遡ること6日前の2月6日木曜日。
睡眠障害のクリニックに検査結果を訊きに行った娘が
「私、ADHDかもしれないんですけど・・・」
とお伝えしたところ、先生から
「なるほどな~!!」
と検査結果に関連して妙に納得されたエピソードについてはこちらこちらの記事で紹介させていただきました通りです。


その時の先生の診断は
「睡眠相後退症候群かナルコレプシーのどちらかだと思うが、結果はグレー」
というものでした。
(注:娘がADHDの可能性を伝える前の診断です)


先生は
「ナルコレプシーの治療には医療用の覚醒剤を使うことになるが、今後のことを考えると使わずに済むなら使いたくない。なのでまずはナルコレプシーではないと仮定して軽い薬を1ヶ月間試し、それが効かなければ強い薬に変更しましょう」
と仰って、

①ロゼレム(8mg)  1回1/4錠 19時に服用
②カフェイン水和物(150mg) 1回1錠 
   眠くなったら困る時、30分前に服用(1日2回まで)


を処方して下さいました。


そのうち今日は、①のロゼレムについて調べてみたいと思います。



ロゼレムはいわゆる”睡眠薬”だそうです。


睡眠薬、といえば。

「多量に服用したら危険なアレ?」
「ずっと飲んでたら依存性や習慣性ができるのでは?」
「こんな若いうちから飲んでて大丈夫なの?」
「脳に作用するのって・・・何だか怖い」

など、思わず不安を感じてしまうのは私だけでしょうか。


そこで、まずは”睡眠薬”というものについて、少し調べてみました。



最初にざっと総論から・・・

■睡眠薬の種類
睡眠薬は作用機序によって大きく3つに分けられます。
①GABA受容体作動薬
②メラトニン受容体作動薬
③オレキシン受容体拮抗薬


ちなみに、①は構造の違いによって
  (a)ベンゾジアゼピン系
  (b)非ベンゾジアゼピン系

の2つに分類されますが、本によっては睡眠薬そのものを上記の①~③ではなく、(a)(b)②③の4つに分類しているものも多いようです。
*でも作用機序(後述)で分類する①~③が絶対ベストよね!


(この図はこちらのサイトから引用させていただきました)

*2009年までは「GABA受容体作動薬」しかなく、『睡眠薬』といえばこの「GABA受容体作動薬」のことでした。しかしこの薬には長期服用による依存性や認知症など、さまざまな問題がありました。



※ここで余計な豆知識(主に自分のためのものですので、ご存知の方は申し訳ありません💦):

●GABA(ギャバ)とは
γ-アミノ酪酸(gamma-Aminobutyric acid)の略。
アミノ酸の一種で、動物や植物に広く存在。
人間においては主に脳内に存在している。
神経伝達物質の1つで、神経の活動を抑制する作用があります。
→つまり睡眠を司る物質。

●メラトニンとは
脳内の松果体から分泌される脳内ホルモン。
体内時計(概日リズム)の調整に関係し、睡眠と覚醒のリズムを整える働きがあります。
→つまり体内時計(概日リズム)を司るホルモン。

●オレキシンとは
脳内の視床下部外側野から分泌される神経伝達物質の1つ。(1998年に日本人が発見!)
脳の覚醒を活性化させる働きを持っています。
→つまり覚醒を司る物質
別名:ヒポクレチン。
ちなみに、オレキシンを作る神経細胞が攻撃され(自己免疫疾患との説が有力)、脳内でオレキシンが欠乏すると、ナルコレプシーを発症するといわれています。


ここでさらに蛇足ですが:
・○○受容体作動薬とは
○○という物質と似た形(構造)をしている薬で、細胞表面にある○○に対する受容体に○○の代わりに結合し、○○と同じ作用を発揮することのできる薬のこと。
・△△受容体拮抗薬とは
△△という物質と似た形(構造)をしている薬で、細胞表面にある△△に対する受容体に△△の代わりに結合して、本当の△△が結合するのを邪魔する。この薬自体には△△のような作用はないので、結果的に△△は効果を発揮できなくなる。

⇒つまり、①は「GABAそのものではないが、GABAと似た働きをする薬」、③は「オレキシンの作用を邪魔する薬」という意味になります。



申し訳ありません、本題に戻ります。

■睡眠薬の作用のちがい
①GABA受容体作動薬
・・・脳の神経活動を全体的に抑えることにより、眠りへと導く。(←無理に眠らせるイメージ)
②メラトニン受容体作動薬
・・・睡眠と覚醒のリズムを整え、眠りをもたらす。昼夜逆転や高齢者(メラトニンが欠乏してくるので)などに効果的。(←体内の環境を整えることで自然な眠りが訪れるイメージ)
③オレキシン受容体拮抗薬
・・・脳の覚醒システムを抑制することで、覚醒から睡眠状態へと移行させ、眠りをもたらす。(←眠らせるのではなく、起きていようとする方を抑えて、結果的に眠くするイメージ)

 


(この図はこちらのサイトから引用させていただきました)


■代表的な睡眠薬
①GABA受容体作動薬
  ・ベンゾジアゼピン系:レンドルミン、ハルシオンなど
  ・非ベンゾジアゼピン系:マイスリー、ルネスタなど
②メラトニン受容体作動薬:ロゼレム のみ
③オレキシン受容体拮抗薬:ベルソムラ のみ



――なるほど。

てっきり普通の”睡眠薬”をいただいたのだと思っていたのですが、先生は、
「ナルコレプシーではないと仮定して、いわゆる昔からある”睡眠薬”ではなく、体内時計(概日リズム)が乱れている『睡眠相後退症候群』に効きそうなお薬」
を処方して下さったというわけだったのですね!

