根抵当権者に相当の対価を支払い根抵当権を放棄させた行為と詐欺罪の成立 詐欺被告事件 最高裁 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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根抵当権者に相当の対価を支払い根抵当権を放棄させた行為と詐欺罪の成立

 

 

詐欺被告事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷決定/平成13年(あ)第1839号

【判決日付】      平成16年7月7日

【判示事項】      根抵当権者に相当の対価を支払い根抵当権を放棄させた行為と詐欺罪の成立

【判決要旨】      根抵当権放棄の対価として支払われた金員が根抵当権者において相当と認めた金額であっても,根抵当権者が,当該金員支払は根抵当権設定者が根抵当権の目的である不動産を第三者に正規に売却することに伴うものと誤信しなければ,根抵当権の放棄に応ずることはなかったにもかかわらず,根抵当権設定者が,真実は自己の支配する会社への売却であることなどを秘し,根抵当権者を欺いて前記のように誤信させ,根抵当権を放棄させてその抹消登記を了した場合には,刑法246条2項の詐欺罪が成立する。

【参照条文】      刑法246-2

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集58巻5号309頁

 

 

刑法

(詐欺)

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

 

 

       主   文

 

 本件上告を棄却する。

 

       理   由

 

 弁護人黒田修一、同長添節の上告趣意は、単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。

 所論にかんがみ、本件詐欺罪の成否について職権で判断する。

1 原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば、本件の事実関係は次のとおりである。

(1)被告人が代表者として支配、経営するA社(以下「A社」という。)は、住宅金融専門会社であるB社(以下「B社」という。)に対する債務を担保するため、本件各不動産に第1順位の根抵当権又は抵当権(以下「本件各根抵当権等」という。)を設定した。

(2)株式会社住宅金融債権管理機構(以下「住管機構」という。)は、B社から、本件各根抵当権等を被担保債権と共に譲り受け、被告人に対し、本件各不動産を売却してその代金をA社の債務の返済に充てることを督促していた。住管機構は、担保不動産の売却による一部弁済を受けて担保権を放棄する際には、代金額が適正であることを厳格に審査し、かつ、必要な経費を除く代金全額を返済に充てさせるものとし、担保不動産に関する利益を債務者に残さない方針を採っていた。

(3)他方、被告人の経営する別の会社(以下「別会社」という。)の取引銀行(以下「取引銀行」という。)は、被告人に対し、被告人が実質的に支配する会社(以下「ダミー会社」という。)が適当な不動産を取得してその上に取引銀行のため第1順位の根抵当権を設定することを条件として、ダミー会社に融資を行い、その融資金の中から別会社に対する貸付債権につき返済を受けるという取引を申し出た。その取引は、取引銀行の別会社に対する回収の困難な多額の不良貸付債権を表面上消滅させ、実質はこれをダミー会社に付け替えることに主眼があったが、被告人にもこれに応じる利益のある内容であって、担保に供する不動産の価値をあえて過大に評価してダミー会社が多額の融資を受け、その中から、当該不動産の購入代金相当額を支払い、かつ、別会社の取引銀行に対する債務を返済しても、なお多額の資金が被告人の手元に残るものであった。

(4)被告人は、取引銀行との間で、本件各不動産を担保に供して上記取引を実行することを合意し、住管機構から本件各根抵当権等の放棄を得て本件各不動産をダミー会社に売却することを企てた。しかし、住管機構のA社に対する債権額は本件各不動産の価格を大幅に上回るものであった上、被告人は、住管機構の前記(2)の方針を承知していたので、真実を告げた場合には住管機構が本件各根抵当権等の放棄に応ずるはずはないと考え、住管機構の担当者に対し、真実はダミー会社に売却をして本件各不動産を被告人において実質的に保有しつつ取引銀行から多額の融資を受ける目的であるのに、これらの事情を秘し、真実の買主ではなく名目上の買主となるにすぎない者と共謀の上、本件各不動産をその者に売却するという虚偽の事実を申し向け、上記担当者を欺いてその旨誤信させ、住管機構をして、時価評価などに基づき住管機構の是認した代金額から仲介手数料等を差し引いた金員をA社から受け取るのと引換えに、本件各根抵当権等を放棄させ、その抹消登記を了した。

2 以上の事実関係の下では、本件各根抵当権等を放棄する対価としてA社から住管機構に支払われた金員が本件各不動産の時価評価などに基づき住管機構において相当と認めた金額であり、かつ、これで債務の一部弁済を受けて本件各根抵当権等を放棄すること自体については住管機構に錯誤がなかったとしても、被告人に欺かれて本件各不動産が第三者に正規に売却されるものと誤信しなければ、住管機構が本件各根抵当権等の放棄に応ずることはなかったというべきである。被告人は、以上を認識した上で、真実は自己が実質的に支配するダミー会社への売却であることなどを秘し、住管機構の担当者を欺いて本件各不動産を第三者に売却するものと誤信させ、住管機構をして本件各根抵当権等を放棄させてその抹消登記を了したものであるから、刑法246条2項の詐欺罪が成立するというべきである。

 したがって、本件詐欺罪の成立を認めた原判決の結論は正当である。

 よって、刑訴法414条、386条1項3号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

    最高裁判所第三小法廷