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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

信用金庫支店長によるオンラインシステムを利用した振込み入金処理等について、本位的訴因である電子計算機使用詐欺罪の成立を否定し商法の特別背任罪の認めた原判決が誤りであるとされた事例

 

 

              電子計算機使用詐欺被告事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成4年(う)第1344号

【判決日付】      平成5年6月29日

【判示事項】      信用金庫支店長によるオンラインシステムを利用した振込み入金処理等について、本位的訴因である電子計算機使用詐欺罪の成立を否定し商法の特別背任罪の認めた原判決が誤りであるとされた事例

【判決要旨】      1 刑法246条ノ2の電子計算機使用詐欺罪の「虚偽ノ情報」とは、振込入金(送金)で入金等の入力処理の原因となる経済的・資金的な実体を伴わないか、あるいはそれには符号しない情報のことである。

             2 信用金庫の支店長が、自己の個人的債務の支払に窮し、その支払のため、係員に指示してまったく経済的・資金的実体を持たない振込入金等に関する情報を電子計算機に入力させたときは、電子計算機使用詐欺罪が成立する。

【参照条文】      刑法246の2

             刑法247

             商法486-1

【掲載誌】        高等裁判所刑事判例集46巻2号189頁

             高等裁判所刑事裁判速報集平成5年73頁

             判例タイムズ844号273頁

             判例時報1491号141頁

             金融法務事情1402号30頁

             刑事裁判資料273号246頁

 

 

刑法

(電子計算機使用詐欺)

第二百四十六条の二 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。

(背任)

第二百四十七条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

 

会社法

(取締役等の特別背任罪)

第九百六十条 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 発起人

二 設立時取締役又は設立時監査役

三 取締役、会計参与、監査役又は執行役

四 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役又は執行役の職務を代行する者

五 第三百四十六条第二項、第三百五十一条第二項又は第四百一条第三項(第四百三条第三項及び第四百二十条第三項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、会計参与、監査役、代表取締役、委員(指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の委員をいう。)、執行役又は代表執行役の職務を行うべき者

六 支配人

七 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人

八 検査役

2 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は清算株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該清算株式会社に財産上の損害を加えたときも、前項と同様とする。

一 清算株式会社の清算人

二 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された清算株式会社の清算人の職務を代行する者

三 第四百七十九条第四項において準用する第三百四十六条第二項又は第四百八十三条第六項において準用する第三百五十一条第二項の規定により選任された一時清算人又は代表清算人の職務を行うべき者

四 清算人代理

五 監督委員

六 調査委員

 

 

公にされている処分基準の適用関係を示さずにされた建築士法10条1項2号及び3号に基づく一級建築士免許取消処分が,行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠き,違法であるとされた事例

 

 

              一級建築士免許取消処分等取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/平成21年(行ヒ)第91号

【判決日付】      平成23年6月7日

【判示事項】      公にされている処分基準の適用関係を示さずにされた建築士法(平成18年法律第92号による改正前のもの)10条1項2号及び3号に基づく一級建築士免許取消処分が,行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠き,違法であるとされた事例

【判決要旨】      建築士法(平成18年法律第92号による改正前のもの)10条1項2号および3号に基づいてされた一級建築士免許取消処分の通知書において、処分の理由として、名宛人が、複数の建築物の設計者として、建築基準法令に定める構造基準に適合しない設計を行い、それにより耐震性等の不足する構造上危険な建築物を現出させ、または構造計算書に偽装が見られる不適切な設計を行ったという処分の原因となる事実と、同項2号および3号という処分の根拠法条とが示されているのみで、同項所定の複数の懲戒処分の中から処分内容を選択するための基準として多様な事例に対応すべくかなり複雑な内容を定めて公にされていた当時の建設省住宅局長通知による処分基準の適用関係が全く示されていないなど判示の事情のもとでは、名宛人において、いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることができず、上記取消処分は、行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠き、違法である。

             (補足意見および反対意見がある)

【参照条文】      行政手続法12

             行政手続法14

             建築士法(平成18年法律第92号による改正前のもの)10-1

             建築士の処分等について(平成11年12月28日建設省住指発第784号都道府県知事宛て建設省住宅局長通知。平成19年6月20日廃止前のもの)

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集65巻4号2081頁

 

 

行政手続法

(処分の基準)

第十二条 行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。

2 行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。

 

(不利益処分の理由の提示)

第十四条 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。

2 行政庁は、前項ただし書の場合においては、当該名あて人の所在が判明しなくなったときその他処分後において理由を示すことが困難な事情があるときを除き、処分後相当の期間内に、同項の理由を示さなければならない。

3 不利益処分を書面でするときは、前二項の理由は、書面により示さなければならない。

 

 

建築士法

(懲戒)

第十条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた一級建築士又は二級建築士若しくは木造建築士が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該一級建築士又は二級建築士若しくは木造建築士に対し、戒告し、若しくは一年以内の期間を定めて業務の停止を命じ、又はその免許を取り消すことができる。

一 この法律若しくは建築物の建築に関する他の法律又はこれらに基づく命令若しくは条例の規定に違反したとき。

二 業務に関して不誠実な行為をしたとき。

2 国土交通大臣又は都道府県知事は、前項の規定により業務の停止を命じようとするときは、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。

3 第一項の規定による処分に係る聴聞の主宰者は、必要があると認めるときは、参考人の出頭を求め、その意見を聴かなければならない。

4 国土交通大臣又は都道府県知事は、第一項の規定により、業務の停止を命じ、又は免許を取り消そうとするときは、それぞれ中央建築士審査会又は都道府県建築士審査会の同意を得なければならない。

5 国土交通大臣又は都道府県知事は、第一項の規定による処分をしたときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告しなければならない。

6 国土交通大臣又は都道府県知事は、第三項の規定により出頭を求めた参考人に対して、政令の定めるところにより、旅費、日当その他の費用を支給しなければならない。

 

 

 

各外国法人の株式を保有する国内居住者の原告が,所得税及び復興特別所得税の確定申告に当たり,各外国法人が租税特別措置法40条の4第1項の特定外国子会社等に該当しないことを前提に申告をしたところ,処分行政庁から各更正処分及びこれに伴う過少申告加算税の各賦課決定処分を受けたため,各更正処分のうち申告額を超える部分及び各賦課決定処分の取消しを求めた事案。

 

 

所得税更正処分等取消請求事件

【事件番号】      東京地方裁判所判決/平成29年(行ウ)第426号

【判決日付】      令和3年7月20日

【判示事項】      各外国法人の株式を保有する国内居住者の原告が,所得税及び復興特別所得税の確定申告に当たり,各外国法人が租税特別措置法40条の4第1項の特定外国子会社等に該当しないことを前提に申告をしたところ,処分行政庁から各更正処分及びこれに伴う過少申告加算税の各賦課決定処分を受けたため,各更正処分のうち申告額を超える部分及び各賦課決定処分の取消しを求めた事案。

裁判所は,各外国法人は,特定外国子会社等に該当し,かつ,確定申告書に適用除外記載書面の添付がないことにより適用除外規定は適用されず,適用除外要件の全てを満たさないから,各外国法人に係る各課税対象金額は,雑所得の計算上,総収入金額に算入すべきものであり,各処分は適法として,請求をいずれも棄却した事例

