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法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

親子関係不存在確認の訴えについて確認の利益があるとされた事例

 

 

親子関係不存在確認請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/令和3年(受)第1463号

【判決日付】      令和4年6月24日

【判示事項】      親子関係不存在確認の訴えについて確認の利益があるとされた事例

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

 

       主   文

 

 原判決を破棄し、第1審判決を取り消す。

 本件を鹿児島家庭裁判所に差し戻す。

 

       理   由

 

 上告代理人藤岡諒の上告受理申立て理由について

 1 原審の確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。

 (1) 亡A及び亡Bは、亡Cと亡Dとの間の子であり、亡Eは、戸籍上亡Cと亡Dとの間の子とされている者である。

 (2) 亡Aは昭和25年に、亡Eは平成14年に、亡Bは平成29年に、それぞれ死亡した。亡Bの戸籍上の法定相続人は、亡Aの子である上告人外1名及び亡Eの子ら3名である。

 2 本件は、上告人が、検察官に対し、亡Eと亡C及び亡Dとの間の各親子関係(以下「本件各親子関係」という。)の不存在の確認を求める事案である。

 3 原審は、上記事実関係等の下において、上告人は、本件各親子関係が不存在であることにより自己の身分法上の地位に直接影響を受けることはないから、本件訴えにつき法律上の利益を有しないと判断して、これを却下すべきものとした。

 4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

 前記事実関係等によれば、上告人は、亡C及び亡Dの孫であり、亡Eの戸籍上の甥であって、亡Bの法定相続人であるところ、本件各親子関係が不存在であるとすれば、亡Bの相続において、亡Eの子らは法定相続人とならないことになり、本件各親子関係の存否により上告人の法定相続分に差異が生ずることになる。親子関係の不存在の確認の訴えを提起する者が当該訴えにつき法律上の利益を有するというためには、当該親子関係が不存在であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることを要すると解されるところ(最高裁昭和59年(オ)第236号同63年3月1日第三小法廷判決・民集42巻3号157頁参照)、法定相続人たる地位は身分関係に関するものであって、上告人は、その法定相続分に上記の差異が生ずることにより、自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けるということができる。

 以上によれば、上告人は、本件訴えにつき法律上の利益を有するというべきである。

 5 これと異なる見解の下に、本件訴えを却下すべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、原判決は破棄を免れない。

 そして、第1審判決を取り消し、更に審理を尽くさせるため、本件を第1審に差し戻すべきである。

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 

『判例法理から読み解く裁判実務 取締役の責任』

 

訴訟、交渉の場面において、裁判所で実務上「取締役の責任」がどう判断されているか(「判例法理」の到達点)を理解し、法曹実務家が的確に取締役の責任追及(防御)を行うための必携書!

 

第一法規

 

6,160円

(本体:5,600円)

 

編著者名

滝澤孝臣 監修  野上誠一 著

 

発刊年月日          2022-06-24

判型       A5判/C3032

ページ数              598

 

商品概要

 

裁判官が、株式会社の「取締役の責任」に関する学説・判例を分類整理し、裁判実務を幅広く、奥深く、体系立てて解説。裁判実務における「取締役の責任」の判断基準を理解し、的確に取締役の責任追及・防御を行うための必携書!

 

 

コメント

判例・通説にしたがって、簡潔に解説している。

判例や事項の索引も正確。

 

 

目次

 

監修の辞

はしがき

凡 例

 

第1章 序 説

1 本書の意義(取締役の責任検討の必要性)

2 株式会社とは

3 株式会社の機関設計

4 取締役とは

 資格・員数等

 選任と就任等

 終 任

 職務権限

5 代表取締役とは

6 取締役の責任と商業登記制度の関係

7 株式会社と取締役の多様性

  株式会社の多様性

ア 取締役会設置会社と取締役会非設置会社

イ 大会社

ウ 公開会社・非公開会社

エ 中小企業・同族会社

オ 会社法や民法の規律による解決の必要性と、会社の実態や個別事情を踏まえた解決の可能性

  取締役の多様性

8 取締役の責任追及の必要性

 第三者が被った損害の補

 会社が被った損害の補等

 責任の所在の明確化と取締役の任務懈怠に対する監督是正の必要性

 紛争防止機能(任務懈怠行為の抑止機能)

9 取締役の責任追及訴訟の態様

10 取締役の責任追及に当たって検討すべき事項

 概 説

 誰が責任追及できるか(原告の選択)

 誰に対して責任追及するか(被告の選択)

 何を、どのような法律構成によって請求するか(訴訟物の選択)

 根拠条文の要件を満たす事実関係があるか等

 どのような反論が考えられるか

 どのような手続によるか(手続選択)

 どの裁判所に訴訟を提起するか(土地管轄・事物管轄)

 訴訟を提起する前にすべきことはないか

 

第2章 取締役の第三者に対する責任

第1 429条1項に基づく取締役の責任

1 概 説

 債務不履行責任又は不法行為責任追及の可能性

 その他の責任追及の可能性

 法人格否認法理との関係

 429条1項の規律の必要性

 429条1項の責任の法的性質

 429条1項の責任を検討するに当たり必要な視点

2 429条1項の責任の発生要件(請求原因)の概要

 条文の内容

 「役員等」=「取締役」

ア 「取締役」の意義

イ 論点①(登記簿上の取締役)

 最高裁判決

 登記簿上の取締役の職務ないし任務(義務)

 取締役への選任決議が無効・不存在であったり、取り消されたりした場合

ウ 論点②(名目的取締役)

エ 論点③(事実上の取締役)

 裁判例の状況

 検討すべき事項

 第三者の主観的事情の考慮可能性

 「その職務を行うについて」「悪意又は重大な過失があったとき」

 任務懈怠行為による第三者への損害の発生

ア 概 説

イ 「損害」の意義

 最高裁判決

 直接損害・間接損害の明確性(区別可能性)

