2/263/43/9の記事では、『カルニチン欠乏症の診断・治療指針 2018』で挙げられております以下の4つのカルニチンの生理・生化学的作用のうちの、それぞれ(1)~(3)について調べてまいりました。

 

(1)長鎖脂肪酸のミトコンドリアマトリックス内への輸送に必須で、長鎖脂肪酸のβ酸化によるエネルギー代謝(ATP産生)を促進する。

(2)細胞内のアシルCoA/CoA比率の調整により、種々の代謝に重要な遊離CoAプールを維持する。

(3)有機酸代謝異常症や種々の病態で蓄積する有害なアシルCoAのアシル基と結合し、アシルカルニチンとなって細胞外、尿中へ排泄する内因性解毒剤として作用する。

(4)スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、グルタチオンパーオキシダーゼ、カタラーゼなどの抗酸化酵素の発現増強作用、アポトーシス抑制作用などにより、抗酸化作用、抗炎症作用、生体膜安定化作用、線維化抑制作用などを発揮する。

 

 

 

その結果、(1)からは

・カルニチンが欠乏すると、動物細胞が脂肪酸からエネルギーを取り出すための重要な代謝経路が障害されるため、特に脳脳みそ にとってダメージが大きいらしい

ということが、また(2)からは

・カルニチンが欠乏すると、CoAという補酵素が枯渇する。その結果、三大栄養素(ブドウ糖、アミノ酸、脂肪酸)からエネルギーを取り出す重要な経路すべてが障害を受けてしまうため、ますます脳脳みそ にとってダメージが大きいらしい

 

ということが、(3)からは

・カルニチンが欠乏すると、ミトコンドリア内にアシルCoAという有害な物質が蓄積する。その結果さまざまな酵素の働きが阻害され、エネルギー生成などミトコンドリアのもつ種々の重要な機能が障害されてしまう

ということが分かりました。


そこで今日は最後の(4)について調べてみたいと思います。
(*今回はあまり調べきれず・・・短いですアセアセ

 

 

 

●(4)スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、グルタチオンパーオキシダーゼ、カタラーゼなどの抗酸化酵素の発現増強作用、アポトーシス抑制作用などにより、抗酸化作用、抗炎症作用、生体膜安定化作用、線維化抑制作用などを発揮する。

 

これらのカルニチンの作用は比較的近年になって見出されたもの(*2018年時点で)とのことで、あまり詳しくは記載されていませんでした。

 


要は、

 

・ 赤血球膜などの生体膜の安定性維持により、赤血球の寿命やターンオーバーを延長する

 (たとえば透析患者さんはカルニチン欠乏症になりやすく、カルニチン投与により貧血が改善することがあるそうです)

・抗酸化(酸化ストレスの軽減)作用により、抗炎症作用を発揮する

・アポトーシス抑制により、筋萎縮や心筋線維化などを防止する
(※アポトーシスとは、細胞が構成している組織をより良い状態に保つために最初から細胞自体に組み込まれているプログラムであり、あらかじめ予定されている細胞の死のことだそうです。たとえばヒトでは、胎児における手足の指の形成や尾の部分の消失、脳内における効率的な中枢神経システムの形成(←*なんか娘に関係ありそうでは!?アセアセ

 ウイルスに感染した細胞の除去、ガン細胞化などの重大な遺伝子異常をきたした細胞の除去など。このシステムが破綻したものの代表が癌細胞(=無限に増殖する) だそうです。)

などの働きを持っているようです。

 

 

これらについては詳しく調べられませんでしたが、 海外の知見がまとめられている厚生労働省のホームページには、カルニチンと以下の関係についての記載がありました。
 

 



たとえば・・・
 

・年齢とともに組織内のカルニチン濃度が低下する→ミトコンドリアの機能が低下する→老化と関係があるのでは?
 実際、アセチル-L-カルニチン投与によりラットでは活動性や活動性が高まり、ヒトでも
軽度の認知機能障害とアルツハイマー病の症状の悪化が抑えられる可能性が認められた。
・機能が低下しつつある心筋ではカルニチン量が低い→心筋梗塞の既往のある患者にアセチル-L-カルニチンを投与したところ、全死亡率や心室性不整脈や狭心症が減少した。(ただし心不全や心筋梗塞再発のリスクは減少せず。)
・末梢動脈疾患による間欠性跛行の症状(動脈硬化で足への血流が低下しているため、早く歩けない、長い距離を歩けない、など)がアセチル-L-カルニチンの投与により改善した。
・末期がんでカルニチンが不足している患者にカルニチン補充をおこなったところ、疲労感や気分や睡眠の質が改善した。
・アセチル-L-カルニチン投与により、2型糖尿病のインスリン抵抗性が改善し血糖値が低下
した。神経障害も改善した。(特に初期の患者で有効)
・HIV感染者やエイズ患者にカルニチンを補充すると、HIVの進行を遅らせたり神経障害が
軽減したりなどの効果が認められた。
・末期腎不全や血液透析患者の貧血に対してカルニチン投与が効果あり。
・精液中のカルニチン含有量は精子数と精子の運動率に直接関係あり→男性不妊患者にカルニチンを投与したところ、精子の濃度と精子の総運動率と前進運動率が増加したという報告と、変化はなかったという両方の結果あり。


これらはカルニチンの(4)(もちろん(1)~(3)も)の機能と関係があるのかもしれません。





さて。

ここまでの【■カルニチンの役割・その1~4の前半】で学んでまいりました内容を、以下に簡単にまとめておきたいと思います。


■カルニチンが欠乏すると細胞内でどんなことが起こるのか

まずはこの図をご覧下さい。


 


