法律大好きのブログ(弁護士村田英幸) -46ページ目

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

第2章 改正会社法の施行

今回の会社法改正では、大きく分けて「株主総会に関する規律」と「取締役会に関する規律」が見直されました。その他にもいくつか改正がされています。

実務への影響も大きい。

 

 2019年12月4日に成立した「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第70号。以下「改正法」といいます)と、それに伴って2020年11月27日に公布された「会社法施行規則等の一部を改正する省令」(令和2年11⽉27⽇法務省令第52号。以下「改正省令」といいます)が、2021年3月1日から施行されました。

また、今回の会社法改正のうち、株主総会資料の電子提供制度等を除く改正法の施行日は、2021年3月1日と定められました。一定の経過措置が定められていますが、取締役の個人別の報酬の決定方針の決定(改正法361条7項)については、経過措置が設けられていないため、決定義務を負う会社が施行日前に決定していない場合には、施行日以後すみやかに対応する必要があります。また、施行日以後に株主総会の招集手続を開始する会社においては、株主総会参考書類等の作成に際して、改正法に則った対応を行う必要があります。

 ただし、今回の改正内容のうち、株主総会実務に最も大きな影響がある株主総会資料の電子提供制度については、2022年度内(2023年3月31日までの年度内)に施行予定とされています。

 

旧都市計画法(大正8年法律第36号)3条に基づき建設大臣が決定した都市計画において公園とされている市有地について民法162条による取得時効の成立が認められた事例

 

最高裁判所第1小法廷判決/昭和43年(オ)第924号

昭和44年5月22日

土地所有権確認等請求事件

【判示事項】    旧都市計画法(大正8年法律第36号)3条に基づき建設大臣が決定した都市計画において公園とされている市有地について民法162条による取得時効の成立が認められた事例

【判決要旨】    旧都市計画法(大正8年法律第36号)3条に基づき建設大臣が決定した都市計画において公園とされている市有地であっても、外見上公園の形態を具備しておらず、したがって、現に公共財産としての使命をはたしていないかぎり、民法162条に基づく取得時効の成立を妨げない。

【参照条文】    民法162

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集23巻6号993頁

 

民法

(所有権の取得時効)

第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。

2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

 

佐賀県唐津市長が佐賀県モーターボート競走会会長理事の地位に就くことの適否

 

最高裁判所第3小法廷判決/昭和32年(オ)第384号

昭和32年12月3日

市長選挙当選の効力に関する訴願裁決取消請求事件

【判示事項】    佐賀県唐津市長が佐賀県モーターボート競走会会長理事の地位に就くことの適否

【判決要旨】    唐津市長が佐賀県モーターボート競走会会長理事の地位に就くことは地方自治法第142条に違反し許されない。

【参照条文】    地方自治法142(昭和31年法律第147号による改正前のもの)

          モーターボート競走法3(昭和32年法律第170号による改正前のもの)

          モーターボート競走法21

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集11巻13号2031頁

 

地方自治法

第百四十二条 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人(当該普通地方公共団体が出資している法人で政令で定めるものを除く。)の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。

 

モーターボート競走法

(競走の実施事務の委託)

第三条 施行者は、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事務を他の地方公共団体、第三十二条第一項に規定する競走実施機関(以下この章から第三章までにおいて単に「競走実施機関」という。)又は私人(第一号に掲げる事務にあつては、競走実施機関に限る。)に委託することができる。この場合においては、同号に掲げる事務であつて国土交通省令で定めるものは、一括して委託しなければならない。

一 競走に出場する選手並びに競走に使用するボート及びモーターの競走前の検査、競走の審判その他の競走の競技に関する事務(以下「競技関係事務」という。)

二 舟券の発売又は第十五条及び第十六条の規定による払戻金若しくは第十八条第六項の規定による返還金の交付(以下「舟券の発売等」という。)に関する事務

三 前二号に掲げるもののほか、競走の実施に関する事務(国土交通省令で定めるものを除く。)