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

 

租税特別措置法

第一款 居住者の外国関係会社に係る所得の課税の特例

第四十条の四第1項 次に掲げる居住者に係る外国関係会社のうち、特定外国関係会社又は対象外国関係会社に該当するものが、昭和五十三年四月一日以後に開始する各事業年度(第二条第二項第十九号に規定する事業年度をいう。以下この条及び次条第二項において同じ。)において適用対象金額を有する場合には、その適用対象金額のうちその者が直接及び間接に有する当該特定外国関係会社又は対象外国関係会社の株式等(株式又は出資をいう。以下この条において同じ。)の数又は金額につきその請求権(剰余金の配当等(法人税法第二十三条第一項第一号に規定する剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配をいう。以下この項及び次項において同じ。)を請求する権利をいう。以下この条において同じ。)の内容を勘案した数又は金額並びにその者と当該特定外国関係会社又は対象外国関係会社との間の実質支配関係の状況を勘案して政令で定めるところにより計算した金額(次条において「課税対象金額」という。)に相当する金額は、その者の雑所得に係る収入金額とみなして当該各事業年度終了の日の翌日から二月を経過する日の属する年分のその者の雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。

一 居住者の外国関係会社に係る次に掲げる割合のいずれかが百分の十以上である場合における当該居住者

イ その有する外国関係会社の株式等の数又は金額(当該外国関係会社と居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある場合には、零)及び他の外国法人を通じて間接に有するものとして政令で定める当該外国関係会社の株式等の数又は金額の合計数又は合計額が当該外国関係会社の発行済株式又は出資(自己が有する自己の株式等を除く。次項、第六項及び第八項において「発行済株式等」という。)の総数又は総額のうちに占める割合

ロ その有する外国関係会社の議決権(剰余金の配当等に関する決議に係るものに限る。ロ及び次項第一号イ(2)において同じ。)の数(当該外国関係会社と居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある場合には、零)及び他の外国法人を通じて間接に有するものとして政令で定める当該外国関係会社の議決権の数の合計数が当該外国関係会社の議決権の総数のうちに占める割合

ハ その有する外国関係会社の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額(当該外国関係会社と居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある場合には、零)及び他の外国法人を通じて間接に有する当該外国関係会社の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額として政令で定めるものの合計額が当該外国関係会社の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の総額のうちに占める割合

二 外国関係会社との間に実質支配関係がある居住者

三 外国関係会社(居住者との間に実質支配関係があるものに限る。)の他の外国関係会社に係る第一号イからハまでに掲げる割合のいずれかが百分の十以上である場合における当該居住者(同号に掲げる居住者を除く。)

四 外国関係会社に係る第一号イからハまでに掲げる割合のいずれかが百分の十以上である一の同族株主グループ(外国関係会社の株式等を直接又は間接に有する者及び当該株式等を直接又は間接に有する者との間に実質支配関係がある者(当該株式等を直接又は間接に有する者を除く。)のうち、一の居住者又は内国法人、当該一の居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある者及び当該一の居住者又は内国法人と政令で定める特殊の関係のある者(外国法人を除く。)をいう。)に属する居住者(外国関係会社に係る同号イからハまでに掲げる割合又は他の外国関係会社(居住者との間に実質支配関係があるものに限る。)の当該外国関係会社に係る同号イからハまでに掲げる割合のいずれかが零を超えるものに限るものとし、同号及び前号に掲げる居住者を除く。)

2 この条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 外国関係会社 次に掲げる外国法人をいう。

イ 居住者及び内国法人並びに特殊関係非居住者(居住者又は内国法人と政令で定める特殊の関係のある非居住者をいう。)及びロに掲げる外国法人(イにおいて「居住者等株主等」という。)の外国法人に係る次に掲げる割合のいずれかが百分の五十を超える場合における当該外国法人

(1) 居住者等株主等の外国法人(ロに掲げる外国法人を除く。)に係る直接保有株式等保有割合(居住者等株主等の有する当該外国法人の株式等の数又は金額がその発行済株式等の総数又は総額のうちに占める割合をいう。)及び居住者等株主等の当該外国法人に係る間接保有株式等保有割合(居住者等株主等の他の外国法人を通じて間接に有する当該外国法人の株式等の数又は金額がその発行済株式等の総数又は総額のうちに占める割合として政令で定める割合をいう。)を合計した割合

(2) 居住者等株主等の外国法人(ロに掲げる外国法人を除く。)に係る直接保有議決権保有割合(居住者等株主等の有する当該外国法人の議決権の数がその総数のうちに占める割合をいう。)及び居住者等株主等の当該外国法人に係る間接保有議決権保有割合(居住者等株主等の他の外国法人を通じて間接に有する当該外国法人の議決権の数がその総数のうちに占める割合として政令で定める割合をいう。)を合計した割合

(3) 居住者等株主等の外国法人(ロに掲げる外国法人を除く。)に係る直接保有請求権保有割合(居住者等株主等の有する当該外国法人の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額がその総額のうちに占める割合をいう。)及び居住者等株主等の当該外国法人に係る間接保有請求権保有割合(居住者等株主等の他の外国法人を通じて間接に有する当該外国法人の株式等の請求権に基づき受けることができる剰余金の配当等の額がその総額のうちに占める割合として政令で定める割合をいう。)を合計した割合

ロ 居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある外国法人

ハ 第六号中「外国関係会社(特定外国関係会社に該当するものを除く。)」とあるのを「外国法人」として同号及び第七号の規定を適用した場合に同号に規定する外国金融機関に該当することとなる外国法人で、同号に規定する外国金融機関に準ずるものとして政令で定める部分対象外国関係会社との間に、当該部分対象外国関係会社が当該外国法人の経営管理を行つている関係その他の特殊の関係がある外国法人として政令で定める外国法人

二 特定外国関係会社 次に掲げる外国関係会社をいう。

イ 次のいずれにも該当しない外国関係会社

(1) その主たる事業を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有している外国関係会社

(2) その本店又は主たる事務所の所在する国又は地域(以下この項、第六項及び第八項において「本店所在地国」という。)においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行つている外国関係会社

(3) 外国子会社(当該外国関係会社とその本店所在地国を同じくする外国法人で、当該外国関係会社の有する当該外国法人の株式等の数又は金額のその発行済株式等の総数又は総額のうちに占める割合が百分の二十五以上であることその他の政令で定める要件に該当するものをいう。)の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で、その収入金額のうちに占める当該株式等に係る剰余金の配当等の額の割合が著しく高いことその他の政令で定める要件に該当するもの

(4) 特定子会社(前項各号に掲げる居住者に係る他の外国関係会社で、部分対象外国関係会社に該当するものその他の政令で定めるものをいう。)の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で、その本店所在地国を同じくする管理支配会社(当該居住者に係る他の外国関係会社のうち、部分対象外国関係会社に該当するもので、その本店所在地国において、その役員(法人税法第二条第十五号に規定する役員をいう。次号及び第七号並びに第六項において同じ。)又は使用人がその主たる事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているものをいう。(4)及び(5)において同じ。)によつてその事業の管理、支配及び運営が行われていること、当該管理支配会社がその本店所在地国で行う事業の遂行上欠くことのできない機能を果たしていること、その収入金額のうちに占める当該株式等に係る剰余金の配当等の額及び当該株式等の譲渡に係る対価の額の割合が著しく高いことその他の政令で定める要件に該当するもの

