10月20日の十三夜の夜、その日は朝から曇り空のぐずついた天気で、正直ちょっと月見にはむずかしい雲行きの様に思えた。
その日までの数日間ずっとその準備に張り切っていたナカバヤシさんは、洋酒とワインのボトルをしこたま買い込み、それらはキッチン前のカウンターにいかにもそれっぽく、BAR風の体裁? なんて感じで並べられている。
初日の今日、とりあえず付け焼き刃でビールは缶で対応するとのことで、まあ、ゆくゆくはサーバーも取り付け、生ビールぐらいは出せるようにするとのこと。
そして本日のフードメニューといたしましては、こちらはトオルの提案により、残っても溜め置きが出来るというメインのスープカレー、サイドメニューとしては数種の野菜料理で、 大根とベジミートの煮付け、茄子と蓮根の炒め物、水菜のじゃこサラダ・・・、なんて言う日頃よりおなじみの定番品目を数点ほど用意することにした。
それにしても、ここのシェアハウスの男子ふたり(ひとりはオヤジだが)は、料理の手際の方も相当にいけてるというか、その味付けのセンスもかなりのもの。
まあ、これじゃあ確かに、結婚したいなどという実感もなかなか湧いてこない? なんてことなんだろう。
「おう、順調そうだねえ?」
と言ってさっそく現れたのは、もうほぼこの企画の一味同然とも言えるホンジョウさん。
「おお、オマエもちょっと手伝えよ」
と彼の同僚のナカバヤシさん。
「ええ?
俺って今日、客じゃないの?
まあ、ただで飲ましてくれるって言うんなら手伝うけど?」
「えっ?
ああ、じゃあいいや。
どうぞお座りになって。
ほら、ちょっと注文を訊いてやって?」
とナカバヤシさんがわたしに振ってくる。
「だって。
じゃあ、は~い、とりあえずビールでしょうか?
本日のメインはスープカレーになっておりま~す」
とおどけて見せるわたしに、
「オマエさあ・・・、なんか楽しそうだなあ?
ここんところ」
と意味ありげな目付きでホンジョウさんはわたしを見つめ、それに一瞬動揺を隠せないわたし。
「べ、別に」
「あれ?
もしかしてこの間の?」
「いいでしょ、その話は。
あっ、でも、あの人・・・、実は今日、ここに来るんだ」
「ええ? 嘘?
ま、マジで?
ってオマエもはええよなあ、そっちの方のアクションは」
「へへえ、それがなんか・・・、逆にくどかれちゃったみたいで。
いひひひ」
と、どうも気づけば自分、おっさんみたいに頭を掻くようなリアクションをしている。
「あれえ、なんかオマエら楽しそうだけど・・・、なんかいいことでもあった?」
と無理矢理話に割り込もうとするナカバヤシさん。
「どうやらマキさんの新しい恋バナみたいですよ」
なんてトオルのヤツ、澄まし顔でちゃっかりと盗み聴きしている。
「嘘?
そ、そうなの?
ここんとこまたオマエ・・・、あのハマグチと復活でもしたんだとばかり思ってたんだけど?」
とナカバヤシさん。
「ああ、そうそう、その件でね、ちょっと今日はアイツ呼んでないから、そのことはとりあえず内密にお願いしますね。
それがまあなんと言いましょうかか・・・、その、へへへ、大事なカレが来るもんで」
と言うわたしは柄にもなくコイツらの前でデレデレな感じだ。
「そうなんだ?」
と例によってどうでもいいと言った風のナカバヤシさん。
「ああ、でもそう言やあ、今日ミユキも来るみたいなんですけど・・・、マキさん、もう、じゃ、じゃあ、き、気にしないですよねえ?」
と言ったトオルに、
「ええ?
う、嘘でしょう!?
そ、それってちょっと、アンタ、おかしいんじゃないの?
なんでまたあのオンナなんて呼んでんのよ?」
と急に顔色を変えるわたしに、
「いやでも、ま、まだ友だちですし。
あの、ま、まずかったですか?」
とトオルはわたしのリアクションが予想外だったのか? 急に動揺した表情になる。
「あ〜、もう、いいけど。
よくわかんないわ、アンタら若者の心境ってのが。
このアラフォーのわたしにはさ」
とまあ、こっちは今日テルヤマが来るもんだから、ミユキのことはもうどうでもいいのだが・・・、これでわたしがハマグチなんぞを呼んでいた日には、どうするつもりだったんだ? このトオルのヤツ。
あのミユキのことだ、またどんな手でハマグチに再アプローチを掛けるかわかったもんじゃない・・・って自分、やっぱまだハマグチへの未練もあるってこと?
