「ああ、トオルくん?
この、彼女・・・、なんかちょっと酔っちゃってるみたいで。
さっき入り口で会ったんだけど」
とテルヤマがトオルに向かって話し掛けている?
えっ?
う、嘘? と、トオルとテルヤマが? な、なんで知り合い?
「ああ、すいません、テルヤマさん」
と言うトオルに、
「じゃあ、彼女・・・、よろしくね」
とトオルに向かってテルヤマはそう告げると、ミユキの腕をゆっくりとほどき、トオルの腕にバトンを手渡すようにミユキの肩を抱きかかえながら移動させ、すぐにわたしの方に向き直すなりの韓流スター顔負けのビューティフルスマイル。
と、わたしも思わず、ど、どうもみたいな感じの引きつった笑顔で応える。
「ね、ねえ。
この人、かっこいい!」
と酔っぱらったミユキがみとれるようにテルヤマを見上げている。
て、て、テメエは、うせやがれ~!
この腐れビッチが~! と心の中で叫びつつ、それはもちろん顔には出さずに、
「うそ~? なんでテルヤマさん、トオルのこと?」
とわたしは彼に尋ねる。
「ああ。
それが、実はぼくら一緒に霊気の勉強をしてまして。
ってそう、中目黒にある治療院のセガワさんっていう先生のところで」
「そうそう、テルヤマさんはぼくよりもずっと以前からその先生のところで勉強されてる大先輩なんですよ」
とトオル。
「いやあ、それでぼくもこの間トオルくんと話してて、ワカバヤシさんが彼のルームメイトだって聞いてびっくりしちゃいまして。
ねえ、トオルくん?」
「ええ」
「な、なんだ、そ、そうだったんだ?」
ってトオルのヤツ、テルヤマが来るのを知ってて今まで黙ってやがって、このヤロウ。
裏で笑ってやがったな。
このわたしがテルヤマに夢中になってるのを知ってて・・・。
と、このポーカーフェイスのスピメンヤロウに一瞬ちょっとムカついたのだが、わたしは敢えてそんな心境もいっさいおくびには出さずに、
「テルヤマさん?
じゃあほら、こっち、こっち〜」
と言いつつ、テルヤマの腕にしぶとく絡み付いていたミユキの腕を思い切り引きはがし、
「はい、ミユキちゃんはちょっとあっちに行っててねえ~」
と口許だけの笑顔でそのビッチを睨みつける。
「ええ?
こ、この人、マキお姉さまの彼氏なんですかあ?
あれえ?
あの、でもハマグチさ・・・」
とミユキが言いかけたところを、
「オマエはちょっとこっち来て少し座ってろ!」
とギリギリのところでなんとかトオルのヤツがその窮地を救ってくれ、っていうかまあ、さすがのトオルでもそのぐらいのこのわたしに対する気遣いは出来ていたようで。
って言うか、どうでもいいけど本当にとんでもねえオンナだよなあ? このミユキってヤツは。
この後に及んでのそのボケた態度は正直、わたしに対する全面的な宣戦布告と言っても過言ではない。
いやはや、マジで天敵だわ、このビッチ。
危うくコイツにまたしてもこのテルヤマを? なんてわたしの悪夢を一瞬にして吹き飛ばすかのように、
「ああ、マキさん。
これ、この間話してた」
と言ってテルヤマがいきなりわたしに例の手作りブレスレットを手渡そうと差し出す。
「えっ?
あ、ああ・・・、こ、これが?
う、嘘?
す、素敵!」
と思わず気分は地獄から天国へと一気に昇天!
なんていい気なわたしです。
是非とも続けてプチッっと!! よろしくお願い申し上げます!
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