(5) その本店所在地国にある不動産の保有、その本店所在地国における石油その他の天然資源の探鉱、開発若しくは採取又はその本店所在地国の社会資本の整備に関する事業の遂行上欠くことのできない機能を果たしている外国関係会社で、その本店所在地国を同じくする管理支配会社によつてその事業の管理、支配及び運営が行われていることその他の政令で定める要件に該当するもの

ロ その総資産の額として政令で定める金額(ロにおいて「総資産額」という。)に対する第六項第一号から第七号まで及び第八号から第十号までに掲げる金額に相当する金額の合計額の割合(第六号中「外国関係会社(特定外国関係会社に該当するものを除く。)」とあるのを「外国関係会社」として同号及び第七号の規定を適用した場合に外国金融子会社等に該当することとなる外国関係会社にあつては総資産額に対する第八項第一号に掲げる金額に相当する金額又は同項第二号から第四号までに掲げる金額に相当する金額の合計額のうちいずれか多い金額の割合とし、第六号中「外国関係会社(特定外国関係会社に該当するものを除く。)」とあるのを「外国関係会社」として同号及び第六項の規定を適用した場合に同項に規定する清算外国金融子会社等に該当することとなる外国関係会社の同項に規定する特定清算事業年度にあつては総資産額に対する同項に規定する特定金融所得金額がないものとした場合の同項第一号から第七号まで及び第八号から第十号までに掲げる金額に相当する金額の合計額の割合とする。)が百分の三十を超える外国関係会社(総資産額に対する有価証券(法人税法第二条第二十一号に規定する有価証券をいう。同項において同じ。)、貸付金その他政令で定める資産の額の合計額として政令で定める金額の割合が百分の五十を超える外国関係会社に限る。)

ハ 次に掲げる要件のいずれにも該当する外国関係会社

(1) 各事業年度の非関連者等収入保険料(関連者(当該外国関係会社に係る前項各号に掲げる居住者、第六十六条の六第一項各号に掲げる内国法人その他これらの者に準ずる者として政令で定めるものをいう。(2)において同じ。)以外の者から収入するものとして政令で定める収入保険料をいう。(2)において同じ。)の合計額の収入保険料の合計額に対する割合として政令で定めるところにより計算した割合が百分の十未満であること。

(2) 各事業年度の非関連者等支払再保険料合計額(関連者以外の者に支払う再保険料の合計額を関連者等収入保険料(非関連者等収入保険料以外の収入保険料をいう。(2)において同じ。)の合計額の収入保険料の合計額に対する割合で按あん分した金額として政令で定める金額をいう。)の関連者等収入保険料の合計額に対する割合として政令で定めるところにより計算した割合が百分の五十未満であること。

ニ 租税に関する情報の交換に関する国際的な取組への協力が著しく不十分な国又は地域として財務大臣が指定する国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関係会社

三 対象外国関係会社 次に掲げる要件のいずれかに該当しない外国関係会社(特定外国関係会社に該当するものを除く。)をいう。

イ 株式等若しくは債券の保有、工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの(これらの権利に関する使用権を含む。)若しくは著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の提供又は船舶若しくは航空機の貸付けを主たる事業とするもの(次に掲げるものを除く。)でないこと。

(1) 株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社のうち当該外国関係会社が他の法人の事業活動の総合的な管理及び調整を通じてその収益性の向上に資する業務として政令で定めるもの(ロにおいて「統括業務」という。)を行う場合における当該他の法人として政令で定めるものの株式等の保有を行うものとして政令で定めるもの

(2) 株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社のうち第七号中「部分対象外国関係会社」とあるのを「外国関係会社」として同号の規定を適用した場合に外国金融子会社等に該当することとなるもの(同号に規定する外国金融機関に該当することとなるもの及び(1)に掲げるものを除く。)

(3) 航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社のうちその役員又は使用人がその本店所在地国において航空機の貸付けを的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していることその他の政令で定める要件を満たすもの

ロ その本店所在地国においてその主たる事業(イ(1)に掲げる外国関係会社にあつては統括業務とし、イ(2)に掲げる外国関係会社にあつては政令で定める経営管理とする。ハにおいて同じ。)を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有していること並びにその本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行つていることのいずれにも該当すること。

ハ 各事業年度においてその行う主たる事業が次に掲げる事業のいずれに該当するかに応じそれぞれ次に定める場合に該当すること。

(1) 卸売業、銀行業、信託業、金融商品取引業、保険業、水運業、航空運送業又は物品賃貸業(航空機の貸付けを主たる事業とするものに限る。) その事業を主として当該外国関係会社に係る前項各号に掲げる居住者、第六十六条の六第一項各号に掲げる内国法人その他これらの者に準ずる者として政令で定めるもの以外の者との間で行つている場合として政令で定める場合

(2) (1)に掲げる事業以外の事業 その事業を主としてその本店所在地国(当該本店所在地国に係る水域で政令で定めるものを含む。)において行つている場合として政令で定める場合

四 適用対象金額 特定外国関係会社又は対象外国関係会社の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき法人税法及びこの法律による各事業年度の所得の金額の計算に準ずるものとして政令で定める基準により計算した金額(以下この号において「基準所得金額」という。)を基礎として、政令で定めるところにより、当該各事業年度開始の日前七年以内に開始した各事業年度において生じた欠損の金額及び当該基準所得金額に係る税額に関する調整を加えた金額をいう。

五 実質支配関係 居住者又は内国法人が外国法人の残余財産のおおむね全部を請求する権利を有している場合における当該居住者又は内国法人と当該外国法人との間の関係その他の政令で定める関係をいう。

六 部分対象外国関係会社 第三号イからハまでに掲げる要件の全てに該当する外国関係会社(特定外国関係会社に該当するものを除く。)をいう。

七 外国金融子会社等 その本店所在地国の法令に準拠して銀行業、金融商品取引業(金融商品取引法第二十八条第一項に規定する第一種金融商品取引業と同種類の業務に限る。)又は保険業を行う部分対象外国関係会社でその本店所在地国においてその役員又は使用人がこれらの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているもの(以下この号において「外国金融機関」という。)及び外国金融機関に準ずるものとして政令で定める部分対象外国関係会社をいう。

 

 

 

 

       主   文

 

 1 原告の請求をいずれも棄却する。

 2 訴訟費用は原告の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

 1 西宮税務署長が平成27年10月30日付けで原告に対してした原告の平成24年分の所得税に係る更正処分のうち総所得金額4257万2900円,納付すべき税額150万5400円を超える部分及び同処分に伴う過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

 2 西宮税務署長が平成27年10月30日付けで原告に対してした原告の平成25年分の所得税及び復興特別所得税に係る更正処分のうち総所得金額3505万円,納付すべき税額51万2100円を超える部分並びに同処分に伴う過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

第2 事案の概要

   国内居住者である原告は,中華人民共和国(以下「中国」という。)香港特別行政区(以下「香港」という。)において設立された外国法人であるA1(以下「A1」という。)の株式を保有しており,A1は,香港において設立された外国法人であるA2有限公司(以下「A2」という。)の株式のほとんどを保有している。