 どのような場合に直接損害・間接損害の発生を認めることができるか

ウ 「第三者」の意義

 概 説

 株主は「第三者」に含まれるか

 株主による直接損害の賠償請求

 株主による間接損害の賠償請求の可否

 「第三者」に当たらない者

3 任務懈怠(客観的要件)の具体的内容

 取締役の職務

ア 概 説

イ 会社の機関設計の違いによる取締役の職務の違い

ウ 取締役の任務懈怠の具体的態様

 取締役の行為に着目した分類

 第三者が被る損害に着目した分類

 423条1項の責任をめぐる議論との関係

ア 423条1項の「任務」ないし任務懈怠の内容

イ 429条1項における任務懈怠

 概 説

 個別法令の違反と善管注意義務違反との関係

ウ 423条1項における任務懈怠との違い

 任務懈怠として問題となる事項

 取締役の第三者に対する違法性の内容を検討することの要否

 取締役の任務懈怠行為の時期

 個別法令の違反

ア 概 説

イ 「法令」の意義

 「法令」の具体例

 「法令」の具体的内容

ウ 裁判実務上の留意点

エ 個別法令の違反と法令遵守義務違反との関係

オ 取締役に個別法令の違反が認められるのはどのような場合か

 個別法令の違反を問題とすべき事案の見極めの重要性

 個別法令の違反行為への関与が認められる事案と、一般の善管注意義務違反や監視義務違反等が問題となる事案との区別

カ 主張立証責任の所在

キ 個別法令の違反が正当化される場合があるか

 会社の利益のためにしたとの弁解の可否

 経営判断の原則が適用されるか

 法令の規定の解釈が分かれていることによって個別法令の違反が否定されることはあるか

 事後的な手続の履践や上位機関による追認等

ク 429条1項の責任に関して個別法令の違反が問題とされた裁判例

 食品衛生法違反(名古屋高金沢支判平成17・5・18判時1898号130頁〔28101391〕)

 商品取引法違反(東京地判平成19・5・23金融商事1268号22頁〔28131279〕)

 民事保全法ないし仮処分命令違反(東京地判平成21・7・28判タ1313号200頁〔28153357〕)

 特定商取引法違反(大阪高判平成26・2・27判時2243号82頁〔28221053〕)

 利息制限法ないし貸金業法違反(大阪地判平成27・5・8裁判所HP〔28232430〕)

 破産法・利息制限法違反(東京地判令和2・1・20判タ1483号242頁〔28283279〕)

 労働関係法規違反(東京高判平成30・6・27平成29年(ネ)5543号公刊物未登載〔28263421〕)

 定款違反、株主総会決議違反

ア 定款違反

イ 株主総会決議違反

 一般の善管注意義務・忠実義務違反

ア 概 説

イ 民法644条をめぐる議論

ウ 取締役が負う善管注意義務の内容・程度

 取締役の義務に関する一般的議論

 会社や取締役ごとに義務の内容や程度が異なるか

 会社の経営悪化時における直接侵害行為について取締役の任務懈怠をどこに求めるか

 取締役が善管注意義務を負わないですることができる行為はあるか

 善管注意義務の具体化

エ 経営判断の原則

 概 説

 民法の議論との整合性

 423条1項の責任をめぐる議論が429条1項の責任に妥当するか

 裁判実務における議論の状況

 平成20年までの裁判例を踏まえた議論の状況

 平成20年以降の最高裁判決・決定

 最高裁判決・決定の評価

 平成22年の最高裁判決後の裁判例

 事実認識(の過程)についての審査のあり方

 取締役の判断の過程、内容の著しい不合理性の判断方法

 いわゆる信頼の原則

 裁判例

 経営判断の原則の適用範囲

オ 善管注意義務をめぐる近時の議論

 監視・監督義務違反

ア 概 説

イ 取締役会設置会社の取締役による他の取締役に対する監視義務

 最高裁判決

 監視義務の法的根拠

 裁判実務上の留意点

 監視義務の内容

 どのような場合が監視義務違反となるか

 取締役会のメンバーとして認識できる事項(取締役会の上程事項等)についての監視義務

 取締役会のメンバーとして当然には認識できない事項(取締役会の非上程事項)についての監視義務

 具体的な監視義務を尽くしたか

ウ 取締役会非設置会社の取締役による他の取締役に対する監視義務

 会社法施行前の有限会社法の議論

 代表取締役が定められていない取締役会非設置会社の取締役が負う監視義務

 代表取締役が定められている取締役会非設置会社の取締役が負う監視義務

エ 名目的取締役による他の取締役に対する監視義務

 名目的取締役の意義

 名目的取締役の監視義務の有無・程度

 名目的取締役の監視義務違反ないし任務懈怠

 近時の議論・裁判例

 裁判実務上の留意点

オ 登記簿上の取締役や事実上の取締役による取締役に対する監視義務

カ 取締役による支配人・使用人等に対する監督義務

 概 説

 取締役会設置会社における支配人・使用人に対する監督義務

 取締役会非設置会社における支配人・使用人に対する監督義務

キ 取締役による支配人・使用人以外の者に対する監督義務

 事実上の取締役に対する監督義務

 第三者に経営委任した場合の監督義務

 子会社の取締役や使用人等に対する監督義務

 親会社の取締役や使用人等に対する監督義務

 会社の取引先(債務者)や業務委託先(の取締役や使用人等)に対する監督義務

 内部統制システム構築・運用義務違反

ア 規律の必要性

イ 会社法施行前の議論

ウ 会社法の規定の内容とその位置付け

 規定の内容

 規定の位置付け

エ どのような会社において内部統制システム構築義務が問題となるか

オ 内部統制システム構築義務を負うのはどのような取締役か

カ 内部統制システム構築義務の内容

 概 説

 議論の状況(判決例)

 検 討

 いったん構築した内部統制システムが不十分となった場合の再構築義務

 親子会社における内部統制システム構築義務

 裁判例検討に当たっての留意点

キ 内部統制システム構築義務違反

 システム構築に当たっての取締役の裁量

 経営判断の原則の適用の有無

 「通常想定される不正行為を防止し得る程度の管理体制」の具体的内容

 不正行為発生の具体的な予見可能性

 内部統制システム構築の場面におけるいわゆる信頼の原則の適用の有無

ク 内部統制システム運用義務とその違反

ケ 内部統制システム構築・運用義務と監視・監督義務の関係

 各義務の関係

 裁判例

4 悪意又は重大な過失(主観的要件)

