パンパーティー
「おいおいおい!見ろよ見ろよ!」
山ちゃんの声で目が覚めたが、
寒さの中一晩過ごし、
ガチガチに固まった体はすぐには動いてくれない。
「何やってんだよ!売り切れちまうゼ!」
ハウスの外で山ちゃんが更に大声を上げる。
毛布に包まったまま、少しだけ体を動かして
何とか顔だけを声のする方へ向けると、
パンが大量に詰まったゴミ袋を二つ、
サンタクロースのように背負って、
嬉しそうに笑っている山ちゃんが誇らしげに立っている。
「もうパーティーパーティ!パンパーティー!」
無邪気に叫ぶ山ちゃん。
朝からそんな食えないよ、と笑って応えたが、
内心、これで今日はのんびりできるな、と少しホっとしていた。
なんでも、ハンバーガー屋の余り物らしいのだが、
普段は残飯までしっかり管理されているので、
ここまで大量にはなかなか手に入れられない。
肉は挟まっていないが、皆を集めれば何かかしらの
具は集まるだろう。
あぁ、よだれが出てきた。
山ちゃんの声で目が覚めたが、
寒さの中一晩過ごし、
ガチガチに固まった体はすぐには動いてくれない。
「何やってんだよ!売り切れちまうゼ!」
ハウスの外で山ちゃんが更に大声を上げる。
毛布に包まったまま、少しだけ体を動かして
何とか顔だけを声のする方へ向けると、
パンが大量に詰まったゴミ袋を二つ、
サンタクロースのように背負って、
嬉しそうに笑っている山ちゃんが誇らしげに立っている。
「もうパーティーパーティ!パンパーティー!」
無邪気に叫ぶ山ちゃん。
朝からそんな食えないよ、と笑って応えたが、
内心、これで今日はのんびりできるな、と少しホっとしていた。
なんでも、ハンバーガー屋の余り物らしいのだが、
普段は残飯までしっかり管理されているので、
ここまで大量にはなかなか手に入れられない。
肉は挟まっていないが、皆を集めれば何かかしらの
具は集まるだろう。
あぁ、よだれが出てきた。
キンさんとキャッシー
せんずりセンさんが帰ってきてからというもの、
センさんのエロ本に当てられているのか、皆女の話に夢中だ。
「やっぱよう、金髪が最高だぜ。ありゃいい。
オレは北海道の現場入ったことあんだけどヨ、
キャバレーいくとよ、マリリンみたいな露助がいっぱいいんだ。
金髪にチヤホヤされんのはたまんねぇゼ。
ボインもすげぇしよう。ニオイもスケベなんだこれが!」
キンさんの金髪話に皆目を血走らせ、夢中で聞き入っている。
「ほんでヨ!キャッシーつうのが、またオレにホレてやがってな!
キンサンスキヨスキヨってうるせぇんだ!ありゃまいっちまったナ!
夜は夜でヨ!来んなつってんのに大部屋まで来ちまって、
しかたねぇからオレも近所の連れ込みまで・・・」
いよいよ、というとこで話がピタリと止まった。
何事かとキンさんの視線を追うと、
その先にはふくれっツラのカズ姉がいた。
「アンタたちホント馬鹿だよ!
そんなサンピンのヨタ話信じてんのかい?
ウソに決まってんだろ!誰がそんなブ男に惚れるんだい。
あぁ!馬鹿らしい!!」
そう言い捨てて、呆然とする皆を残し
カズ姉はフラっとどこか行ってしまった。
しばしの沈黙の後、キンさんが
「なんだってんだ!あのババァ!
話の腰を折りやがってヨ!
キャッシーの話はホントだっての!」
あーもう解散解散!この話はまた今度!」
と、両手を大きく振りながら
カズ姉が消えていった方向に、
同じようにフラフラと消えていった。
再度の沈黙の後、顔を見合わせて大いに笑った。
似た者同士の、ステキな連れ合いがいる
キンさんが本当に羨ましい。
センさんのエロ本に当てられているのか、皆女の話に夢中だ。
「やっぱよう、金髪が最高だぜ。ありゃいい。
オレは北海道の現場入ったことあんだけどヨ、
キャバレーいくとよ、マリリンみたいな露助がいっぱいいんだ。
金髪にチヤホヤされんのはたまんねぇゼ。
ボインもすげぇしよう。ニオイもスケベなんだこれが!」
キンさんの金髪話に皆目を血走らせ、夢中で聞き入っている。
「ほんでヨ!キャッシーつうのが、またオレにホレてやがってな!
キンサンスキヨスキヨってうるせぇんだ!ありゃまいっちまったナ!
夜は夜でヨ!来んなつってんのに大部屋まで来ちまって、
しかたねぇからオレも近所の連れ込みまで・・・」
いよいよ、というとこで話がピタリと止まった。
何事かとキンさんの視線を追うと、
その先にはふくれっツラのカズ姉がいた。
「アンタたちホント馬鹿だよ!
そんなサンピンのヨタ話信じてんのかい?
ウソに決まってんだろ!誰がそんなブ男に惚れるんだい。
あぁ!馬鹿らしい!!」
そう言い捨てて、呆然とする皆を残し
カズ姉はフラっとどこか行ってしまった。
しばしの沈黙の後、キンさんが
「なんだってんだ!あのババァ!
話の腰を折りやがってヨ!
