うちらのじだい
Amebaでブログを始めよう!
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>

第56話 ラブホテル

ラブホテルと言われる派手でお城のような建物に、50代くらいのオヤジと香織と私のあまりにも不自然な面子で中に入った。





オヤジは一目を避けるように私たちをさっとホテルに押し込んだ。





中は薄暗く、薄い紫の光の模様が、怪しく足元のカーペットの上に丸く照らし出されていた。




エレベーターの横には、ホテルの部屋番号が書かれた一つ15㎝×15㎝くらいの部屋の様子が写真で映し出されていた。




マッサージ付きのベットや、サウナ付きの部屋。さらに日焼けマシーンが付いている部屋までもが用意されていた。







オヤジ「さぁ、好きな部屋選んでいいんだよ~君達はまだ幼いからぬいぐるみが沢山ある部屋なんてどうだい?ひひひ。」







香織「はぁ?やだよ!!てか、ぬいぐるみなんかで喜ばないから!ゆうなどうする?」






香織に聞かれてみたものの、実際に写真を通して部屋を見るとカラオケするだけにしては余りにも不自然だった。




危険な事が起こりそうな予感がしてならない。




でも…やっぱり10万円欲しい…。




何かされたら大声出せばなんとかなるかもなどと、まだ何も知らない小6の処女の私には、人を疑うにはあまりにもそれまでの過程がなさすぎた。







ゆうな「香織が好きなの決めていいよ。」







香織「え?いいの?じゃ、コレ!!」







香織はピンクに彩られた可愛い花柄の部屋を選ぶと、303号室と書いてあるボタンを勢いよく押した。





押した部屋の画面は暗くなり、エレベーターのドアが開いた。

第55話 夜の世界

香織に麗樺へ誘われた事を話し、入らないかと聞くと前から暴走族に興味があったらしく、二つ返事でOKをしてくれた。



孝太郎にその事を伝えに行くと、まだ曇った顔をしていた。






孝太郎「俺…なんていうか………ごめん………」





無理矢理に麗樺に入らされたと思っている孝太郎は、下を向いて机をじっとみつめながら謝った。






ゆうな「別に良いよ…前から入りたかったし…」





入りたかったんじゃなくて、孝太郎と別れるのが嫌だったからという事が60パーセントくらいあったが、そんな事言えなかった…。






孝太郎「…………ならいいんだけど…………ごめん」






そう小さい声でつぶやくと、どこかにいってしまった。



いつもなら力いっぱい仕切っている孝太郎も、今日はどことなく元気がなかった。



少しおかしく思ったが、気のせいだと思い、香織と夜の集会のために備える事にした。






香織「なんか超楽しみぃ!!」






ゆうな「大人の世界って感じだね!」






まだ見たことのない未知の世界の集会に対して、怖くもあり、ドキドキしてる自分がいた。



喧嘩とかになったらどうしようとか、バイクで走って警察に捕まったらどうしようとか、色々な妄想が頭の中で駆け巡っていた。








私たちは学校が終わると、急いで香織の家に行った。



親には香織の家に泊まると嘘をついた。



香織の親は片親で、お母さんは看護婦をしている。
今日は夜勤なので、夜は誰も家にいない。
と言うことは、外にでても誰にもバレることはない。



約束の時間より少し前に香織と駅の裏に向かい、集会らしき物が開かれてる場所にいった。



夜の駅は、昼間とは違いイルミネーションでキラキラしている。



それは、憧れている大人の世界で自分が小6だと言うことを忘れさせてくれる。



日常の嫌な事でさえ、夜の世界は消してくれる。


アルバやラブボの袋を下げた真っ黒に日焼けをしているまだ幼いギャルや、当時アムラーと呼ばれる銀のメッシュに細い眉でギャルの走りのかっこいいお姉さん、ミーシャ帽と呼ばれる流行りの帽子を被ったお姉さん、GUCCIの靴を履いて派手なスーツ姿のギャル男。