 

(券面金額及び入場料の返還の禁止)

第二十一条 施行者は、第十八条第六項に規定する場合を除き、券面金額の返還請求に応ずることができない。入場料についても、同様とする。

 

病的窃盗は類型的に見て責任能力に影響を及ぼすとしてもその程度はかなり限られる。

 

 

              窃盗被告事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/令和2年(う)第1257号

【判決日付】      令和2年11月17日

【判示事項】      ① 病的窃盗は類型的に見て責任能力に影響を及ぼすとしてもその程度はかなり限られる。

             ② 裁判所は,事案によっては,専門的な知見がなくても(精神医学に関する専門家の意見を聞かないまま),犯行の動機,態様,犯行前後の行動などから,責任能力の減弱の有無,程度について判断することができる。

【判決要旨】      ① 病的窃盗は,そのような精神障害に罹患したことが原因で窃盗を行うというのではなく,窃盗を繰り返すような人に対してそのような診断名が付けられるにすぎず,類型的に見て,責任能力に影響を及ぼすとしてその程度はかなり限られるというべきである。

             ② 責任能力は飽くまでも法的な概念であるから,裁判所は,事案によっては,専門的な知見がなくても,犯行の動機,態様,犯行前後の行動などから,責任能力の減弱の有無,程度について判断することができるというべきである。本件は,責任能力に対する影響がかなり限られる類型の精神障害が問題となった事案であるから,原判決が専門的な知見を求めるまでもなく,被告人の行動等から責任能力の減弱の有無,程度について判断したことに誤りはない。

【参照条文】      刑法235

【掲載誌】        高等裁判所刑事裁判速報集令和2年270頁

 

刑法

(窃盗)

第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

(心神喪失及び心神耗弱)

第三十九条 心神喪失者の行為は、罰しない。

2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

 

相続税の計算において,有限会社の保有する取引相場のない大会社の株式を評価するに当たり,有限会社は,同社に対して50パーセント以上の出資割合を有していないが同社を実効的に支配し得る地位にある評価会社の同族株主の同族関係者として,評価会社の同族株主に当たるとして,税務署長が配当還元方式ではなく,類似業種比準方式を用いてした更正処分は適法であるとされた事例

 

 

              相続税更正処分等取消請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成16年(行コ)第123号

【判決日付】      平成17年1月19日

【判示事項】      1 相続税の計算において,有限会社の保有する取引相場のない大会社の株式を評価するに当たり,有限会社は,同社に対して50パーセント以上の出資割合を有していないが同社を実効的に支配し得る地位にある評価会社の同族株主の同族関係者として,評価会社の同族株主に当たるとして,税務署長が配当還元方式ではなく,類似業種比準方式を用いてした更正処分は適法であるとされた事例

             2 相続税の計算において,相続財産である有限会社の出資を評価するに当たり,評価差額に対する法人税相当額を控除しないことに合理性があるとされた事例

【判決要旨】      (1) 相続税法22条(評価の原則)は、相続により取得した財産の価額は、同法第3章(財産の評価)で特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価により評価するものと規定している。ここに、時価とは、相続開始時における当該財産の客観的交換価値、すなわち、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価額をいうものと解される。

             (2) 客観的交換価値は必ずしも一義的に明確に確定されるものではないことから、課税実務上は、財産評価基本通達に定められている評価方法により相続財産を評価することとされている。これは、相続財産の客観的な交換価値を個別に評価する方法をとると、その評価方法、基礎資料の選択の仕方等により異なった評価額が生じることを避け難く、また、課税庁の事務負担が重くなり、回帰的、かつ、大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となるおそれがあること等から、あらかじめ定められた評価方法により画一的に評価する方が、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地からみて合理的であるという理由に基づくものである。したがって、財産評価基本通達に定められた評価方法が合理的なものである限り、これは、時価の評価方法として妥当性を有するものと解される。

