映画「国宝」歌舞伎役者の激レア人生。。
先日見てきたのですが、
これは久しぶりに、本気で
骨のある映画を見ることができたと
思います。
上映時間も３時間はあったかな、
かなり長いです。
でもさして長さを感じないし、
その長さがあるからこそ、
しっかり丁寧に主人公の激レアな人生を
描き切れているのだと思います。
また、歌舞伎の演技が本格的で、
演目でいうと
✅連獅子
✅二人藤娘
✅道成寺
✅曽根崎心中
を、主演の吉沢亮さん、
横浜流星さんが
映画の中で演じていて、
それがまた素晴らしく、
リアリティ溢れる
名演だと思います。
それは、
劇場で見る本来の歌舞伎では
見ることのできない、
映画としてのカメラ割りに
よるのかもしれませんが、
本物さながらのド迫力で
見るものを釘付けにします。
この映画の為に努力し心血を注ぎ、
役者人生のすべてをかけた渾身の演技を
見せてもらったといっても、
決して大げさではないと思います。
本編のストーリーを
ネットより転載します。
【国宝】ストーリー
任侠の一門に生まれた喜久雄（吉沢亮）は
15歳の時に抗争で父（長瀬正敏）を亡くし、
天涯孤独となってしまう。
この世ならざる美しい顔を持つ喜久雄の
天性の才能を見抜いた上方歌舞伎の
名門の当主・花井半二郎（渡辺謙）は
彼を引き取り、
喜久雄は思いがけず歌舞伎の世界へ
飛び込むことに。
喜久雄は生まれながらにして
将来を約束された
半二郎の跡取り息子・俊介（横浜流星）と
兄弟のように育てられ、
親友として、ライバルとして
互いに高めあい、芸に青春を
捧げていく。
そんなある日、
事故で入院した半二郎が自身の代役に
俊介ではなく喜久雄を指名したことから、
生い立ちも才能も異なる2人の運命は
大きく揺らいでいく。
吉沢亮 迫真の演技
渡辺謙演ずる師匠半次郎が、
喜久雄に熾烈な特訓を施すシーンが
いくつかあります。
その中で、
曽根崎心中の稽古では、
「それでこれから死んでいく人間の
気持ちを表してるつもりか（恕）！」
と叱責された後の喜久雄の演技が、
本当に曽根崎心中のはつが乗り移ったかの
ようでした。
こういうシーン、
ものすごく演技力がいるんだろうなと
思います。
素晴らしく真に迫る演技に
吸い込まれてしまう映画ですが、
だからこそなのか、
登場人物の内面への違和感も
感じました。
高畑充希がいつの間に？
郷里で１０代の頃から喜久雄にゾッコンの
高畑充希演じる春江、背中に喜久雄と同様
彫り物を入れるほどの深い愛情を
喜久雄に抱いて大阪にも着いてきたはずなのに、
いつの間にか横浜流星の俊介に
乗り換えていたとは。。。
俊介には確かに喜久雄にはない
血統の魅力がありますが、
春江の内面の変化を表すシーンや
セリフがなかったと思います。
芸の悪魔と取引をしたとも
形容できる、
喜久雄からすれば、
春江の心変わりなどは
「あ、そうなんだ」
くらいのことなのかもしれず、
喜久雄が狼狽するようなシーンも
なかったですね。
ココ、ちょっと分かりにくかった
気がします。
何故、あえて喜久雄を代役に指名？
半次郎が大怪我を負い、
芝居に代役を立てざるを
得なくなった時、
半次郎は息子の俊介ではなく、
喜久雄を指名します。
これについては普通に推測すると、
自分の跡を継ぐべき息子、俊介の芸を
半次郎はまだ認めておらず、
自分の代役を任せられるのは
喜久雄と判断せざるを得なかった、
そして、
息子にはこの劇薬で
更に発奮して欲しかった、
ということだと思うのです。
それか半次郎は、
そもそも血統主義には迎合しない、
役者は芸によってのみ評価されるべきという
強い信念を持つ
実力原理主義者だったのか。
しかし、歌舞伎の世界では
血統がとても重視されるのは
周知の事実、一般常識、
コモンセンスであり、
そんな大原則を曲げてまで
喜久雄を抜擢した半次郎の
強い信念の源泉や背景が、
よくわかりませんでした。
説明的シーンやセリフは
なかったと思います。
妻の寺島しのぶが大反対するのも当然です。
興業会社の御曹司三浦貴大も当初より
歌舞伎の世界では血統がなければ
ポイ捨てされることが常であることを
喜久雄に話していました。
結局、これをきっかけに
俊介はショックを受けて失踪してしまうし、
それによって半次郎の名跡も
喜久雄に襲名させることになります。
しかも謙さん、忌の際にも
「俊坊、俊坊。。。」と、
いまだに行方のわからない息子の
