病的窃盗は類型的に見て責任能力に影響を及ぼすとしてもその程度はかなり限られる。
窃盗被告事件
【事件番号】 東京高等裁判所判決/令和2年(う)第1257号
【判決日付】 令和2年11月17日
【判示事項】 ① 病的窃盗は類型的に見て責任能力に影響を及ぼすとしてもその程度はかなり限られる。
② 裁判所は,事案によっては,専門的な知見がなくても(精神医学に関する専門家の意見を聞かないまま),犯行の動機,態様,犯行前後の行動などから,責任能力の減弱の有無,程度について判断することができる。
【判決要旨】 ① 病的窃盗は,そのような精神障害に罹患したことが原因で窃盗を行うというのではなく,窃盗を繰り返すような人に対してそのような診断名が付けられるにすぎず,類型的に見て,責任能力に影響を及ぼすとしてその程度はかなり限られるというべきである。
② 責任能力は飽くまでも法的な概念であるから,裁判所は,事案によっては,専門的な知見がなくても,犯行の動機,態様,犯行前後の行動などから,責任能力の減弱の有無,程度について判断することができるというべきである。本件は,責任能力に対する影響がかなり限られる類型の精神障害が問題となった事案であるから,原判決が専門的な知見を求めるまでもなく,被告人の行動等から責任能力の減弱の有無,程度について判断したことに誤りはない。
【参照条文】 刑法235
【掲載誌】 高等裁判所刑事裁判速報集令和2年270頁
刑法
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(心神喪失及び心神耗弱)
第三十九条 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。