事業者が消費税等の確定申告において課税期間中に行った課税仕入れに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除したことにつき国税通則法(平成28年改正前)65条4項にいう「正当な理由」があると認めることはできないとされた事例
消費税更正処分等取消請求事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/令和3年(行ヒ)第260号
【判決日付】 令和5年3月6日
【判示事項】 事業者が消費税等の確定申告において課税期間中に行った課税仕入れに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除したことにつき国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの)65条4項にいう「正当な理由」があると認めることはできないとされた事例
【掲載誌】 LLI/DB 判例秘書登載
国税通則法
(過少申告加算税)
第六十五条 期限内申告書(還付請求申告書を含む。第三項において同じ。)が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において、次条第一項ただし書又は第七項の規定の適用があるときを含む。)において、修正申告書の提出又は更正があつたときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十の割合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、百分の五の割合)を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。
2 前項の規定に該当する場合(第五項の規定の適用がある場合を除く。)において、前項に規定する納付すべき税額(同項の修正申告又は更正前に当該修正申告又は更正に係る国税について修正申告書の提出又は更正があつたときは、その国税に係る累積増差税額を加算した金額)がその国税に係る期限内申告税額に相当する金額と五十万円とのいずれか多い金額を超えるときは、同項の過少申告加算税の額は、同項の規定にかかわらず、同項の規定により計算した金額に、その超える部分に相当する税額(同項に規定する納付すべき税額が当該超える部分に相当する税額に満たないときは、当該納付すべき税額)に百分の五の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
3 前項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 累積増差税額 第一項の修正申告又は更正前にされたその国税についての修正申告書の提出又は更正に基づき第三十五条第二項の規定により納付すべき税額の合計額(当該国税について、当該納付すべき税額を減少させる更正又は更正に係る不服申立て若しくは訴えについての決定、裁決若しくは判決による原処分の異動があつたときはこれらにより減少した部分の税額に相当する金額を控除した金額とし、次項の規定の適用があつたときは同項の規定により控除すべきであつた金額を控除した金額とする。)
二 期限内申告税額 期限内申告書(次条第一項ただし書又は第七項の規定の適用がある場合には、期限後申告書を含む。次項第二号において同じ。)の提出に基づき第三十五条第一項又は第二項の規定により納付すべき税額(これらの申告書に係る国税について、次に掲げる金額があるときは当該金額を加算した金額とし、所得税、法人税、地方法人税、相続税又は消費税に係るこれらの申告書に記載された還付金の額に相当する税額があるときは当該税額を控除した金額とする。)
イ 所得税法第九十五条(外国税額控除)若しくは第百六十五条の六(非居住者に係る外国税額の控除)の規定による控除をされるべき金額、第一項の修正申告若しくは更正に係る同法第百二十条第一項第四号(確定所得申告)(同法第百六十六条(申告、納付及び還付)において準用する場合を含む。)に規定する源泉徴収税額に相当する金額、同法第百二十条第二項(同法第百六十六条において準用する場合を含む。)に規定する予納税額又は災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(昭和二十二年法律第百七十五号)第二条(所得税の軽減又は免除)の規定により軽減若しくは免除を受けた所得税の額
ロ 法人税法第二条第三十八号(定義)に規定する中間納付額、同法第六十八条(所得税額の控除)(同法第百四十四条(外国法人に係る所得税額の控除)において準用する場合を含む。)、第六十九条(外国税額の控除)若しくは第百四十四条の二(外国法人に係る外国税額の控除)の規定による控除をされるべき金額又は同法第九十条(退職年金等積立金に係る中間申告による納付)(同法第百四十五条の五(申告及び納付)において準用する場合を含む。)の規定により納付すべき法人税の額(その額につき修正申告書の提出又は更正があつた場合には、その申告又は更正後の法人税の額)
ハ 地方法人税法第二条第十八号(定義)に規定する中間納付額、同法第十二条(外国税額の控除)の規定による控除をされるべき金額又は同法第二十条第二項(中間申告による納付)の規定により納付すべき地方法人税の額(その額につき修正申告書の提出又は更正があつた場合には、その申告又は更正後の地方法人税の額)
ニ 相続税法第二十条の二(在外財産に対する相続税額の控除)、第二十一条の八(在外財産に対する贈与税額の控除)、第二十一条の十五第三項及び第二十一条の十六第四項(相続時精算課税に係る相続税額)の規定による控除をされるべき金額
ホ 消費税法第二条第一項第二十号(定義)に規定する中間納付額
4 次の各号に掲げる場合には、第一項又は第二項に規定する納付すべき税額から当該各号に定める税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。
