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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

仮登記後第三者が所有権取得登記をした場合に、仮登記権利者のなす本登記請求の許否

 

 

不動産所有権移転登記手続請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和28年(オ)第178号

【判決日付】      昭和32年6月7日

【判示事項】      仮登記後第三者が所有権取得登記をした場合に、仮登記権利者のなす本登記請求の許否

             不動産登記法2条1号によつて仮登記をなすべき場合に、同条2号によつてなされた仮登記の効力

【判決要旨】      甲所有の不動産につき、乙のため所有権移転請求権保全の仮登記がなされた後に、甲が右不動産を丙に譲渡し移転登記をした場合に、乙は、丙の登記を抹消することなくして、甲に対し所有権移転登記を請求することができる。

             甲が乙に対する債務の担保として不動産の所有権を乙に譲渡した場合に、乙のために所有権移転請求権保全の仮登記がなされたとしても、その登記は順位保全の効力を有すると解すべきである。

【参照条文】      民法177

             不動産登記法

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集11巻6号936頁

 

 

民法

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

 

不動産登記法

(仮登記)

第百五条 仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。

一 第三条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、第二十五条第九号の申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち法務省令で定めるものを提供することができないとき。

二 第三条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。

(仮登記に基づく本登記の順位)

第百六条 仮登記に基づいて本登記(仮登記がされた後、これと同一の不動産についてされる同一の権利についての権利に関する登記であって、当該不動産に係る登記記録に当該仮登記に基づく登記であることが記録されているものをいう。以下同じ。)をした場合は、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位による。

 

権利行使と恐喝罪

 

 

恐喝詐欺銃砲等所持禁止令違反被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和27年(あ)第6596号

【判決日付】      昭和30年10月14日

【判示事項】      権利行使と恐喝罪

【判決要旨】      債権取立のために執つた手段が、権利行使の方法として社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱した恐喝手段である場合には、債権額のいかんにかかわらず、右手段により債務者から交付を受けた金員の全額につき恐喝罪が成立する。

【参照条文】      刑法249-1

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集9巻11号2173頁

 

 

 

(恐喝)

第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

 

株券発行を遅滞している会社と株式の譲渡の効力

 

 

              株主総会決議無効確認等請求事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/昭和39年(オ)第883号

【判決日付】      昭和47年11月8日

【判示事項】      株券発行を遅滞している会社と株式の譲渡の効力

【判決要旨】      株式会社が株券の発行を不当に遅滞し、信義則に照らし、株券発行前の株式譲渡の効力を否定するのを相当としない状況に至つた場合、株主が意思表示のみによつて株式を譲渡するときは、その譲渡は会社に対しても有効である。

【参照条文】      商法204

             商法205-1

             商法226-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集26巻9号1489頁

 

 

会社法

(株式の譲渡)

第百二十七条 株主は、その有する株式を譲渡することができる。

 

(株券発行会社の株式の譲渡)

第百二十八条 株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。ただし、自己株式の処分による株式の譲渡については、この限りでない。

2 株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない。

 

(株主からの承認の請求)

第百三十六条 譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。

 

 

円建て債券の債権者集会における未償還の債券に関する和解の決議およびその和解条項による支払により、当該債券に係る債務が全て弁済されたと認められた事例

 

 