   本件は,原告が,平成24年分の所得税並びに平成25年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)の確定申告に当たり,A1及びA2が租税特別措置法(平成26年法律第10号による改正前のもの。以下「措置法」という。)40条の4第1項の特定外国子会社等(いわゆるタックス・ヘイブン対策税制の適用対象たる外国法人)に該当しないことを前提に申告をしたところ,西宮税務署長(処分行政庁)から,平成23年12月末日時点の両社及び平成24年12月末日時点のA1が特定外国子会社等に該当するとして,その課税対象金額を原告の雑所得の総収入金額に算入することによる各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及びこれに伴う過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各処分」という。)を受けたため,本件各更正処分のうち申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。

 1 関係法令

   本件に関連する措置法及び租税特別措置法施行令(平成27年政令第148号による改正前のもの。以下「措置法施行令」という。)の定めは,別紙2-1,2-2のとおりであり,その概要は以下のとおりである。

  (1) タックス・ヘイブン対策税制の適用要件(措置法40条の4第1項及び第2項)について

    タックス・ヘイブン対策税制について定めている措置法40条の4第1項は,同項各号に掲げる居住者に係る外国関係会社(後記イ)のうち特定外国子会社等(後記ウ)が,各事業年度において適用対象金額(後記エ)を有する場合には,その適用対象金額のうち,その者の有する当該特定外国子会社等の直接及び間接保有の株式等(株式又は出資をいう。以下同じ)の数に対応するものとしてその株式等の請求権の内容を勘案して政令で定めるところにより計算した金額(以下「課税対象金額」という。)に相当する金額は,その者の雑所得に係る収入金額とみなして当該各事業年度終了の日の翌日から2月を経過する日の属する年分のその者の雑所得の金額の計算上,総収入金額に算入する旨規定している。

    そして,タックス・ヘイブン対策税制に係る納税義務者(措置法40条の4第1項各号の居住者),外国関係会社,特定外国子会社等及び適用対象金額については,以下のとおり規定されている。

   ア 納税義務者

     タックス・ヘイブン対策税制の対象となる納税義務者(措置法40条の4第1項各号の居住者)は,①その有する外国関係会社の直接及び間接保有の株式等の数の当該外国関係会社の発行済株式又は出資の総数又は総額のうちに占める割合が100分の10以上である居住者(同項1号),又は②上記割合が100分の10以上である一の同族株主グループに属する居住者(同項2号)である。

     なお,ある者が上記各号の居住者に該当するかどうかの判定は,これらの居住者に係る外国関係会社の各事業年度終了の時の現況による(措置法施行令25条の24第1項)。

   イ 外国関係会社

     外国関係会社とは,外国法人で,その発行済株式又は出資の総数又は総額のうちに居住者及び内国法人並びに特殊関係非居住者(以下「居住者等」という。)が有する直接及び間接保有の株式等の数の合計数又は合計額の占める割合が100分の50を超えるものをいう(措置法40条の4第2項1号)。

     なお,ある外国法人が外国関係会社に該当するかどうかの判定は,当該外国法人の各事業年度終了の時の現況による(措置法施行令25条の24第1項)。

   ウ 特定外国子会社等

     特定外国子会社等とは,本店又は主たる事務所の所在する国又は地域(以下「本店所在地国等」という。)におけるその所得に対して課される税の負担が本邦における法人の所得に対して課される税の負担に比して著しく低いものとして政令で定める外国関係会社であり(措置法40条の4第1項本文),具体的には,①法人の所得に対して課される税が存在しない国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関係会社,又は②その各事業年度の所得に対して課される租税の額が当該所得の金額の100分の20以下である外国関係会社をいう(措置法施行令25条の19第1項)。

   エ 適用対象金額

     適用対象金額とは,特定外国子会社等の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき法人税法及び措置法による各事業年度の所得の金額の計算に準ずるものとして政令で定める基準により計算した金額(以下「基準所得金額」という。)を基礎として,政令で定めるところにより,当該各事業年度開始の日前7年以内に開始した各事業年度において生じた欠損の金額及び当該基準所得金額に係る税額に関する調整を加えた金額をいう(措置法40条の4第2項2号)。

  (2) 適用除外規定について

   ア 措置法40条の4第3項の定め

     措置法40条の4第3項(以下「本件適用除外規定」ということがある。)柱書きは,同条1項各号の居住者に係る特定外国子会社等が次の要件(以下「本件適用除外要件」という。)の全てを満たすときは,当該特定外国子会社等のその該当する事業年度に係る適用対象金額については,同条1項の規定を適用しない旨を定めている。

     すなわち,本件適用除外要件は,当該特定外国子会社等が,①株式等の保有等(以下「株式保有業」ということがある。)を主たる事業とするもの(統括業務を行う事業持株会社を除く。)以外のものであること(以下「事業基準」という。),②その本店所在地国等においてその主たる事業を行うに必要と認められる事務所,店舗,工場その他の固定施設を有していること,③その事業の管理,支配及び運営を自ら行っていること(以下「管理支配基準」という。),④各事業年度においてその行う主たる事業が措置法40条の4第3項各号に掲げる事業のいずれに該当するかに応じ当該各号に定める場合に該当することである。

     そして,上記④の要件については,(a)その主たる事業が,卸売業,銀行業,信託業,金融商品取引業,保険業,水運業又は航空運送業(以下「卸売業等」という。)のいずれかであるときは,その事業を主として当該特定外国子会社等に係る所定の関連者以外の者との間で行っている場合として政令で定める場合に該当すること(以下「非関連者基準」という。),(b)その主たる事業が卸売業等以外の事業であるときは,その事業を主として本店所在地国等において行っている場合として政令で定める場合に該当すること(以下「所在地国基準」という。)を要するものとされている(措置法40条の4第3項1号,2号,措置法施行令25条の22第8項,12項)。

   イ 措置法40条の4第7項の定め

     措置法第40条の4第7項は,本件適用除外規定は,政令で定めるところにより,確定申告書にこれらの規定の適用がある旨を記載した書面(以下「適用除外記載書面」という。)を添付し,かつ,その適用があることを明らかにする書類その他の資料を保存している場合に限り,適用するものとしている。

 

 

ジュリスト 2023年6月号(No.1585) 【特集】霊感商法と被害者救済――新法の提起するもの

 

有斐閣

2023年05月25日 発売

定価 1,760円(本体 1,600円)

 

 

2022年12月,旧統一教会の問題を発端として,被害者救済のための法律が成立し,2023年1月より施行されています。本号特集では,これらの法律の要点を解説するとともに,民事的なルールや宗教法制に及ぼす影響,そして今後の展望について,理論的な検討を加えます。判例詳解では,いわゆる「追い出し条項」が問題となった事例,労災支給取消訴訟において事業主に原告適格を認めた事例と,注目度の高い2本の判決を取り上げました。

 

 

【特集】霊感商法と被害者救済――新法の提起するもの

◇寄附の不当勧誘と民事的効力――民法理論の観点からの検討…宮下修一……14

 

◇「つけ込み」行為の制御と意思決定の自律性の確保…菅 富美枝……21

 

◇宗教団体規制の現況と課題――憲法の観点から…井上武史……28

 