いやいや、そんなことよりもわたしが気に食わないのは、あんなことをしでかしておきながら今日も平気な顔でやって来るあのミユキの心境のことだ。
そもそもあのオンナ、わたしがハマグチとつき合ってたのを知っておきながら、トオルに振られたのをいいことに、その流れでハマグチを誘惑し? それでまたすぐ彼と終わったからって何食わぬ顔でわたしの前に顔を出す? なんてのはいったいどういった神経なんだろう?
はっきり言って理解不能というか、そもそもこのわたしってやっぱそういったとんでもないオンナを呼び寄せてしまうオーラみたいなものを発してる? ってこと? なんて今度はそう謙虚に反省してみたりなんかするわたし。
と、気づけばリビングの時計はすでに8時を回っていた。
なんだかんだでその日のパーティーの客入りはそこそこ? ってまあ、せいぜい10数名いるかいないか?
それも大半がナカバヤシさんとホンジョウさんの代理店仲間 (中にはわたしの知っている人も数人いた)なんて感じで、後はトオルが最近バイトしてるって言ってた霊気治療院関係のスピ系お姉さま?(おばさま?)連中でほぼ全員といったところ。
そして正直それら2グループはその毛色が完全にちがうらしく、どうやら一緒にに溶け込んで話そう、なんて気配は全くなし。
それにしてもトオルのヤツ・・・、あれでちょっと霊気なんて胡散臭いものに詳しくなったもんだから 流行のスピメンにでもなったつもりか?
さっきからずっとお姉さま(おばさま)方に囲まれ楽しげに、そこそこまんざらでもないご様子。
あれで意外と最近は年上狙いだったりして?
なんてどうでもいいことを考えていたその瞬間だった、いきなりリビングの扉が開き、その中の連中の視線を一点に集めるようにして登場した一組の美男美女カップル? と思いきや。
って、はあ? あ・・・、ああ?
な、なんで?
なんでまたテルヤマとみ、み、み、ミユキが一緒に登場なの!?
う、嘘でしょ?
み、ミユキのヤツ、こ、こ、こ、こともあろうにテルヤマの腕に彼女の両腕をしっかり絡めてるときた。
あ、あああ、悪夢がまたあああ・・・、と顔面が蒼白になるわたしであった。
是非とも続けてプチッっと!! よろしくお願い申し上げます!
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その日までの数日間ずっとその準備に張り切っていたナカバヤシさんは、洋酒とワインのボトルをしこたま買い込み、それらはキッチン前のカウンターにいかにもそれっぽく、BAR風の体裁? なんて感じで並べられている。
初日の今日、とりあえず付け焼き刃でビールは缶で対応するとのことで、まあ、ゆくゆくはサーバーも取り付け、生ビールぐらいは出せるようにするとのこと。
そして本日のフードメニューといたしましては、こちらはトオルの提案により、残っても溜め置きが出来るというメインのスープカレー、サイドメニューとしては数種の野菜料理で、 大根とベジミートの煮付け、茄子と蓮根の炒め物、水菜のじゃこサラダ・・・、なんて言う日頃よりおなじみの定番品目を数点ほど用意することにした。
それにしても、ここのシェアハウスの男子ふたり(ひとりはオヤジだが)は、料理の手際の方も相当にいけてるというか、その味付けのセンスもかなりのもの。
まあ、これじゃあ確かに、結婚したいなどという実感もなかなか湧いてこない? なんてことなんだろう。
「おう、順調そうだねえ?」
と言ってさっそく現れたのは、もうほぼこの企画の一味同然とも言えるホンジョウさん。
「おお、オマエもちょっと手伝えよ」
と彼の同僚のナカバヤシさん。
「ええ?
俺って今日、客じゃないの?
まあ、ただで飲ましてくれるって言うんなら手伝うけど?」
「えっ?
ああ、じゃあいいや。
どうぞお座りになって。
ほら、ちょっと注文を訊いてやって?」
とナカバヤシさんがわたしに振ってくる。
「だって。
じゃあ、は~い、とりあえずビールでしょうか?
本日のメインはスープカレーになっておりま~す」
とおどけて見せるわたしに、
「オマエさあ・・・、なんか楽しそうだなあ?
ここんところ」
と意味ありげな目付きでホンジョウさんはわたしを見つめ、それに一瞬動揺を隠せないわたし。
「べ、別に」
「あれ?
もしかしてこの間の?」
「いいでしょ、その話は。
あっ、でも、あの人・・・、実は今日、ここに来るんだ」
「ええ? 嘘?
