乞食blog -15ページ目

フランスパン

見切り品だった太く長いフランスパンを、
68円で手に入れたので、
朝からそれをずっとかじっている。
量的にもなかなか食べ応えがあり、
食パンよりも味が濃くて美味い。
良い買い物をしたな、
とひとりニヤニヤとしていた。

ちぎっては口に入れ、
スルメのように長時間ゆっくり噛みつづける。

まだ満腹ではなかったが、
夜の事を考えて半分ほど食べたところでやめ、
ノドを潤そうと水道へと向かうと、ナベさんがいた。

話を聞くと、朝から何も口にしていない、というので
フランスパンをあげようかとも思ったが、
歯が無いナベさんにフランスパンを出すのも失礼かなぁ、
と思い、仕方がないので、焼肉屋のガムをプレゼント。

歯がないのにガムが好きだなんて、本当におかしな人だ。
思い切って、フランスパンを渡しても良かったのかもしれない。

姫のパンティ

皆で望月の話をしていた時に、
何となく「姫が死んだ」という話になった。
おととしの年末くらいまで、この近辺に出没していて、
去年、自分が北陸の方の現場に少し入っている間に
いつのまにかどこかにいなくなっていた女だ。

吉原かどこかの店で、一時はナンバーワンだったとか。
もちろんその頃の持ち物であろう器量は、
見る影もなかったのだけど、
100円でも50円でも、やらせるとの話もあって、
かなり有名な女ではあった。

借金というより、男とクスリで気が触れて、
壁や屋根のある場所では眠れなくなったのだというのも
人から聞いた噂話だ。

このあたりでタイ人のおかまと、縄張りだか男だかの
ことでトラブルがあり、関西の方に流れていったらしい、
というところで途絶えた噂。

2年近くたって復活したと思ったら、
ついに死んだということだ。

合掌。

というか、死んだというのも噂であり、
姫について知っていることも、思えばみんな噂だった。

姫を知っている当時の人間も、ヤマさんくらいで、
あれは本当にいた女かどうなのかは、少し怪しいとすら思う。

ヤマさんの拾ったエロ本に
極彩色の小さなパンティがずらりと並ぶページがあって、
姫はババァだけどこういう下着をつけているんだと、
酔っ払ってゲラゲラ笑った夜のことだけを妙にリアルに思い出した。

うどん5玉

うどんを拾った。
早朝に道の真ん中にうどん玉がどさどさっとむき出しで
5つ落ちていたのだ。そば屋かなにかの落し物だろうか。

むき出しで落ちていたものなので、水道で洗い、ゴミや埃を落とし、
先日のキャベツの残りと煮て、うどん鍋。
ダシがないけれど、キャベツの甘みが汁に溶けて、
醤油と塩だけのスープでもおいしい。なにより体があたたまった。

いつもおいしいものを作ってごちそうしてくれるヨシさんも
「うわーこれはいいな」と喜んでくれる。

キンさんが、「肉っ気欲しいな!肉!」と叫ぶ。
拾いの金で、ダシ用にトリガラを少し買うことも考えたが、
結局ケチった。その時それを少し後悔した。

しかしコシがあり、おいしいうどんだった。
どこか有名店のものだろうか?

メロンソーダ

昨晩、繁華街をひとりブラついていたときの事。
映像を撮っているノボル君とばったり出会ったので
なんとなく立ち話をしていたら、

「ボクのバイトしている漫画喫茶にきませんか?」

という話になっていた。

願ってもいないお誘いだが、服装の事もあるし、
さすがに悪いのでやんわりと断っていたのだが、
大丈夫だから、と熱心に勧めてくれるので
お言葉に甘えて、そこで一晩過ごすことにした。

とりあえず飲み放題のメロンソーダを汲み、
スポーツ新聞を取り、マッサージチェアに腰をかけたら、
あっという間に眠りに落ちてしまった。

「すいません、もうボク上がりなんで、
一緒に出てもらっていいですか?
シャワーだけ浴びてきちゃってください」

ノボル君の声で目が覚めた。
急いでシャワーを浴び、ノボル君と一緒に雑居ビルの階段を降りた。

「またいつでも、遠慮しないで来て下さいね!
メロンソーダ用意して待ってますから!」

メロンソーダなんて子供っぽいものを飲んでいるところを
見られてしまった気恥ずかしさよりも、
ノボル君の暖かい言葉が心に響いた。
純粋な気持ちが本当に嬉しく、涙が出そうになった。

今日も快晴。気持ちいい天気が続き、
空も心も晴れやかである。

大声

「オッス!!」

今日もキンさんは朝から元気だ。
カズ姉のそば屋での一件があったので、
カッカしていると思ったのだが、案外そうでもないようだ。
それとも、まだ耳に入っていないのだろうか。

そんな事を考えていたら、
挨拶を返すのが少しズレてしまった。

「おいおい!聞いてんのかよ!おはようつってんだよ!
おまえは最近アレがねぇよ、元気が!」

私は笑顔でそんな事ないよ、と軽く言ってから、
心配をかけてしまった後ろめたさと、いたずら心から
大声で「おはよう!」と叫んでやった。

遠くで掃除をしていた木元のじいさんが、
驚いた顔でこちらを振り向く。
キンさんと顔を見合わせて笑った。
久々に、何年かぶりに大きな声を出した。
気持ちよかった。