一 第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて正当な理由があると認められるものがある場合 その正当な理由があると認められる事実に基づく税額
二 第一項の修正申告又は更正前に当該修正申告又は更正に係る国税について期限内申告書の提出により納付すべき税額を減少させる更正その他これに類するものとして政令で定める更正(更正の請求に基づく更正を除く。)があつた場合 当該期限内申告書に係る税額(還付金の額に相当する税額を含む。)に達するまでの税額
5 第一項の規定は、修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査に係る第七十四条の九第一項第四号及び第五号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に掲げる事項その他政令で定める事項の通知(次条第六項において「調査通知」という。)がある前に行われたものであるときは、適用しない。
主 文
原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
理 由
上告代理人武笠圭志ほかの上告受理申立て理由について
1 本件は、不動産の買取再販売等を行う株式会社である被上告人が、平成25年1月1日から同年12月31日まで、同26年1月1日から同年12月31日まで及び同27年1月1日から同年12月31日までの各課税期間(以下「本件各課税期間」という。)において、転売目的で、全部又は一部が住宅として賃貸されている建物の購入(以下「本件各課税仕入れ」という。)をし、これに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除して消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の確定申告(以下「本件各申告」という。)をするなどしたところ、日本橋税務署長から、その全額を控除することはできないとして更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)を受けるなどしたことから、上告人を相手に、本件各更正処分のうち申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消し等を求める事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
(1) 消費税法(平成26年3月31日以前に行った課税仕入れについては同24年法律第68号2条による改正前のもの、同26年4月1日から同27年9月30日までに行った課税仕入れについては同年法律第9号による改正前のもの、同年10月1日以降にした課税仕入れについては同24年法律第68号3条による改正前のもの。以下同じ。)30条1項1号は、事業者が国内において行う課税仕入れについては、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額を控除する旨を規定する。同条2項1号は、当該課税期間における課税売上高が5億円を超える場合又は当該課税期間における課税売上割合が100分の95に満たない場合において、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れにつき、課税資産の譲渡等にのみ要するもの(以下「課税対応課税仕入れ」という。)、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(以下「その他の資産の譲渡等」という。)にのみ要するもの(以下「非課税対応課税仕入れ」という。)及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの(以下「共通対応課税仕入れ」という。)の区分(以下「用途区分」という。)が明らかにされているときは、控除する課税仕入れに係る消費税額(以下「控除対象仕入税額」という。)は、同条1項の規定にかかわらず、課税対応課税仕入れに係る消費税額に、共通対応課税仕入れに係る消費税額に課税売上割合を乗じて計算した金額を加算する方法(以下「個別対応方式」という。)により計算した金額とする旨を規定する。
(2) 被上告人は、本件各課税期間において、事業として、転売目的で、全部又は一部が住宅として賃貸されている建物合計344物件(以下「本件各建物」という。)を購入した(本件各課税仕入れ)。
被上告人は、本件各課税期間の消費税等について、個別対応方式により、本件各課税仕入れが課税対応課税仕入れに区分されることを前提に、本件各課税仕入れに係る消費税額の全額を控除対象仕入税額として本件各申告をした。これに対し、日本橋税務署長は、平成29年7月31日付けで、本件各課税仕入れは、課税資産の譲渡等である建物の転売のみならず、その他の資産の譲渡等である住宅の貸付けにも要するものであるから、共通対応課税仕入れに区分されるべきであり、控除対象仕入税額は、上記消費税額の全額ではなく、これに課税売上割合を乗じて計算した金額となるなどとして、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分をした。
(3) 平成元年に作成された税務当局の部内資料等には、課税対応課税仕入れとは「直接、間接を問わず、また、実際に使用する時期の前後を問わず、その対価の額が最終的に課税資産の譲渡等のコストに入るような課税仕入れ等である」との記載や、土地の賃貸収入がある場合でも分譲用のマンションの建設計画に基づいて土地の所有権を取得していることが明らかであるときは取得の際に支払った仲介手数料は課税対応課税仕入れに該当する旨の記載があり、同年に発行された税務当局関係者が編者である公刊物等には、販売の目的で取得した土地の造成費は一時的に自社の資材置場として使用しているとしても非課税対応課税仕入れになる旨の記載がある。また、税務当局は、平成7年頃、関係機関からの照会に対し、仮に一時的に賃貸用に供されるとしても、継続して棚卸資産として処理し、将来的には全て分譲することとしている住宅の購入については、課税対応課税仕入れに該当するものとして取り扱って差し支えない旨の回答をし、同9年頃、関係機関からの照会に対し、賃借人が居住している状態でマンションを購入した場合でも、転売目的で購入したことが明らかであれば、課税対応課税仕入れに該当する旨の回答をした。