 概 説

 悪 意

ア 「悪意」の意義

イ 裁判実務における留意点

ウ 監視義務違反についての悪意

 重大な過失

ア 「重大な過失」の意義

イ 判断基準

ウ 423条1項の責任との関係で問題とされる過失との関係

 423条1項の責任との共通点

 423条1項の責任との相違点

エ 経営判断の原則との関係

オ 監視義務違反についての重過失

 検討の視点

 名目的取締役に関する最高裁判決

 会社法施行前の名目的取締役をめぐる議論

 会社法施行後の議論

カ 第三者側の事情の考慮可能性

キ 裁判実務上の留意点

 任務懈怠(善管注意義務違反)や相当因果関係の有無との関係

 名目的取締役をめぐる議論との関係

 主張立証のあり方

ク 裁判例

 個別法令の違反・一般の善管注意義務違反に関するもの

 名目的取締役の監視義務違反(会社法施行後の裁判例)

 一般の取締役の監視義務違反

5 第三者の損害

6 相当因果関係

 概 説

 会社法429条1項の相当因果関係の判断枠組み

ア 直接侵害の事案と間接侵害の事案とで区別する必要はあるか

イ 通常損害と特別損害との区別の必要性

ウ 事実的因果関係の判断枠組み

 裁判実務上の留意点

ア 裁判実務の実情

イ 重大な過失との関係

ウ 第三者側の事情の考慮可能性

エ 複数の役員の責任を追及する場合

 監視・監督義務違反と相当因果関係

ア 監視すべき取締役や従業員に任務懈怠等の責任が成立することを要するか

イ 監視義務違反と相当因果関係

 最高裁判決

 会社法施行前の裁判例

 会社法施行後の議論

 理論的検討

 慰謝料請求の可否

 弁護士費用相当額の損害賠償請求の可否

 裁判例

ア 手形の振出し等に関する任務懈怠の事案

イ 株価の下落による損害の賠償請求がされた事案

ウ 退職慰労金に関する議案を株主総会や取締役会に付議しなかった事案

エ 会社破綻の原因が争われた事案

オ 監視義務違反に関係する事案

 近時の最高裁判決

 近時の裁判例

7 取締役の対抗主張(抗弁)

 過失相殺

 消滅時効

 権利濫用・信義則違反

 各役員の寄与度等に応じた責任軽減の可否

 その他の抗弁

8 429条1項の効果

 条文の内容

 同一の任務懈怠行為に関して他に責任を負うべき者との関係

ア 債務同士の関係

イ 不真正連帯債務と解することの意味

 取締役の会社に対する423条1項に基づく責任との関係

 取締役が負う損害賠償債務の遅延損害金の起算日・利率

第2 429条2項に基づく取締役の責任

1 429条2項の規律の内容

 条文の内容

 429条1項との関係

 429条2項の規律の存在意義、同項の責任の法的性質

2 429条2項の責任の発生要件(請求原因)

 要件の概要

 取締役による計算書類の虚偽記載等(要件①)

 第三者への損害の発生(要件③)

 取締役の行為と第三者の損害との間の相当因果関係(要件②)

3 取締役の対抗主張(抗弁)

4 429条2項の効果

第3 不法行為等に基づく取締役の責任

1 概 説

2 民法709条に基づく責任

 責任の発生要件

 取締役による加害行為

ア 問題の所在

イ 裁判例

 取引的不法行為の事案

 投資被害等の消費者被害の事案

 労働関係訴訟

 取締役在任中の従業員の引抜きの事案

 新株の有利発行及びそれに続く少数株主の締め出しの事案

3 民法719条に基づく責任

4 民法715条2項に基づく代理監督者の責任

5 特別法に基づく責任

第4 第三者が取締役に対して責任追及するための訴訟手続

1 概 説

2 取締役の住所等の特定

3 裁判実務上の留意点

 請求の趣旨

 訴訟物の明示の仕方

 請求の原因

 被告の反論の法的位置付け

 訴訟告知

 訴訟提起後に被告を追加することの可否

 裁判上の和解

4 会社について倒産手続が開始された場合の取締役の責任への影響の有無

 

第3章 取締役の会社に対する責任

第1 423条1項に基づく取締役の責任(本則)

1 概 説

 債務不履行責任又は不法行為責任追及の可能性

 423条1項の規律の必要性とその責任の法的性質

 423条1項の責任を検討するに当たり必要な視点

 429条1項の責任をめぐる議論との異同

2 423条1項の責任の発生要件(請求原因)の概要

 条文の内容

 「取締役」

ア 「取締役」の意義と範囲

イ 使用人兼務取締役の責任の根拠条文

 「その任務を怠ったとき」(任務懈怠)

 任務懈怠行為による会社への損害の発生

3 「その任務を怠ったとき」(任務懈怠)の法的位置付け

 債務不履行に基づく損害賠償責任に関する一般的議論

ア 責任の発生要件(請求原因)

イ 債務不履行に基づく損害賠償責任に関する抗弁

ウ 取締役の債務不履行の内容

エ 不完全履行に基づく損害賠償責任の発生要件

 任務懈怠の法的位置付け

ア 議論の状況

イ 検 討

4 「その任務を怠ったとき」(任務懈怠)の具体的内容

 会社法施行前の商法の規律との比較

 取締役の「任務」

 「その任務を怠ったとき」と善管注意義務違反との関係

ア 議論の状況

イ 検 討

 取締役の任務懈怠行為の具体的態様

 個別法令の違反

ア 概 説

イ 個別法令の違反の有無が問題となる場合

ウ 429条1項の責任との相違点

エ 判決例

 さいたま地判平成23・9・2金融商事1376号54頁〔28174295〕

 東京高判平成25・1・30判タ1394号281頁〔28210405〕

 東京地判平成26・9・25資料版商事法務369号72頁〔28230010〕

 名古屋地判平成27・6・30金融商事1474号32頁〔28232525〕

 東京地判平成30・3・28平成28年(ワ)24125号公刊物未登載〔29049237〕

 東京高判令和元・5・16判時2459号17頁〔28272913〕

 定款違反、株主総会決議違反

 一般の善管注意義務違反・忠実義務違反

ア 概 説

イ 株主に関する事情によって取締役の任務懈怠責任が否定されることがあるか

 裁判例

 検 討

 監視・監督義務違反

ア 概 説

イ 株主に関する事情によって義務違反(任務懈怠)を否定することの可否

ウ 名目的取締役をめぐる議論

 義務違反(任務懈怠)を否定することの可否

 他の要件ないし抗弁との関係の検討の必要性

 内部統制システム構築・運用義務違反

5 会社の損害

 概 説

 株主総会決議や取締役会決議を経ずにした行為(取引等)による損害

6 相当因果関係

 概 説

 423条1項の責任特有の問題

7 取締役の対抗主張(抗弁)