名前を何度も口にします。
ならばなんで？？定石通り
俊介を後継とする道を
何としても作っていこうと
しなかったのか？
死の直前まで
俊介の名を呼ぶ半次郎をみた
喜久雄のショックたるや、
相当なものだったと思います。
喜久雄のキャラは重層で複雑
俊介のキャラや心情は
明確でわかりやすいと思いました。
その一方、喜久雄のキャラは
とても複雑で理解しにくいと思いました。
そこに凄みがあるわけです。
勿論、基本は、
とにかく芸にすべてをかけていて、
芸の為なら悪魔との取引も
できるという男です。
物凄くその点は明確なんです。
一方で、何年も主役をとれない
時期が続いても、
不平を言わず、淡々と芸に取り組み続ける
口数の少ない臥薪嘗胆なキャラや、
春江が俊介と一緒になっても
とても淡々としているキャラです。
野心を口にしたりなどは絶対なく、
とてもクールです。
そうかと思えば、三浦貴大や、
歌舞伎を離れて
地方のスーパー銭湯などの仕事で
因縁をつけてくる客に
突如激高したり、
そうかと思えば、
自分の歌舞伎役者としての地位を
確保するため、名門・富士見屋の当主、
吾妻千五郎（中村鴈治郎）の
娘の彰子（森七菜）が
自分に恋心を抱いていることを
利用して、ものにしてしまうなども
平気な顔でやれてしまうし、
だけど、役者生命を脅かす程の
糖尿病で苦しむ俊介に対して、
様々で複雑な感情をもちながらも、
一貫としたとても深い友情・愛情を
捨てられない、
人としての情もしっかり持ち続けて
いるわけです。
このように相当複雑な役どころなので、
吉沢亮だからこそ演じられたとも言えますが、
もう少し映画的にわかりやすく、
心情を吐露するシーンが
あってもよかったのではと
個人的には思います。
それにしても、喜久雄と俊介が
最後に共演した
曽根崎心中での演技はとても素晴らしく
感動ものでした。
映画の中で曽根崎心中の徳兵衛と
お初を演じながら、同時に喜久雄と俊介を
演じる二人の演技に、
ここまで感動させられるとは
思いませんでした。
エンディング・テーマはKing Gnu井口理
エンディング・テーマは、
井口理さんの歌う、
「Luminance」 です。
この曲は音楽監督
原摩利彦さんの作品ですが、
とても宇宙の広がりを感じるような
曲でした。
ルミナンス、輝き、というのは
暗い宇宙の中での
輝きを表しているのかな。
それは、吉沢亮、横浜流星の
輝きのことなのか。
とにかく聞いたことのないような
ジャンルの音楽で、
そこに更に聞いたことのないような
井口さんの ソプラノボイスが
ものすごく存在感を発揮
していると思います。
まるで、そのソプラノボイスは
最高の楽器として
音楽と完全に融合しているかのような
印象です。
かつてビージーズのバリー・ギブが
曲のすべてを
ファルセットで歌い上げていて、
「なんだ、この歌い方は？」
と思ったものですが、
井口さんのこのボーカルを聞いた時は、
絶対女性ボーカルだと思ってましたし、
歌唱方法が、息を吸うところでも意図して
表現しているようで、
とても独特だと感じました。
原摩利彦さんの作品の説明には、
フィールドレコーディング、
エレクトロニカ、アンビエント、ミニマル、
ビートレスなバラード、
などの言葉が使われていますが、
正直、
「ちょっと何言ってるかわからない」(笑)
でも、宇宙的な浮遊感を感じるし、
その浮遊感って、
個には強い意志があれども、
宇宙的空間ではただ光を放ちながら
漂い存在しているだけの
ようなものであることを、
表現しているのかな。
来年の日本アカデミー賞総なめ間違いなし
あと、気に入ったシーンとしては、
舞妓の藤駒（見上愛）と喜久雄との間に
生まれた娘と、ラスト近くで喜久雄が
会うシーン、
かなり粗末な終末期ホスピスで
畳の上に寝ている人間国宝の田中泯と
喜久雄の対面シーン
かな。
冒頭の極道永瀬正敏の最後のシーンも
印象深いし、
案外、三浦貴大の役も、
歌舞伎という独特の世界の
周辺にいる世俗的な人物として、
ピリリと効いた役回りなんじゃないかな。
喜久雄の為に一役買ってくれてます。
一体、来年の日本アカデミー賞、
何部門獲得するのか(笑)。。
長い映画ですが、是非もう１回みて、
いろいろ再確認したくなるような
作品でもありますね。
今日もこんなに最後まで
読んでいただいて
THANK YOU
ありがとうございました。
