*8割方書いたところで何か変な操作をして記事が全部消えてしまい・・・立ち直るのに1日かかってしまいましたえーん



今回は8/18の記事からの続きで、

「子どもの神経発達症に伴う入眠困難の改善に対して初めて発売された薬」

を知るための前準備として、睡眠と覚醒のしくみについてまとめておきたいと思います。


睡眠のしくみに関しましては、娘が一番最初にいただいた睡眠薬の『ロゼレム』につきまして2/12に調べました際にも、一度簡単にまとめさせていただきました。
多少の参考にはなるかと思いますので、よろしければ基礎知識としてあわせてお読み下さいね。


その記事はこちらになります↓↓
 

 

 

 

 
 
■睡眠-覚醒パターンを決定する2大因子

通常、私たちは毎日ほぼ同じ時刻に眠くなり、大人であれば7-8時間ほどで自然に目覚めます。

このようなヒトの睡眠(眠気)は、大きく2つの因子で形成されているそうです。


1つめの因子は「睡眠欲求」です。

覚醒している時間が長くなるほど脳は疲労し、身体活動が高いほど体は疲労していきます。
この、覚醒中の疲労蓄積によって生じる眠気を「睡眠欲求」といいます。

睡眠欲求」はいったん眠りに入ると急速に減少し、必要な時間だけたっぷりと眠ると消失して、私たちは覚醒します。

また、いったいどのくらい眠れば疲労や睡眠不足が回復するのか、つまり休養のために必要な睡眠時間がどのくらいなのかは、『睡眠恒常性』と呼ばれるシステムが決定しています。


2つめの因子は「覚醒力」です。

覚醒力」は一日の決まった時刻に増大し、「睡眠欲求」に打ち勝って私たちを目覚めさせます。
そしていつもの就床時刻の数時間前(多くは2-3,4時間前)に最も強くなり(*一般に夕食後の団らんの頃で、『睡眠(または入眠)禁止ゾーン』と呼ばれるそうですガーン、就床時刻の1-2時間前には急速に低下していきます。

なお、この「覚醒力」の指令を発信しているのは『体内時計』です。


このように睡眠欲求覚醒力という2つの要素のバランスによって、私たちは毎日ほぼ同じ時刻に眠くなり、一定時間後に自然に目が覚めるという生体リズムが形成されています。
 
 

(この画像はこちらから引用させていただきました(厚労省のHP))
 
 
ちなみにヒトの睡眠パターンは遺伝的な要因も非常に強く、個人差が大きい上に加齢などにより変化していくことが分かっているそうです。
 
 

■睡眠中枢と覚醒中枢
 
脳の中の"間脳"にある視床下部が睡眠と覚醒を司っていることは、古くから知られていました。
そして今では、視床下部の前部に睡眠中枢が、後部に覚醒中枢が存在することが明らかとなっています。

下図に、睡眠系神経核群で、覚醒系神経核群黄土色で示してあります。

また、( )内はそれぞれの神経核群から分泌される神経伝達物質の名称で、各色の矢印線はそれらが流れていく(=投影している)主な方向と場所を表しています。
GABAオレキシンは聞いたことがある!・・・と思いましたら、睡眠薬と関係の深い物質ですね! 右差しこれらにつきましては上記2/12の記事で触れさせていただいています。
 
(この画像はこちらから引用の上改変させていただきました)
 
 
 
 
睡眠中枢として中心的な役割を果たしているのは、視床下部前部にある腹外側視索前野GABA作動性ニューロン(=GABAを作り出すニューロン)です。

この腹外側視索前野の神経細胞は、睡眠に入る少し前から睡眠中にのみ活動します。
そして他の神経細胞の働きを抑える作用を持つ神経伝達物質であるGABAを、脳内だけでなく全身にも送り出すことで睡眠の開始と維持を担っています


一方、覚醒中枢としては、ヒスタミン神経系・ノルアドレナリン神経系・ドーパミン神経系・セロトニン神経系などの幾種類もの覚醒系神経が関与しています。

このうち最も強い覚醒物質とされているヒスタミンは、視床下部後部にある結節乳頭体核ヒスタミン作動性ニューロンにおいて作り出され、脳内のほとんどの領域へと運ばれて行きます。

(*超余談ですが、総合感冒薬に入っている鼻水止めや、花粉症や鼻炎や蕁麻疹などのアレルギーを抑える薬は「抗ヒスタミン剤」という名称で呼ばれています。これらは脳内にも届き、覚醒物質であるヒスタミンの作用をブロックしてしまうので(←本物のヒスタミンと受容体で競合して)、結果的にヒスタミンによる覚醒刺激が低下して眠気が起こってしまうというわけですね! 個人差が大きいそうですが、私なんて夕方に風邪薬を飲もうものなら翌日の昼まで眠くて眠くて、何もできなくなってしまいますえーん。(ですが半分の量だと鼻水は止まっても眠くならないのでOKチョキ) ちなみにこの作用を逆手に取ったのが市販の「ドリエル」などの睡眠改善薬で、実は「ドリエル」は抗ヒスタミン剤であって、いわゆる"睡眠薬"というより鼻水止めあるいは抗アレルギー薬なのですガーン
 
