かつてまとめさせていただきました内容と重なってしまいますが、まず最初に、娘と低血糖とカルニチン欠乏についての関連を簡単に説明させて下さい。




娘に起立性調節障害(OD)の症状がはっきり出てきましたのは、小学校5年生の時でした。

以後ずっとODに悩まされてきましたが、ODだと思っていた症状の中に実は低血糖によるものが混ざっているのでは? と初めて気付いたのは、今から5年ほど前の2017年のことでした。
(*これらについては主に右差しこちらの記事で触れさせていただいております)

 

 

それから低血糖についていろいろ調べ、娘の場合、その主因がカルニチン欠乏であるらしいことが、2020年の12月に判明したのでした。

(*そのことつきましては主に右差しこちらの記事で触れさせていただいております)

 

 

それをきっかけに、娘はカルニチン製剤を毎日服用するようになり、私は私で娘のカルニチン欠乏の原因をいろいろ調べるようになりました。


カルニチン欠乏が生じる原因は研究中のものも含めますとさまざまあり、現時点ではどれにあてはまるか不明です。

ただカルニチンを服用するようになって以来、私の知る限り娘に低血糖症状は2回しか起こっていないようです。
またその時以外OD症状も起こっていないとのことですので、やはり娘のOD様症状は低血糖の症状だったのかもしれません。
(*その2回ともカルニチンは服用してたものの、24時間近くほぼ絶食だったようです。右差しこちらこちらで書かせていただきました。)

 

 

(*ちなみに娘は現在は病院から処方されるL-カルニチン製剤ではなく、サプリメントとして販売されているアセチルカルニチン製剤を服用しています。
理由は、
①かかりつけの病院でL-カルニチンのジェネリックが処方できなくなったこと と、

②アセチルカルニチンは(L-)カルニチンより血液脳関門(BBB)を通過しやすく、

 脳内へと効率よく移行できるため

です。)
(*右差しこちらでちょこっと触れさせていただいております)

 

 

 

 

このカルニチン欠乏ですが、調べているうちに、実は以前から発達障害との関係が指摘されていることを知りました。

 


たとえばASDの5~80%で、総カルニチン値と遊離カルニチン値の大幅な低下(ほぼ50%の減少)が認められるそうです。

カルニチンは直接的には脂肪酸代謝に関係していますが、カルニチンが欠乏すると脂肪酸だけでなく三大栄養素(炭水化物(ブドウ糖)、たんぱく質(アミノ酸)、脂肪(脂肪酸))からエネルギーを取り出す経路のすべてが障害されます。

またミトコンドリアの機能障害をも引き起こすため、エネルギー生成以外の重要な機能もすべて障害されてしまいます。
(*主には右差しこちらで触れさせていただいております)

 

ただし、このミトコンドリアの潜在的な機能異常がASDの発症や病因に関係しているのか、それともASDで認められる現象の1つなのかは、まだ明らかになっていないようです。
(*主には右差しこちらで触れさせていただいております)

 

 

 

私たちの脳脳みそ は、 全体重のたかが2%の重さしかないというのに、1日に体が必要とする全エネルギーの18%をも消費します。
しかも眠っている間ですら、エネルギーを消費し続けます。

脳の場合、通常時はエネルギー源の100%をブドウ糖に依存しています。
しかし絶食時などには、エネルギー源の60%をケトン体でまかなうことにより、ブドウ糖の不足を補います。
(*主には右差しこちらで触れさせていただいております)

 

ケトン体はミトコンドリア内における脂肪酸代謝によって生成されます。

つまりカルニチンが欠乏すると、ブドウ糖もケトン体も不足してしまうため、脳細胞は特に重大なダメージを受けてしまうことになります。

 

 

 

脂肪酸代謝を研究しておられる先生から、

「カルニチン欠乏を含めた先天代謝異常症と発達障害はたしかに合併することがあると言われていますが、個人的には、無症状の低血糖などによる微小な脳損傷が影響した2次的な併存症だと考えています」

というご意見をいただきましたことは、右差しこちらの記事で触れさせていただきました。

 

 

 

どうやら、低血糖が (しかも無症状の潜在性低血糖ですらも) 脳細胞に微少なダメージを与え、それによって発達障害が引き起こされ得るという認識が、発達障害の専門家でない方たちの間にも存在するという事実に、私はとても驚きました。

 

 

そこで今回は、低血糖と発達障害の関係について調べてみることにしました。
(*長くなってしまいましたが、なんとここまでが前置きで・・・申し訳ありません 驚きあせる

 

 

 

その前に、まずは脳の発達と、それを理解するための脳の構造について復習しておきたいと思います。
(*2020/3/22の記事でも少し詳しくまとめさせていただいています)

 

 



■脳の構造(発生の視点から)
 