             (3) 財産評価基本通達に定められた評価方法を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって、実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであるなどこの評価方法によらないことが正当と是認されるような特別な事情がある場合には、他の合理的な方法により評価をすることが許されるものと解される。このことは、同通達自体も、その6項において、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」旨定められていること(なお、国税庁長官の指示は、国税庁内部における処理の準則を定めたものにすぎず、同指示の有無が、更正処分の効力要件となっているものではないと解される。)からも明らかである。かかる場合には、同通達の定める評価方法によることなく、その財産の価額に影響を及ぼすべき全ての事情を考慮しつつ、相続税法22条(評価の原則)の規定する「時価」を算定すべきこととなる。

             (4) 類似業者比準式による株式評価は、財産評価基本通達上、非上場株式についての評価原則的な方法であり、現実に取引が行われている上場会社の株価に比準した株式の評価額が得られる点において合理的な手法といえ、非上場株式の算定手法として最も適切な評価方法であるといえる。

             (5)~(8) 省略

             (9) 財産評価基本通達188-2(同族株主以外の株主等が取得した株式の評価)が、非上場株式の原則的な評価手法の例外として、「同族株主以外の株主等」が取得した評価会社の株式については、配当還元方式によって評価することを定めている趣旨は、一般的に、非上場のいわゆる同族会社においては、会社経営等について同族株主以外の株主の意向が反映されることはなく、同族株主以外の株主が株式を保有する目的は、会社経営に関わりを持ったり、株価の上昇によるキャピタルゲイン等の投機的あるいは投資的動機によるものではなく、会社との安定的な取引関係の維持、継続を図ること等数値的に表すことのできない無形の利益を期待して、いわば取引上のつきあいで株式保有をする場合が多く、株主にとっては配当を受領するということ以外に直接の経済的利益を享受することがないという実態を考慮した特別の例外的措置とみるのが相当である。そして、会社に対する直接の支配力を有しているか否かという点において、同族株主とそれ以外の株主とではその保有する株式の実質的な価値に大きな差異があるといえるから、財産評価基本通達は、同族株主以外の株主の保有する株式の評価については、類似業種比準方式よりも安価に算定される配当還元方式による株式の評価方法を採用することにしたものであって、そのような差異を設けることには合理性があるというべきである。

             (10) 財産評価基本通達における例外的評価方法たる配当還元方式は、評価会社の経営に関して実効支配力のない同族株主以外の株主の保有する株式に限って例外的に適用されるものであって、評価会社の経営に対して実効支配力を有する同族株主の保有する株式について適用されるべきものではない。

             (11)~(15) 省略

           (16) 過少申告加算税制度は申告納税制度を採用する国税において、適正な申告をした者とこれをしなかった者との間に生じる不公平を是正し、適正な申告を励行させるための制度的担保となるものであるから、国税通則法65条4項(過少申告加算税)の適用については、申告が「真にやむを得ない理由」によるものであって、納税者に過少申告加算税を賦課することが不当、過酷といえる場合であってはじめて同条項が適用されるものと解すべきであり、単に納税者の法の不知や誤解に基づく場合はこれに該当しないものと解するのが相当である。

             (17) 省略

【参照条文】      相続税法22

             相続税財産評価に関する基本通達178

             相続税財産評価に関する基本通達194

【掲載誌】        訟務月報51巻10号2629頁

             税務訴訟資料255号順号9900

 

財産評価基本通達 188-2 同族株主以外の株主等が取得した株式の評価

 

前項の株式の価額は、その株式に係る年配当金額(183《評価会社の1株当たりの配当金額等の計算》の(1)に定める1株当たりの配当金額をいう。ただし、その金額が2円50銭未満のもの及び無配のものにあっては2円50銭とする。)を基として、次の算式により計算した金額によって評価する。ただし、その金額がその株式を179《取引相場のない株式の評価の原則》の定めにより評価するものとして計算した金額を超える場合には、179《取引相場のない株式の評価の原則》の定めにより計算した金額によって評価する。

 