 


次に、各論としてロゼレム、つまり②のメラトニン受容体作動薬について調べてみたいと思います。

■メラトニンとその作用
・松果体から分泌されるホルモン。
・下等動物からヒトまで、季節のリズムや概日リズム(サーカディアンリズム)を調節する作用を持っている。
・メラトニンには脈拍、体温、血圧などを低下させる作用がある。これにより、体に「寝る準備ができた」と認識させることで、睡眠に向かわせる。

■メラトニンの分泌リズム
・メラトニンの分泌は光を浴びると低下し、夜暗くなってくると分泌量が増える。
・また、メラトニンの分泌は起床から約14時間後に始まり、2時間後に最大に達し(日中の数十倍)、翌朝目覚める2~3時間前から分泌が減少し始める、という日内変動も持っている。
・すなわちメラトニン分泌は、環境光と体内時計の両方から調節を受けている。
・そのため朝に光を浴びない生活や不規則な生活を続けるとメラトニンの分泌が乱れ、睡眠障害の原因となる。
・メラトニンは幼児期(1~5歳)に一番多く分泌され、年齢と共に分泌量が減っていく(50~60代で1/10程度とも)。年を取ると眠りが浅く、睡眠時間が短くなるのはこのため。
*最近妙に朝早く目が覚めるし眠りも浅いので、娘のことでそんなに思い悩んでるのか私・・・と思ってましたが、単に年のせいだったのねゲラゲラ



(この図はこちらのサイトから引用させていただきました)

*ちなみに人間の本来の体内リズムは、最新の報告だと1日24時間10分周期なのだそうです。たかが1日10分、されど1ヶ月だと5時間もずれることに! それをリセットするために太陽光を浴び、メラトニンの分泌を毎日ストップさせて、1日=24時間という地球の自転のリズムに同調させるのだそうです。

 


■ロゼレムの使い方
・睡眠薬としての効果は①のGABA受容体作動薬に比べると弱い。睡眠薬として使用する場合は1回1錠(8mg)を眠前に服用。効果が出るのに2~4週間かかることもある。
・ただし体内時計のリズムを整えることが目的の場合は、1回2~4mg(つまり1/4~1/2錠)でも十分との報告あり。またこの場合は即効性が期待できる。
・効果のピークは約1時間、半減期は約2時間。



――なぁるほど!!
先生が
「朝7時に起きて23時に寝るように」
と仰った意味が、よく分かりました。
メラトニン分泌の体内時計による日内分泌のピークが起床(=7時)の14時間後(=21時)に始まり、その2時間後(=23時)にピークに達するからなのですね。

また、ロゼレムを1/4錠という少量で出された理由も分かりました。
あくまでも”睡眠薬”としてではなく、”日内リズムを整えるため”の使用、ということなのですね。

ただ、服用時間がなぜ「寝たい時間の4時間前」なのかは、調べた範囲では分かりませんでした。
「睡眠薬として飲むなら21時服用」説や、昼夜逆転を修正するために「1/8~1/4錠を前日入眠できた時間の7時間前に服用すると徐々に、だいたい4週間で寝る時間を2時間前倒しできる」説ならあったのですが・・・。
これについては調査課題としておきたいと思います。

★追記
「なぜ寝たい時間の4時間前なのか」のおそらくの理由が判明しましたので、こちらをご参照下さい↓↓(2020.9.14の記事です)

 

 




最後に・・・・・・

■ロゼレムの良い適応
・高齢者
・概日リズム睡眠-覚醒障害(睡眠相後退症候群、非24時間睡眠覚醒リズムなど)
・交代勤務睡眠障害
・時差症候群(いわゆる時差ボケ)


ところがこれ以外にも・・・滝汗
薬の方から調べても載っていませんでしたが、「発達障害」から調べますと――出てきました。


・現代の日本では、小学生のうち何らかの睡眠障害を抱えている子が約25%も存在するといわれているが、発達障害の子の場合は50%以上に頑固な睡眠障害が認められる。
発達障害の子はメラトニン分泌のピークが後ろにずれていたり、メラトニンの量そのものが少ないことが分かっている。


ポーンポーンポーン !!!?




・・・果たしてうちの娘が眠らないのは、ナルコレプシーか睡眠相後退症候群だからなのか、発達障害だからなのか――。

 

 


8日後に発達障害外来を受診したあと、ちゃんと考えてみたいと思います。
 

 


補足ですが、スマホやゲームの青色光はメラトニンの分解を促進するのだそうです。
娘が夜中にゲームをしてますます昼夜逆転がひどくなっていたのは、そのためもあるのかも・・・っ アセアセ💦

 

 

 

あと、②③の薬は、効果は弱めですが自然な眠りをもたらし、依存性もない(といわれている)ので、安全なのだそうです。
①のほとんどの薬は1回の診察で30日分しか処方してもらえませんが、②③だと90日分など長期投薬が可能なのは、そのためなのですね。

 

 

 

 

*こんな長いのを読んでいただき、どうもありがとうございます。
ゼイゼイ。力尽きました。明日は息子が帰ってくると言っているから掃除をしなくてはならなかったのに・・・ヤバイですガーン