(この画像はこちらから引用させていただきました)

 

 

 

上の図のように、ヒトは生きていくために必要なエネルギーを細胞内で作り出す際に、
まずは食事中のグルコース(ブドウ糖)を利用します。

次いで、肝臓や筋肉に蓄えたグリコーゲンを分解してグルコース(ブドウ糖)を産生すること(=糖新生)で、エネルギーを得ます。

 

それらも枯渇してくると、今度は脂肪を燃焼させることによってエネルギーを補う必要があります。

 

 

主に2/26の●(1)についての記事で触れさせていただきましたように、カルニチンの不足によって直接障害されるのは、この3番目の脂肪酸の代謝(β酸化)です(上の図の赤い×)。

そのため、通常の安定した状態では特別な症状を示すことはほとんどありません。

ですが、脂肪酸代謝によってエネルギーを作り出す必要が高まるような状況・・・たとえば発熱や運動などで必要なエネルギー量が増加した時や、必要な量の食事を摂取できなくなった時などには、エネルギー不足によるさまざまな症状が急激に出現してくる可能性があります。

 

 

また3/4の●(2)についての記事でまとめさせていただきましたように、カルニチン欠乏はCoAの枯渇を引き起こし、その結果として解糖系やTCA回路や糖新生などの脂肪酸代謝以外の反応まで阻害してしまいます。


すると下図の青い×の部分もうまくいかなるため、結果的にすべてのエネルギー供給源が断たれてしまうこととなり、さらなる低血糖へと陥ることになります。

 

 

(この画像はこちらから引用の上、一部改変させていただきました)

 

 

 

(この画像はこちらから引用の上、一部させていただきました)

 

 

しかもカルニチン欠乏があると、特に中枢神経や筋肉において低血糖時に非常用のエネルギー源となるはずのケトン体を産生することができません。(上の図のように、ケトン体は脂肪酸から作られるためです。右差し2/26の記事でも触れさせていただいてます。

このことも、カルニチン欠乏による低血糖が重篤な結果をきたす一因となっています。


また、3/4の●(2)についての記事でまとめさせていただきましたように、遊離カルニチンが不足すると、細胞内に蓄積したアシルCoAを解毒することができません。
その結果、アシルCoAの細胞毒性によってミトコンドリア機能の二次的低下が起こり、エネルギー産生能のより一段の低下が生じてしまいます。


こうして二重・三重のエネルギー産生不足が起これば、たとえば
細胞膜にある各種のトランスポーターの機能は低下・停止し、もちろんその他の多くの生化学的反応も低下・停止するので、最終的に細胞は死に至ります

 

これらの際、もともとエネルギー消費量の多い脳脳みそ や肝臓や横紋筋(骨格筋および心筋)などは、特に障害を受けやすいことが分かっています。
急激かつ重篤な低血糖によって低血糖性脳症や心停止などが生じ急死に至ることがあるのは、そのためです。


カルニチン欠乏による低血糖や多臓器不全は多くはこのエネルギー産生の低下によるものと考えられており、これを 『エネルギークライシス
と呼んだりするそうです。

 

 



ちなみに。

 

少し上のところで出てきました「細胞膜にある各種のトランスポーターの機能は低下・停止し」の部分ですが。


トランスポーター につきましては、一年近く前の2020/6/9の記事【 ADHDの脳で何が起こっているか〈トランスポーター 総論〉】でまとめさせていただきました。

 

 

 

この記事の中で、以下のことを記載させていただいております。

・トランスポーターの異常に関連のある疾患として、 もともと遺伝性のあることが明らかとなっているさまざまな先天性の代謝性疾患のほか、てんかん発作、統合失調症、うつ病、不安症、自閉症、精神発達遅滞、薬物依存症などの病名がずらりと並んでいる 。

・ トランスポーターの異常によって生ずる疾患は加齢とともに増加し、50歳以降の高齢化疾患関連遺伝子の約10%にトランスポーターが関与するとされている。たとえば、 心循環器疾患、本態性高血圧、2型糖尿病、糖尿病性血管過形成、虚血、腎結石症、骨粗鬆症など。

・ そのため、いわゆる生活習慣病の治療薬開発(創薬)は、これらのトランスポーターを標的 として行われている。



ですが実はあのシリーズは、もともとはADHDの病因や薬(コンサータなど)の作用機序を理解したくて調べ始めたものです。
(*難しすぎたのと、娘の本試験が始まったり、Pちゃんの事件(右差し【泣きたくなった話】シリーズのことです)が勃発したりして、あり得ないことに未完成のままとなってしまっておりますがアセアセ ・・・でも今年中には絶対に完結させたいと思いますメラメラ

 

 

といいますのも、

ADHDの病因にドパミンやノルアドレナリンのトランスポーターが深く関与している

ことや、

コンサータはこれらのトランスポーターに結合することによって効果を発揮する

ことが分かっているからです。



そのことと、カルニチン欠乏がトランスポーターの機能を低下・停止させるという事実を考えますと、

カルニチン欠乏と娘のADHD(の発症または症状悪化)の間には、やはり何らかの関係があるのでは??

と考えずにはいられないのですが――気のせいでしょうか??滝汗あせるあせる

 

 


今後それについても調べていきたいと思いますが、まずは【カルニチンの役割】についてはいったん完結としたいと思いますお願い

 


 

わけの分からない自己満足の記事に長い間お付き合い下さり、どうもありがとうございましたキラキラ