 帰責性(取締役の故意・過失)の不存在

ア 概 説

イ 取締役の故意・過失が否定されるのはどのような場合か

ウ 裁判実務上の留意点

エ 違法性(個別法令の違反)の認識・認識可能性の欠如

 認識可能性の程度

 判決例

 分 析

オ 法令遵守の期待可能性の欠如を理由とする免責の可能性

カ 個別法令の違反の回避義務を否定することによる免責の可能性

キ その他の議論

 違法性・責任阻却事由の存在

 過失相殺の可否

ア 裁判例・学説の状況とその分析

イ 検 討

 各役員の寄与度等に応じた責任軽減の可否

 損益相殺

ア 要件等

イ 裁判例

 取締役の責任の免除

 取締役の責任の一部免除・責任額の限定

 権利濫用・信義則違反

ア 概 説

イ 具体例

 権利行使の不当性に着目したもの(水戸地土浦支判平成29・7・19判タ1450号240頁〔28260260〕)

 株主に関する事情等を考慮したもの(東京地判平成30・1・22判タ1461号246頁〔29048756〕)

 特定の役員を狙い撃ちにしていることを理由としたもの(東京高判令和元・8・21金融商事1579号18頁〔28274560〕)

 損害の内容に着目したもの(東京高判平成29・6・15判時2388号84頁〔28252740〕)

 消滅時効

8 423条1項の効果

 条文の内容

 会社が負う損害賠償債務の遅延損害金の起算日・利率

第2 423条1項に基づく取締役の責任(356条1項に関する責任の特則)

1 概 説

2 利益相反取引の特則

 規律の趣旨

 利益相反取引に関する規律の内容

ア 株主総会又は取締役会の承認決議

 会社法の規定の内容

 直接取引の範囲

 間接取引の範囲

 利益相反取引該当性が否定される場合

 事後承認・包括的承認の可否

イ 取締役会への報告義務

ウ 決議を経ずにされた取引の効力

 利益相反取引がされた場合の取締役の任務懈怠責任

ア 株主総会等の承認を受けずに利益相反取引がされた場合の責任

イ 株主総会等の承認を受けて利益相反取引がされた場合の責任

ウ 会社の損害

 取締役が自己のために直接取引をした場合の一部抗弁の不許

 裁判実務上の留意点

3 競業取引の特則

 規律の趣旨

 競業取引に関する規律の内容

ア 株主総会又は取締役会の承認決議

 会社法の規定の内容

 「自己又は第三者のために」

 「会社の事業の部類に属する」

 「取引」

 競業取引該当性が否定される場合

 事後承認・包括的承認の可否

イ 取締役会への報告義務、決議を経ずにされた競業取引の効力

 競業取引がされた場合の取締役の任務懈怠責任

ア 株主総会等の承認を受けずに競業取引がされた場合の責任

 会社の損害額の推定

 取締役又は第三者の「利益の額」の意義

 推定の覆滅

 推定規定の限界

イ 株主総会等の承認を受けて競業取引がされた場合の責任

 裁判実務上の留意点(競業避止義務の多様性)

 取締役在任中の競業取引に隣接する問題

ア 取締役退任後の競業取引による責任

 概 説

 競業避止に関する合意の有効性

 元取締役が信義則に基づき義務を負う場合

イ 取締役や従業員の引抜きによる責任

 取締役在任中の引抜きの責任

 取締役退任後の引抜きの責任

ウ 会社の機会の奪取

第3 その他の規定に基づく取締役の責任

1 概 説

2 会社法の規定に基づく責任

 剰余金の配当等に係る責任

 株主権行使に関する利益供与に係る責任

3 民法に基づく責任

第4 会社自身が取締役に対して責任追及するための訴訟手続

1 概 説

2 管 轄

3 会社の代表者

 会社法の規律の内容

 会社法施行の際の経過措置

 裁判実務上の留意点

4 その他の裁判実務上の留意点

 訴訟物の明示の仕方

 訴訟参加等

 裁判上の和解等

5 会社について倒産手続が開始された場合の規律

第5 会社に代わって株主が取締役に対して責任追及するための訴訟手続(株主代表訴訟)

1 概 説

 株主代表訴訟の必要性

 株主代表訴訟の法的性質(株主代表訴訟を提起する株主の地位)

 法定訴訟担当とは

 解釈や運用に当たって必要な視点

 株主代表訴訟の実情

 裁判実務上の留意点

ア 会社法の改正

イ 責任原因の主張立証の必要性

2 株主代表訴訟の対象となる責任の範囲

 条文の内容

 条文の読み方

 「役員等」=「取締役」の意義

ア 概 説

イ 被告の範囲

ウ 取締役ではないが423条1項の責任を負う者を被告とする株主代表訴訟が許されるか

 「役員等……の責任」の意義

ア 概 説

イ 責任の発生時期による限定

ウ 責任の内容による限定

 議論の状況

 取締役の地位に基づく責任

 取締役の会社に対する取引債務についての責任

3 訴訟要件

 訴訟要件とは

 原告適格(提訴資格)

ア 条文上の要件

イ 要件の具体的内容

 株主であること

 株式継続所有要件(公開会社の場合)

ウ 株主代表訴訟提起後に株式の所有状況に変動があった場合の原告適格の帰趨

 株主が死亡したり合併したりした場合

 原告が株式を全部第三者に譲渡した場合

 原告の意思によらずに原告が株主の地位を喪失する場合

エ 会社の取締役に対する請求権の移転・消滅事由があった場合の訴訟の帰趨等

 概 説

 会社が取締役に対する請求権を譲渡した場合

 会社が形成権を行使するなどした場合

 取締役が会社に対して弁済した場合

オ 旧株主による責任追及等の訴え・多重代表訴訟

 株主代表訴訟の提起前に提訴請求したこと又は847条5項の要件を満たすこと

ア 民訴法上の位置付け

イ 提訴請求の制度趣旨

ウ 提訴請求権者

エ 提訴請求書の記載事項

 規律の概要

 被告となるべき者

 請求の趣旨

 請求を特定するのに必要な事実

 提訴請求書の内容と訴状の内容とのずれはどこまで許容されるか

オ 提訴請求の名宛人(相手方)