私たちの知らない世界が今まさに目の前にあり、そのかっこいい大人の世界に胸が躍った。



キラキラしすぎて、何もかも許されるような、それでいて危険な夜の世界、一瞬にしてハマってしまった。



沢山の人で溢れてる人混みの中、唯一知っている愛さんを必死に探す。



するとあらゆる大人たちが声をかけてくる。






「君たちまだ若いね…2人で10万でどう?」






独りのスーツを来たはげたオヤジに声をかけられる。






香織「え?10万ってどうしたらくれるの?」






あまりにも若すぎる私たちには、まだ充分な知識がなかった。



その姿はキョロキョロしていて、大人たちの餌食にして下さいと言っているような物だった。






オヤジ「どうしたらって…ほらあそこにホテルあるだろ?あそこに行ってカラオケするだけだよ…」






ゆうな「カラオケするだけで10万?!!」






オヤジ「そうだよ~おじさんこんな良い話しないと思うけどなぁ…早く返事しないとほかの子に10万あげちゃおうかな~」






香織「カラオケ行く行く!!ね?ゆうな」






ゆうな「まだ約束の時間まで30分あるし行こ!」





小6の私たちにとって、10万はあまりにも大金すぎた。



10万という言葉に負けて、怪しいなんて事は1ミリも考えるスペースがなかった。



そして、私たちはラブホの存在すら知らなかった。



見ず知らずのオヤジに尻尾を振ってついて行く事にした。








本当に…何も知らなかっただけだったんだ…。

第54話 麗樺への加入

愛さん「彼氏ははじめんとこの仲間なんだよね?」





愛さんは千円札を自販機に入れるとそう呟いた。





ゆうな「そうみたいですね、私もさっき初めて聞きました。」





珈琲の所のボタンを5回押すと、愛さんはしゃがんだ。





愛さん「うちらのルールっていうのがあるんだけど知らないよね?」





ゆうな「…全然分からないです…」





愛さん「族の女は、同じように族になってもらうんだ。それが、うちのチーム。名前は麗樺(れいか)。小学生のあんたを入れるのは心苦しいんだけど…。だからダチ誘っても特別許可は出す。」




はっきり言って、暴走族なんかあんまり興味はなかった。


けれど、断る理由もない。孝太郎と別れるのも嫌だったし、別にチームに入るくらいなら良いと思った。





ゆうな「…分かりました、1人だと寂しいんで友達誘ってみます。」





愛さん「そうだな…でもこれは決まりなんだ。彼氏が彼氏ならしょうがない事なんだよ。それと麗樺は、一切薬は禁止!それと、男関係にだらしない奴もダメだ、もちろん売りもだめ。なんかあったら私を通す!分かったな?毎週土曜日に、駅の裏のストリートで集会やってるんだ。それは絶対顔を出すように!」





ゆうな「分かりました、次の土曜日は行けるようにします。」





愛さん「おう、はんば無理矢理で悪いな…。なんかあったら守ってやるからな!」





毎週集まりがあるとは考えつかなかった。


親になんて言って出て行けば良いのか考えたが、今日みたいにこっそり出て行けば大丈夫だと思った。


あと、愛さんが色々注意事項を言っていたが、分からない言葉だらけだった。珈琲を3本持つのを手伝い、孝太郎たちの元へ行った。


そこでそれぞれ珈琲を手にし、夜空を見上げながら色々な話をした。


そして愛さんがみんなに、私が麗樺への加入の話を切り出すと、はじめさんがとても喜んでくれた。


今考えれば、麗樺に入れるためにはじめさんが孝太郎の彼女の私を呼び出したんだろうと思う。


ただもの珍しく私を見てみたいと言う訳じゃなかったんだろう。


まあどんな理由にしても、暴走族に入ることは全然嫌じゃなかったのでどう思ってたとしても当時の私には関係なかったんだが…。





でもただ一人、孝太郎の顔が暗くなってしまったのが気になった。





かなり遅くなってしまったので、危ないからと孝太郎がスクーターで送ってくれた。





明日香織を誘ってみることにした。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>