◇「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律」及び「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」の解説…消費者庁消費者政策課寄附勧誘対策室・消費者制度課……34

 

 

コメント

民法、消費者法、憲法、イギリス・オーストラリアの契約法まで。

参考になりました。

 

 

区分所有者の有するマンション駐車場の一部の専用使用権を消滅させる集会決議が無効とされた事例

 

 

管理費等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成8年(オ)第1362号

【判決日付】      平成10年11月20日

【判示事項】      一 区分所有者の有するマンション駐車場の一部の専用使用権を消滅させる集会決議が無効とされた事例

             二 区分所有者の有するマンション駐車場等の専用使用権を有償化する集会決議を無効とした原審の判断に違法があるとされた事例

【判決要旨】      一 区分所有者の有するマンション駐車場の一部の専用使用権を消滅させるとの集会決議が右区分所有者の承諾のないままされた場合において、右区分所有者が、分譲当初からマンションの1階店舗部分においてサウナ、理髪店等を営業しており、来客用及び自家用のために駐車場の専用使用権を取得したものであって、残った駐車場だけではその営業活動を継続するのに支障を生ずる可能性がないではなく、他の区分所有者は、同人らのための駐車場及び自転車置場がないことを前提としてマンションを購入したものであるなど判示の事実関係の下においては、右集会決議は、建物の区分所有等に関する法律31条1項後段の規定の類推適用により、効力を有しない。

             二 区分所有者の有するマンション駐車場等の専用使用権を有償化するとの集会決議が右区分所有者の承諾のないままされた場合において、右区分所有者が管理費等をもって相応の経済的な負担をしてきた権利を更に有償化して使用料を徴収することは右区分所有者に不利益を与えるということのみから、集会決議により設定された使用料の額が社会通念上相当なものか否か等について検討することなく、右集会決議を無効であるとした原審の判断には、建物の区分所有等に関する法律31条1項後段にいう「特別の影響」の有無について、法令の解釈適用の誤り、審理不尽の違法がある。

【参照条文】      建物の区分所有等に関する法律17

             建物の区分所有等に関する法律18

             建物の区分所有等に関する法律21

             建物の区分所有等に関する法律31-1

             建物の区分所有等に関する法律第1章第2節 共用部分等

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事190号291頁

             裁判所時報1232号288頁

             判例タイムズ991号121頁

             判例時報1663号102頁

             金融法務事情1541号65頁

 

 

建物の区分所有等に関する法律

(共用部分の変更)

第十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

(共用部分の管理)

第十八条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

3 前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。

4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。

 

(共用部分に関する規定の準用)

第二十一条 建物の敷地又は共用部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第十七条から第十九条までの規定は、その敷地又は附属施設に準用する。

 

(規約の設定、変更及び廃止)

第三十一条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

2 前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。

 

信用金庫の会員が代表訴訟において信用金庫の貸出稟議書につき文書提出命令の申立てをしたことと、当該貸出稟議書が民法二二〇条四号八所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない特段の事情

 

 

文書提出命令申立て却下決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷決定/平成11年(許)第35号

【判決日付】      平成12年12月14日

【判示事項】      信用金庫の会員が代表訴訟において信用金庫の貸出稟議書につき文書提出命令の申立てをしたことと、当該貸出稟議書が民法二二〇条四号八所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない特段の事情

【判決要旨】      信用金庫の会員が代表訴訟において信用金庫の貸出稟議書につき文書提出命令の申立てをしたことは、当該貸出稟議書が民訴法220条4号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない特段の事情とはいえない。

【参照条文】      民事訴訟法220

             信用金庫法39

             商法267

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集54巻9号2709頁

 

 

民事訴訟法

(文書提出義務)

第二百二十条 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。

一 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。

二 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。

三 文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。

四 前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。

イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書

ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの

ハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書

ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)

ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書

 

 

信用金庫法

(役員等の責任)

第三十九条 理事、監事又は会計監査人(以下「役員等」という。)は、その任務を怠つたときは、金庫に対し、これによつて生じた損害を賠償する責任を負う。

2 第三十五条の五第一項各号の取引によつて金庫に損害が生じたときは、次に掲げる理事は、その任務を怠つたものと推定する。

一 第三十五条の五第一項の理事

二 金庫が当該取引をすることを決定した理事

三 当該取引に関する理事会の承認の決議に賛成した理事

3 第一項の責任は、総会員の同意がなければ、免除することができない。

4 前項の規定にかかわらず、第一項の責任は、当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、賠償の責任を負う額から当該役員等がその在職中に金庫から職務執行の対価として受け、又は受けるべき財産上の利益の一年間当たりの額に相当する額として内閣府令で定める方法により算定される額に、次の各号に掲げる役員等の区分に応じ、当該各号に定める数を乗じて得た額を控除して得た額を限度として、総会の決議によつて免除することができる。

一 代表理事 六

二 代表理事以外の理事であつて、次に掲げるもの 四

イ 理事会の決議によつて金庫の業務を執行する理事として選定されたもの

ロ 当該金庫の業務を執行した理事(イに掲げる理事を除く。)

三 前二号に掲げる理事以外の理事、監事又は会計監査人 二

5 前項の場合には、理事は、同項の総会において次に掲げる事項を開示しなければならない。

一 責任の原因となつた事実及び賠償の責任を負う額

二 前項の規定により免除することができる額の限度及びその算定の根拠

三 責任を免除すべき理由及び免除額

6 理事は、第一項の責任の免除(理事の責任の免除に限る。)に関する議案を総会に提出するには、各監事の同意を得なければならない。

7 第四項の決議があつた場合において、金庫が当該決議後に同項の役員等に対し退職慰労金その他の内閣府令で定める財産上の利益を与えるときは、総会の承認を受けなければならない。

8 第三十五条の五第一項第一号の取引(自己のためにした取引に限る。)をした理事の第一項の責任は、任務を怠つたことが当該理事の責めに帰することができない事由によるものであることをもつて免れることができない。

9 第四項の規定は、前項の責任については、適用しない。

 

 

 

優良運転免許証交付等請求事件・自動車等運転免許証の有効期間の更新に当たり,一般運転者として扱われ,優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者は,当該更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するか

 

 

優良運転免許証交付等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成18年(行ヒ)第285号

【判決日付】      平成21年2月27日

【判示事項】      自動車等運転免許証の有効期間の更新に当たり,一般運転者として扱われ,優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者は,当該更新処分の取消しを求める訴えの利益を有するか

【判決要旨】      自動車等運転免許証の有効期間の更新に当たり,一般運転者として扱われ,優良運転者である旨の記載のない免許証を交付されて更新処分を受けた者は,上記記載のある免許証を交付して行う更新処分を受ける法律上の地位を否定されたことを理由として,これを回復するため,当該更新処分の取消しを求める訴えの利益を有する。

             (補足意見がある。)

【参照条文】      道路交通法84-1

             道路交通法92-1

             道路交通法92の2-1

             道路交通法93-1

             道路交通法93-3

             道路交通法101

             道路交通法施行令(平成16年政令第390号による改正前のもの)33の7-1

             道路交通法施行令(平成16年政令第390号による改正前のもの)別表第2の2

             道路交通法施行規則29-8

             行政事件訴訟法9-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集63巻2号299頁

 