 規律の概要

 提訴請求において被告となるべき者を名宛人とすることの可否

 名宛人が不存在又は行方不明の場合の処理

 裁判実務上の留意点

カ 会社による不提訴理由通知

キ 提訴請求が不要な場合

ク 株主代表訴訟の提起前に(有効な)提訴請求があったとはいえない場合の訴え却下の可否

 原 則

 株主代表訴訟の提起前に(有効な)提訴請求がされたのと同視される場合

 会社が株主代表訴訟に訴訟参加した場合の訴え却下の可否

 提訴請求に係る瑕疵の治癒

ケ 訴えが変更された場合の提訴請求の要否

 提訴請求から60日以内に会社が訴訟提起しなかったこと

4 取締役による対抗手段

 概 説

 提訴請求権又は提訴権の濫用ないし不存在

ア 847条1項ただし書・5項ただし書の内容とその位置付け

イ 要件の内容

ウ 要件の証明

エ 会社による主張立証

オ 裁判例

 担保提供命令の申立て

ア 規律の概要

イ 基準時

ウ 「悪意」の意義

 裁判例

 株主である原告の請求に理由がないことに着目する場合(不当 訴訟要件)

 原告の不法不当な目的に着目する場合(不法不当目的要件)

 両要件の総合考慮の可能性

エ 「相当の担保」の意義・内容

オ 対抗手段としての意義

 解釈論(訴権・株主権の濫用)

5 民事訴訟手続に関する規律

 概 説

 管 轄

 訴え提起手数料

 複数の株主が原告となる場合の共同訴訟の類型

 訴訟告知

 法定訴訟担当であることの意味

ア 株主への直接給付の可否

イ 判決の効力

ウ 株主代表訴訟の提起によって会社や他の株主は原告適格(当事者適格)を喪失するか

エ 株主代表訴訟の提起によって会社は取締役に対する請求権の処分権限を喪失し、取締役は弁済することができなくなるか

オ 原告である株主は会社に対して善管注意義務を負うか

カ 被告である取締役による抗弁主張の可否

キ 会社について倒産手続が開始された場合の規律

 同一の責任を追及する株主代表訴訟が複数係属した場合の処理

ア 訴え却下の可否(弁論の併合義務の有無)

イ 二重訴訟に当たるかどうかの判断基準

 訴訟参加

ア 概 説

イ 共同訴訟参加

 規定の存在意義

 会社による共同訴訟参加

 他の株主による共同訴訟参加

ウ 補助参加

 規定の存在意義

 補助参加の手続

 株主による証拠収集手段

 裁判上の和解

ア 規律の概要

イ 会社の代表者

ウ 代表取締役又は監査役の善管注意義務との関係

エ 和解による紛争解決の具体例

 判決・和解以外の訴訟終了原因

 取締役について倒産手続が開始された場合の責任追及方法

 上 訴

 再審の訴え

6 訴訟終局後の問題

 強制執行・民事保全

 原告(株主)の会社に対する費用・弁護士報酬の請求

 会社の株主(原告)に対する損害賠償請求

 取締役(被告)の株主(原告)に対する損害賠償請求

 取締役(被告)の会社に対する費用等の請求

 担保提供命令の担保の取消し

 

第4章 会社の第三者に対する責任

第1 350条に基づく代表者の不法行為についての会社の責任

1 概 説

 使用者責任追及の可能性

ア 使用者責任の発生要件

イ 代表者の行為についての使用者責任の成否

 350条の規律の必要性

 350条の責任の法的性質

 350条の責任を検討するに当たっての留意点

2 350条の責任の発生要件(請求原因)

 条文の内容

 「代表取締役その他の代表者」

ア 「代表取締役」の意義

イ 「その他の代表者」の意義

 代表と代理の違い

 「その他の代表者」の具体例

 論点を検討するに当たっての留意点

 論点①(代表取締役が定められている会社の取締役(代表権のない取締役。代表取締役でない業務執行取締役等))

 論点②(取締役以外の会社の機関(監査役・取締役会等))

 論点③(登記簿上の代表取締役)

 論点④(事実上の代表取締役)

ウ 会社に対して責任追及するに当たり代表者(行為者)を特定する必要があるか

 代表者が「第三者」に「損害」を加えたこと

ア 「第三者」の意義(株主も含まれるか)

イ 「損害」の範囲

ウ 株主が被った損害を350条に基づき賠償請求できるか

エ 参考裁判例

 千葉地判平成8・8・28判時1591号113頁〔28020549〕

 大分地判平成20・3・3金融商事1290号53頁〔28140690〕

 東京地判平成30・3・22判タ1472号234頁〔29049226〕

 代表者の行為が(共同)不法行為や教唆・幇助の成立要件を満たすこと

ア 350条をめぐる解釈

イ (共同)不法行為や教唆・幇助の要件

 不法行為の要件

 共同不法行為の要件

 教唆・幇助の責任の要件

ウ 350条特有の議論(総論)

エ 代表者による加害行為の有無・内容

 議論の状況

 裁判実務上の留意点

オ 代表者の故意・過失

カ 過失や違法性をめぐる近時の議論

 会社法の内部統制システム構築義務との関係

 参考になる議論

 最高裁判決

 不法行為法上の義務の存否

 裁判実務上の留意点

キ 350条の責任が認められた近時の裁判例

 投資被害等の消費者被害の事案

 労働関係訴訟

 プライバシー侵害の事案

 その他

ク 代表者による不法行為等の時期と350条の責任の成否

ケ 継続的・反復的な不法行為における留意点

 故意・過失との関係

 行為者変更に伴う主張再構成の必要性

 「その職務を行うについて」

ア 「その職務」の意義

イ 「職務を行うについて」の意義

ウ 代表者の行為が会社の事業の範囲に属すること(要件①)

エ 代表者の行為が代表者の職務の範囲に属するような外形が認められること(要件②)