(注) 上記算式の「その株式に係る年配当金額」は1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の金額であるので、算式中において、評価会社の直前期末における1株当たりの資本金等の額の50円に対する倍数を乗じて評価額を計算することとしていることに留意する。

 

第1部 はじめに

 

第1章 はじめに

本書では、改正会社法(2021年3月~施行)の概要を解説します。

 

「会社法の一部を改正する法律」(2019年12月11日公布)では、次の点について、 会社法が改正されました。

1.株主総会資料の電子提供制度の創設

2.株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備

3.取締役の報酬に関する規律の見直し

4.会社補償および役員などのために締結される保険契約(D&O保険)に関する規律の整備

5.社外取締役に関する規律の見直し

6.社債の管理に関する規律の見直し

7.株式交付制度の創設

8.その他

 

※本書では、法令名を次のように記載しています。

改正法、会社法…施行後の改正会社法(平成17年法律第86号)

旧法、旧会社法…施行前の会社法(平成17年法律第86号)

金商法…金融商品取引法(昭和23年法律第25号)

(※)以下、本稿において引用している法令の条文番号は、改正法または改正省令による改正後のものとします。

 

家畜人工授精所を開設する都道府県において家畜人工授精用精液の提供を求める者が当該都道府県内の畜産農家ではないことのみをもって同精液の提供を拒むことと家畜改良増殖法29条所定の「正当な理由」の有無

 

最高裁判所第1小法廷判決/平成13年(受)第331号

平成13年12月13日

提供妨害禁止請求事件

【判示事項】    家畜人工授精所を開設する都道府県において家畜人工授精用精液の提供を求める者が当該都道府県内の畜産農家ではないことのみをもって同精液の提供を拒むことと家畜改良増殖法29条所定の「正当な理由」の有無

【判決要旨】    家畜人工授精所を開設する都道府県が、家畜人工授精用精液の提供を求める者が当該都道府県内の畜産農家ではないことのみをもって、同精液の提供を拒むことには、家畜改良増殖法29条所定の「正当な理由」があるとはいえない。

【参照条文】    家畜改良増殖法29

【掲載誌】     最高裁判所裁判集民事204号49頁

          裁判所時報1305号2頁

          判例タイムズ1083号125頁

          判例時報1773号19頁

 

家畜改良増殖法

(家畜人工授精用精液提供の義務)

第二十九条 家畜人工授精所の開設者は、その家畜人工授精所において家畜人工授精用精液の提供を求められたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。

 

付近住民らの健康上の被害を理由として、新築店舗用ビルの住民居住地に隣接する側に設置された駐車場出入口の使用差止めを求めた仮処分事件

 

大阪地方裁判所決定/昭和57年(ヨ)第408号

昭和57年11月24日

工事禁止等仮処分申請事件

申請に対し、ビル建築者は、技術的・経済的に可能な限り被害回避のため最大限の努力を尽くすべきであり、本件の場合、被害回避が可能である、として認容された事例

【参照条文】    民法709

          民事訴訟法760

【掲載誌】     判例タイムズ491号85頁

          判例時報1064号3頁

 

民法

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

民事保全法

(仮処分命令の必要性等)

第二十三条 係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。

2 仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。

3 第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。

4 第二項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。

 

婚姻の届書が受理された当時本人が意識を失っていても婚姻が有効に成立するとされた事例

 

 

              婚姻無効確認請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和45年(オ)第104号

【判決日付】      昭和45年4月21日

【判示事項】      婚姻の届書が受理された当時本人が意識を失っていても婚姻が有効に成立するとされた事例

【判決要旨】     将来婚姻することを約して性的交渉を続けてきた者が、婚姻意思を有し、かつその意志に基づいて婚姻の届書を作成したときは、かりに届出の受理された当時意識を失つていたとしても、その受理前に翻意したなど特段の事情のないかぎり、右届出の受理により婚姻は有効に成立するものと解すべきである。