 

 

行政事件訴訟法

(原告適格)

第九条 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

 

 

道路交通法

(無免許運転等の禁止)

第六十四条 何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。

2 何人も、前項の規定に違反して自動車又は原動機付自転車を運転することとなるおそれがある者に対し、自動車又は原動機付自転車を提供してはならない。

3 何人も、自動車(道路運送法第二条第三項に規定する旅客自動車運送事業(以下単に「旅客自動車運送事業」という。)の用に供する自動車で当該業務に従事中のものその他の政令で定める自動車を除く。以下この項において同じ。)又は原動機付自転車の運転者が第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けていないこと(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されていることを含む。)を知りながら、当該運転者に対し、当該自動車又は原動機付自転車を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する自動車又は原動機付自転車に同乗してはならない。

(罰則 第一項については第百十七条の二の二第一項第一号 第二項については第百十七条の二の二第一項第二号 第三項については第百十七条の三の二第一号)

 

(免許証の交付)

第九十二条 免許は、運転免許証(以下「免許証」という。)を交付して行なう。この場合において、同一人に対し、日を同じくして第一種免許又は第二種免許のうち二以上の種類の免許を与えるときは、一の種類の免許に係る免許証に他の種類の免許に係る事項を記載して、当該種類の免許に係る免許証の交付に代えるものとする。

2 免許を現に受けている者に対し、当該免許の種類と異なる種類の免許を与えるときは、その異なる種類の免許に係る免許証にその者が現に受けている免許に係る事項を記載して、その者が現に有する免許証と引き換えに交付するものとする。

 

(免許証の記載事項)

第九十三条 免許証には、次に掲げる事項(次条の規定による記録が行われる場合にあつては、内閣府令で定めるものを除く。)を記載するものとする。

一 免許証の番号

二 免許の年月日並びに免許証の交付年月日及び有効期間の末日

三 免許の種類

四 免許を受けた者の本籍、住所、氏名及び生年月日

五 免許を受けた者が前条第一項の表の備考一の2に規定する優良運転者(第百一条第三項及び第百一条の二の二第一項において単に「優良運転者」という。)である場合にあつては、その旨

2 公安委員会は、前項に規定するもののほか、免許を受けた者について、第九十一条又は第九十一条の二第二項の規定により、免許に条件を付し、又は免許に付されている条件を変更したときは、その者の免許証に当該条件に係る事項を記載しなければならない。

3 前二項に規定するもののほか、免許証の様式、免許証に表示すべきものその他免許証について必要な事項は、内閣府令で定める。

 

(免許証の更新及び定期検査)

第百一条 免許証の有効期間の更新(以下「免許証の更新」という。)を受けようとする者は、当該免許証の有効期間が満了する日の直前のその者の誕生日の一月前から当該免許証の有効期間が満了する日までの間(以下「更新期間」という。)に、その者の住所地を管轄する公安委員会に内閣府令で定める様式の更新申請書(第四項の規定による質問票の交付を受けた者にあつては、当該更新申請書及び必要な事項を記載した当該質問票。第五項及び第百一条の二の二第一項から第三項までにおいて同じ。)を提出しなければならない。

2 前項の規定により免許証の更新を受けようとする者の誕生日が二月二十九日である場合における同項の規定の適用については、その者のうるう年以外の年における誕生日は二月二十八日であるものとみなす。

3 公安委員会は、免許を現に受けている者に対し、更新期間その他免許証の更新の申請に係る事務の円滑な実施を図るため必要な事項(その者が更新を受ける日において優良運転者(第九十一条の規定により免許に条件を付されている者のうち内閣府令で定めるもの及び第九十二条の二第一項の表の備考四の規定の適用を受けて優良運転者となる者を除く。)に該当することとなる場合には、その旨を含む。)を記載した書面を送付するものとする。

4 第一項に規定する公安委員会(同項の規定による更新申請書の提出が第百一条の二の二第一項に規定する経由地公安委員会を経由して行われる場合にあつては、当該経由地公安委員会)は、第一項の規定により更新申請書を提出しようとする者に対し、その者が第百三条第一項第一号、第一号の二又は第三号のいずれかに該当するかどうかの判断に必要な質問をするため、内閣府令で定める様式の質問票を交付することができる。

5 第一項の規定による更新申請書の提出があつたときは、当該公安委員会は、その者について、速やかに自動車等の運転について必要な適性検査(以下「適性検査」という。)を行わなければならない。

6 前項の規定による適性検査の結果又は第百一条の二の二第三項に規定する書面の内容(同条第五項の規定による適性検査を行つた場合には、当該書面の内容及び当該適性検査の結果)から判断して、当該免許証の更新を受けようとする者が自動車等を運転することが支障がないと認めたときは、当該公安委員会は、当該免許証の更新をしなければならない。

7 前各項に定めるもののほか、免許証の更新の申請及び適性検査について必要な事項は、内閣府令で定める。

(罰則 第一項については第百十七条の四第一項第三号)

 

 

 

詐欺の被害者が送付した荷物を依頼を受けて送付先のマンションに設置された宅配ボックスから取り出して受領するなどした者に詐欺罪の故意及び共謀があるとされた事例

 

 

覚せい剤取締法違反,詐欺未遂,詐欺被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成30年(あ)第1224号

【判決日付】      令和元年9月27日

【判示事項】      詐欺の被害者が送付した荷物を依頼を受けて送付先のマンションに設置された宅配ボックスから取り出して受領するなどした者に詐欺罪の故意及び共謀があるとされた事例

【判決要旨】      宅配便で現金を送付させてだまし取る特殊詐欺において,被告人が依頼を受け,他人の郵便受けの投入口から不在連絡票を取り出すという著しく不自然な方法を用いて,送付先のマンションに設置された宅配ボックスから荷物を取り出した上,これを回収役に引き渡すなどしていること,他に詐欺の可能性の認識を排除するような事情も見当たらないことなどの本件事実関係(判文参照)の下では,被告人には,詐欺の故意に欠けるところはなく,共犯者らとの共謀も認められる。

【参照条文】      刑法60

             刑法246-1

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集73巻4号47頁

 

 

刑法

(共同正犯)

第六十条 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

 

(詐欺)

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

職務質問に附随して行う所持品検査の許容限度

 

 

              爆発物取締罰則違反、殺人未遂、強盗被告事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和52年(あ)第1435号

【判決日付】      昭和53年6月20日

【判示事項】      職務質問に附随して行う所持品検査の許容限度

【判決要旨】      職務質問に附随して行う所持品検査は、所持人の承諾を得て、その限度においてこれを行うのが原則であるが、捜査に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、所持品検査の必要性、緊急性、これによつて侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度で許容される場合がある。

【参照条文】      憲法35

             警察官職務執行法2-1

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集32巻4号670頁

 

 

憲法

第三十五条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

② 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

 

 

警察官職務執行法

(質問)

第二条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。

2 その場で前項の質問をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に附近の警察署、派出所又は駐在所に同行することを求めることができる。

3 前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。

4 警察官は、刑事訴訟に関する法律により逮捕されている者については、その身体について凶器を所持しているかどうかを調べることができる。

 

 

連帯保証債務の物上保証人に対する抵当権の実行と主債務の消滅時効の中断

 