債券償還等請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成30年(ネ)第2718号

【判決日付】      令和元年10月29日

【判示事項】      1 円建て債券を発行した外国国家がわが国の民事裁判権に服することを免除されないとされた事例

             2 円建て債券の債権者集会における未償還の債券に関する和解の決議およびその和解条項による支払により、当該債券に係る債務が全て弁済されたと認められた事例

             3 Xらの請求を棄却する旨の控訴審判決において、全審級の訴訟費用が民事訴訟法62条に基づきYの負担とされた事例

【判決要旨】      1 ①債券を発行して資金調達をすることは、その性質上、私人でも行うことが可能な商業取引であり、本件の債券に関する取引行為は私法的ないし業務管理的な行為に当たるといえること、②被告である外国国家は本件の債券に係る債務について裁判権免除を取消不能の形で放棄する旨書面により約し、本件の債券に関する紛争についてわが国の民事裁判権に服する旨の意思表示を明確に表明していたと認められること、③被告である外国国家における支払延期措置が議会や政府の行為を伴い、政治的な判断がされたからといって、上記の放棄条項の適用を免れることはできないし、支払延期措置は弁済期を繰り延べるために行われた私法的ないし業務管理的な行為であって主権的行為であるということはできない上、被告である外国国家の議会や政府の主権的判断の適否を判断することにはならないことからすると、裁判権免除を認めるべき特段の事情があるということはできず、被告である外国国家はわが国の民事裁判権から免除されない。

             2 債券の債権者らが事前に合意していた要項の記載内容に従った手続を経て、債権者集会における特別決議によって採択された和解案は、日本法の社債権者集会の決議に必要とされている裁判所の認可手続が執られていないことにかかわらず、すべての債券の債権者を拘束し、その結果、債券の債権者らの権利は和解案の内容に従って変更される。

             3 控訴人であるYが、控訴審における控訴理由として原審における主張を維持し、いったん弁論を終結した後になって、ようやく、上記2の和解およびそれに従った弁済を行ったという経過自体によると、全審級を通じて、被控訴人であるXらの訴訟行為は民事訴訟法62条に定める権利の伸長に必要であったものと認められるから、本件訴訟の総費用はYに負担させるのが相当である。

【参照条文】      民事訴訟法62

             民事訴訟法67-2

【掲載誌】        金融・商事判例1596号8頁

 

 

 

民事訴訟法

(不必要な行為があった場合等の負担)

第六十二条 裁判所は、事情により、勝訴の当事者に、その権利の伸張若しくは防御に必要でない行為によって生じた訴訟費用又は行為の時における訴訟の程度において相手方の権利の伸張若しくは防御に必要であった行為によって生じた訴訟費用の全部又は一部を負担させることができる。

 

(訴訟費用の負担の裁判)

第六十七条 裁判所は、事件を完結する裁判において、職権で、その審級における訴訟費用の全部について、その負担の裁判をしなければならない。ただし、事情により、事件の一部又は中間の争いに関する裁判において、その費用についての負担の裁判をすることができる。

2 上級の裁判所が本案の裁判を変更する場合には、訴訟の総費用について、その負担の裁判をしなければならない。事件の差戻し又は移送を受けた裁判所がその事件を完結する裁判をする場合も、同様とする。

 

 

 

       主   文

 

 1 原判決を取り消す。

 2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

 3 訴訟費用は、全審級を通じ、控訴人の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。

2(1) 主位的申立て

 被控訴人らの訴えをいずれも却下する。

 (2) 予備的申立て

 主文第2項と同旨

第2 事案の概要

1 本件は、銀行である被控訴人らが、外国国家である控訴人が平成8年12月から平成12年9月にかけて4回にわたり発行した円建て債券(以下「本件債券」という。)を保有する債権者から訴訟追行権を授与された訴訟担当者として、控訴人に対し、当該債券の償還並びに約定利息及び遅延損害金の支払を求める事案である。

 控訴人は、外国国家であるため我が国の裁判権を免除され、仮にそうでないとしても、本件債券について控訴人が行った支払停止措置が執られたことからすれば本件債券の弁済期は未到来であり、仮に弁済期が到来しているとすれば債権は時効消滅している旨を主張して争っている。

 差戻前第1審において、被控訴人らは本件訴訟について原告適格を有しないとして本件訴えをいずれも却下する判決が言い渡され、差戻前控訴審においてもその判断が維持されたが、上告審において、被控訴人らの任意的訴訟担当者としての原告適格を肯定し、上記の差戻前控訴審判決を破棄して差戻前第1審判決を取り消し、本件を東京地方裁判所に差し戻す旨の判決が言い渡された。

