乞食blog -16ページ目

無言の食事

シゲさんの小屋の下流で土左衛門が上がったらしい。

身元不明という事だったが、我々にはすぐに誰だか分かった。
遺体の身体には位牌がくくりつけられていたそうだ。

駅前の望月だ。

山ちゃんが見かけて以来、ずっと姿が見えなかったが、
もしやとは思っていたが、最悪の結果になってしまった。

生きている時はイヤなヤツだったが、
それは彼なりの上昇志向の表れだったのだろう。

ヨシさんが無言でみんなにとっておきの手料理をふるまってくれた。
シゲさんやタカ坊、河川敷の連中も来た。

みんな、何も言わなかった。

忘れてしまったサツマイモ

久々の河川敷。
しばらくぶりに会ったシゲさんと世間話。
何となく新潟の話になった時、シゲさんの表情が曇った。

「新潟、オレの田舎なんだよ。
ひどかった地域じゃないけどよ、
古い友達がいるかもしれねぇと思うとよ、
あんま気持ちのイイもんじゃねぇよな…」

私は

「そうだね」

と相槌を打つしかできなかった。
当たり前の事だが、誰にでも過去はある。
もちろん私にも、他の仲間にも。

そんな事を考え初めたら、
会話が詰まってしまったので、
そろそろ行くよ、とサツマイモの事も忘れ、
足早に立ち去ってしまった。
自分のこういう性格に、自己嫌悪の毎日である。

小銭

競技場の拾い終了。
結局、786円。

天気がいいので、これからシゲさんのいる
河原の方に行こうかなと思う。
こっそりサツマイモを植えていて、
それがそろそろ収穫できるはずだから。

偶然ハイタッチ

きょうの深夜は、山ちゃんと千駄ヶ谷のガード下に泊まり。
競技場で大きなサッカーの大会があったので、
駅周辺の「拾い」をやるのだ。

夕方から朝にかけて丹念に歩くと
1000円くらい集まることもありバカにできない。
とりあえず355円。

ベンチで山ちゃんと一息ついていたら、珍しい瞬間を見た。

公園の向かいの大通りに、
荷物を持った初老の女性がやってきて、立ち止まる。

「ああ、タクシーに乗るのか」

そういう感じでキョロキョロしていたから、すぐわかった。
しばらくして車がきたのだろう、女性が手を挙げたら
その瞬間に、黒人男性の自転車がぴゅーっとやってきて
女性の手にパチンと合わせて、走り去っていった。

自転車をこぐプリプリしたケツの後ろ姿と、
何が起こったのかと戸惑う女性を見比べて、笑ってしまった。

クルマやサッカーが好きな山ちゃんが

「ああいうの、ハイタッチっつーんだよ。
なんつーか、めでてえ感じの挨拶だな」

と教えてくれた。

この決定的瞬間、ノボル君にも見せたかったなあ。

カズ姉の涙

カズ姉が泣いて帰ってきた。

今日は早朝からキンさんが遠出したので、
たまには旨いものでも食えと小銭を置いていったらしい。
カズ姉は今朝、それを持って駅前の立ち食いソバ屋に行ったのだが、
食券をだしたにもかかわらず、注文したソバが、
いつまでたっても出てこなかったそうだ。

たまりかねたカズ姉が店のオヤジに文句を言うと、

「他のお客さんは出勤前で忙しいんだ。
あんたらは朝っぱらからブラブラしてるだけだろ、
ちょっとぐらい待ってろよ。
だいたい、そんな汚ねぇ格好で店に入ってこられたら迷惑なんだよ!」

と逆ギレされたそうだ。

冗談じゃない。
僕らが100円稼ぐのは、普通の人が1000円稼ぐのより大変なのだ。
それに、カズ姉だって女だ。
古着には違いないが、身だしなみには人一倍気をつかっているのは、
我々の誰もが知っている。

こうりゃん先生が入れてあげたお茶で、
カズ姉は少し落ち着いたようだったが、
キンさんがこの話を聞いた時の事を考えると、
また少し気が重くなった。