今となっては私が義父と世間話をすることはありません。
でも前回、一緒に住んでいた頃は誰もが距離を置く中、
何故か私と義父だけはとても仲良くしていたのです。

子供は野郎ばっかりの中でこの家で初めて身近に接する初めての女の子だったので
義父にとっては大変嬉しかったようです。
義母には何も口うるさいことを言わせないようにしていたのに
私に何かお小言を言われるのが楽しかったようです。
怒られている間もニヤニヤしていました。

義父とは2人で野球を見に行ったこともあります。
ゴルフをしに行ったこともあります。
義父母と3人でドライブに出掛けることも多々、ありました。

義父と仲良くしているので周りはビックリしていました。
特にオットが。
オットは私だけでもあんな父と仲良くしてくれているのが
とても有難いと言ってくれていました。

しばらくしてオットの転勤が決まり、この家を出て行く事になりました。


義父は口うるさくて子供っぽく、自己中心的です。
姉妹に囲まれて育ち、男は義父、一人。
そのせいかかなり女っぽく、ヒステリックです。
細かい作業が苦手でイラッとすると癇癪を起こし、壊したりします。
すぐ早合点して悪口を言ったり、誰かの行動を目ざとく見つけたりします。
機嫌が良いときはかなりおしゃべりをかましますが
ヘソを曲げたら端から見て面白い程、ブーたれています。

悪い言葉でいえば“ケツの穴が小さい”。

人をイラッとさせるようなことを
見事なまでに良いタイミングで口にします。
ちなみに揉め事は家族内だけではありません。

あの祖母にしてこの息子あり。まさに。

じゃあ子供であるオットやその兄たちはどうかと言えば。
かなり父の姿が不快に映っていたのか知りませんが
幸い皆、とても思慮深く温和な性格に育ちました。
超反面教師になっていると思います。

義父は在職中、生真面目で無口だった、とは義母の話。
どうやら嘱託中、徐々に何かと変わってきたようです。
第三者と一緒にいると妙にハイテンションになります。
町内の集まり、法事、来客が来た時はかなり饒舌で社交的です。
端から見て外面が良いように見受けられます。

でも家では根本的には変わらないようです。
昔からたとえ非はあっても自分から謝ったり、話し合いで解決したりしません。
自分の考えが全て正しく、人の話を聞く耳を持たず、絶対に曲げません。
気に入らないことがあればお決まりの『出て行け!』です。
家族は誰でも一度は言われたことがあります。
この私も既に出て行け会員になってしまいました。

いつまでもネチネチと口撃してきたりします。
そのためオットもなるべく父とは関わらないようにしています。
『出て行け!』をこちらがまともに受けてしまえば同レベルです。
本心をぶつけるだけ、めんどくさい、あほらしい。
ある意味、“負けるが勝ち”な人生の高等テクニックかもしれません。

オットの兄たちもめったに実家へは顔を見せません。
盆と正月には義母のはからいで集まったりするのですが
皆の会話が見事なまでに弾まないこと、弾まないこと。
でも義父一人だけは何となく楽しんでいるような感じがします。KY。

さて今となっては憎っっったらしいだけの義父の話をします。


義父はサラリーマン時代、毎日同じ時間に電車に乗り、
同じ時間働いて、同じ時間に帰って来て
風呂に入り、夕食中にはNHKのニュースを見て、
野球中継が終わった後は早々に寝る、という生活を定年まで続けたようです。

定年後は嘱託でさらに数年、毎日同じ時間だけ働いてました。
私がまだ一度目の同居をしていた時は
嘱託中で平日はほとんど居なかったのですが、
私たちの転勤中に年金生活に突入したようです。

趣味も無く、外で遊ぶ事もせず、楽しみは家での晩酌のみで
本当に基本中の基本といった感じでした。
父の生活を見ていての反動なのか、次兄とオットは父と180度違う職業に就きました。
オットは今でも「親父は何が楽しくて今までやってきたんだろう。」とよく言います。
併せて「まぁ、ある意味それを続けきった事は尊敬するけど。」とも言います。

当然、義父は頑固者です。
年齢的にもそういう世代なのかもしれません。


オットに愚痴を言う回数が徐々に増えてきました。
私も言わないでおこうとは思っています。
でも何となく気分がふさぎ込むようになってきたのです。
今日は何も無かった?と聞かれて「何も無いよ♪」と笑顔で言えません。
家事は日常です。
明日もあります。明後日もあります。ずっと続きます。

するとオットはひと言。
「うちの一家はなぁ~、やっぱダメやで。」

自分の親族の悪口を聞かされるのは良い気がしないもんだと思いますが、
オットは実の親とはいえ、どこか一歩、線を引いているというか
特に両親に対しては冷ややかでした。

もう無理して台所に立たんでもいいよ。
放っておいたらご飯でも片付けでもしてくれるんやし。
ええやんか、一人子供が増えたと思ってもらったら。

察しの通り、母はまさにずぼら体質やし
おまけに暖簾に腕押しみたいな性格やし、
何せ、全く気が利かん人やから。

そう言ってくれる事が救いでした。

「まぁ、あんな父と暮らしてたらそうせなやっとれんわ。」


ちょっと手を抜こう。
自分が何もかもキレイにしてやろうと躍起になるからだ。

私は洗い物を義母がするように何となく促す態度を取るようになりました。
もうこの頃になると私は片付けることが非常に億劫になっていたのです。
義母は快く「洗っておくからゆっくりしぃ。」と言ってくれます。
もちろん洗ってくれてはいます。
でもやっぱりめんどくさいのでしょう。
基本、何でも義母は水洗いです。
いつもゆすいだだけのヌルヌルのお皿が乱雑に乾燥機に入っていました。

夜中に台所へ飲み物を取りに行くと
流しに夕食の荒い物がそのままで放っておかれていることもあり、
翌日、流しにそれらが置きっぱなしで義母が朝食を作っていました。

誰が洗うんだ、それーー?