 

貸金等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成7年(オ)第1914号

【判決日付】      平成8年9月27日

【判示事項】      連帯保証債務の物上保証人に対する抵当権の実行と主債務の消滅時効の中断

【判決要旨】      甲の債務者乙の連帯保証人である丙の債務を担保するため、丁が物上保証人となった場合において、甲が丁に対して競売を申し立て、その手続が進行することは、乙の主債務の消滅時効の中断事由に該当しない。

【参照条文】      民法147

             民法148

             民法155

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【掲載誌】        最高裁判所民事判例集50巻8号2395頁

 

 

民法

(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)

第百四十七条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

一 裁判上の請求

二 支払督促

三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停

四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加

2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。

(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)

第百四十八条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。

一 強制執行

二 担保権の実行

三 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百九十五条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売

四 民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続又は同法第二百四条に規定する第三者からの情報取得手続

2 前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。

 

(時効の完成猶予又は更新の効力が及ぶ者の範囲)

第百五十三条 第百四十七条又は第百四十八条の規定による時効の完成猶予又は更新は、完成猶予又は更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。

2 第百四十九条から第百五十一条までの規定による時効の完成猶予は、完成猶予の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。

3 前条の規定による時効の更新は、更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。

 

(相対的効力の原則)

第四百三十五条の二 第四百三十二条から前条までに規定する場合を除き、連帯債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は、他の連帯債権者に対してその効力を生じない。ただし、他の連帯債権者の一人及び債務者が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債権者に対する効力は、その意思に従う。

 

(連帯保証人について生じた事由の効力)

第四百五十八条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項、第四百四十条及び第四百四十一条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。

 

(連帯債務者の一人との間の更改)

第四百三十八条 連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。

(連帯債務者の一人による相殺等)

第四百三十九条 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。

2 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(連帯債務者の一人との間の混同)

第四百四十条 連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。

(相対的効力の原則)

第四百四十一条 第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。

 

 

 

       主   文

 

 原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。

 被上告人の請求をいずれも棄却する。

 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。

 

       理   由

 

 上告代理人森本紘章及び上告補助参加代理人小山晴樹、同渡辺実の上告理由について

一 原審の適法に確定した事実関係の概要及び記録によって明らかな本件訴訟の経緯等は、次のとおりである。

 1 住宅ローン融資等を業とする被上告人は、株式会社都市開発(以下「訴外会社」という。)の販売又は仲介する不動産を購入した顧客との間で住宅ローン取引を行っていたが、訴外会社は、昭和五九年二月八日ころ、被上告人に対し、訴外会社の顧客が被上告人から住宅ローンの融資を受けたことにより負担する債務につき、合計一億一〇〇〇万円を限度として、包括して連帯保証する旨を約した。

 2 上告補助参加人らは、昭和五九年二月九日、被上告人に対し、上告補助参加人ら各所有の不動産に、被上告人の訴外会社に対する右連帯保証契約上の債権を被担保債権とする極度額一億一〇〇〇万円の根抵当権を設定した(以下「本件根抵当権」という。)。

 3 被上告人は、昭和五九年六月二七日、訴外会社の顧客である上告人aとの間で、一九〇〇万円を同上告人に貸し付ける旨の契約(以下「本件ローン契約」という。)を締結し、上告人bは、同日、被上告人に対し、右契約に基づく上告人aの債務を連帯保証する旨を約した。

   なお、上告人aは、真実マンションを購入する意思がないのに、訴外会社の資金繰りのため、訴外会社から三〇万円の謝礼を受け取る約束の下に、マンション購入者として本件ローン契約を締結し、被上告人から一九〇〇万円の交付を受けたものであり、上告人bも、訴外会社の勧誘に応じて右連帯保証をしたものである。

 4 上告人aは、昭和五九年八月七日、割賦金の返済を怠ったため、本件ローン契約所定の約定により、期限の利益を喪失した。

 5 被上告人は、昭和五九年一〇月二六日、本件根抵当権の実行としての競売を各管轄裁判所に申し立て、東京地方裁判所は同月二九日上告補助参加人ら各所有の不動産について、千葉地方裁判所佐倉支部は同月三〇日上告補助参加人小郷建設株式会社所有の不動産について、それぞれ競売開始決定をし、各競売開始決定正本は、前者については同年一一月一四日、後者については同年一二月二八日、右各競売事件の債務者である訴外会社に送達された。

 6 被上告人は、平成元年一〇月二五日、上告人aに対しては本件ローン契約上の債務の履行を求め、上告人bに対してはその連帯保証債務の履行を求めて本件訴訟を提起し、上告人らは、本件訴訟において、本件ローン契約上の債権についての五年の商事消滅時効を援用した。

二 原審は、右事実関係の下において、次のとおり判断して、本件ローン契約上の債権が時効により消滅したとの上告人らの主張を排斥した。

 1(一) 物上保証人所有の不動産を目的とする抵当権の実行としての競売を申し立てた債権者は、右手続において被担保債権の弁済を受けることを最終の目的とするものであること、右手続の競売開始決定正本は債務者に送達されることになっており、被担保債権の弁済を求める債権者の意思を債務者に通知することが手続的に保障されていること、競売開始決定正本が債務者に送達されたときは、差押えの効力として、被担保債権についての消滅時効は中断すると解されるが、一つの行為が効力を異にする二個の中断事由に重畳的に該当することを否定すべき理由はないこと等を考慮すれば、右競売の申立ては、債務者に対する関係で民法一四七条一号の「請求」に当たるものと解するのが相当である。そして、抵当権の実行としての競売手続は、請求権の存否を確定する効力を有するものではないから、右競売の申立ては、裁判上の請求に当たらず、催告としての効力を有するにすぎないものといわなければならないが、右競売の申立てによる催告は、その手続の進行中はその効力が継続的に維持され、そのことを前提に、債権者の弁済要求にこたえるための競売手続が行われるものというべきであるから、右催告は、手続終了後六箇月以内に債務者に対し裁判上の請求等をすることにより確定的に時効中断の効力を生じさせることができるいわゆる裁判上の催告に当たるものと解するのが相当である。

  (二) 民法四五八条において準用される同法四三四条により、連帯保証人に対する履行の請求は主債務者に対しても効力を生ずるから、本件ローン契約上の債務の連帯保証人である訴外会社を債務者とする本件根抵当権の実行としての競売の申立てによる裁判上の催告の効力の継続中に本件訴訟が提起されたことにより、本件ローン契約上の債権の消滅時効は中断している。

 2 また、上告人aは、訴外会社から三〇万円の謝礼を受け取る約束の下に、訴外会社の資金繰りのために本件ローン契約を締結したものであり、上告人bも訴外会社と相通じた連帯保証人であること等からすれば、上告人らが本件ローン契約上の債権についての消滅時効を援用することは、信義則に反し、許されないというべきである。

