NATROM先生のブログ で知った記事です。
「授業参観、香水控えて」 学校「過敏症の子に配慮を」
http://www.asahi.com/national/update/0214/NGY200902130016.html
授業参観では、香水やにおいの強い整髪料は控えて――。化学物質過敏症の人たちが学校などの公共の場で被害を受けることがないよう配慮を呼びかける動きが、全国の自治体に広がっている。患者の支援団体によると、千葉、岡山、広島の3県と21市町が、ポスターなどで啓発を進める。とはいえ、化学物質過敏症への認知度はまだ低く、自治体側には表現方法などをめぐって戸惑いもあるようだ。
「子どもによっては、保護者の整髪料や香水などに反応して息が苦しくなるなどのアレルギー症状が出るようです。鼻やのどを刺激するような整髪料や香水を控えていただくと、大変助かります」
今月初め、名古屋市瑞穂区の市立小学校が、保護者あての「学校通信」で、こんな呼びかけをした。こうした「お願い」は、初めてという。
同校は「化学物質過敏症の児童が在校しているわけではないが、近くの学校には、香料に反応してしまう児童がいると聞いている。万が一のケースを考え、保護者に配慮をお願いすることにした」と説明する。
ある保護者は「この時期は窓を閉め切り、暖房も付いているため、空気がこもりがち。授業参観のとき、香水のにおいがきついと、大人でも気持ちが悪くなることもある」と話す。
名古屋市教育委員会によると、市内の数校で、化学物質過敏症の児童と保護者、学校が、病気の原因になる化学物質をどうすれば使わないようにできるかについて話し合っているという。具体的には、改築工事の際の塗料の選び方などで意見を交わしている。同市教委の担当者は「他の病気と同じく、配慮が必要な児童として学校ごとに対応している」と話す。
一方、岐阜市は05年度から、市役所やすべての小中学校で、香料自粛のポスターを掲示している。化学物質過敏症患者を支援する団体の要望を受けて実施したという。
化学物質過敏症とのことですが、そもそも化学物質過敏症という疾患自体、その存在がちゃんと認められたものではなく、まだ概念に過ぎません。「まだ」と書きましたが、おそらく将来にわたっても公式に認められる疾患とは思えません。
というのは化学物質過敏症の原因と主張されている物質が非常に恣意的な範囲にとどまっていることと、非常に薄い濃度でも発症するとされている点で、科学的に怪しいものとなっているからです。
例えば、農薬を使って栽培された野菜を食べると反応してしまうと言う患者さんがいるそうですが、その要件は農薬を「使って栽培した」であって、農薬が「残留した」では無いらしいのです。つまり残留農薬が検出されていない食材であっても(しかも、調理されていると言うのに)反応する・・・ということは実は農薬(化学物質)はその原因にはなっていないと言うことを示しています。有機栽培の野菜なら反応しないんだ!とも主張されていますが、これは逆に、実際には有機栽培の野菜であっても農薬が残留していることはありますから、「化学物質の存在の有無は化学物質過敏症の条件ではない」ことを如実に表しています。
しかし実際に症状が出るのだ、と言われるのでしょうが、心理的な事柄を由来として病気になる例もごく当たり前にありますし(イワシの頭も信心から)、そちらで説明が付きます。
化学物質過敏症はよくシックビル症候群と混同されることがありますが、シックビル症候群の場合は原因物質がかなり特定されている(建材による、大量のホルムアルデヒドに長期間暴露されること、とされる)ために、化学物質過敏症とは一線を画しています。化学物質過敏症の場合は「気に食わない化学物質」ならばのべつまくなしに発症することが特徴で、そして先に言ったとおり化学物質のほうは関係ないのですから、つまり「気に食わない物質」に反応する症状といった方がいいと思います。
例えば記事にある香水の件で言えば、(化学物質過敏症患者を支援する団体に言わせれば)いわゆる「天然素材を使ったナチュラルな香水」だったら良いと言いそうですが、当然ですが自然に存在する全ての芳香物質は化学物質とも言えますから、化学物質を根拠とした香水批判には何の意味もありません。まあ、記事を見る限りでは名古屋市瑞穂区の市立小学校では化学物質過敏症という言葉を使わずに説明しているようで、それが意識的になされているならいいことですが。
極端なことを言えば、香水など一切使わなくても、強い体臭だけで気分が悪くなる人もいるわけです。当然のことながら汗や腋臭などの芳香物質も化学物質であり、それを禁止することは絶対不可能です。もちろん、化学合成された香水であってもソフトな香りのものならOKでしょう。
授業参観に強い香水をつけるのはやめて欲しい、というならばそれにふさわしい理由はいくらでもあり、最も単純には「周りの迷惑だから」と言えば済む話です。が、そこに化学物質過敏症などを持ち出すのはいかにも拙いです。理由になっていないからです。
またNATROM先生も書かれていますが、「水からの伝言」のように、本来はモラルやマナーの問題なのを妙な化学の理屈で説明しようとするのも拙いです。それは根拠となる理屈が間違っていると言うこと以上に、モラルの問題はモラルの問題として教えないと人(特に子供)のためにならないからです。
いわゆる化学物質を批判する人は、化学物質過敏症関連に限らず、それこそ農薬問題を見ていれば山ほどいるのですが、もともとの「化学物質」の定義が明らかになっていないために突っ込んで考えると非常にあやふやなものばかりです。自然物にも有害な化学物質などいくらでもありますし、あまり過敏に考えても千害あっても一利ありません。
koume