乞食blog -12ページ目

うどん鍋

安売り店の軒先をのぞいたら、
うどんが3玉入り38円という安さで売っていたので、
山ちゃんと一緒に5袋計15玉購入。

「みんな呼んでうどん鍋やろうぜ!」

と嬉しそうに言う山ちゃん。
私も、それはイイね、皆にも世話になってるし、
と二つ返事で快諾。
すると山ちゃんが

「世話になるとかするとか、関係ねえよ!
皆で食った方が楽しいじゃんよ!」

と笑いながら言った。

「皆でする食事は楽しい」

こんな当たり前の事を忘れていた自分が恥ずかしく、
そして当たり前の事を当たり前にできる
山ちゃんの純朴な笑顔が眩しかった。

肝心のうどん鍋は、小さい鍋に無理矢理
15玉入れてしまったため、吹きこぼれて大変だったが、
皆で笑いながら楽しく食べる事ができたので大満足である。

温かく冷えたタコヤキ

夜はめっきり冷え込むのでしんどい。
灯りに誘われるように駅前へ。

駅前の一角にたこ焼き屋が店を出していた。
ふらふらとたこ焼き屋に近づいていく。
どことなく暖かかい。きっと電動機やライトのせいだろう。
近くのベンチに座り何気なく威勢よくたこ焼きを売る
テキ屋の兄ちゃんを眺めていた。

「いらっしゃい!・・・2つですね!800円になります!・・・毎度ッ!」

家路を急ぐ会社員たちの波に威勢のいい声が響く。
ひっきりなしにお客さんが来る。
こんな寒い日は暖かいたこ焼きを食べたくなるよなあ。

そうこうする内にお客さんの波が切れた。
ようやく一段落といった面持ちで、
テキ屋の兄ちゃんが僕の隣に座って、一服し始めた。
よく見ると兄ちゃんのエプロンはメリケン粉で所々白くなっていた。
顔にもちょっと粉がついてた。
思わず可笑しくなって、ちょっと笑ってしまった。

「何、笑ってるんだよ」
テキ屋の兄ちゃんがむっとしてこちらを見る。

吸いかけの煙草をもみ消して、
立ち上がったのでビクッとしたが、
兄ちゃんはまた店に戻ってさっきと同じように
たこ焼きを売り始めたのでホッとした。

体が冷えるので、そろそろ公園に帰ろうかと思って、
立とうとした時、

「これやるよ、ちょっと失敗しちゃったやつだけどさ。」

見ると片手に少し形が崩れているけれど、
焼きたてのたこ焼きを持った兄ちゃんが立っていた。

「えっ?・・・いいの?」
「そんなとこに座り込まれちゃ、商売にならない」

と、ムッとした顔の兄ちゃん。
お礼を言って、ありがたく頂いた。
心底冷えた体が贅沢な贈り物を手に提げ、
犬のように追い払われて前に進む。

「もう来んなヨ!」

背中に追いかけるような声。
でも、たこやきは暖かく、しみるようなおいしさだった。

「心までは届かない施しのぬくもりで胃の腑を満たす長い夜」

カズ姉と黒木瞳

雨がなかなか止まない。
昨晩は寒くてよく眠れなかったが、
今朝方カズ姉がキンさんに内緒でくれた
キムチラーメンを食べたら体が温まり、
少し眠気が出てきたので、
このまま眠ってしまおうと思う。

布団にくるまり、カズ姉、私に気があるのか?なんて
下らない事を考え、一人ニヤニヤしている。

性根は悪い女じゃないが、
ヒステリックなところのあるカズ姉はゴメンだ。
黒木瞳のような、上品で色気のある女がいいなぁ。

ゆでたまご

こうりゃん先生がゆで卵のカラをむいていた。
どうやら薄皮のところがなかなかはがれず
難儀しているようなので、「むきますよ」と声をかけ、
卵を受け取る。

「この時期になると、指がきかなくなってきて困ります」

左手をさすりながら言う。
こうりゃん先生の両手は寒くなると具合が良くないらしく、
今日のような日はずっと、特に左手をポケットに入れたまま、
生活を送っていることなどもある。

「でも、筆を使う時はいつものように達筆ですよね」
「書はね、そういうものなんですよ。
障害があって足で書く人も、口で書く人もいます。
でも、本当に素晴らしい字を書きますよ。
私なんかじゃあ敵わないって、しょっちゅう思います」
「すごいですね、ハンデを克服して」
「書は精神ですから。ハンデという言葉さえ、関係ないのでしょう」

ハンデという言葉を「かわいそうな人達」という
ニュアンスで喋っていた自分を、
こうりゃん先生が諭してくれたような気がした。
胸がズキリとした。

無言で剥き終わった卵を渡すと、
お礼を言うこうりゃん先生の顔は、いつものようににこやかだった。

こざっぱりはしたものの

今日は、ボランティアの方が来て、
散髪と髭剃りをしていただいた。

冬物のあたたかいズボン下やベストなどもいただき、
ありがたいことこの上ない。

栃木の方の現場に3か月という長期での募集という話があり、
多少は暖かい冬を越せるかと、申し込んでいたのだが、
保険などの関係で外国人労働者や住所不定のものは、
やはり採用はできないという結果だった。

こうりゃん先生や福祉事務所の人と話して、
一時施設を住所にして、なんとか書類をそろえられないかと
がんばってくれたがムダだった。

こざっぱりした頭で、出かけるあてもなくぼんやりすごす一日。