キャッシーの話はホントだっての!」
あーもう解散解散!この話はまた今度!」
と、両手を大きく振りながら
カズ姉が消えていった方向に、
同じようにフラフラと消えていった。
再度の沈黙の後、顔を見合わせて大いに笑った。
似た者同士の、ステキな連れ合いがいる
キンさんが本当に羨ましい。
山さんの様子が変だ
いつかの梅干の礼を言いに山さんのハウスへ。
外から呼びかけてもなかなか出てこないので
ちらっと中を覗いてみると、
緑のジャンパーを頭から被り
横になった山さんが小刻みに震えていた。
これはただ事ではない。
そう感じ、山さんへ近づこうと
ハウスに足を踏み入れた瞬間だった。
「入るな!」
突然山さんの怒声が響いた。
ビクっとして足が止まる。
少しだけこちらに目をやり、
テントに入ろうとしたのが
私だと気付くと、山さんは
また同じようにジャンパーを被り
「ゴメン。何か風邪っぽくて。
うつしちゃアレだと思ったから。今出るから」
と呟くように言った。
外に出てしばらく待っていると
ブビーっと手鼻をかむ音が何度か響いた後
いつもより少しだけほんのり赤く色づいた山さんが出てきた。
「ごめんごめん!風邪引いちゃってさ!ホラ、アレだから!
家ん中バイ菌がウヨウヨでヤラれちゃうから!」
いつもの口調で笑いながら言う山さん。
山さんに何があったかは知らないし、聞く気もない。
ひたすら気丈に振る舞う山さんの気持ちを思うと、
無神経で間が悪い自分がただひたすら恥ずかしかった。
外から呼びかけてもなかなか出てこないので
ちらっと中を覗いてみると、
緑のジャンパーを頭から被り
横になった山さんが小刻みに震えていた。
これはただ事ではない。
そう感じ、山さんへ近づこうと
ハウスに足を踏み入れた瞬間だった。
「入るな!」
突然山さんの怒声が響いた。
ビクっとして足が止まる。
少しだけこちらに目をやり、
テントに入ろうとしたのが
私だと気付くと、山さんは
また同じようにジャンパーを被り
「ゴメン。何か風邪っぽくて。
うつしちゃアレだと思ったから。今出るから」
と呟くように言った。
外に出てしばらく待っていると
ブビーっと手鼻をかむ音が何度か響いた後
いつもより少しだけほんのり赤く色づいた山さんが出てきた。
「ごめんごめん!風邪引いちゃってさ!ホラ、アレだから!
家ん中バイ菌がウヨウヨでヤラれちゃうから!」
いつもの口調で笑いながら言う山さん。
山さんに何があったかは知らないし、聞く気もない。
ひたすら気丈に振る舞う山さんの気持ちを思うと、
無神経で間が悪い自分がただひたすら恥ずかしかった。
叫び
朝方、まだ行った事がない所に
行ってみようと思い立ち、名前だけ知っていた
公園を目的地に決め、ブラリと出発。
思ったよりも順調に、1時間ほどで到着。
この公園にもご多分に漏れず、同業者が多い。
何気なくふらふらと公園内を散策していると、
突然公園の一角から、叫び声が聞こえた。
何事かと思って、近づいてみると、
一人の同業者の男が、同じ所を行ったり来たりして、
何事か叫んでいた。
「だから駄目なんだ!」
よく聞き取れない、言葉にならない言葉で怒鳴っている。
時折、「シッ!シッ!」と歯の隙間から擦過音を出すので、
威嚇されているようだ。
ご同輩として、この辺りの状況などでも聞ければ、と思ったが、
とても話しかけられる雰囲気でもなかったので、
早々にその場を後にしていつもの公園へ戻る。
こうりゃん先生にさっき見た男の話をすると
「結局、こんな生活を続けると、
人間はどこかおかしくなってしまうもんなんですよ。
弱いもんなんです、人間なんてもんは。」
と、なぜか寂しそうな、困ったような表情でポツリとつぶやいた。
その言葉を聞き、私やこの公園の仲間も紙一重であり、
まだなんとか人付き合いが出来ているだけなんだな、と
今さらながら気づいた。いや、気づかされてしまった。
ただなんとも言えない寂しさだけが残る。
行ってみようと思い立ち、名前だけ知っていた
公園を目的地に決め、ブラリと出発。
思ったよりも順調に、1時間ほどで到着。
この公園にもご多分に漏れず、同業者が多い。
何気なくふらふらと公園内を散策していると、
突然公園の一角から、叫び声が聞こえた。
何事かと思って、近づいてみると、
一人の同業者の男が、同じ所を行ったり来たりして、
何事か叫んでいた。
「だから駄目なんだ!」
よく聞き取れない、言葉にならない言葉で怒鳴っている。
時折、「シッ!シッ!」と歯の隙間から擦過音を出すので、
威嚇されているようだ。
ご同輩として、この辺りの状況などでも聞ければ、と思ったが、
とても話しかけられる雰囲気でもなかったので、
早々にその場を後にしていつもの公園へ戻る。
こうりゃん先生にさっき見た男の話をすると
「結局、こんな生活を続けると、
人間はどこかおかしくなってしまうもんなんですよ。
弱いもんなんです、人間なんてもんは。」
と、なぜか寂しそうな、困ったような表情でポツリとつぶやいた。
その言葉を聞き、私やこの公園の仲間も紙一重であり、
まだなんとか人付き合いが出来ているだけなんだな、と
今さらながら気づいた。いや、気づかされてしまった。
ただなんとも言えない寂しさだけが残る。