オ 近時の裁判例

カ 代表取締役の権限に関する規律

 代表取締役の権限の範囲

 裁判例

 代表取締役による権限濫用

3 他の制度との関係

 429条1項に基づく責任との関係

 表見責任との関係

ア 民法における議論

イ 会社法の規律(表見代表取締役)

ウ 表見責任と350条の責任のどちらを追及するのが得策か

エ 会社に対する責任追及の具体的方法

オ 会社に対して表見責任を追及しつつ損害賠償を請求することの可否

カ 会社に対して表見責任を追及しつつ代表者には損害賠償責任を追及することの可否

4 会社の対抗主張(抗弁)

 権限逸脱・濫用についての悪意・重過失

ア 概 説

イ 悪意・重過失の意義

ウ 悪意・重過失の基準時

 過失相殺

 消滅時効

 その他の抗弁

 会社免責の余地はあるか

5 350条の効果

 条文の内容

 代表者に対する損害賠償請求の可否

 会社の責任と代表者の責任との関係

ア 会社の債務と代表者の債務との関係

イ 求償の可否

ウ 求償の範囲(求償制限の可否)

エ 求償を制限する特約の可否

 会社が負う損害賠償債務の遅延損害金の利率・起算日

第2 民法715条1項に基づく代表権のない取締役の不法行為についての会社の責任

第3 民法709条に基づく会社固有の不法行為責任

1 会社自身が固有の不法行為責任を負うか

2 否定説

3 肯定説

4 検 討

 裁判実務の状況

 会社固有の不法行為責任を認める必要性

ア 代表者や被用者の加害行為との関係

イ 代表者や被用者の義務との関係

 何を会社の侵害行為(加害行為)と捉えるか

 会社の故意・過失の内容

 350条の責任及び使用者責任と会社固有の不法行為責任との関係

第4 第三者が会社に対して責任追及するための訴訟手続

1 概 説

2 裁判実務上の留意点

 会社と代表取締役の双方を被告とする訴訟を提起する場合の請求の趣旨

 訴訟物の明示の仕方

 裁判上の和解に役員を参加させる方法

 

事項索引

判例索引

監修者・著者紹介

 

商品の特色

 

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建物の賃借人から敷金がさしいれられている場合と賃料延滞を理由とする契約解除

 

 

              家屋明渡等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/昭和45年(オ)第433号

【判決日付】      昭和45年9月18日

【判示事項】      建物の賃借人から敷金がさしいれられている場合と賃料延滞を理由とする契約解除

【判決要旨】      建物の賃借人から賃貸人に対し敷金がさしいれられている場合においても、特段の事情のないかぎり、賃借人が賃料を延滞したときは、これを理由に賃貸人は賃貸借契約を解除することができ、右差入敷金額が16万円、延滞賃料が20万円で、差引をした場合には賃料の延滞分が1か月分にも充たないとしても、右契約解除が信義則に反し権利濫用となるものではない。

【参照条文】      民法619

【掲載誌】        最高裁判所裁判集民事100号453頁

             判例タイムズ255号144頁

             判例時報612号57頁

 

 

民法

(賃貸借の更新の推定等)

第六百十九条 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第六百十七条の規定により解約の申入れをすることができる。

2 従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、第六百二十二条の二第一項に規定する敷金については、この限りでない。

 

第六百二十二条の二 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。

一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。

二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。

2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

 

 

傷害罪の成立を認めた第1審判決に判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決に、刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

 

 

傷害、暴行被告事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/令和2年(あ)第1751号

【判決日付】      令和4年4月21日

【判示事項】      傷害罪の成立を認めた第1審判決に判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決に、刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

【判決要旨】     医師の意見から認められる外力の態様に加え、Aが受傷した当時の状況、Aの受傷状況に関する被告人の言動を総合してAに対する被告人の暴行を認定し傷害罪の成立を認めた第1審判決について、医師の意見からは第1審判決が認定の根拠としたAの頭部にA以外の者の行為による強い外力が加わった事実は認められないからその認定は前提を欠くとしたほかは、Aの受傷状況に関する被告人の供述が信用できないからといって被告人の暴行を認定することはできない旨を説示しただけで、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決は、間接事実を総合した場合に被告人の暴行を認定することができるか否かについて判断を示したものとはいえないから、事実誤認の審査に当たり必要な検討を尽くして第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず(判文参照)、刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があり、同法411条1号により破棄を免れない。

【参照条文】      刑事訴訟法382

             刑事訴訟法411

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集76巻4号268頁

 

 

刑事訴訟法

第三百六十二条 第三百五十一条乃至第三百五十五条の規定により上訴をすることができる者は、自己又は代人の責に帰することができない事由によつて上訴の提起期間内に上訴をすることができなかつたときは、原裁判所に上訴権回復の請求をすることができる。

 

第四百十一条 上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。

一 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。

二 刑の量定が甚しく不当であること。

三 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。

四 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。

 

 

 

譲渡担保権者が目的物件につき自己の債権者のためにさらに譲渡担保権を設定した場合と第三者異議の訴え

 

 

第三者異議事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/昭和53年(オ)第1463号

【判決日付】      昭和56年12月17日

【判示事項】      1、譲渡担保権者と第三者異議の訴え

             2、譲渡担保権者が目的物件につき自己の債権者のためにさらに譲渡担保権を設定した場合と第三者異議の訴え

【判決要旨】      1、譲渡担保権者は、特段の事情がない限り、第三者異議の訴えによつて目的物件に対し譲渡担保権設定者の一般債権者がした強制執行の排除を求めることができる。

             2、譲渡担保権者は、目的物件につき自己の債権者のために更に譲渡担保権を設定したのちにおいても、第三者異議の訴えによつて目的物件に対し原譲渡担保権設定者の一般債権者がした強制執行の排除を求めることができる。

【参照条文】      民法369

             民事訴訟法(昭和54年法律第4号による改正前のもの)549-1

             民事執行法38-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集35巻9号1328頁

 

 

民法

(抵当権の内容)

第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。

 

 

民事執行法

(第三者異議の訴え)

第三十八条 強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者は、債権者に対し、その強制執行の不許を求めるために、第三者異議の訴えを提起することができる。

2 前項に規定する第三者は、同項の訴えに併合して、債務者に対する強制執行の目的物についての訴えを提起することができる。

3 第一項の訴えは、執行裁判所が管轄する。

4 前二条の規定は、第一項の訴えに係る執行停止の裁判について準用する。

 

