乞食blog -14ページ目

センズリのセンさん

公園に戻ると、皆が雑誌を手にニヤニヤしている。
表紙には色っぽい若い女性と、欲情を煽るような
言葉が派手な字体で踊っている。
皆が手にしているのは、いわゆる「エロ本」だ。

「ゲッヘッヘ!たまんねぇよなぁ!!」

どこかで聞いたような下品な声。
やはり、エロ本を見た時から薄々気付いてはいたが、
センズリのセンさんだ。

ここ半年ほど姿をくらましていたが、
大量のエロ本を土産に、
昨日またフラっとこの公園に戻ってきたそうだ。
相変わらずスケベでどうしようもないな、と
呆れると同時に、相変わらずスケベなセンさんに、
仲間が、昔と変わらないまま
また戻ってきた嬉しさを感じていた。

「いやぁ、やっぱセンさんはすげぇよ」

ノリさんが上ずった声で言う。
目線はエロ本に釘付けだ。

「まだまだ一杯あるゼ!おう!お前もどうだよ!」

私は苦笑いして、いいよ、とクビを横に振った。
エロ本を食い入るように見つづける仲間を見て、
中学生の頃ビニ本を回し読みしていた事を思い出した。

安堵感

夜半から雨が降り出した。
毛布を持って一人いつもの屋根のある地下通路へ。

移動の途中、何気に覗いたコンビニ裏のゴミ箱に
廃棄の菓子パンとおにぎりを発見。
小躍りする気持ちを抑えつつ、
誰にも見られていない事を確認して失敬。

これで今日1日は余裕でしのげる。
食料がある安堵感のおかげで、
ゆっくり眠る事ができた。
雨がやんだら現金になりそうな仕事を探さないと。

図書館のニオイと学生服

繁華街をブラついて公園に戻ると、
こうりゃん先生を囲んで、皆が話に聞き入っていた。

何でも、最近寒くなってからというもの、
図書館にニオイのきつい人が出入りするようになったので、
その辺りの注意を促しておいてほしい、と、
図書館員からこうりゃん先生に話があったらしいのだ。

確かに我々は衣服の洗濯はもちろん、
風呂にすらなかなか入れないので、
恥ずかしながら、どうしても悪臭を伴ってしまう。
暖房をきかせた密閉状態の図書館などに行ったら、
他のお客はたまったものではないだろう。

「みだしなみは重要ですよ。寒くなってきて大変でしょうが、
ボロを湿らせて体を拭くくらいはしましょう。
清潔な肉体には清潔な精神が宿ります。
汚い身なりのままでは社会復帰への道も閉ざされてしまいますよ」

と、こうりゃん先生が静かだが強い口調で言うと、
皆も神妙な面持ちで聞き入っていた。
さすがこうりゃん先生。元高校教師である。

ふと皆が学生服を着て机に座り授業を受けている様子を
想像したら、ついプっと噴出してしまった。

クチボソ釣り

今日は天気がいい。
足は自然と河原にむいた。
ただボーっとしているのもなんなので、
川に糸をたらす。

糸やハリなんぞ、
マナーの悪い釣り人が捨てていくものが
そこらじゅうにある。
糸にからまってしまう鳥のことなんかが
騒がれたりもしているが、
まだ使えるものを
捨てていってくれるのだからありがたい。

もっと竿とかリールとかいろいろ
捨てていってくれればいいのに。

エサは大きめの石をどけると
小さな線のようなミミズがいる。
この前のうどんが少しあればとも一瞬思ったけれど、
うどんカスもうどんカスミのないくらい
きれいにたいらげてしまったからなあ。

針と糸しかないので、一番細い針にエサをつる
・・・クチボソ狙い。夕方までかかって、11匹。

腹が減っていたので、
その場で火を起こし素焼きにして食った。
川魚なので回虫が心配だ。
よく焼いてよく噛む。
よく噛むのはもし回虫がいた場合、
粉々にするためだけど、卵の状態だったらアウトだなあ。

それにしてもクチボソというのは、小さい魚だ。
小さすぎてうまいのかどうかわからない。 
しかし
「生命を食うってのはこういう味のことなんだ」
って、前にこうりゃん先生が言ってたっけ。

ああ、マグロかサンマが食べたい。
炊きたての白い飯と一緒に。

マーちゃんとハト

ポッポさんが久しぶりに気前よく餌をまいている。
何でもマーちゃんがパンくずをくれたのだという。

昨日パラッと天気雨が降ったとき、
たまたまポッポさんの近くにいたマーちゃんが
降りはじめの雨粒を、ハトの糞と勘違いして
ハトを追い散らかしてしまったらしい。

「あ、ちくしょう!ぐわー!!」

とマーちゃんが叫んで暴れたと聞き、
その情景を想像して思わず笑った。

ついさっき、昨日のお詫びだといって、
パンくずを持ってきたそうだ。
別に怒ってないよ、と言ったら

「ちがうって。無実のハト公に悪かったと思ってよ。
あと、おれもちょっとやってみたかったんだよ」

と、照れくさそうにパンくずを少し投げて、
寝床に帰っていたとのこと。

顔に似合わず、というと失礼かもしれないが、
マーちゃんにも可愛い所があるなぁと思った。