ま、マジで?
ってオマエもはええよなあ、そっちの方のアクションは」
「へへえ、それがなんか・・・、逆にくどかれちゃったみたいで。
いひひひ」
と、どうも気づけば自分、おっさんみたいに頭を掻くようなリアクションをしている。
「あれえ、なんかオマエら楽しそうだけど・・・、なんかいいことでもあった?」
と無理矢理話に割り込もうとするナカバヤシさん。
「どうやらマキさんの新しい恋バナみたいですよ」
なんてトオルのヤツ、澄まし顔でちゃっかりと盗み聴きしている。
「嘘?
そ、そうなの?
ここんとこまたオマエ・・・、あのハマグチと復活でもしたんだとばかり思ってたんだけど?」
とナカバヤシさん。
「ああ、そうそう、その件でね、ちょっと今日はアイツ呼んでないから、そのことはとりあえず内密にお願いしますね。
それがまあなんと言いましょうかか・・・、その、へへへ、大事なカレが来るもんで」
と言うわたしは柄にもなくコイツらの前でデレデレな感じだ。
「そうなんだ?」
と例によってどうでもいいと言った風のナカバヤシさん。
「ああ、でもそう言やあ、今日ミユキも来るみたいなんですけど・・・、マキさん、もう、じゃ、じゃあ、き、気にしないですよねえ?」
と言ったトオルに、
「ええ?
う、嘘でしょう!?
そ、それってちょっと、アンタ、おかしいんじゃないの?
なんでまたあのオンナなんて呼んでんのよ?」
と急に顔色を変えるわたしに、
「いやでも、ま、まだ友だちですし。
あの、ま、まずかったですか?」
とトオルはわたしのリアクションが予想外だったのか? 急に動揺した表情になる。
「あ〜、もう、いいけど。
よくわかんないわ、アンタら若者の心境ってのが。
このアラフォーのわたしにはさ」
とまあ、こっちは今日テルヤマが来るもんだから、ミユキのことはもうどうでもいいのだが・・・、これでわたしがハマグチなんぞを呼んでいた日には、どうするつもりだったんだ? このトオルのヤツ。
あのミユキのことだ、またどんな手でハマグチに再アプローチを掛けるかわかったもんじゃない・・・って自分、やっぱまだハマグチへの未練もあるってこと?
いやいや、そんなことよりもわたしが気に食わないのは、あんなことをしでかしておきながら今日も平気な顔でやって来るあのミユキの心境のことだ。
そもそもあのオンナ、わたしがハマグチとつき合ってたのを知っておきながら、トオルに振られたのをいいことに、その流れでハマグチを誘惑し? それでまたすぐ彼と終わったからって何食わぬ顔でわたしの前に顔を出す? なんてのはいったいどういった神経なんだろう?
はっきり言って理解不能というか、そもそもこのわたしってやっぱそういったとんでもないオンナを呼び寄せてしまうオーラみたいなものを発してる? ってこと? なんて今度はそう謙虚に反省してみたりなんかするわたし。
と、気づけばリビングの時計はすでに8時を回っていた。
なんだかんだでその日のパーティーの客入りはそこそこ? ってまあ、せいぜい10数名いるかいないか?
それも大半がナカバヤシさんとホンジョウさんの代理店仲間 (中にはわたしの知っている人も数人いた)なんて感じで、後はトオルが最近バイトしてるって言ってた霊気治療院関係のスピ系お姉さま?(おばさま?)連中でほぼ全員といったところ。
そして正直それら2グループはその毛色が完全にちがうらしく、どうやら一緒にに溶け込んで話そう、なんて気配は全くなし。
それにしてもトオルのヤツ・・・、あれでちょっと霊気なんて胡散臭いものに詳しくなったもんだから 流行のスピメンにでもなったつもりか?
さっきからずっとお姉さま(おばさま)方に囲まれ楽しげに、そこそこまんざらでもないご様子。
あれで意外と最近は年上狙いだったりして?
なんてどうでもいいことを考えていたその瞬間だった、いきなりリビングの扉が開き、その中の連中の視線を一点に集めるようにして登場した一組の美男美女カップル? と思いきや。
って、はあ? あ・・・、ああ?
な、なんで?
なんでまたテルヤマとみ、み、み、ミユキが一緒に登場なの!?
う、嘘でしょ?
み、ミユキのヤツ、こ、こ、こ、こともあろうにテルヤマの腕に彼女の両腕をしっかり絡めてるときた。
あ、あああ、悪夢がまたあああ・・・、と顔面が蒼白になるわたしであった。
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