著作権に関する電子書籍です。

 

著作物の創作とそれに準ずる行為の客体(著作物と準著作物)、主体(著作者と準著作者(出版者、実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者、そして想定される自動公衆送信事業者等またはウェブキャスティング事業者)、そして著作者の権利と準著作者の権利の保護と制限・範囲・管理・救済に関するエピソードについて考えるないようとのことです。

 

 著作物の創造と保護に関する著作権法制の国際的枠組みは、19世紀末の国際条約「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」(ベルヌ条約)に始まる。今日の著作権法制の主要な法整備は、1世紀以上前に体系化されていたことになる。その国際条約は、20世紀後半に入り、著作権・知的財産権保護に関する発展途上国と先進国との軋轢、いわゆる南北問題により閉塞状態が続くことになる。他方、知的財産に関する経済摩擦やデジタル環境への対応などの新たな国際的枠組みが世界貿易機関(WTO)や世界知的所有権機関(WIPO)で形成されることになる。
 著作権法制に関する3世紀を跨ぐ歴史の中で、二つの傾向性が見いだせる。第一は、著作物の創造に関するアナログ環境における有体物のとらえ方から、著作物の創造のデジタル環境への展開による無体物の理解への回帰である。第二は、著作物の創造の始原としての伝統的文化表現が著作権権法制との関連から、新たな南北問題となっていることである。著作物の創造は、無から生ずるといいきることはできない。自然物および先人の遺産や知識を糧にして、新たな著作物が生まれるという見方が取りうる。自然物および先人の遺産や知識は、狭義の著作権法制における対象とはいいえない。しかし、著作物の創造と保護および活用のライフサイクルにおいて、狭義の著作権法制との連結点が見いだされなければならないだろう。
 ところで、著作権法にかかわる法現象では、著作物に対する著作権で議論されている。しかし、ベルヌ条約では、著作物には著作者の人格的権利(著作者人格権)と著作者の経済的権利(著作権)が規定されている。わが国の著作権法でも、著作物に対して著作者の権利(著作者人格権と著作権)と定義されている。さらに、著作物の伝達行為にも著作者の権利に隣接する権利がある。したがって、著作権問題を考えるときは、著作権(copyright)だけでなく、著作者の権利とそれに隣接する権利を総合的にとらえる必要がある。なお、『文化審議会著作権分科会報告書』(2004)では、① 著作権法制の全体的な「構造」の単純化、②「権利」に関する規定の単純化、③「権利制限」に関する規定の単純化、④「契約」に関する規定の見直し、⑤ 特定の著作物等のみを対象とした規定の見直しについて着手していくとともに、今後ともこの問題について検討していくことが適当としている。しかし、現状の著作権法制は、いっそう複雑化させているとさえいいうる状況にある。

 「不思議の国の著作権」は、著作物の創作とそれに準ずる行為の客体(著作物と準著作物)、主体(著作者と準著作者(出版者、実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者、そして想定される自動公衆送信事業者等またはウェブキャスティング事業者)、そして著作者の権利と準著作者の権利の保護と制限・範囲・管理・救済に関するエピソードについて考えることにする。
 なお、著作物の創作に隣接する権利は、著作隣接権とされるが、実演家人格権が加えられている。また、そこには、出版権や出版者の権利が関与し、自動公衆送信事業者の権利・特定入力型自動公衆送信事業者の権利・放送同時配信等事業者の権利)やウブキャスティング事業者の権利も想定されてくる。そこで、「不思議の国の著作権」では、それら著作物の伝達行為にかかわる者を含めて準著作者とし、それらの権利を準著作者の権利とよぶことにする。
 この不思議な国では、パッチワークの説明が必要な著作権法制に対して、かえって蛇足的な加筆・修正が繰り返えされ、著作権に関する法現象を制御不能なモンスターに育て上げてしまい、おまけにその状況下で検定試験まで実施されている。そこで、「不思議の国の著作権」は5回、その1回の中に七つのエピソーズ、計35エピソーズを取り上げ、美しいはずの著作権法制の全体像をコラージュとして天空に描いてみることにする。

 「不思議の国の著作権 エピソード1」では、「著作物」、「準著作物(実演・レコード・放送・有線放送等)」、「著作者」、「準著作者(実演家・レコード製作者・放送事業者・有線放送事業者等)」、「著作者の権利」、「準著作者の権利(実演家の権利・レコード製作者の権利・放送事業者の権利・有線放送事業者等)」、「権利の制限」の各エピソードを取り上げる。

「不可思議の国の著作権 エピソード2」では、「コンテンツ」、「映画」、「著作権の帰属」、「著作隣接権の帰属」、「著作者の権利の保護期間」、「準著作者の権利の保護期間」、「私的録音録画補償金」の各エピソードを取り上げる。

 「不可思議の国の著作権 エピソード3」では、「音楽」、「キャラクター」、「ウェブキャスティング」、「ビッグデータとパーソナルデータ」、「肖像権」、「知的財産権管理」、「授業目的公衆送信補償金」の各エピソードを取り上げる。