2 原審は、控訴人は本件訴訟について我が国の民事裁判権に服することを免除されず、控訴人において支払停止措置が執られたとしても本件債券の弁済期は未到来であるということはできず、本件債券の償還等請求権は時効消滅したとはいえないとして、被控訴人らの請求を認容したところ、これを不服とする控訴人が控訴をした。

 被控訴人らは、本件債券及び利札の一部が償却されたとして、訴えを一部取り下げた。その結果、当審において審理判断の対象は、別紙1記載の請求対象債券一覧のとおりとなった。また、控訴人は、当審において弁済の抗弁を追加した。

『Q&A市民のための特定商取引法〈第2版〉』中央経済社

村 千鶴子 著
定価:3,080円(税込)

発行日:2023/02/24
A5判 / 264頁
ISBN:978-4-502-44791-4


本の紹介
法規制の対象およびその全体像を明らかにすることを目的とする入門書。令和3年改正をフォローするとともに、最新のトラブル事例を取り上げて、大きく改訂を行っている。
著者紹介
村 千鶴子(むら ちづこ)


コメント
やさしく解説している。
根拠条文の私的がないのが、残念。



 

欠損金額を減額する更正処分に対して不服申立を経由している場合と当該欠損金の繰戻しによる法人税の還付請求を理由がないとする通知処分に対する不服申立経由の必要

 

 

法人税更正処分取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和58年(行ツ)第85号

【判決日付】      昭和59年6月28日

【判示事項】      欠損金額を減額する更正処分に対して不服申立を経由している場合と当該欠損金の繰戻しによる法人税の還付請求を理由がないとする通知処分に対する不服申立経由の必要

【判決要旨】      欠損金の繰戻しによる前年度の法人税の還付請求を理由がないとする通知処分に対し取消の訴えを提起するためには、右通知処分と同時に同一の理由によりされた当該欠損金額を減額する更正処分に対し不服申立を経由している場合であつても、右通知処分に対する不服申立を経由することが必要である。

【参照条文】      国税通則法115-1

             行政事件訴訟法8-1

             法人税法81-6

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集38巻8号1029頁

 

 

 

国税通則法

(不服申立ての前置等)

第百十五条 国税に関する法律に基づく処分(第八十条第三項(行政不服審査法との関係)に規定する処分を除く。以下この節において同じ。)で不服申立てをすることができるものの取消しを求める訴えは、審査請求についての裁決を経た後でなければ、提起することができない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

一 国税不服審判所長又は国税庁長官に対して審査請求がされた日の翌日から起算して三月を経過しても裁決がないとき。

二 更正決定等の取消しを求める訴えを提起した者が、その訴訟の係属している間に当該更正決定等に係る国税の課税標準等又は税額等についてされた他の更正決定等の取消しを求めようとするとき。

三 審査請求についての裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき、その他その裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。

2 国税に関する法律に基づく処分についてされた再調査の請求又は審査請求について決定又は裁決をした者は、その決定又は裁決をした時にその処分についての訴訟が係属している場合には、その再調査決定書又は裁決書の謄本をその訴訟が係属している裁判所に送付するものとする。

 

 

行政事件訴訟法

(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)

第八条 処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。

2 前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。

一 審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。

二 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。

三 その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。

3 第一項本文の場合において、当該処分につき審査請求がされているときは、裁判所は、その審査請求に対する裁決があるまで(審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないときは、その期間を経過するまで)、訴訟手続を中止することができる。

 

第三者の一審における訴訟行為につき二審で追認があったものとされた事例

 

 

              所有権移転登記手続等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/平成2年(オ)第851号

【判決日付】      平成2年12月4日

【判示事項】      第三者の一審における訴訟行為につき二審で追認があったものとされた事例

【判決要旨】      一審で第三者が被告の氏名を冒用して訴訟行為をした場合でも、被告本人が自ら控訴を申し立て、その選任した訴訟代理人が異議をとどめずに本案について弁論をし、判決を受けたときは、一審での第三者の訴訟行為は追認されたものと解すべきである。