・脳は大きく 『大脳』 と 『小脳』 と 『脳幹』 に分けられる。
・脳の中心部にあるのが 『脳幹』 で(リンゴでいうと芯の部分)、それを包み込んで

 いるのが『大脳』で(リンゴでいうと果肉の部分)、大脳の下にくっついているのが

 『小脳』。
・「大脳」の中心部にあるのが『間脳』で、その「間脳」を取り囲むように『大脳基底

 核』が、さらにそれを取り囲むように 『大脳辺縁系』 が存在している。(おおざっ

 ぱに言うと大脳の中心部(深部)から外側(表面)に向かって、間脳→大脳基底

 核→大脳辺縁系→大脳白質・皮質 と層状構造になっているイメージ)  

 (*右差しこちらの記事でも触れさせていただいています)

・構造と機能の面から、「脳幹」と「間脳」と「大脳辺縁系」 をあわせて『古い脳』、

 「大脳辺縁系と間脳を除いた大脳」と「小脳」をあわせて『新しい脳』と呼ぶ。
 (*「古い」「新しい」は、長い生物の歴史の中で、脳が中心部分から外側に

   向かって順に進化してきたことを表す呼び方だそうです)

 

(この画像はこちらから引用の上、一部改変させていただきました)

 

 

・『古い脳』は爬虫類から哺乳類まで共通して持っている。一方で『新しい脳』は

 爬虫類ではわずかしかなく、哺乳類ではネズミ→ウサギ→サル→ヒトと、進化に

  比例して発達している。
・『古い脳』は生きていくために最低限必要な機能を担っている。たとえば姿勢の

 維持や睡眠、食欲、呼吸、性欲、自律神経の働きなど。敵に対する恐怖や怒り・

 不安などの情動もこの部分にある。
・『新しい脳』はより進化した機能を担っている。たとえば記憶や思考、微細運動、

  知覚、言語など。人間が人間らしくあるための高度できめ細かな心や情感も

  ここに存在。

 

 

 

 

■脳はどのようにして作られていくのか

 

・ヒトの脳は、受精卵となった日から数えて18日目頃からすでに形作られはじめ、

 形態的にはほぼ完成した状態で生まれてくる。
 (*ちなみに心臓の形がはっきりしてくるのは胎生26日目以降という点にも、

  脳という臓器がいかに重要かが表れているそうですあんぐりあせる
・脳にはたくさんの神経細胞(=ニューロン)(*1つの脳に150~200億個存在する

 とされる)があり、これらの細胞同士が神経突起を出し合って互いにつながる(=

 シナプスを形成する)ことで機能が発達していくが、生まれてきた時はこのつなが

 りはまだほとんどないと考えられている。
 (*右差しシナプスについての説明はこちらで少しさせていただいています)

・通常、生後4ヶ月目で夜は6~8時間眠るようになり、首も据わってくる。7~8ヶ月

 頃にはおすわりやハイハイができるようになり、1才~1才半頃には一人歩きが

 可能となる。これらはすべて『古い脳』の成熟によるもので、生後1年から1年半

 かけて少しずつ機能を獲得し作られていく。
 (*そういえば睡眠中枢も覚醒中枢も「間脳」の中の視床下部などにあります

  ことは右差しこちらの記事で触れさせていただいております)
・一方、通常は1才頃から単語を喋ることができるようになり、2才では二語文を

 話し、3才では言語をほぼ自由に操ることができるようになる。また、絵を描い

 たりハサミを使うなど、複雑なことを理解できるようにもなる。これらは『新しい

 脳』の働きによるもので、ヒトは1才過ぎから『新しい脳』の機能を獲得し始める。
・一般に脳の神経細胞(=ニューロン)の成熟は、0~2、3才の間に急速に進むと

 される。ピークは男子で11才、女子で12才半と言われており、10代半ば~20代

 前半にかけて完成されると考えられている。
・大脳の中では、ものを見る機能を司っている『後頭葉』が生まれてすぐに発達

 してくる。次いで音を聞く能力に関わる『側頭葉』が発達し、体の感覚を認識し

 たり複雑な動作に関わる『頭頂葉』が、最後にコミュニケーションや社会性・

 理性を司る『前頭葉』が発達してくるとされる。
 (*つまり大脳は後方から前方へと成熟が進んでいくそうです)
 (*前頭葉とか後頭葉につきましては右差しこちらをご参照下さい)

・ちなみに『後頭葉』は0~4才頃に、『頭頂葉』は3~5才にかけて、『前頭葉』は

 10代~思春期にかけて発達のピークを迎えると考えられている。
・人間の脳は3歳までに80%、6歳までに90%、12歳までに100%完成するという

 説もあるが、脳の機能がほぼ完成するのは10代半ば~22才頃という説が有力。
・なお前頭葉の中にあり、脳の最高中枢として知性や思考や創造性を司るとされる

 『前頭前野』だけは20才をすぎてもまだ未成熟で、25才頃まで成長を続けると考

 えられている。

 (*「前頭前野」についてはこちらで触れさせていただいています)