 
このように、脳はヒスタミンセロトニンノルアドレナリンアセチルコリンなど様々な覚醒物質によって目覚めさせられていますが、その覚醒状態を維持するためには、視床下部外側野にあるオレキシン作動性神経が作り出すオレキシンという物質が不可欠であることが知られています。
右差しオレキシンにつきましては、前述の「2/12にロゼレムについてまとめました記事」でも少し触れさせていただいています)
 

ちなみにこのオレキシンを作り出すオレキシン作動性の神経細胞(=オレキシンニューロン)が攻撃され(←自己免疫疾患との説が有力だそうです)、脳内のオレキシンが欠乏して、覚醒を適切に維持できなくなる病気が ナルコレプシー だと言われていますおーっ!ハッ
(*「覚醒を維持できない」・・・まさに娘にピッタリの表現ですガーンガーン てことは娘もオレキシンが足りないのか、あるいは他の覚醒物質が足りないないのかしら・・・?)
 
オレキシンが欠乏するだけで1日中強烈な眠気に襲われ、いつどこでも眠り込んでしまうということは、オレキシンがそれだけ他の覚醒物質では代替できないほどの最も強力な覚醒物質だという証ともいえるそうです。

 
 
■睡眠と覚醒の切り替え→「flip-flop説」
 
睡眠中枢覚醒中枢は、互いに軸索を投射し、お互いの活動を抑制し合っています。


たとえば、覚醒中枢からの睡眠中枢への抑制の方が強くなると覚醒が開始され、睡眠中枢から覚醒中枢への抑制の方が強くなると睡眠が開始されます。

このような仕組みにより迅速な睡眠-覚醒の切り替えが行われているという考え方を、flip-flop説(意訳としては"シーソー"説や"振り子"説というイメージ) と呼ぶそうです。

そして この切り替えのタイミングを決定しているのが、視交叉上核(←視床下部の先端部にある小さな一対の神経核)にある体内時計(生物時計) なのだそうです。

(この画像はこちらから引用の上改変させていただきました)
 
 

 
・・・と何だかごちゃごちゃ書いて参りましたが、ポイントは最後の緑ラインの部分だけです滝汗
 

そこだけを頭に置いて、次回こそ「子どもの神経発達症に伴う入眠困難の改善に対して初めて発売された薬」について勉強したいと思いますメラメラ




ここからは記事を書いていて思い付いたことの独り言・・・

 

ナルコレプシーは、オレキシンという覚醒物質が欠乏するために覚醒状態の維持ができなくなる病気だそうですが、娘(というか発達障害関連過眠症)の場合はどうなっているのだろう・・・?と気になりました。
(娘の脳内のオレキシン量を測れたらどんなにおもしろいか・・・ウズウズ)


それより、もう1つ気になることが。

それは「青斑核」から分泌される「ノルアドレナリン」もまた覚醒物質である という事実です。

5/19の記事でノルアドレナリンについてまとめさせていただきましたが、抜粋するとこんな感じです。

・脳内のノルアドレナリンはほとんどが青斑核で作られる。
・青斑核で作られたノルアドレナリンは、大脳皮質全体、辺縁系、基底核、小脳、脳幹部、脊髄など、脳全域へと広汎に分布していく。
・ノルアドレナリンは注意や集中力、判断力、ワーキングメモリなどを高める働きがある。
・ノルアドレナリンの量は多すぎても少なすぎても作用が減弱する。
・たとえばノルアドレナリンが不足すると注意力が散漫となり、逆に過剰となると多動傾向となるなど、ADHD様の症状が出現する。
・ADHDはドーパミンだけでなくノルアドレナリンの作用不足も原因と考えられており、実際にADHD治療薬のコンサータとストラテラはノルアドレナリンの作用を増強させる効果を持っている。


以上の点から、

娘(というか発達障害関連過眠症のあるADHDの人)では、ノルアドレナリンの作用不足があってADHDに特徴的な不注意や集中力散漫が出ているだけでなく、ノルアドレナリンという覚醒物質の作用不足によって過眠症状も引き起こされているのでは!?

なんて思ってしまいましたひらめき電球

 


だとしますと、

 

多動傾向がメインで不注意が軽い場合は、過眠症はあまり認められないのでは?
不注意がひどい場合ほど過眠傾向が強いのでは?

 

という仮説が成り立つはずですが・・・

調べた限りではそれらしいデータも文献も見つけることができませんでしたえーん ・・・残念もやもや