【参照条文】      民事訴訟法54

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事161号279頁

             判例タイムズ768号68頁

             金融・商事判例881号18頁

             判例時報1398号66頁

             金融法務事情1307号27頁

 

 

民事訴訟法

(裁判長の訴状審査権)

第百三十七条 訴状が第百三十四条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合も、同様とする。

2 前項の場合において、原告が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、訴状を却下しなければならない。

3 前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。

 

一般旅券発給拒否処分が理由付記の不備のため違法とされた事例

 

 

一般旅券発給拒否処分取消等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和57年(行ツ)第70号

【判決日付】      昭和60年1月22日

【判示事項】      一般旅券発給拒否処分が理由付記の不備のため違法とされた事例

【判決要旨】      一般旅券発給拒否処分の通知書に、発給拒否の理由として、「旅券法13条1項5号に該当する。」と記載されているだけで、同号適用の基礎となつた事実関係が具体的に示されていない場合には、理由付記として不備であつて、右処分は違法である。

【参照条文】      旅券法13-1

             旅券法14

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集39巻1号1頁

 

 

旅券法

(一般旅券の発給等の制限)

第十三条 外務大臣又は領事官は、一般旅券の発給又は渡航先の追加を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合には、一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる。

一 渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者

二 死刑、無期若しくは長期二年以上の刑に当たる罪につき訴追されている者又はこれらの罪を犯した疑いにより逮捕状、勾引状、勾留状若しくは鑑定留置状が発せられている旨が関係機関から外務大臣に通報されている者

三 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者

四 第二十三条の規定により刑に処せられた者

五 旅券若しくは渡航書を偽造し、又は旅券若しくは渡航書として偽造された文書を行使し、若しくはその未遂罪を犯し、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百五十五条第一項又は第百五十八条の規定により刑に処せられた者

六 国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律(昭和二十八年法律第二百三十六号)第一条に規定する帰国者で、同法第二条第一項の措置の対象となつたもの又は同法第三条第一項若しくは第四条の規定による貸付けを受けたもののうち、外国に渡航したときに公共の負担となるおそれがあるもの

七 前各号に掲げる者を除くほか、外務大臣において、著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者

2 外務大臣は、前項第七号の認定をしようとするときは、あらかじめ法務大臣と協議しなければならない。

(一般旅券の発給をしない場合等の通知)

第十四条 外務大臣又は領事官は、前条の規定に基づき一般旅券の発給若しくは渡航先の追加をしないと決定したとき、又は第五条第二項若しくは第五項の規定に基づいて渡航先を個別に特定して記載し、若しくは有効期間を十年(一般旅券の発給の申請をする者が、同条第一項各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは五年、残存有効期間同一旅券の発給の申請をする者であるときはその現有旅券の残存有効期間)未満とすると決定したとき(第四条の二ただし書の規定に該当する場合において一般旅券を発行するときを除く。)は、速やかに、理由を付した書面をもつて一般旅券の発給又は渡航先の追加を申請した者にその旨を通知しなければならない。

 

新日本グラウト工業事件

 

 

             遺族補償年金等不支給決定処分取消請求事件

【事件番号】      福岡地方裁判所判決/平成29年(行ウ)第12号

【判決日付】      令和3年3月12日

【判示事項】      1 業務の危険性の判断は,当該労働者と同種の平均的な労働者,すなわち,何らかの個体側の脆弱性を有しながらも,当該労働者と職種,職場における立場,経験等の点で類似する者であって,特段の勤務軽減まで必要とせずに通常業務を遂行することができる者を基準とすべきであるとされた例

             2 対象疾病を発病しているか否かは,本件の具体的事情に照らし,「ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン」に示された各疾病の診断基準を満たすか否かによって判断するのが相当であるとされた例

             3 亡Kの長時間労働について,「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」に該当し,その心理的負荷は「強」と判断すべきであるとされた例