【参照条文】      民法739

             民法742

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事99号137頁

             判例時報596号43頁

 

民法

(婚姻の届出)

第七百三十九条 婚姻は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。

 

(婚姻の無効)

第七百四十二条 婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。

一 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。

二 当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。

 

租税特別措置法二六条一項(社会保険診療報酬の所得計算の特例)の規定は、確定申告書にその適用をうける旨の記載がない場合には、適用できないとされた事例

 

 

              更正処分等取消請求上告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和54年(行ツ)第127号

【判決日付】      昭和55年6月5日

【判示事項】      (1) 租税特別措置法二六条一項(社会保険診療報酬の所得計算の特例)の規定は、確定申告書にその適用をうける旨の記載がない場合には、適用できないとされた事例

             (2) 確定申告書に租税特別措置法二六条一項の適用に関する記載をしなかつたことについて、その是正を許さなければ納税義務者の利益を著しく害する特段の事情があるとはいえず、確定申告書提出後にこれを補正することもできないとされた事例

             (3) 内科医の原価及び一般経費の額について、同一税務署管内の類似同業者七件の平均経費率を用いて推計する方法は、合理的であるとされた事例

【判決要旨】      (1)~(3) 省略

【掲載誌】        税務訴訟資料113号563頁

 

租税特別措置法

(社会保険診療報酬の所得計算の特例)

第二十六条 医業又は歯科医業を営む個人が、各年において社会保険診療につき支払を受けるべき金額を有する場合において、当該支払を受けるべき金額が五千万円以下であり、かつ、当該個人が営む医業又は歯科医業から生ずる事業所得に係る総収入金額に算入すべき金額の合計額が七千万円以下であるときは、その年分の事業所得の金額の計算上、当該社会保険診療に係る費用として必要経費に算入する金額は、所得税法第三十七条第一項及び第二編第二章第二節第四款の規定にかかわらず、当該支払を受けるべき金額を次の表の上欄に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に同表の下欄に掲げる率を乗じて計算した金額の合計額とする。

二千五百万円以下の金額

百分の七十二

二千五百万円を超え三千万円以下の金額

百分の七十

三千万円を超え四千万円以下の金額

百分の六十二

四千万円を超え五千万円以下の金額

百分の五十七

 前項に規定する社会保険診療とは、次の各号に掲げる給付又は医療、介護、助産若しくはサービスをいう。

 健康保険法(大正十一年法律第七十号)、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)(防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和二十七年法律第二百六十六号)第二十二条第一項においてその例によるものとされる場合を含む。以下この号において同じ。)、地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)、私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)、戦傷病者特別援護法(昭和三十八年法律第百六十八号)、母子保健法(昭和四十年法律第百四十一号)、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)又は原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号)の規定に基づく療養の給付(健康保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律、船員保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法若しくは私立学校教職員共済法の規定によつて入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、家族療養費若しくは特別療養費(国民健康保険法第五十四条の三第一項又は高齢者の医療の確保に関する法律第八十二条第一項に規定する特別療養費をいう。以下この号において同じ。)を支給することとされる被保険者、組合員若しくは加入者若しくは被扶養者に係る療養のうち当該入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、家族療養費若しくは特別療養費の額の算定に係る当該療養に要する費用の額としてこれらの法律の規定により定める金額に相当する部分(特別療養費に係る当該部分にあつては、当該部分であることにつき財務省令で定めるところにより証明がされたものに限る。)又はこれらの法律の規定によつて訪問看護療養費若しくは家族訪問看護療養費を支給することとされる被保険者、組合員若しくは加入者若しくは被扶養者に係る指定訪問看護を含む。)、更生医療の給付、養育医療の給付、療育の給付又は医療の給付

