ゆでたまご | 乞食blog

ゆでたまご

こうりゃん先生がゆで卵のカラをむいていた。
どうやら薄皮のところがなかなかはがれず
難儀しているようなので、「むきますよ」と声をかけ、
卵を受け取る。

「この時期になると、指がきかなくなってきて困ります」

左手をさすりながら言う。
こうりゃん先生の両手は寒くなると具合が良くないらしく、
今日のような日はずっと、特に左手をポケットに入れたまま、
生活を送っていることなどもある。

「でも、筆を使う時はいつものように達筆ですよね」
「書はね、そういうものなんですよ。
障害があって足で書く人も、口で書く人もいます。
でも、本当に素晴らしい字を書きますよ。
私なんかじゃあ敵わないって、しょっちゅう思います」
「すごいですね、ハンデを克服して」
「書は精神ですから。ハンデという言葉さえ、関係ないのでしょう」

ハンデという言葉を「かわいそうな人達」という
ニュアンスで喋っていた自分を、
こうりゃん先生が諭してくれたような気がした。
胸がズキリとした。

無言で剥き終わった卵を渡すと、
お礼を言うこうりゃん先生の顔は、いつものようににこやかだった。