 ↓

 

 

 

 

■ADHDの病態に関与しているのは脳のどの部分か

過去の記事で何度かサラッと触れさせていただきましたが、ADHDの症状を引き起こす病態仮説として、2010年頃からは "triple pathway model" が提唱されているそうです。


これはADHDの病態が以下の3つの機能障害で説明されるという仮説です。

 ⓐ 実行機能系の機能障害
 ⓑ 報酬系の機能障害
 ⓒ 時間管理の機能障害




参考までにこれらを1つずつ簡単に説明しておきますと・・・

ⓐ 実行機能系の機能障害
前頭前野の機能不全といわれている。
・ドパミンやノルアドレナリンの調節が不十分で、作業記憶(ワーキングメモリ)や

 認知機能が障害されているとされる。
・その結果、目的達成のために必要な計画(プランニング)、順序立て(衝動的な

 行動を抑制)、シフティング(課題を柔軟に切り替える)、まとめる、などの実行

 機能に支障が生じ、目的が達成できず、課題が遂行できず、注意が他にそれ

 たり衝動的な行動になったりする。

 (*前頭前野の働きについても右差しこちらで触れさせていただいています)

 

 

ⓑ 報酬系の機能障害

腹側線条体の機能不全といわれる。
 (※腹側線条体は間脳と大脳辺縁系の間で、間脳を取り囲むようにして存在する

   大脳基底核の一部です。つまり 『古い脳』 ということになります)
・将来的に獲得できる報酬よりも目先の報酬を優先させてしまうため、待つことが

 苦手となり、衝動的な行動につながる。
 (*腹側線条体とその機能につきましては右差しこちら右差しこちらで触れさせていた

   だいています)

 

 ※余談ですが、そういえばADHDの先延ばし特性も嘘つき特性もゲーム依存にな

   りやすさも、いずれも腹側線条体が関係していたことを思い出しました不安魂

 

   *先延ばしについては主にこちらあたり
   *嘘つきに関しましては主にこのあたり

   *ゲーム依存に関しましてはこのあたり の記事をご参照下さいお願い

 

 

ⓒ 時間管理の機能障害

小脳の機能不全といわれる。
・時間感覚が乏しく、抑制や言動のタイミングのとれなさ、時間整理ができず順序

 立てができないことに関係しているとされる。
昼夜のリズム障害もこれが原因である可能性が示唆されている。
・ADHD 群は、定型発達群に比べ小児期では小脳、尾状核ともに容積が有意に

 小さいが、尾状核は年齢とともにその差が消失していくのに対し、小脳容積の差

 はむしろ開いていく。

 (*「尾状核」は「大脳基底核」にあり、「腹側線条体」の一部を構成しています。

  つまり「尾状核」はⓑの報酬系に関係している部位であり、上の一文は「ⓑは

  成長にともない改善していくが、ⓒはむしろ悪化していく」という意味にも読み

  取ることができます絶望絶望絶望  尾状核については右差しこちらをご参照下さい)

 


これらⓐ~ⓒの障害(による症状)は、患者によって出方や程度が異なります。
たとえば、これらの神経心理学的異常がまったくない人もいれば、実行機能の障害

のみ、あるいは報酬系と小脳機能の障害のみで実行機能は問題がない、など

個人差が大きいことが、ADHDの症状のバリエーションの豊富さを生み出している

理由といえるそうです。
(*ノロウイルスによる感染性腸炎に罹患した際、「この病気って39度近い熱が出て

何度も嘔吐と下痢をして苦しむ人もいれば、微熱と吐き気だけだったり、熱も吐き気

なくて軽い下痢を1回だけして終わる人もいて、人それぞれなんです」と言われた

ことを思い出しました。←ぜんぜん違うたとえで申し訳ありません魂が抜ける

脳機能画像の結果を見ると、実行機能や報酬系に比べ、小脳機能の障害は成長に

伴ってむしろ顕著になっている可能性があり、小児期と成人期の病態も必ずしも

同一とは言えないと考えられているそうです。

また、ドパミンは実行機能回路と報酬系回路に、ノルアドレナリンは実行機能回路と

小脳機能に関与している可能性が高いと考えられており、薬剤への反応が患者に

よって、また小児と成人では異なるのも、そのあたりに原因があると考えられている

そうです。

 
 

 

 

なるほど~知らんぷり



そして、赤ちゃんって生後4ヶ月で夜6~8時間眠るようになるのだとしたら、明らかに娘は当時から普通ではなかったことや、その原因が小脳の機能異常である可能性があることをあらためて知って、今とても衝撃を受けておりますことはさておき・・・不安不安不安

 

 

以上のことを頭に入れて、娘の発達障害と低血糖の関係についてさらに考えていきたいと思います。