 生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)の規定に基づく医療扶助のための医療、介護扶助のための介護(同法第十五条の二第一項第一号に掲げる居宅介護のうち同条第二項に規定する訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーション若しくは短期入所療養介護、同条第一項第五号に掲げる介護予防のうち同条第五項に規定する介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導、介護予防通所リハビリテーション若しくは介護予防短期入所療養介護又は同条第一項第四号に掲げる施設介護のうち同条第四項に規定する介護保健施設サービス若しくは介護医療院サービスに限る。)若しくは出産扶助のための助産又は中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律(平成六年法律第三十号)の規定(中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律(平成十九年法律第百二十七号)附則第四条第二項において準用する場合を含む。)に基づく医療支援給付のための医療その他の支援給付に係る政令で定める給付若しくは医療、介護、助産若しくはサービス若しくは中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律(平成二十五年法律第百六号)附則第二条第一項若しくは第二項の規定によりなお従前の例によることとされる同法による改正前の中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の規定に基づく医療支援給付のための医療その他の支援給付に係る政令で定める給付若しくは医療、介護、助産若しくはサービス

 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)又は心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成十五年法律第百十号)の規定に基づく医療

 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)の規定によつて居宅介護サービス費を支給することとされる被保険者に係る指定居宅サービス(訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーション又は短期入所療養介護に限る。)のうち当該居宅介護サービス費の額の算定に係る当該指定居宅サービスに要する費用の額として同法の規定により定める金額に相当する部分、同法の規定によつて介護予防サービス費を支給することとされる被保険者に係る指定介護予防サービス(介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導、介護予防通所リハビリテーション又は介護予防短期入所療養介護に限る。)のうち当該介護予防サービス費の額の算定に係る当該指定介護予防サービスに要する費用の額として同法の規定により定める金額に相当する部分又は同法の規定によつて施設介護サービス費を支給することとされる被保険者に係る介護保健施設サービス若しくは介護医療院サービスのうち当該施設介護サービス費の額の算定に係る当該介護保健施設サービス若しくは介護医療院サービスに要する費用の額として同法の規定により定める金額に相当する部分

 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)の規定によつて自立支援医療費を支給することとされる支給認定に係る障害者等に係る指定自立支援医療のうち当該自立支援医療費の額の算定に係る当該指定自立支援医療に要する費用の額として同法の規定により定める金額に相当する部分若しくは同法の規定によつて療養介護医療費を支給することとされる支給決定に係る障害者に係る指定療養介護医療(療養介護に係る指定障害福祉サービス事業者等から提供を受ける療養介護医療をいう。)のうち当該療養介護医療費の額の算定に係る当該指定療養介護医療に要する費用の額として同法の規定により定める金額に相当する部分又は児童福祉法の規定によつて肢体不自由児通所医療費を支給することとされる通所給付決定に係る障害児に係る肢体不自由児通所医療のうち当該肢体不自由児通所医療費の額の算定に係る当該肢体不自由児通所医療に要する費用の額として同法の規定により定める金額に相当する部分若しくは同法の規定によつて障害児入所医療費を支給することとされる入所給付決定に係る障害児に係る障害児入所医療のうち当該障害児入所医療費の額の算定に係る当該障害児入所医療に要する費用の額として同法の規定により定める金額に相当する部分

 難病の患者に対する医療等に関する法律(平成二十六年法律第五十号)の規定によつて特定医療費を支給することとされる支給認定を受けた指定難病の患者に係る指定特定医療のうち当該特定医療費の額の算定に係る当該指定特定医療に要する費用の額として同法の規定により定める金額に相当する部分又は児童福祉法の規定によつて小児慢性特定疾病医療費を支給することとされる医療費支給認定に係る小児慢性特定疾病児童等に係る指定小児慢性特定疾病医療支援のうち当該小児慢性特定疾病医療費の額の算定に係る当該指定小児慢性特定疾病医療支援に要する費用の額として同法の規定により定める金額に相当する部分

 第一項の規定は、確定申告書に同項の規定により事業所得の金額を計算した旨の記載がない場合には、適用しない。

 税務署長は、前項の記載がない確定申告書の提出があつた場合においても、その記載がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、第一項の規定を適用することができる。