他方、平成17年以降、税務当局の職員が執筆した公刊物等において、事業者の最終的な目的は中古マンションの転売であっても、転売までの間に非課税売上げである家賃が発生する場合には、中古マンションの購入は共通対応課税仕入れに該当する旨の見解が示され、また、本件各申告当時に公表されていた複数の国税不服審判所の裁決例及び下級審の裁判例において、本件各課税仕入れと同様の建物の取得の用途区分につき、上記と同様の見解に基づく税務当局側の主張が採用されていた。
3 原審は、上記事実関係等の下において、本件各建物は転売まで住宅として賃貸されることが見込まれていたから、本件各課税仕入れは、個別対応方式による用途区分において共通対応課税仕入れに区分されるべきであり、本件各更正処分は適法であるなどとした上で、要旨次のとおり判断し、本件各賦課決定処分は違法であるとして、その取消請求を認容した。
税務当局は、平成元年当時、主たる目的又は最終的な使用目的を考慮して用途区分を判定していたとも理解され得るところ、同9年頃、本件各課税仕入れと同様の課税仕入れを転売目的に着目して課税対応課税仕入れに区分したことがあり、その後、同17年頃までに上記の見解を変更したことがうかがわれるから、従来の見解を変更したことを納税者に周知するなど、これが定着するよう必要な措置を講ずるのが相当であったのに、そのような措置を講じているとは認められない。このような税務当局の対応や、これを根拠とする紛争が継続している事情の下では、本件各申告において、被上告人が、転売を目的とする本件各課税仕入れを課税対応課税仕入れに区分した上で控除対象仕入税額の計算をしたことには、国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下同じ。)65条4項にいう「正当な理由」がある。
4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
(1) 国税通則法65条4項にいう「正当な理由があると認められる」場合とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに過少申告による納税義務違反の発生を防止して適正な申告納税の実現を図るという過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成17年(行ヒ)第9号同18年4月20日第一小法廷判決・民集60巻4号1611頁参照)。
(2) 前記事実関係等によれば、税務当局は、遅くとも平成17年以降、本件各課税仕入れと同様の課税仕入れを、当該建物が住宅として賃貸されること(その他の資産の譲渡等に対応すること)に着目して共通対応課税仕入れに区分すべきであるとの見解を採っており、そのことは、本件各申告当時、税務当局の職員が執筆した公刊物や、公表されている国税不服審判所の裁決例及び下級審の裁判例を通じて、一般の納税者も知り得たものということができる。他方、それ以前に税務当局が作成した部内資料や税務当局関係者が編者である公刊物及び平成7年頃の関係機関からの照会に対する回答には、事業者の目的に着目して用途区分を判定していたとも理解され得る記載等があるものの、これらは、本件各課税仕入れと同様の課税仕入れに直接言及するものでなく、その趣旨や前提となる事実関係が明らかでないなど、必ずしも上記見解と矛盾するものとはいえない。また、税務当局は、平成9年頃、関係機関からの照会に対し、本件各課税仕入れと同様の課税仕入れを課税対応課税仕入れに区分すべき旨の回答をしているが、このことから、直ちに、税務当局が一般的に当該課税仕入れを事業者の目的に着目して課税対応課税仕入れに区分する取扱いをしていたものということはできないし、上記回答が公表されるなどしたとの事情もうかがわれない。
そうすると、平成17年以降、税務当局が、本件各課税仕入れと同様の課税仕入れを当該建物が住宅として賃貸されることに着目して共通対応課税仕入れに区分する取扱いを周知するなどの積極的な措置を講じていないとしても、事業者としては、上記取扱いがされる可能性を認識してしかるべきであったということができる。
そして、上記取扱いは消費税法30条2項1号の文理等に照らして自然であるといえ、本件各申告当時、本件各課税仕入れと同様の課税仕入れを事業者の目的に着目して課税対応課税仕入れに区分すべきものとした裁判例等があったともうかがわれないこと等をも考慮すれば、被上告人が本件各申告において本件各課税仕入れを課税対応課税仕入れに区分して控除対象仕入税額の計算をしたことにつき、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるということはできない。
(3)
以上によれば、本件各申告において、被上告人が本件各課税仕入れに係る消費税額の全額を当該課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除したことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認めることはできない。
5 以上と異なる原審の前記判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして、以上に説示したところによれば、本件各賦課決定処分の取消請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は正当であるから、同部分につき被上告人の控訴を棄却すべきである。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。