もう片付けをするのはイヤだーーー。

歯ぶらしは食器乾燥機から取り除かれはしましたが
台所が綺麗になったワケではありません。
義母が台所を使う度に何かと散らかっていきます。
そしてワックスをかけたように油で鈍く光っていきます。

私はその都度、拭いては洗い、拭いては洗い、片付けていく毎日でした。
私が料理をしない時もあるので、最初は楽ですがあとが実にメンドくさい。
段々とそのいたちごっこに疲れを感じるようになりました。
さらに義母の行動一つ一つが気になるのです。
あ~またあんな事して。あ~そんな事したら手間やん!

義母は私が洗い物の仕上げに拭きあげたシンクを平気で汚します。
拭いたばかりのシンクに残り物をまとめた菜箸やフライ返しを直接、ポンと置くのです。
もちろんそこには汁気やらがこぼれます。
でもあとでそれらを片付ける事もしません。
段々、うんざりするようになってきました。
私が片付けた後、一切、台所を触るなというワケではありません。
何か使ったらちゃんと片付けて欲しいのに。

片付けたハズの台所がしばらくして戻ると
また普通に散らかっていることも多々、ありました。
部屋に戻るなり、泣けてきました。

何故、義母は気付いてくれないんだろうか。


私たち夫婦はいつもコミュニケーションを欠かさないようにしています。
悩みは一人で抱え込まず、その日の楽しかった出来事など何でも話し合っています。
私は迷わずオットに相談しました。

オットが言うには。

うちの家は昔、離れがあってその屋外に洗面台があった。
冬場は寒くて仕方がなかったから家族は皆、台所で顔を洗っていた。
その名残りで母は台所で済ませてしまうのかもしれない。

でも今はちゃんとした洗面所が作ってあるんだし、
それをメンドくさいから、と言ってしまうのは横着だ。

母は言わないと全く気付かない人なので、気になるなら言った方が良い。

言っても何も悪く思わない人だから気遣わなくてもいい。
もし言いにくいのならボクから言ってもいい。

私も小さい頃、団地住まいだった時は台所で洗面をしていた事があります。
でも今となっては正直、気持ち悪い。
歯ぶらしがひっついていた菜箸で料理なんか出来まっしぇ~ん。

私は思い切って言いました。
「歯磨きは洗面所でして欲しい。」と。

すると義母はオットの言ったように
「そっか、気になったのなら止めるわ。ゴメンね。」と笑顔で謝ってきました。
それ以来、私たちが転勤で出て行くまでは
洗面用具を台所で見かけたことはありませんでした。


これは前回、同居していた頃の話です。


私はある日、気付きました。
いつものように洗い物をしていると食器乾燥機にいつも歯ぶらしが1本入っていることに。
菜箸やスプーンが入っている中に混じって同じように刺さっていました。
しばらくはそのまま放っておきました。
しかしいつまで経ってもそれは取り除かれることはありませんでした。

まさかなぁ。
でももしかして?
だって食器用洗剤と並んで歯磨き粉が並んでいるし‥‥。

ある日、ついに私は出くわしてしまいました。
義母が台所に立って歯磨きをしているところに。
そしてささっと洗った後、普通に乾燥機の中にさくっと入れました。

私は思わず「お義母さん、ここで顔を洗っているの?」と聞きました。
すると義母はちょっとためらった様子で
「あ、見つかってもうた?だって洗面所に行くの面倒やし。」


何故に? 何故に?


私は理解出来ませんでした。
洗面所は同じフロアにあります。
別の階にもあります。

メンドくさい?
自分達の寝室の前に洗面所があるのに。
義父はそこでちゃんと洗顔をしているのに。


母親が料理スタイルの影響を与える事が多いと思いますが
私の母はかなり料理上手です。
急な来客にも在り物でささっと酒の肴なぞ数品作っちゃうような人です。
お酒も好きなので色々と用意されています。
そして数え切れないほどのおかずを作りながらほとんど台所を汚さず、
さらに皆の食べ始めには全ての調理器具の片付けが完了されています。

母の作る料理は薄味で、素材の味が非常にうまく引き出されていて
とても美味しいです。
友達や近所の評判も良く、差入れをよく要求されるようです。
私はそんな母の元で育ったのですが、哀しいかな
独身時代は全く料理もその片付けもしたことがありませんでした。
ぼさっとしてる間に何もかも済んでしまってるわけですから
見事な上げ膳根性が育ってしまったのです。

でも母の姿を意識せずとも端々で何となく見ていたのでしょうか。
結婚してから全く料理をしなかったハズの私が
すぐ人並には出来るようになりました。
なるべく最小限の調理器具で油汚れが付かないよう
まとめられるものはまとめて要領よく仕上げるようにしています。
そして終わったらさっさと片付けます。
あ~、我ながら早い。

なのに義母が使った器具は水洗い出来る物も油汚れ物も一緒くたにされているので
洗剤を使って洗わないと何もかもがヌルヌルです。
時間と洗剤の浪費とはまさにこれいかに、です。
私が日々、食事の片付けをしていて溜まるストレスはまさにここでした。