三 しかしながら、原審の右1、2の判断はいずれも是認することができない。その理由は、次のとおりである。

 1(一) 物上保証人所有の不動産を目的とする抵当権の実行としての競売の申立てがされ、執行裁判所が、競売開始決定をした上、同決定正本を債務者に送達した場合には、債務者は、民法一五五条により、当該抵当権の被担保債権の消滅時効の中断の効果を受けるが(最高裁昭和四七年(オ)第七二三号同五〇年一一月二一日第二小法廷判決・民集二九巻一〇号一五三七頁参照)、債権者甲が乙の主債務についての丙の連帯保証債務を担保するために抵当権を設定した物上保証人丁に対する競売を申し立て、その手続が進行することは、乙の主債務の消滅時効の中断事由に該当しないと解するのが相当である。

    けだし、抵当権の実行としての競売手続においては、抵当権の被担保債権の存否及びその額の確定のための手続が予定されておらず、競売開始決定後は、執行裁判所が適正な換価を行うための手続を職権で進め、債権者の関与の度合いが希薄であることにかんがみれば、債権者が抵当権の実行としての競売を申し立て、その手続が進行することは、抵当権の被担保債権に関する裁判上の請求(同法一四九条)又はこれに準ずる消滅時効の中断事由には該当しないと解すべきであり、また、執行裁判所による債務者への競売開始決定正本の送達は、本来債権者の債務者に対する意思表示の方法ではなく、競売の申立ての対象となった財産を差し押さえる旨の裁判がされたことを競売手続に利害関係を有する債務者に告知し、執行手続上の不服申立ての機会を与えるためにされるものであり、右の送達がされたことが、直ちに抵当権の被担保債権についての催告(同法一五三条)としての時効中断の効力を及ぼすものと解することもできないことなどに照らせば、債権者が抵当権の実行としての競売を申し立て、その手続が進行すること自体は、同法一四七条一号の「請求」には該当せず、したがって、右抵当権が連帯保証債務を担保するために設定されたものである場合にも、同法四五八条において準用される同法四三四条による主債務者に対する「履行ノ請求」としての効力を生ずる余地がないと解すべきであるからである。

  (二) 以上によれば、本件においても、被上告人がした本件根抵当権の実行としての競売の申立ては、本件ローン契約上の債権の消滅時効を中断しないというべきである。

 2 被上告人は、上告人らによる本件ローン契約上の債権についての消滅時効の援用が信義則に反すると主張するけれども、上告人aが、真実マンションを購入する意思がなく、訴外会社の資金繰りのために本件ローン契約を締結したとしても、上告人らは、自らマンション購入者として本件ローン契約を締結するなどしたのであるから、上告人らが本件ローン契約上の債権の消滅時効を援用することが信義則に反するということはできない。

  以上のとおり、本件ローン契約上の債権が時効により消滅したとの上告人らの主張を排斥した原審の判断には、法令の解釈を誤った違法があるというべきであり、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。この点の違法をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

四 被上告人は、上告人らと訴外会社及び上告補助参加人らは取引上一体というべき関係にあるとして、上告補助参加人らが被上告人に対して本件根抵当権の設定登記の抹消登記手続を求めて提起した訴訟(東京地方裁判所昭和六〇年(ワ)第三八七六号事件。以下「別件訴訟」という。)に被上告人が応訴し、請求棄却を求めるとともに、上告人a及び訴外会社に対する債権の存在を主張立証したことには裁判上の請求に準ずるもの又は裁判上の催告としての時効中断の効力があり、上告補助参加人らが別件訴訟の和解手続において被上告人に対する債務の存在を認めたことは時効中断事由としての承認に当たる旨を主張するが、記録によってうかがわれる被上告人の主張事実によっても、上告人らと訴外会社及び上告補助参加人らが取引上一体というべき関係にあったということはできない上、上告人ら及び訴外会社はいずれも別件訴訟の当事者ではなかったのであるから、別件訴訟における被上告人又は上告補助参加人らの訴訟活動が本件ローン契約上の債権につき消滅時効の中断の効力を及ぼすと解する余地のないことは明らかである。そして、他に右債権の消滅時効の中断事由に関する主張立証はない。そうすると、本件ローン契約上の債権は上告人らによる時効の援用により消滅し、それに伴い、上告人bの連帯保証債務も消滅したものであるから、被上告人の本訴請求はいずれも理由がなく、これを棄却すべきものである。

 よって、原判決を破棄し、第一審判決を取り消した上、被上告人の請求をいずれも棄却することとし、民訴法四〇八条、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁判官河合伸一の意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 裁判官河合伸一の意見は、次のとおりである。

 私は、本件ローン契約上の債権が時効によって消滅したとする多数意見の結論には賛成するが、その理由を異にするので、私見の要点を述べておきたい。

一 民法一五三条のいう催告とは、債務者に対して債務の履行を求める債権者の意思の通知であって、その形式、方法の如何を問わないというのが、一般的な理解である。

  競売の申立ては、債権者が被担保債権の弁済を得るためにする強力な手続であるから、直接的には抵当権の行使であっても、その背後に債務者に対して債務の履行を求める意思が含まれていることは明らかである。そして、その債権者の意思は、競売開始決定正本の送達により、債務者に到達することが予定されている。これを受領した債務者が債権者の右意思を認識することもまた当然である。したがって、頭記の一般的理解に従い、債権者が競売を申し立て、これに基づく競売開始決定正本が債務者に送達されることは、民法一四七条二号の差押えとなることとは別に、同法一五三条の催告にも当たると解すべきである。

二 しかしながら、いわゆる裁判上の催告として通常の催告を超える効力があるとされるのは、単に裁判所における手続で権利を主張したというだけでは足りず、(1) その手続において、当該権利の存否につき審理、判断されることが予定されているため、権利者が、その審理中、当該権利の存在を継続して主張していると認め得る場合、又は、(2) その手続が係属している間、権利者が別途当該権利の時効中断の手続をとることが著しく困難又は不合理であるなど、特段の事情があり、右の間の時効の進行を暫定的に中断しなければ権利者に酷であると認め得る場合であると考える。

  抵当権の実行としての競売手続においては、債務者から執行異議の申立てがあった場合などを除き、原則として被担保債権の存否を審理、判断することは予定されていないから、右の(1)の場合に当たるとすることはできない。また、抵当権に基づく競売手続の係属中に、主債務者に対して訴えを提起するなど、被担保債権について適宜の時効中断措置をとることが著しく困難又は不合理であるとはいえず、その他一般に右(2)の場合に当たると認めることもできない。

  したがって、抵当権の実行としての競売手続が係属していることをもって、一般的に、被担保債権につきいわゆる裁判上の催告があったと解することはできない。

三 これを本件についてみると、被上告人が本件根抵当権の実行としての競売を申し立て、各競売開始決定正本が訴外会社に送達されたことは、本件ローン契約上の債務についての連帯保証人たる同社に対して民法一五三条の催告があったものと解することができ、かつ、その催告は同法四五八条により準用される同法四三四条の履行の請求に含まれると解すべきであるから、主債務者たる上告人aに対する関係でも、時効中断の効力を生じたというべきである。

  しかしながら、右の中断は暫定的なものにすぎず、その後の競売手続の係属をもって直ちにいわゆる裁判上の催告と解し得ないこと前示のとおりであり、その例外とすべき事情も認められないから、被上告人が右送達後六箇月以内に民法一五三条所定の手続をしなかったことにより右暫定的中断の効力は失われ、結局、本件ローン契約上の債権は上告人らの時効の援用により消滅したものというべきなのである。

    最高裁判所第二小法廷