預金通帳等を第三者に譲渡する意図を秘して銀行の行員に自己名義の預金口座の開設等を申し込み預金通帳等の交付を受ける行為は,刑法246条1項の詐欺罪に当たるか

 

 

詐欺被告事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷決定/平成18年(あ)第2319号

【判決日付】      平成19年7月17日

【判示事項】      預金通帳等を第三者に譲渡する意図を秘して銀行の行員に自己名義の預金口座の開設等を申し込み預金通帳等の交付を受ける行為は,刑法246条1項の詐欺罪に当たるか

【判決要旨】      預金通帳等を第三者に譲渡する意図であるのに,これを秘して銀行の行員に自己名義の預金口座の開設等を申し込み,預金通帳等の交付を受ける行為は,刑法246条1項の詐欺罪に当たる。

【参照条文】      刑法246-1

             金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律16の2-1

             金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律16の2-2

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集61巻5号521頁

 

 

刑法

(詐欺)

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

 

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法葎

従来、日本における資金洗浄対策の柱となる法律は、「本人確認法」と「組織的犯罪処罰法」の2つであり、主に金融機関において対策を行っていた[2]。

 

しかし、2003年(平成15年)に改訂されたFATF「40の勧告」において、金融機関のみならず、非金融業者(不動産・貴金属・宝石等取扱業者等)、職業的専門家(弁護士・公認会計士等)についても「規制すべき対象」として追加された。そこで、日本国政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部は、「本人確認法」と「組織的犯罪処罰法」第5章を一本化し、対象業種を拡大する法案を作成すること、FIUを金融庁から国家公安委員会に移管することなどを決定した。

 

犯罪による収益の移転防止に関する法律

(取引時確認等)

第四条 特定事業者(第二条第二項第四十五号に掲げる特定事業者(第十二条において「弁護士等」という。)を除く。以下同じ。)は、顧客等との間で、別表の上欄に掲げる特定事業者の区分に応じそれぞれ同表の中欄に定める業務(以下「特定業務」という。)のうち同表の下欄に定める取引(次項第二号において「特定取引」といい、同項前段に規定する取引に該当するものを除く。)を行うに際しては、主務省令で定める方法により、当該顧客等について、次の各号(第二条第二項第四十六号から第四十九号までに掲げる特定事業者にあっては、第一号)に掲げる事項の確認を行わなければならない。

一 本人特定事項(自然人にあっては氏名、住居(本邦内に住居を有しない外国人で政令で定めるものにあっては、主務省令で定める事項)及び生年月日をいい、法人にあっては名称及び本店又は主たる事務所の所在地をいう。以下同じ。)

二 取引を行う目的

三 当該顧客等が自然人である場合にあっては職業、当該顧客等が法人である場合にあっては事業の内容

四 当該顧客等が法人である場合において、その事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にあるものとして主務省令で定める者があるときにあっては、その者の本人特定事項

2 特定事業者は、顧客等との間で、特定業務のうち次の各号のいずれかに該当する取引を行うに際しては、主務省令で定めるところにより、当該顧客等について、前項各号に掲げる事項並びに当該取引がその価額が政令で定める額を超える財産の移転を伴う場合にあっては、資産及び収入の状況(第二条第二項第四十六号から第四十九号までに掲げる特定事業者にあっては、前項第一号に掲げる事項)の確認を行わなければならない。この場合において、第一号イ又はロに掲げる取引に際して行う同項第一号に掲げる事項の確認は、第一号イ又はロに規定する関連取引時確認を行った際に採った当該事項の確認の方法とは異なる方法により行うものとし、資産及び収入の状況の確認は、第八条第一項の規定による届出を行うべき場合に該当するかどうかの判断に必要な限度において行うものとする。

一 次のいずれかに該当する取引として政令で定めるもの

イ 取引の相手方が、その取引に関連する他の取引の際に行われた前項若しくはこの項(これらの規定を第五項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)又は第四項の規定による確認(ロにおいて「関連取引時確認」という。)に係る顧客等又は代表者等(第六項に規定する代表者等をいう。ロにおいて同じ。)になりすましている疑いがある場合における当該取引

ロ 関連取引時確認が行われた際に当該関連取引時確認に係る事項を偽っていた疑いがある顧客等(その代表者等が当該事項を偽っていた疑いがある顧客等を含む。)との取引

二 特定取引のうち、犯罪による収益の移転防止に関する制度の整備が十分に行われていないと認められる国又は地域として政令で定めるもの(以下この号において「特定国等」という。)に居住し又は所在する顧客等との間におけるものその他特定国等に居住し又は所在する者に対する財産の移転を伴うもの

三 前二号に掲げるもののほか、犯罪による収益の移転防止のために厳格な顧客管理を行う必要性が特に高いと認められる取引として政令で定めるもの

3 第一項の規定は、当該特定事業者が他の取引の際に既に同項又は前項(これらの規定を第五項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定による確認(当該確認について第六条の規定による確認記録の作成及び保存をしている場合におけるものに限る。)を行っている顧客等との取引(これに準ずるものとして政令で定める取引を含む。)であって政令で定めるものについては、適用しない。

4 特定事業者は、顧客等について第一項又は第二項の規定による確認を行う場合において、会社の代表者が当該会社のために当該特定事業者との間で第一項又は第二項前段に規定する取引(以下「特定取引等」という。)を行うときその他の当該特定事業者との間で現に特定取引等の任に当たっている自然人が当該顧客等と異なるとき(次項に規定する場合を除く。)は、当該顧客等の当該確認に加え、当該特定取引等の任に当たっている自然人についても、主務省令で定めるところにより、その者の本人特定事項の確認を行わなければならない。

5 特定事業者との間で現に特定取引等の任に当たっている自然人が顧客等と異なる場合であって、当該顧客等が国、地方公共団体、人格のない社団又は財団その他政令で定めるもの(以下この項において「国等」という。)であるときには、第一項又は第二項の規定の適用については、次の表の第一欄に掲げる顧客等の区分に応じ、同表の第二欄に掲げる規定中同表の第三欄に掲げる字句は、それぞれ同表の第四欄に掲げる字句とする。

 

 

