ニデック(日本電産)が、稟議書を持ち出した元社員と東洋経済新報記者を不正競争防止法の営業秘密漏洩で訴えました。
不正に取得した営業秘密情報を基に記事を公開したとして、ニデックは28日、元社員と東洋経済新報社の記者ら計4人を相手取り、不正競争防止法違反と不法行為による損害賠償請求の訴訟を東京地裁に起こしたと発表した。
東洋経済は、ニデックの欧州子会社の車載部品トラブルを巡る記事を2月10日にオンラインで配信した。 ニデックによると、元社員が営業秘密に当たる稟議書や人事情報を不正に入手し、東洋経済に提供していたことが社内調査で判明したという。元社員は1月末で退職した。同社は「到底容認できない」とし、刑事告訴も予定している。
稟議書等を持ち出した元従業員に対して、訴訟を起こすのは理解できなくもありません。
しかし、東洋経済新報社の他、稟議書を基に記事を書いた編集長や記者個人まで不正競争防止法の営業秘密漏洩で訴えるのは、筋が違うと思います。
というのも、ニデックは上場企業ですから、取引先とのリコール訴訟などは株価に影響を与える重要な情報であり、公益性があります。
経産省の逐条解説 不正競争防止法では営業秘密の有用性について以下のように説明しています。
「企業の脱税、有害物質の垂れ流し、禁制品の製造、内外の公務員に対する賄賂の提供等といった、反社会的な行為は、法文上明示されてはいないが、法が保護すべき『正当な事業活動』とは考えられず、そうした反社会的な行為に係る情報は事業活動に有用な情報であるとはいえないので、営業秘密には該当しないものと考えられる。
つまり、『有用性』の要件は、公序良俗に反する内容の情報(脱税や有害物質の垂れ流し等の反社会的な情報)など、秘密として法律上保護されることに正当な利益が乏しい情報を営業秘密の範囲から除外した上で、広い意味で商業的価値が認められる情報を保護することに主眼があるといえる。」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/20190701Chikujyou.pdf
逐条解説 不正競争防止法
経済産業省 知的財産政策室編 令和元年7月1日施行版
持ち出された稟議書等のうち、リコール情報の部分は、法が保護すべき「正当な事業活動」とは言えないでしょう。
ニデックは最近、中間配当と自社株買で分配可能額を超過して実施するという問題も起こしています。
なお、以下が問題となった記事の一部です。これが営業秘密の漏洩なのでしょうか?
永守氏は記者個人を訴えるなど、みみっちいことはせず、引退する気など更々ないようですから、堂々と死ぬまで代表取締役を続けると宣言したら良いのではないでしょうか。
資料とは、日本電産の子会社であるドイツの自動車部品メーカーGPM社が起こした顧客とのトラブルについてのものだ。顧客はイギリスの自動車メーカーのジャガー・ランドローバー(以下、ジャガー社)である。GPM社が生産したウォーターポンプの不具合によって出た損害に対して、2021年10月にジャガー社から賠償を求められたという。
GPM社はエンジンの冷却水を循環させるための部品であるウォーターポンプのメーカーとしてヨーロッパでもトップクラスのシェアをもち、日本電産が2015年2月に買収した。ジャガー社との間でトラブルとなったポンプは2016年6月に生産を開始、2019年3月になって最初の市場不具合が報告された。
不具合の内容は、流量をコントロールする機能がうまく作動しないために冷却水の水温が上昇し、それが原因でラジエーターのファンが騒音を出すというものだ。GPM社では対策に苦慮し、翌年にソフトウェアを変更する改善策を取ったが、部品交換代やソフトウェアの変更コストとしてジャガー社から31億円余りを請求されるに至った。
「コスト感性をもっと磨け!」
入手した資料の中には、ジャガー社からの求償に対し25億3300万円を上限に和解調停することに、取締役会の了解を求める稟議書も含まれている。決裁の日付は2022年6月22日。会長である永守氏の大きな決裁印が押され、「AMEC(=車載事業本部)のデタラメな先おくり対応が大問題である」、「天からお金はふってこない」と手書きで書き込まれた永守氏によるメモや「コスト感性をもっと磨け!」との赤字のスタンプが押され、永守氏が巨額の和解金を支払うことに強い不満を持っていたことがうかがえる。
なお、この決裁の後、直ちに和解に至ったが、この経緯を日本電産は詳しく説明していない。それはなぜか。こうしたトラブルを説明することによって過去の買収が失敗だったと批判される可能性があるからではないか。
関前社長「本件以外の“負の遺産”」
入手した内部資料の中には、稟議書が関係する役員や担当者らに回覧された際に、それぞれが付したコメントの一覧も含まれる。その中の1つに興味深いものがある。当時、社長だった関氏によるコメントだ。
「本件以外の“負の遺産”も含め健全化を急ぎます」
GPM社がトラブルを抱える顧客はジャガー社だけではない。すでにダイヤモンドオンラインが報じているが、ダイムラー社との間でもGPM製のポンプの不具合をめぐって巨額の損害賠償を求められているという。関氏の指す「本件以外の“負の遺産”」はどこまで広がっているのだろうか。
ニデック株式会社(以下当社)は、本年 2 月 10 日に東洋経済新報社が報道した当社に係る記事が、当社より不正に入手された営業秘密情報に基づくものであったことから、同社及び関係者を被告として損害賠償を求める民事訴訟を提起するとともに、関係者について所轄警察署に不正競争防止法違反の罪を告訴事実とする告訴状を提出することといたしました。