             4 Kに対する上司の発言について,「(ひどい)嫌がらせ,いじめ,又は暴行を受けた」に該当し,当該出来事自体の心理的負荷は「中」程度であっても,その出来事前に月100時間を超える残業時間(恒常的長時間労働)が認められることから,心理的負荷の程度を「強」と修正すべきであるとされた例

             5 Kの不安障害は重度のものとまでは認められず,平均的労働者の範囲を逸脱するものとはいえないから,不安障害を発症していたことを個体側要因として取り上げるのは相当ではないとされた例

             6 Kはアルコール依存症と診断されていたものの,その程度は重いものではなく,平均的労働者の範囲内といえるから,Kの個体側要因として評価すべきとはいえないとされた例

             7 Kのうつ病エピソードの発病は業務に起因すること,およびKの自殺と業務に相当因果関係があることが認められた例

【掲載誌】        労働判例1243号27頁

 

 

 

商法四三条二項の準用する三八条三項にいう「善意の第三者」

 

 

売買代金請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和60年(オ)第1300号

【判決日付】      平成2年2月22日

【判示事項】      商法四三条二項の準用する三八条三項にいう「善意の第三者」

【判決要旨】      商法四三条二項の準用する三八条三項にいう「善意の第三者」には、代理権に加えられた制限を知らなかつたことにつき過失のある第三者は含まれるが、重大な過失のある第三者は含まれない。

【参照条文】      商法38-3

             商法43-2

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事159号169頁

             商事法務1209号49頁

 

 

商法

(表見支配人)

第二十四条 商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

(ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人)

第二十五条 商人の営業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。

2 前項の使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 上告費用は上告人の負担とする。

 

       理   由

 

上告代理人古沢昭二、同原慎一、同腰原誠の上告理由について

 商法四三条一項は、番頭、手代その他営業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、その事項に関し一切の裁判外の行為をなす権限を有すると規定しているところ、右規定の沿革、文言等に照らすと、その趣旨は、反復的・集団的取引であることを特質とする商取引において、番頭、手代等営業主からその営業に関するある種類又は特定の事項(例えは、販売、購入、貸付、出納等)を処理するため選任された者について、取引の都度その代理権限の有無及び範囲を調査確認しなければならないとすると、取引の円滑確実と隠然が害される虞れがあることから、右のような使用人については、客観的にみて受任事項の範囲内に属するものと認められる一切の裁判外の行為をなす権限すなわち包括的代理権を有するものとすることにより、これと取引する第三者が、代理権の有無及び当該行為か代理権の範囲内に属するかどうかを一々調査することなく、安んじて取引を行うことができるようにするにあるものと解される。したがって、右条項による代理権限を主張する者は、当該使用人か営業主からその営業に関するある種類又は特定の事項の処理を委任された者であること及び当該行為か客観的にみて右事項の範囲内に属することを主張・立証しなけれはならないか、右事項につき代理権を授与されたことまでを主張・立証することを要しないというべきである。そして、右趣旨に鑑みると、同条二項、三八条三項にいう「善意ノ第三者」には、代理権に加えられた制限を知らなかったことにつき過失のある第三者は含まれるが、重大な過失のある第三者は含まれないものと解するのが相当である。

 原審は、右と同旨の見解に立ち、浜田敏嗣が、上告人の物資部繊維課洋装品係長として、その担当業務である洋装衣料品の売買取引に関する業務を処理していた事実を認定して、同人は商法四三条一項所定の使用人に当たるものとし、かつ、その代理権に加えられた制限を知らなかったことにつき被上告人の代理人である前川浩一に重大な過失があったとは認められないとして、被上告人の請求を認容しているのであって、右認定判断は原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひっきょう、独自の見解に立って原判決を論難するか、又は原審の専権に属する事実の認定、証拠の取捨判断を非難するものにすぎず、採用することができない。

 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

    最高裁判所第一小法廷