヒカルさんの言っていた)いわゆる悟りの境地? みたいなところにまでたどり着いてしまった・・・、なんてことなのかもしれない。
とは言えそれもまあ、たまたま他に好きなオトコが出来なかったことによる寂しい自分を正当化していただけ? なんて風にもまた冷静に思ったりもするわけで。
とりあえずまあ、こんな状況におけるわたしの・・・、そんな潤い不足で乾きぎみの自分を癒してくれる、ベタに言っていわゆる心のオアシス(ダサ!)? なんて対象としてのテルヤマノボルの登場ってことなのだろう・・・、多分。
是非とも続けてプチッっと!! よろしくお願い申し上げます!
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