甲が乙を欺いて金員を交付させるに当たり甲及び乙が別途丙を欺いて丙から甲に上記金員を交付させた場合と甲の乙に対する詐欺罪の成否

 

 

詐欺被告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷決定/平成13年(あ)第899号

【判決日付】      平成15年12月9日

【判示事項】      甲が乙を欺いて金員を交付させるに当たり甲及び乙が別途丙を欺いて丙から甲に上記金員を交付させた場合と甲の乙に対する詐欺罪の成否

【判決要旨】      甲が乙から儀式料名下に金員を詐取するに当たり,甲の意を受けた乙において,甲から商品を購入したように仮装して信販業者丙との間で立替払契約を締結し,同契約に基づき商品購入代金として丙から甲に金員を交付させる方法により儀式料を支払った場合には,甲及び乙の丙に対する行為が詐欺罪を構成するかどうかにかかわらず,甲の乙に対する行為は詐欺罪を構成する。

【参照条文】      刑法246-1

 

 

刑法

(詐欺)

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

『過失相殺率算定の実務』

日本加除出版

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著者:千葉法曹実務研究会/編
判型:A5判
ページ数:912頁
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1
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コメント
参考判例について。
分類が正確にされていない。
出典が記載されていない。

目次
※()内は収録判例数 

第1章 男女関係(19)
第2章 名誉・プライバシー(18)
第3章 医療事故(73)
第4章 取引行為(284)
第5章 労災事件(156)
第6章 安全配慮義務(労災除く)(23)
第7章 安全配慮義務違反(契約当事者以外)(20)
第8章 特殊交通事故(18)
第9章 動物占有者等の責任(12)
第10章 失火(12)
第11章 営造物責任・土地工作物責任(98)
第12章 学校に関わる不法行為(94)
第13章 スポーツ事故(25)
第14章 消費者被害(35) 
第15章 犯罪被害(161)
第16章 専門家責任(60)


 

建物の区分所有に関する法律31条1項後段にいう「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすとき」の意義

 

 

              駐車場専用使用権確認請求事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷判決/平成8年(オ)第258号

【判決日付】      平成10年10月30日

【判示事項】      1 建物の区分所有に関する法律31条1項後段にいう「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすとき」の意義

             2 区分所有者が専用使用権を有するマンション駐車場の使用料を増額する規約の設定、変更等が専用使用権者の権利に建物の区分所有等に関する法律31条1項後段にいう「特別の影響」を及ぼさない場合

             3 区分所有者が専用使用権を有するマンション駐車場の使用料を増額する集会決議と建物の区分所有等に関する法律31条1項後段の類推適用

             4 マンション駐車場の専用使用権を有する区分所有者が増額された使用料の支払に応じないことを理由としてされた駐車場使用契約の解除の効果が否定された事例

【判決要旨】     1 建物の区分所有等に関する法律31条1項後段にいう「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益と比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が右区分所有者の受忍すべき限度を超えたと認められる場合をいう。

             2 区分所有者が専用使用権を有するマンションの駐車場の使用料を増額する規約の設定、変更等は、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者の権利に建物の区分所有等に関する法律31条1項後段にいう「特別の影響」を及ぼすものではない。

             3 区分所有者が専用使用権を有するマンション駐車場の使用料が、規約の設定、変更等によることなく、規約の定めに基づき、集会決議をもって増額された場合にも、建物の区分所有等に関する法律31条1項後段の規定が類推適用される。

             4 マンション駐車場の専用使用権を有する区分所有者が、使用料を増額する集会決議の効力を争い、管理組合の主張する増額使用料の支払義務の不存在確認を求める訴訟を提起し、既に3回の口頭弁論期日が開かれていたにもかかわらず、管理組合が、専用使用権者に対して増額使用料を支払うよう催告し、その支払に応じないことを理由として駐車場利用契約を解除する旨の意思表示をしたこと、管理組合の主張する使用料の増額が社会通念上相当なものであることが明白であるとはいい難いことなど判示の事情の下においては、管理組合による右駐車場使用契約の解除は、効力を生じない。

【参照条文】      建物の区分所有等に関する法律31-1

             建物の区分所有等に関する法律第1章第2節

             建物の区分所有等に関する法律17

             建物の区分所有等に関する法律18

             建物の区分所有等に関する法律21

             民法541

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集52巻7号1604頁

 

 

建物の区分所有等に関する法律

(規約の設定、変更及び廃止)

第三十一条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

2 前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。

 

(共用部分の変更)

第十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

(共用部分の管理)

第十八条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。

3 前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。

4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。

 

(共用部分に関する規定の準用)

第二十一条 建物の敷地又は共用部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第十七条から第十九条までの規定は、その敷地又は附属施設に準用する。

 

 

 

信用組合の貸出稟議書が民訴法(平成一三年改正前)二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるとはいえない特段の事情があるとされた事例

 

 

文書提出命令に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件

【事件番号】      最高裁判所第2小法廷決定/平成13年(許)第15号

【判決日付】      平成13年12月7日

【判示事項】      信用組合の貸出稟議書が民訴法(平成一三年法律第九六号による改正前のもの)二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるとはいえない特段の事情があるとされた事例

【判決要旨】      信用組合の作成した貸出稟議書の所持者は、預金保険機構から委託を受け、同機構に代わって、破たんした金融機関等からその資産を買い取り、その管理及び処分を行うことを主な業務とする株式会社であり、経営が破たんした信用組合からその営業の全部を譲り受けたことに伴い、貸出稟議書を所持するに至ったものであること、その信用組合は、清算中であって、将来においても、貸付業務等を自ら行うことはないこと、所持者は法律の規定に基づいてその信用組合の貸し付けた債権等の回収に当たっているものであって、当該貸出稟議書の提出を命じられることにより、所持者において自由な意見の表明に支障を来しその自由な意思形成が阻害されるおそれがあるものとは考えられないことという事実関係等の下では、当該貸出菓議書につき、民訴法(平一三法九六号改正前)二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるとはいえない特段の事情がある。

【参照条文】      民事訴訟法(平成13年法96号改正前)220

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集55巻7号1411頁

 

 

民事訴訟法

(文書提出義務)

第二百二十条 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。

一 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。

二 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。

三 文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。

四 前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。

イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書

ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの

ハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書

ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)

ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書